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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第四章・花咲く渓谷の昔語り
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第二話・炭鉱探検(2)

 ラシーヌに続き、坑道に入って行く一行。

 坑道内はグラシナの街と同様、琥珀色のクリスタルが灯りとして使われていた。

 クリスタルが坑道を照らしてくれているおかげで、内部はかなり明るい。


 坑道の断面(だんめん)は、高さ二百メートル、幅百八十メートルといったところだろう。

 だいぶ奥行きがあるようで、灯りで照らされていても坑道の終わりは見えない。




「なぁ、トロン。この道は、さっき言ってたトロッコ……とやらは通らねーのか?」

「ああ。この道は坑道の中でも人道って呼ばれる、人が通る用の道なんだ。だから間違ってもトロッコにひかれる事なんざねぇから、安心しろよ」

「ええっ!? ここはトロッコ通らないの!? ちぇーっ、せっかく見れると思ったのにぃ……」



 トロンの言葉を聞いて、リオンは残念そうに口をとがらせる。

 よほどトロッコが見たかったようだ。



「あん? お前ほんと変わってんなぁ。あんなの、何の変哲(へんてつ)もない走る箱じゃねぇか」

「走る箱!? ナニソレ!? ますます見たかったなあぁ~……」

「そうだなー、俺もトロッコ見てみたかったな」

「私もー! 走る箱って、なんかメルヘンだよねぇ!」

「でしょでしょ!? トロッコトロンコトロンッコ~♪」

「リオン。お前、人の名前で変な歌作んじゃねぇよ……」

「あら、いいじゃないの! トロッコトロンコトロンッコ~♪」

「ラシーヌ、お前なぁ……」



 トロンは頭を抱え、深いため息をつく。

 こりゃーしばらくネタにされんだろうな……と、渋い顔をするのだった。


 フィトはなぜか、トロッコをメルヘンな乗り物と勘違いして想像を膨らませている。

 リオンの替え歌のせいで誰もツッコミを入れなかったので、フィトの妄想は膨らみっぱなしだ。




「なぁ。この坑道……ってやつは、一体どこまで続いてるんだ?」

「あー、けっこう奥深いと思うぜ? 具体的にどの位までってのは知らねぇけどよ」



 レオンの素朴な疑問に対し、相変わらず適当な答えを返すトロン。

 それを聞いて「ちゃんと話してあげなさいって言ってるじゃない」と、ラシーヌがトロンの背中をバシッと叩く。



「いてっ! んなこと言ったって、俺は炭鉱関係の事はさっぱりなんだから仕方ねぇだろ? 詳しくない事なんか、説明できるかよ……」



 トロンはぶつくさと文句を言うと、バツが悪そうにがしがしと頭をかいた。

 ラシーヌは「まったく頼りないわね」と、両手を上げて溜め息をつく。



「この坑道は、グラシナの街一帯に張り巡らされているのよ。どれくらい深く掘っているのかは、アタシも具体的には説明できないけど……でも、せっかく興味を持ってくれたんだし、せっかくこの土地に来たんだから、少しグラシナの事を話してあげるわ」



 そう言って得意気にウインクと飛ばすと、ラシーヌはグラシナの歴史について語り始めた。



「……この土地はね、もともと街があったわけじゃなくて、炭鉱と鉱山のために人々が行き来する場所だったのよ。それがいつしか、人が暮らす街になったの。最初にここに来た時、よくこんな場所に街をつくったなって思わなかった?」

「うん! 思ったよ! 物資の搬入も大変そうだし、ここに街をつくろうって、私だったら思いつかないもん」



 フィトがそう言うと、レオンとリオンも同意して頷く。

 ラシーヌはにっこり笑うと、話を続ける。



「……そうよね。それにね、ここにはもともと水脈がなかったのよ」

「え? でも、グラシナの街は川が流れる渓谷になってるよな? それに、土の祭壇も川に囲まれてたぞ?」

「そうよ。でもね、それは()()()()()()()()なのよ」

「後から創られた……川?」

「ええ。ここ一帯に流れる川と水脈は、神によって後々創られたものなの」



 あまりのぶっ飛んだ話しに、三人は目をぱちくりさせる。

 いきなりここで神の話が出るなどとは、思わなかったようだ。



「まぁ、世界の創生主(そうせいしゅ)は神だからね。川を創り上げることくらい、神にとってはどうってことないんだけど。ある日、ここで炭鉱の仕事をする人間が、この土地に水脈を創ってほしいと神に祈りを捧げたのよ。水を司る神と言えば、海の支配者ポセイドンなんだけど、そのポセイドンが人間にこう告げたの。……金の実がなる葡萄(ぶどう)を育て、最高に美味なワインを造るのだ。それが出来たら、満月の夜に必ずワイン瓶を海に流し、海神のもとに送り届けよ。それを約束すれば、願いを聞き入れよう――ってね。人間はそれを約束して、ポセイドンの言う通り、金の葡萄からワインを造って海に流し続けたわ。そしたら本当に、この土地に川が流れたってわけ」



 三人は「ほぇ~」と、ラシーヌの話を聞いていた。

 ラシーヌと古い中のトロンも、こういう部分でラシーヌに一目置いているのだ。

 グラシナの看板案内人などと、巷では呼ばれているらしい。



「最高に美味なワインを海に流せなんて、完全に自分本位よね。まぁ、それくらいで川の一本や二本創ってくれるなら、安いもんじゃない? 水脈が出来てから、人間は炭鉱をやる街をつくっちゃおうと思い立ったみたいでね。採掘と商売、そして暮らしをこの土地で同時にすることにしたの。それが、このグラシナの街の始まりなのよ」




 長い坑道を歩きながら、ラシーヌの話に聞き入る一行。

 レオンとリオンは、海神(かいしん)ポセイドンには何回か会ったことがあるが、なるほどイメージは変わらなかった。

 海の支配者であるポセイドンは、粗野(そや)狂暴(きょうぼう)なことで有名なのだ。

 また、ゼウスに負けず劣らず好色家(こうしょくか)で、冥界と魔界で怪物の女性たちを次々と口説いている姿を兄弟は見ていた。

 人間の願い事を聞いたのも、自分の欲求を満たすための気まぐれだろうに。

 ゼウスもポセイドンも、兄弟にとってはしょーもないバカミサマなのである。


 その現実を知らないフィトは、神様の話にうきうきしている。

 ポセイドン様って優しくて良い神様なんだぁ、と思っているのであった。

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