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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第四章・花咲く渓谷の昔語り
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第二話・炭鉱探検(1)

 宿屋・リースリングを後にした一行は、グラシナの出入り口に向かった。

 ラシーヌの話によれば、三人が降りた階段の入り口の他に、もう一つ街の入り口があるという。


 夜と同じく、人通りの多い街の中を一行は抜けていく。

 フィトの手を引くリオンをからかうように、ラシーヌはニヤニヤして言う。



「あんたたち、仲良くお手て繋いじゃってぇ。そういう仲だったわけ~?」

「ふぁっ!? ち、違うよっ! そんなんじゃないよっ!」



 ラシーヌの言葉を聞いて、顔を赤らめるフィト。

 パニックで目がぐるぐるしてしまっている。


 その様子を、イライラしながら見ているレオン。

 照れているフィトは可愛いが、自分に対して照れてほしかったと思うのだ。

 今すぐにでも、この繋がっている手を引き裂いてやりたい。



「リオン、ありがと! もう歩けるから大丈夫!」

 そう言うと、フィトはぱっと繋いでいた手を離した。



 リオンは、せっかくフィトの手を握っていられたのに! このババァ余計なことを! と、心の中で舌打ちする。

 レオンはそれに対し、ラシーヌさん、ナイス! よくやった! と、不敵に笑みをこぼした。



 兄弟のごたごたする様子を見て、楽しそうにせせら笑うラシーヌ。

 そんな一連の一コマを外側から見ていたトロンは、おっかねぇなぁ……と、おぞましく思うのであった。




 細い路地を通り、坂道を下り、辿り着いたのは――。

 渓谷の岩石を掘り進んで造られた坑道(こうどう)の入り口だった。




「ラシーヌさん、ここは?」

 坑道の前で立ち止まり、リオンがラシーヌに問いかける。


「ここは、坑道よ。今からここを通るの」

「坑道……?」

 レオンとリオンは首を傾げ、ラシーヌの言葉をオウム返しする。



「そう、坑道。あんたたち、グラシナが花咲く渓谷って呼ばれているのは知ってる?」

「そういえば! 昔、リザおばぁちゃんに聞いたことがあったかも……!」

「物知りおばあさんから聞いてるなら、話は早いわ。グラシナが花咲く渓谷って呼ばれてるのは、渓谷に咲き誇るリリーの花に由来するのよ」

「へぇ~! ステキだねぇ……! それに、グラシナにぴったり! 花咲く渓谷って、すっごく綺麗な響きだもん!」



 ロマンチックな話に、フィトの乙女回路がキラキラとまわり出す。

 とてもうっとりとした顔をしている。

 先ほどの一件で、だいぶ眠眠打破(みんみんだは)されてしまったようだ。

 一周回って、目がギンギンしてしまっている。



「フフフ。そうでしょう、そうでしょう? グラシナって、本当に素敵なところなのよ。……話を戻すけど、グラシナは別名、炭鉱と鉱山の街とも呼ばれているのよ」

「炭鉱……?」

「鉱山……?」



 初めて聞く言葉に、疑問符を浮かべる兄弟。

 先ほどから分からないワードの連発で、頭がいっぱいのようだ。



「お前ら、話しわかって聞いてんのか? さっきからずっと、ちんぷんかんぷんな顔してんじゃねぇか。まさか炭鉱の事がわかんねーのか?」

「んんー……。残念ながら、ワカラン」

「たはは、僕も分かんないやぁ」

「あんだって? まさかとは思ったが、炭鉱が分からないなんて事があるのかよ!? ラシーヌの言葉じゃないが、ほんとにお前らどっから来たんだぁ?」



 やれやれ、と言ったように、トロンは鼻から大きく息をつく。

 最も、冥界と魔界から来た兄弟には、地上の一般常識は通用しないのだが。

 トロンの発言に三人はギクッとしつつ、苦笑いを浮かべた。

 理解できない兄弟を見かねて、トロンは炭鉱と鉱山、坑道の説明をしてくれる。



「炭鉱と鉱山ってのは、地中から資源になる燃料や、鉱物を採取する場所の事だ。坑道は、採取した鉱物をトロッコに乗せて運んだりする道の事だな。んあー、簡単に言うと、中にある石ころを運んでんだよ」

「石ころってあんたねぇ……宝石なんかも出てくるでしょうが! 説明してあげるなら、ちゃんと最後までやりなさいな!」



 途中から説明がめんどくさくなり、投げやりになるトロン。

 そんなトロンをラシーヌは、どつきながらねじ伏せる。

 なんだかんだ面倒見がいいトロンは、どつかれて仕方なく説明を続けた。



「……んで、使われてない坑道内には酒蔵があってだな。ここで、昨夜お前らが飲んだワインも造ったりしてるんだぜ」

「へえぇ~! スゴイね! お宝発見も出来て、美味しいお酒も造れるなんてっ! こん中がどうなってるのか、めっちゃ興味なんですけどっ!」

「な! 今からここ通るって言ったよな!? 炭鉱探検! おもしれーなー!」



 兄弟はトロンの話を聞いて、ハフハフと興奮している。

 魔法でなんでもやってのける兄弟にとっては、地上に住む人間の技術がとても新鮮で斬新に思えた。

 求知心をくすぐりまくりの炭鉱に、大いに興を引かれたようだ。


 一方、フィトは地上の事をどれだけ知らなかったら一般的におかしいんだろう、などと頭を悩ませていた。

 この先、こういう場面に直面することは多々あるかもしれない。

 その度に切り抜けようとヒヤヒヤしてばかりでは、心臓がいくつあっても持たなそうだ。

 グラシナでは、幸い気のいい人たちばかりでなんとかなった。

 しかし。もしも怪物という正体がバレてしまったりしたらどうなってしまうのだろう。


 ぐるぐると考える、小さな少女。

 考えすぎて、頭から煙が出そうな勢いだ。

 しかしどう頑張っても、打開策は見いだせそうにない。

 とにかく、ここは私がなんとかしなくちゃ! 頑張らねば! と、健気な少女は気張って見せる。

  



「お前ら本当に変わってんのな。いつまでも耳付けっぱなしだしよ。それはもう……趣味なのか?」

「う、うん! これは趣味なんだよ! 仮装が楽しくて、いつからか付けてないと落ち着かなくなっちゃってさ! もう僕たちと同化しちゃってる、みたいな!?」

「そ、そうそう! もうやめられないよなー、これは!」

「……ああ、そう、なのか。まぁ、趣味ってんなら、止めやしねぇけどよ……」



 兄弟のゴリ押しな返しに、若干引き気味のトロン。

 それを黙って聞いていたラシーヌは、フィトに一言。



「……フィト。あんた、あんな変なのと一緒にいて恥ずかしくないの?」

「へぁ!? う、うん! 恥ずかしくない、よ……?」



 普通の人と感覚がずれているフィトは、不思議そうにそう答える。

 ラシーヌは、フィトの女神発言を聞き「あいつら幸せね」と、ほくそ笑んだ。

 このメンツには、ツッコミ役が必要なんじゃないかしら……とも、頭を抱えながら思うのであった。

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