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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第三章・大地の息吹く場所
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番外編・あるてぃめっと☆茶番劇その1(後編・上)

「第一回! 黒チョビひげ危機一発大会~!」

「わーっ! ぱちぱちぱちー!」

「うえーいっ!」

「前回はね! お互いの変な勘違いと、行き過ぎた深読みのせいで、出来なかったんだよね~」

「危機一発って、名前だけでイメージしたら危険物以外の何物でもねーよ……」

「それにフィト、あの説明じゃわかんないって!」

「それはごめんてばぁ。今回はちゃんとルール説明するから~、ねっ?」



 黒髪少女はえへへ、と笑って誤魔化すと、さっそくゲームのルールを説明し始める。



「このタルの中に、海賊のカッコをしたオジサンが入ってるんだって。それで、この四角い穴にレプリカの短剣を刺すと、オジサンが飛び出す仕組みになってるの! 順番に短剣を刺していって、先にオジサンを飛び出させた人が勝ち! なんだよー!」

「ほぉー。なるほどなー」

「要は運ゲーってことだね! 負けないよ~!」



 負けず嫌いなリオンは、フィトとレオンにさっそく宣戦布告をする。

 たかがゲーム、されどゲーム。どんなに小さい事でも、やるからには負けたくないのだ。

 互いをにライバル意識して育ってきた兄弟。競争心は人一倍強いといえる。

 それはリオンだけではなく、レオンにも言える事だった。



「……穴数は全部で二十四か。最後まで刺したら一人、八ターンだな。勝負すんなら運だろーが、なんだろーが、勝ちは譲らねーよ?」

「残念ながら、兄さんに勝ち目はないよ? 昔っからいろんなゲームで僕に連敗したこと、忘れたわけじゃないよねぇ?」

「頭脳戦と心理戦は、確かにお前の方が強ぇよ。でも、これは運なんだぜ? 何が起きるかなんてわかんねーだろ!」

「はははっ! 負け犬の遠吠えってやつ? せいぜい足掻(あが)けばいいよ!」

「お前こそ、後で悔しくて吠え面かいても知らねーからな!」



 兄弟が互いにいがみ合い、闘争心の炎を燃やしている中。

 一人、のほほんとゲームを楽しみにしているフィト。

 フィトは楽しくできればいいと考える、エンジョイ勢なのであった。



「本当は、タルからオジサンの頭が飛び出してるらしいんだけど、これはタルの中にオジサンがまるっと入ってるらしいの! なんでも、敵に捕まってタルの中で縛られている仲間の海賊を救出するために、短剣を刺しながらタルの中でロープを切って助け出す……っていう設定なんだって!」

「へえぇ~。ずいぶんと細かく設定されてるんだねぇ~」

「なかなかリアルな設定だな……」

「じゃあ、さっそくじゃんけんで順番を決めよう! でも、私はさっき一本刺しちゃったから、レオンとリオンからスタートにしよっか!」



 先程、頭がおかしくなったふたりをショック療法で元に戻すという強行手段で、フィトが一本短剣を刺してしまっていた。

 なので、残りの穴数は二十三だ。

 兄弟はフィトの提案に頷き、一番と二番の刺し順を決めることにする。



「この順番は、なかなか重要だぞ」

「兄さん、決め方はじゃんけんでいいよね?」

「ああ。いいぜ」

「じゃあ、いくよ……」



「おなかがぐぅー! じゃんけんぽんっ!」



 レオンがグー、リオンがチョキ。



「いよっしゃああああぁぁ! イエスッ!」

「……チッ」



 じゃんけんの勝者はレオンだ。

 ガッツポーズでウハウハなレオンに対し、目を細めて舌打ちをするリオン。


 なので順番は、レオン、リオン、フィトの順となる。

 フィトはそれよりも、じゃんけんの掛け声が気になる様子。

 なんであんな変な掛け声なのだろう、と疑問を抱く。



「ねぇ、ふたりとも。じゃんけんの掛け声って、最初はグー、じゃないんだね……?」

「えっ!? ナニソレ!? 冥界と魔界では、これが普通だよ?」

「そう……なの?」

「最初はグーって、初めて聞いたよな?」

「うん! なるほど分かりやすいけど、面白いねぇ~!」



 フィトは苦笑いしながらも、ふたりの掛け声の方がおもしろおかしいよ、と心の中で思う。

 誰が決めたのかは知らないが、なんてマヌケな掛け声なんだろうか。

 それはさておき。




「レオンからだね! 頑張ってー!」

「はーずーせ! はーずーせ!」


 フィトの声援と弟のブーイングを受け、レオンは記念すべき第一投目を構える。



 さて、どこにしようか――。

 これは、完全なる運ゲーだ――。


 このゲームに、何らかの必勝法や刺し位置の法則があったとしても。

 やったことがない自分にとって、そんなものは分からないのだ。

 最初の一手は、適当に刺しておくのがベターか。

 レオンはそう考え、二段ある内の下の段に、短剣を刺した。




 ぷすっ。




 無反応。

 残念ながら、ハズレだ。



「ダメだったか。最初っからそう上手くはいかねーよなぁ」

「ぷぷぷ! 兄さん、残念でしたぁ~! さ、次は僕だよ!」

「まだ穴はいっぱいあるからね。ドキドキするねー!」



 そう言って、わくわくと見守るフィト。

 リオンはタルのまわりをぐるぐるとまわって、品定めをしている。



「どこにしようかなぁ~……ここだっ!」




 ぷすっ。




 無反応。

 残念ながら、またもハズレだ。

 これで上の段に二本、下の段に一本、短剣が刺さった。



「あれ~? ハズレかぁ~。一発でカッコよく決めたかったのになぁ!」

「ははっ、ざまぁねーな!」

「うるさい馬鹿兄!」

「なんだと!?」



 兄弟がまたも睨み合っていると。

「次は私だね! えーい!」と、なんの迷いもなくフィトは短剣をタルに刺した。




 ぷすっ。




 無反応。

 残念、またもハズレ。

 刺さった短剣は、上の段に二本、下の段に二本。



「ありゃー、ハズレかぁ。ざんねーん!」

「フィトって、刺す場所とか躊躇(ちゅうちょ)しないんだな……」

(いさぎよ)いというか、すごい大胆(だいたん)なプレイスタイルだよね……」



 刺す場所を迷う上に、オジサンが飛び出してくることにドキドキしながらの兄弟。

 それに対し、フィトはかなり豪快(ごうかい)に剣を刺しまくっている。

 腹がすわっているというか、なんというか。

 フィトが何を考えながらタルに短剣を刺しているのかは、全く持って分からないが。

 そんな兄弟たちの熱い視線? に気付いたフィトは、不思議そうに首をかしげる。



「ん? な~に?」

「んや、なんでもない……。よっしゃ、二週目いこうぜ!」

「兄さんが外しますよぉーにっ!」

「バァーカ。もうお前の順番は回ってこねーよっ! どこにすっかなー……」

「早くしてよぉ~日が暮れちゃうよぉ! 兄さん、はよはよはよ!」

「うるせーやつだなー。せっかち野郎、少しは待つことを覚えろっての……うりゃ!」




 ぷすっ。




 しーん。

 タルは無反応、またもハズレ。


 刺さった短剣は、上の段に二本、下の段に三本。

 穴数、残り十九。



「かーっ! 当たんねーなー!」

「兄さん、お生憎様(あいにくさま)! これはリオンくんのだいしょーり! かな~!」



 フィトはどこかで聞いたセリフだなぁと思いつつも、まぁいいか、とリオンを見守った。

 テンション高々とタルの前に来た犬耳弟。

 どこに短剣を刺そうか、迷っているようだ。



 こういうのって、バラバラに刺すよりも、刺さってる場所の隣とかに刺した方が当たるんじゃ――?

 そう考え、リオンは短剣が刺さっている隣の穴を狙う。




 ぷすっ。




 しーん。

 それでもタルは無反応。またもハズレだ。


 刺さった短剣は、上の段に二本、下の段に四本。

 穴数、残り十八。



「うーん。なかなか作戦練っても当たらないかぁ。まぁ、ほんとに運だもんねぇ~」

「今回も当たらずに残念無念だったな、リオン? 次に俺の番が回ってきた時が、このゲームの最後だ!」

「ふん! 馬鹿兄もどーせ外すんだよ!」

「じゃあ、私の番だねー!」

「フィトにも当りは譲らないよ! 運命の女神が微笑むのは、この僕なんだからね!」

「もう一回、俺の番まわってこいっ!」

「あはは、まだ穴いっぱいあるんだもん。そんな簡単に当たらないよぉ~」



 ほんとに負けず嫌いなんだから、とフィトはくすくす笑う。

 フィトは上の段に、七本目の短剣をすっと刺した。




 ぷすっ。




 フィトが短剣を刺した、次の瞬間。




 …………

 ……………………ばびょーんっ!




「ひゃあああああッ!?」

「うわあああああっ!?」

「ぎゃあああああっ!?」



 タルの中から、勢いよくオジサンが飛び出してきた。

 あまりの音とその迫力に、三人はその場に尻もちをついて目を見開く。

 そして、どすん! と、三人の目の前に落ちてきたのは――。



「いててて……! ようやく出られたぜ……」



 タルから勢いよく飛び出し、加齢(かれい)のせいで華麗(かれい)に着地することが出来なかったトロンだった。

 ケツから着地したため、顔をゆがめて痛そうにおしりをさすっている。

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