番外編・あるてぃめっと☆茶番劇その1(前編・上)
こちらは、本編とは全く無関係なお話しです。
ただし、本編三章までのネタや登場キャラも盛り込まれているため、軽いネタバレにご注意ください。
完全なるネタ枠ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
おバカ三人組のマヌケな掛け合いを、微笑ましく見守って頂ければと思います。
前置き、失礼致しました。
「レオンー! リオンー!」
長くまっすぐな黒髪を揺らし、息を切らした少女がこちらに向かってくる。
「フィト、そんなに走ってどうしたんだよ?」
「だ、大丈夫? 苦しそうだよ?」
はぁ、ひぃ、ふぅ、と呼吸を整えるフィト。
その焦り具合から、よっぽどな事があったのでは、と兄弟は心配している。
落ち着きを払うと、フィトはニコニコと笑顔を浮かべ話し始めた。
「あのね! すぐそこで、面白いものをもらったんだぁ!」
「面白いもの……?」
レオンとリオンの頭上に、ちょいんとクエスチョンマークが浮かぶ。
その面白いものを見せるために、わざわざ息を切らしながら走って来たらしい。
何事かと思った兄弟の心配は、ご無用だったわけだ。
一体それは、どれほど面白いものなのか。
「うんっ! そうなの! 何でも、ぐさぐさーで、ばびょびょびょーん! らしいよ!」
「ナニソレ!? めっちゃ興味なんだけどっ!?」
「うえぇ? お前、いまの説明でわかったのか? 擬音でしかないんだけど?」
まったく理解が追い付かない兄レオン。
それに対し、キラキラとした眼差しをフィトに向け、リオンは興奮してハフハフしている。
得体の知れないもの、という事が、好奇心旺盛なリオンの心をくすぐったようだ。
「いやいや、すぐそこってどこだ? てか、誰からもらったんだよ?」
「えっと……ほんとにすぐ、そこ? ラシーヌさんがくれたの!」
「ラシーヌさんが? 大丈夫なのか? それ……」
明らかに怪しいといった顔つきをするレオン。
からかい好きのラシーヌの事だ。
何かよからぬものを寄越したに違いない。
それにしても、なんてアバウトな説明なのだろう。
イマイチ嫌な予感を拭いきれない犬耳兄は、胡散臭さを感じずにはいられなかった。
「兄さんは、ほんとに細かいなぁ~。まるで、うるさい小姑みたいだよ?」
「お前、本編と同じツッコミ使い回しすんなよな……」
「ほらぁ、また本編とか現実的な事を言う~。そうゆうのは、気にしないのがセオリーってもんだぜぇ?」
「誰だっけそいつ……あぁ、グラシナに行く前に会った賊か。てかお前、キャラ崩壊してんぞ……大丈夫か……?」
「うるさいなぁ。僕は早くフィトの言う面白いものが見たいの! フィト~! 早く早く~!」
リオンがそう言うと、フィトは待ってました! と言わんばかりに嬉しそうな顔をする。
そして、面白いもの、とやらをふたりの目の前に出して見せた。
「じゃかじゃーん! これだよーっ!」
ドンッ! と兄弟の目の前に出てきたのは――。
大きなタルに、等間隔で四角い穴が開いた謎の代物だった。
「……フィト、これは?」
「これはねぇ、黒チョビひげ危機一発ってゲームなんだよ!」
「黒チョビひげ……?」
「危機一発……?」
はじめて聞くふざけた名前の代物に、兄弟の目は点だ。
一体これのどこに、黒チョビひげ要素があるというのか。
名前を聞いたところで、これが何なのかさっぱりわからない。
「フィト、これでゲームするんだよね? どんなゲームなのか、全然想像がつかないよ?」
「えへへ。実は私も、さっき初めて見たし、これから初めてやるんだぁ! だからよくわからないの! とにかく、ざくざくーで、びよよよーん! なんだって!」
「相変わらず、わっかんねーなー……」
頭をかきながら、レオンはそうつぶやく。
フィトがあまりにも楽しそうにしているので、無論、微笑ましく思うのだが。
もちろん、兄弟はこの『ゲーム』という遊びに付き合うつもりだ。
しかし。心配症で勘が鋭い兄弟レオンとリオン。
このふたりは読みに読みを重ねた為に、思いも寄らない迷路に迷い込んでいく。
改めて、兄弟は思う。『黒チョビひげ危機一発』とは何なのか。
兄弟は考えに考えを巡らせ、はっとした顔をする。
危機一発というくらいなのだから、まさか、危険な代物なのか――?
このタルには、爆薬が仕込まれているのでは――!?
そう考えに至った途端、兄弟の顔色が一気に青ざめる。
そんなヤバイ代物をフィトに贈るなんて。
あの鬼畜妖怪ババァ、許すまじ。
はち切れるほど被害妄想を膨らませ、兄弟はドツボにはまっていく。
この被害妄想の酷さっぷりといったら、土の精霊たち顔負けだ。
いや、待てよ?
これ、まさかマジックアイテムなんじゃ――?
爆薬の線だけではなく、魔法仕掛けとまで疑い始めた兄弟。
何の効力があるのかは不明だが、危機一発、このネーミングが付いているほどだ。
きっと絶大に危険なものに違いない。
無数に空いている、恐ろしいあの穴から飛び出すのは、炎か、はたまた水か、風か。
何の属性アイテムなのか。
しかし、その割に全く魔力は感じられない。
魔力探知できないほど、高度な魔法仕掛けのアイテムなのか。
そして兄弟は、さらに恐ろしい仮説に辿り着く。
黒チョビひげ危機一発って名前は、フェイクで。
本当は、黒髪危機一発なんじゃ――!?
黒髪少女、フィト、危機一発。
無理矢理な脳内変換にて、フィトが危ない、そう確信した兄弟。
フィトを一刻も早くこのタルから離さなければ、と慌てふためく。
「フィト! このタルは危険だよ! 早く逃げよう!?」
「これは俺がなんとか処理するから、その隙にリオンと先に行け!」
レオンとリオンが必死に言葉を発した、その直後。
フィトはゲームに使用する、レプリカの短剣を運んで来た。
どうやら、兄弟がもんもんと絶賛妄想中だった時に、どこからかまた運んできたらしい。
いまだゲームの内容も飲み込めていない兄弟。
当然、レプリカ短剣の用途など分かるはずもなく。
最も、フィトがゲームの説明をきちんと行わない所から、この事案は始まったのだが。
目の前に並べられた大量の短剣を見て、レオンとリオンは目を見開く。
何故に短剣がこんなに? といった様子のふたり。
目の前の危険物の事が、頭から吹っ飛ぶほどのインパクトだった。




