表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第三章・大地の息吹く場所
36/130

第一話・声の呼ぶ方へ(5)

 坂を下って行くと、すっかり左右が岩石の壁に囲まれていた。

 リリーの花灯りと月明かりが当たりを照らしているが、だいぶ足元が悪い。



「ふたりとも、暗いし足場も悪いから気を付けろよ」

「あ。なんかこの感じ、デジャヴ……」

「お前なぁ。こんな視界も足場も悪いところで昼間と同じことしてみろ! 怪我すんぞ!」

「ハイハーイ。気を付けるって。ほんと兄さんは、小言が多い(しゅうとめ)みたいなんだからぁ」



 両手を上にあげ、小馬鹿にするようにリオンは首を振る。こういう時、兄の言う事を素直に聞かない所も、リオンらしいのだが。

 おちゃらけた弟をレオンはやれやれ、という風にジト目で見るのであった。




 ***




 見渡す限りの岩山の先に、巨大な割れ目が現れた。

 その光景に、三人は瞬きすることも忘れてしまう。劇的な大渓谷(だいけいこく)と、蛇行(だこう)した激しい急流。

 川が大地をえぐって創り出した馬蹄型(ばていけい)の絶景は、まさに自然の造形美といえよう。

 しかし。その景色に圧倒される以上に、目を疑う様な光景がそこにはあった。たくさんの小さな琥珀色(こはくいろ)の光が、渓谷を飛び交っているのだ。



「わぁ~……! きれいだね~……!」

「地上でいろんな景色を見たけど、間違いなくここがナンバーワンワン! かも……!」

「すっげーな! この光は、何なんだ……!?」



 飛び交う琥珀色の光と、渓谷に生える琥珀色のクリスタル。不思議な琥珀色の光たちに囲まれる一同。

 三人はその景色に圧倒されながらも、ゆっくりとその場所に足を踏み入れた。


 不思議な光に包まれながら歩いていると、レオンはある事を思い出す。

 ――この光の粒、フィトの部屋から見たやつに似てないか? と、レオンはフィトの部屋から見た、海上を舞う青い光の粒を思い出していたのだ。

 ただ、近くで見ると思ったよりも光の粒は大きく感じられる。粒と呼ぶには、(いささ)かそぐわない大きさかもしれない。

 もっとも、海上の光の粒と、この琥珀色の光の粒は、全くの別物なのかもしれないのだが。レオンはその疑問を、直接フィトに投げかける。



「なぁ、フィト。この光、フィトの部屋から見た不思議な青い光とは別物なのか?」

「それ、私も気になってたの! 似てるよね! そもそも、この光が何なのかわからないからなぁ……」

「それもそうか。しっかし、不思議だよなぁー。生き物なのか? ありゃ」



 二人の会話を聞いて、リオンはぽかんとしている。

 それを見て、とレオンはマズイという顔をした。そう、リオンはあの()()()()()()()()を知らないのだ。

 しかし、気付いた時にはもう遅い。



「何それ! そんな話し、僕知らないよー!?」

「あー……。そうだ、お前寝てたんだっけな」

「まさか兄さん、抜け駆け!? ずるいっ! 僕が寝てる隙になんて!」



 ガルルルル! と悔しがるリオン。

 よほど悔しかったのか、尻尾の白蛇も「キシャー!」と、レオンを威嚇(いかく)している。

 白々しく後頭部に手のひらをつけ、あさっての方を見るレオン。自分とフィトだけの秘密にしておこうと思ってたのになー、と口走ったことを後悔する。

 そんなリオンを気にかけ、フィトはその時の事を説明し始めた。



「リオン、そんなんじゃないんだよ? あの夜、レオンが()れたほっぺた治してくれたって言ったでしょ? その時ね、たまたまこれと似た光を一緒に見たんだ」

「そうなの? それ、僕も見たかったなぁ。うう~……寝ちゃった自分を殴りたいよ……」



 フィトの言葉を聞いて、リオンはしゅんとする。

 自分だけ見れなかったことが余ほど歯がゆいのだろう。口をとがらせている。

 昨日の酒場の事といい、知らない所で兄にリードを許してしまったとは。負け犬感でいじけた心を隠すように、リオンはもふもふと自分の犬耳をさわった。


 そんな弟の心理を知ってか知らずか、「弟よ、誠に残念だったな!」と、レオンは珍しく勝ち誇ったように、ふん! と鼻を鳴らす。

 こちらは、フィトと俺だけの秘密☆ を自ら暴露した腹いせのつもりか。

 兄の挑発するような態度が(しゃく)に障り、リオンは悔しさと怒りを増幅させた。

 山吹色の瞳が、凍り付くような眼光を放つ。そしてここで、弟の復習が巻き起こる。



「あ! 兄さん、後ろ! オバケ!」



 リオンはそう叫んで兄の背後を指さし、会心の一撃をお見舞いする。

 それを聞いたレオンは「んな……!? ひっ……ぎゃあぁあぁぁあぁっ!?」と叫び声を上げ、情けなく地面に()いつくばり、耳を塞いでガタガタと震え出した。

 そんな兄の事を見たリオンは、ぷっと吹き出す。



 「あーっはっはっはっは! バァーカ! オバケなんているわけないだろぉ!? 抜け駆けした上に、僕を挑発した報いだよ! ざまぁないね! だっさ!」



 散々に罵倒(ばとう)しながら、兄のマヌケな反応にリオンは腹を抱えて大笑いする。

 その様子を見かねて、フィトが止めに入ろうとした時――。

 リオンの肩に、ぽんっと誰かの手が置かれた。

 何気なく、後ろを振り返ると――そこには髪の長い、見知らぬ女が立っていたのだ。



「うっわああぁあぁああぁぁ!?」

 リオンはあまりの恐怖と驚きに、その場に尻もちをつく。



「な、なになに……!?」



 フィトは驚いたリオンに驚き、かなり動揺しているようだ。

 リオンが震える手で、必死に少女の後ろを指さしたので、フィトは恐る恐る、その方向を振り向く。

 果たして、その目線の先にいたのは――。



「アタシよ、アタシ! ラシーヌよ! そんなに驚かなくたっていいじゃないの!」

「ほぇ……?」

「ラシーヌさんっ!?」

「まったく、失礼しちゃうわ。何と見間違えてるのよ!」



 マヌケな声を上げ、ラシーヌを見上げるフィトとリオン。

 そんな二人に向かって、ラシーヌはぷんすかと腕組みをする。

 長いウェーブがかった薄紫色の髪をかき上げ、月光に輝く大人の女性がそこには立っていたのだ。


 しかし、誰だかわからなかったのも無理はないだろう。

 ラシーヌはポニーテールだった髪を下ろしていたのだ。それに髪色と同じ薄紫色のワンピースを着ており、先程とは雰囲気が全然違っていたのである。ただし、相変わらずの露出の多さは変わらないのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ