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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第三章・大地の息吹く場所
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第一話・声の呼ぶ方へ(4)

「狼たち、可愛かったね! モフモフでフカフカ! 仲良くなれてよかったぁ」

「うん、そうだね! また会えるといいねぇ~!」



 フィトとリオンが、わいわいきゃっきゃと余韻(よいん)に浸る中。

 レオンは落ち着いた様子で、フィトに疑問を投げかける。



「……それで、フィト。ずっと聞きそびれていたんだが、どこに行こうとしていたんだ?」



 レオンの言葉に、はっとした表情になるフィト。

 わたわたと慌てながら、支離滅裂(しりめつれつ)に話をし始める。



「大変! 行かなきゃいけないんだった! あのね、またあの声が聞こえたの!」

「あの声って、冥界の時の?」

「うん、そうなの! 宿で寝てるときにまた聞こえてね。……あ! そういえば私、昨日の記憶がないんだけど……どうしちゃったのかなぁ?」



 口元に指をあて、悩まし気に話すフィト。

 それを聞き、やっぱり覚えてなかったか、と少し悲しくなるレオン。

 同じくリオンも記憶が途中から飛んでいたようで、何も覚えていないらしい。

 それに関しては、頭を打ってでも思い出してもっと反省しろ! と、レオンは目の色を変えて弟を睨みつける。



「フィト、リオンも! お前らは、酒はほどほどにしろ! いいな!」

 少しムスッとした顔で、レオンは二人に言った。



「はいはいはぁーい」

「えぇ! どうしてー? あんなにワインおいしかったのに!」



 生返事をしたリオンに対して、駄々(だだ)をこねるフィト。

 なぜ酒をほどほどにした方がいいのか、本当にその理由が分かっていないようだ。

 まさか酒に関しての知識もないのか……? と、レオンは説教まじりにフィトに説明をしてやる。



「だーかーらー! 酒は飲みすぎると記憶と意識がブッ飛んだりするんだよ! そうなるのが嫌だったら、次から気を付けること! 以上!」



 昨日の出来事をなかったことにされたため、珍しく投げやりになる犬耳兄。

 それを聞いて、フィトはあんぐりと口を開けた。



「えっ……!? 私、昨日はたくさんお酒を飲んだから、途中で意識が飛んで記憶がないってこと!?」

「そういうこと、だねぇ」

「ほあぁ……! お酒って、そんな怖い作用があるの……!? 知らなかった……くわばら、くわばら……」



 手で両頬を覆い、ショックを受けるフィト。

 酒を飲むのも初めてな上に、やはり酒に関する知識もなかったようだ。

 レオンはやっぱりな……と、思うと同時に、俺たちは地上知らずだけど、フィトは俺たち以上に世間知らずなのかもしれないな……と、頭を抱えるのであった。



「私、何かヘンなこと、しゃべってなかったかなぁ……?」

 フィトは記憶が飛んだことに懸念を抱いているようで、もじもじとその不安を口にした。



「あ、ああ! 何も言ってなかったから大丈夫だ! てか、フィトはすぐに寝落ちたからな!」

「あれ? そうなの? それならよかった! 恥ずかしいことしゃべってたら、どうしようかと思ったぁ~」



 ホッと息をつくフィトに対し、レオンはすぐに後ろを向いて腕組みをした。

 月明かりの下でも、兄の顔に赤みが差したのをリオンは見逃さなかった。挙動不審(きょどうふしん)な分かりやすい兄に、さては何かあったな、とリオンは推測をする。

 先ほどの兄の積極性といい、いまの変な反応といい、酒の席で何があったのだろう。こんな事なら、飲みすぎるんじゃなかったなぁ~、と自分を呪うのであった。


 お互い聞きたいことがありすぎて、全然話が進まない三人。

 とりあえず、いまはそれはさて置き。先に進まなくていいのかな、とリオンは少女に声をかける。



「……フィト。さっきから話が脱線(だっせん)しすぎてるんだけどさ、どこに行くのかな?」



 リオンの言葉かけで、フィトは再び正気に戻る。

 気を取り直してフィトは、レオンとリオンにここに至るまでの経緯を話す。


 声の主に呼ばれている感覚がしてここまで来たこと。

 呼んでいる場所まではここから特定できないため、どこに行きつくのかは見当がつかないこと。

 自分を呼び寄せられるくらいの距離に声の主はいると、感覚で確信出来たこと。



「……たぶん、もうちょっとだと思うんだ。呼ばれている意識が、強くなってきてるの」

「ついに謎が解けるかもしれないんだな」

「有力な情報が掴めるといいねぇ。せっかくここまで来たんだもん!」

「うん、そうだね! きっと、何か分かるはずだよ。……そういえば、呼んでる声の主は女の子だと思うけど、どんな子なのかなぁ?」



 そんな事を考えながら三人は、夜のリリー・オブ・ザ・バレーの奥地へと進んで行く。




 ***




 だんだんと道幅が狭く、下り坂になってきた。

 微かだが、先方から水音が聞こえてくる。



「水の流れる音がするね! 近くに川とか滝があるのかなぁ?」

「わー! この水音ってそうゆうことだったのかぁー!」



 フィトの話に関心して、リオンはわくわくと腕を振って歩く。

 好奇心の強いリオンは、見たことのないものを見ることがとても楽しい様子。本来の目的を忘れはしないが、この先には何があるのかなぁ~、などと興奮して考えているのである。



「川といえば、俺たちは冥界の三途の川しか見たことがないからなぁ」

「そうだね。魔界には魔法で水をためた湖があるけど、目にしてる水辺ってこれだけだからねぇ」

「えっ!? 湖って魔法で造れちゃうものなの……!?」



 フィトは驚きのあまり目をぱちくりさせている。

 自らの手で湖を造るなど、やろうと思って出来る事ではない。魔法というのは、つくづく強力で便利な力なのだろう。

 ふたりは怪物なのだが、やっている事はまさに神業である。



「うん! 結構簡単に造れるんだよ! 土の魔法で地面を陥没(かんぼつ)させて、水の魔法で水を溜めるんだ。大規模な魔法になるから仲間をたくさん集めて、一緒に魔法を使うんだよ」

「すごいねっ!? 湖って、そんなちょいちょいっと造れちゃうものなんだ……!?」



 感心するフィトの隣で、リオンは得意げに続ける。



「他にも、樹の魔法で湖のまわりに木を生やしたり、湖に水草を生やしたりしてね。生き物なんかも放すと、本物さながらの出来になるってわけ。今ではすっかり魔界に馴染んでるよ」

「すごいすごいすごーいっ! いいなぁいいなぁ! 魔法って本当に便利だねぇー!」



 目をキラキラと輝かせながら少女はいつものごとく、魔法を放つポーズを取っている。

 いつかこの手から魔法が飛び出したりしないかなぁ、などと夢見ているフィト。

 また、そんなフィトを可愛いなぁ……と、見守る兄弟なのであった。

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