冒険者への道
「あのな。お前が、何時女と遊ぼうと勝手だが、ここ俺の仕事部屋なんだよ」
「ちがう」
「あと、その子はちょっと若すぎないか?」
「ちがうって言ってるだろ」
街についた後、俺はアデラちゃんを連れて、直ぐにギルドに来た。
ギルドマスターの部屋に来たら、もうこんな感じだ。
「で?その子は何なんだ?」
「いろいろあった。説明はめんどいからパス」
「……まったく。で?何のようだ?」
「あ~、何しに来たか忘れた」
「え?」
「ほら、そこの女の子も驚いてるぞ」
まぁ、忘れたっていうか、何も考えてなかったんだが。
ついいつもの癖でここに来てしまった。
「そうだ、アデラちゃん」
「何でしょうか?」
「アデラちゃんは、何したい」
「何を、ですか」
そう言ってアデラちゃんは考え込む。
平民として生きてくことを決めた、と言っていた。
その為には、自分の力で生きていかなければいけない。
暫くすると、アデラちゃんは顔を上げる。
どうやら自分の中で決まったようだ。
「私は、冒険者になります」
「そうか。……え?マジで?」
「私は本気です」
冒険者か、大丈夫だろうか。
俺だって、冒険者にはある程度力をつけてからなったんだ。
「そうか、分かった。なら、しばらくは俺が面倒を見よう」
「は?お前Aランクの仕事はどうするんだ?」
「そっちはほどほどにやるよ。まぁいつも通りだ」
「そういやお前は、元々最低限の仕事しかしないもんな」
元々、ダラダラするためにこの生活を手に入れたんだ。
時間なんていくらでもある。
「じゃ、そういう訳だ、アデラちゃん。明日から、俺が鍛える」
「ほ、本当にいいんですか!?」
……結構喜んでるな。
嫌がられるの覚悟で言ってみただけなんだが。
ていうか、普通嫌じゃない?
いきなり明日から鍛えてやる、とかいきなり言われたら俺はキレるぞ。
あれ?俺の意思は?ってなるし。
「えっと、俺から言い出しといてなんだが、いいのか?いきなり明日からって」
「はい!私は一向にかまいません。よろしくお願いします!」
「お前、随分いい子を拾ってきたな」
「マスターもそう思うか。俺も初めて会ったときはそんな感想を抱いたよ」
つーことは、一先ずやることは決まったな。
「じゃ、今日の内にギルドに登録してしまおう」
「はい!」
「素直な子だなぁ……シオン」
「なんだよ」
「襲うなよ」
「襲わねぇよ。面倒はごめんだね」
「まぁ、お前はそういう奴だよなぁ。ほれ、さっさと受付に行って、登録済ませてこい」
マスターにせかされて、俺はアデラちゃんの登録を行うために、受付に向かった。
今は夕方なので、受付には依頼を完了させた冒険者たちが集まっている。
「かなり込み合ってますね。どうしましょう?」
「大丈夫だ。人が居ようとと関係ない」
そう、俺は関係ない。
俺は後ろの方から受付に向かって声をかける。
「エルネ!!いるか!!俺だ!!アルシオンだ!!」
受付の奥の方まで聞こえるように大声で叫ぶ。
「あ、あの、アルシオン様?」
「シオンでいい」
「えっと、シオン様?」
「……まぁいいか。なんだ?」
「その、並ばなくていいのでしょうか?」
「まぁここで待ってればわかる」
俺はアデラちゃんにそう言って、受付から少し離れたところで待つ。
すると、さほど待つことなく受付カウンターの端に、一人の受付嬢が出てきた。
「ここで対応するから、こっちに来て頂戴」
そう言ってその受付嬢は俺たちに手招きをする。
俺はアデラちゃんちゃんをつれてそこに向かう。
「ようエルネ。三日ぶりか?」
「二日ぶりよ。あなた今仕事受けてないでしょ?この時間から受けるの?」
「そんなわけないだろ?仕事なんてこの間悪魔退治をやったばっかりじゃないか。俺は当分働かないね」
「でしょうね、だから驚いてるのよ。なにか用があるんでしょ?まさか夕食のお誘いかしら?」
「自惚れんな」
「ヒドイわね!ま、違うってのは分かってたけど」
「この嬢ちゃんを登録してほしい」
俺がそう言うと、エルネはアデラちゃんをじっと見つめる。
「……あなた、年下趣味だったのね」
「ちがう、そうじゃない。何時までかはわからんが、しばらくは俺が面倒を見る事になった」
「うそでしょ?」
「嘘じゃない」
エルネの顔は、あり得ない……といった顔になっている。
そこまで変かね?
「ていうか、私はあなたの専属の受付なのよ?その子の対応をなぜ私がしなきゃいけないの?」
「パーティ申請するからだよ」
「っ!本気なの?」
「あぁ。その方がいろいろと楽なんだよ」
「まぁ……その通りね」
「じゃあ頼めるか?」
「わかったわよ。ほら、お嬢ちゃんこっちにいらっしゃい?」
そう言ってアデラちゃんをカウンターに呼んで、手続きをする。
「それじゃあ、登録費に大銅貨三枚を貰うわ」
「俺のとこから引いといてくれ」
「あなたの貯金から?」
「あの、シオン様、そこまでしていただかなくても……」
「金もってんのか?」
「うっ、持ってないです」
「だろ?いいから俺の貯金から引いといてくれ」
「わかったわ。それじゃあ登録完了よ。これがあなたのギルドカードになるわ。説明はいるかしら?」
「俺がしておくよ」
「そう、わかったわ。それじゃあ、これであなたは冒険者の仲間入りよ。今回はシオンがいたから私が対応したけど、本来、私はシオンしか対応しないから、あなたが私を呼んでも出てこないからね?」
「は、はい。あの、専属ってなんですか?」
「専属っていうのは、Aランク以上の冒険者のみができるギルドの有料サービスよ。冒険者が一人の受付嬢を指名して、自分の専属に出来るの。まぁ、受付嬢の方も、それに合意しなきゃ出来ないんだけどね。これをやっていると、今みたいに混んでいる時間でも、こうして待たずに対応してもらえるわ」
「そうだったんですね。わざわざありがとうございます!」
しっかりと対応してくれたエルネにたいしてアデラちゃんは笑顔でお礼を言う。
「ねぇ、シオン」
「なんだ?」
「この子すごくいい子ね」
「マスターも言ってたよ」
やっぱみんな同じこと思うんだなぁ。
「それじゃ、ありがとよ」
「お礼なんていいわよ。あなたの専属だもの」
「いつもすまんな」
「お礼なんていいって言ってるでしょ?でも、どうしてもおれいがしたいっていうんなら、夕食のお誘いくらいはしてほしいわね」
「ハハ、そのうちな」
「あら、期待しちゃうわよ?」
「ま、近いうちにな。それじゃ」
「えぇ、またね」
これでギルドでやることは終わったので、俺たちはギルドをでた。
そこで、俺はあることを思い出す。
「アデラちゃん」
「はい、なんですか?」
「俺は宿とってるけど、アデラちゃんはどうするの?」
「あっ……」
考えていなかったようだ。
まぁ、いままで思いつかなかった俺も悪いか。
しかし困ったなぁ。
「冒険者は基本的に宿暮らしだし、この時間からだと部屋をとるのは難しいかもなぁ」
「そんなぁ……」
「とりあえず、俺が泊まっている宿で、部屋が空いてないか聞いてみようか」
「は、はい」
そうして着いたのは、ちょっといいとこの宿である。
部屋もきれいだし、そこそこ広いから伸び伸びくつろげるから、俺が気に入ってる宿である。
「女将さん、部屋空いてる?」
「あれ、シオン君はもう部屋があるだろう?」
「俺じゃなくて、こっちね」
そう言って俺はアデラちゃんをみる。
「んー、残念だけど、部屋は開いてないよ。この時間はどこも開いてないんじゃないかね?」
「あ~やっぱり?」
「しかし、その子はどうしたんだい?」
「俺が暫く面倒を見る事になった」
「そりゃあホントかい?人付き合いが苦手なシオン君が、女の子の面倒を見るなんて」
「苦手なわけじゃないぞ?めんどくさいから、多くの人と深く関わらないようにしているだけだ」
「どっちも似たようなもんさ。……あぁ!そうだ!その子、ここに泊まれるかもしれないよ」
「え?マジで?どうやって。さっき部屋が空いてないって言ってたじゃないか」
「あんたの部屋に泊めてやんなよ。うちの宿は、料金は部屋で決まってるから、泊まる人数が増えても料金は変わらないしね」
「え?いや、それじゃ……」
アデラちゃんが嫌だろ、と言おうとしたが。
「それでお願いします!」
と、アデラちゃんに力ずよく言われてしまった。
女将さんも女将さんで勝手に了承しちゃうし……大丈夫かな。