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白撃の銃使い~天を穿つ者~  作者:
第一章 物語の始まり
9/18

8話 それぞれの夜

 自室。

 窓辺に立ち月を見上げる。

 昨夜のミノタウロスとの戦い。

 そして今日、父との手合わせ。

 

 どちらもエリルを驚かせるに足る出来事だった。

 

 ユキ・クモトリ。


 彼はいったい何者なのだろう。

 

 分かっていることはこの世界のことをほとんど何も知らないということ。


 魔法が使えないということ。


 そして、とてつもないポテンシャルを秘めているということだ。


 ただ揺るがないことが一つ。彼は私の命の恩人であるということ。


 この出会いはきっとかけがえのないものになる。

 

 さて、と。


 机に向かう。魔法学校は現在長期休暇期間だがそれも明後日まで。

 明日は生徒会役員の集まりがあるため午前中から登校しなければならない。


 そのことを伝えるとユキは「じゃぁ、ちょっと街に行こうかなぁ」と言っていた。


 冒険者ギルドに興味があるとのこと。


 今日、この世界のことをいくつか話した。あまり詳細に話しすぎても整理が

付かないと思いざっくりとしか説明していない。それでも彼が何に関心を持ったか

は分かる。

 

 4大不可思議。


 制覇すればあらゆる願いが叶うという古来からの言い伝え。


 その話をしているとき、彼はやや前傾姿勢になり、目に真剣さが宿った。

 もちろんほかの話をしているときも真剣には聞いてくれていたが一層強く、

聞き逃すまいという姿勢で話を聞いていた。


 何か叶えたい願いがあるのだろうか。どんな願いだろう。


 聞きたくなったが、やめた。私と彼はまだ出会ってほんの二日しか経っていない。


 それでも、私は彼に信頼を寄せている。それは過ごした二日間が濃密だったから

だろう。


 恐らく彼はそう遠くないうちに冒険へと出かけていくだろう。そんな気がする。


 その時私はどうするだろう。


 眠気が襲ってきた。


 そろそろ寝よう。


 きっと、どうにかなる。そんな気がする。明日からまた忙しくなるなぁ。


 でも、悪くない。出来ることは全部やりたい。彼に近づくために。


 今まで以上のやる気を秘め、エリルは床に就いた。




 普段は来客用に使用されている部屋をあてがってもらった俺はベッドに横になっている。


 ふかふかのベッドだ。すぐにでも寝れそうだな。


 さて、とりあえず明日は冒険者ギルドへ行ってみようと思っている。


 一番興味を惹かれたから。


 それに冒険者ギルドではクエストと呼ばれる依頼を受け、それを達成することで報酬を得る

ことができる。


 まずはエリルから借りているお金20,000ゴールドを返すとして、それを返し終われば

いくらか稼いで身支度を整えたい。


 すんなりいけばいいが、どうだろう。とりあえずあんまり目立ちたくないな。目立っても

いいことなさそうだし。


 当分の目標はお金を稼ぐことだ。まずはこの世界で自分がどうやって生きていくかを考える。


 この世界に来て2日。悪い世界じゃない。むしろ、俺は地球にいたころよりもワクワク、いや

生き生きしている。


 自分らしく生きる。一生懸命生きる。


 うん、そうだな。


 手を天井へと向ける。


 まだ何もこの手は掴んでいない。俺でも何か、掴めるかな。

 何かになれるのかな。


 何者でもない。だからこそ何かになろうと努力できる。


 地球に帰りたくないわけではない。


 だけど、少し回り道したっていいよな。


 地球にいたころ、俺はどれだけ本気で生きていただろう。


 毎日学校に通って、勉強して。それは何か目標があったか。あった。大学に通うためだ。


 じゃぁそのあとはどうだろう。思い浮かばない。そりゃそうだ。大学に通っているうちに

何かやりたいことが見つかるだろう、と考えていたから。


 結局流れに身を任せて、なるがままに生きていただけだったんだな、俺は。


 そんな生き方を変えるチャンスを与えられた。そう考えよう。


 広げていた手のひらをぐっと握りしめる。


 決めた。


 俺はまずこの世界を全力で生き抜く。


 自分の信じることをやる。


 誰にも流されない。何にも屈しない。


 自分が進む道は自分で決める。自分の足でその道を歩く。その先に何があるのか、まだ分からない。


 分からないからこそ知りたい。


 とりあえずこの世界を自分の目で見て回りたい。


 そのためにはやっぱり冒険者になるのが手っ取り早そうだ。


 さて、と。そろそろ寝よう。この二日間体を動かしすぎて眠い……。


 月が静かに世界を照らしている。


 少しずつ、世界が動き出そうとしている。

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