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白撃の銃使い~天を穿つ者~  作者:
第一章 物語の始まり
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5話 選ばれし者

                                        ☆

「驚いた……、本当に使いこなせる者がいるなんて……」


 店主が地下に降りてきて粉々に散った的と『天』『地』を握る俺を交互に見てつぶやく。


 『天』『地』初めて握ったばかりなのにしっかりと手に馴染む。


 『天』『地』は暴発しなかった。魔力を全く持たない俺が使用したから。

 どうやらこの銃にはいくつもの魔法が付与されている。

 今分かっているものは3つ。

 まず硬度強化魔法。次に衝撃緩和魔法。最後に風魔法。


 衝撃緩和魔法は弾が放出されたとき腕に来る反動がなかったことで分かった。

 風魔法はトリガーを引いた際に発動した。エリル曰く放出系の風魔法で銃口に込めた

弾を放つためのもの、とのこと。どの魔銃にもこの風魔法は付与されているらしい。

 

「ユキ様には本当に驚かさればかりです!!!」


 興奮気味に話すエリル。俺もちょっとテンション上がってるんだけどひとつ心配事があった。

それを口にする。


「あの、この銃、値段はどのくらいでしょうか?」


 すっげぇ高かったらどうしよう。せっかく使えたのに勿体ない気がする。


「お代は結構ですよ」


 手を顔の前で左右へ振りながら店主が答えた。


「使い手がいなくてね、ずっとうちの店の奥にしまい込まれていたものですから。

 呪われた魔銃。何人もの銃使いの命を奪ってきたものですが、それだってこの銃が望んだ

ことではなかったはずです、結果そうなってしまっただけでね。この銃が願っていたことは

ただ一つです」


 本当の使い手が現れることをね。


 店主はそう言って、腰に装着するホルスターは店頭に置いてあるので上へあがりましょうと

言って戻っていった。俺とエリルもそのあとに続いた。


 ホルスターもタダで構わない、と店主は言ったがそれはさすがに悪い、ということで

ホルスターは購入した。(エリルが払った。形式上は立て替えて払ってもらっていることになる)


 ホルスターを腰に装着し、左右に『天』『地』を収める。


 うん、かっこいい。


 礼を言って武器屋を後にした。



「ようやく使い手が見つかったな」


 店主は出て行った2人の背中を1人見送ったあと、隅の椅子に腰かけてぼろぼろの書物を捲っていた。


 我が家に伝わる一冊の本。かつて最高の魔銃職人と言われた『キーラ・ナイトレーザー』が記した

ものだ。彼女は生涯結婚しなかったため子を産まなかった。そのためこの書物は彼女の姉が、子に、

その子がまた子にと代々受け継いでいったものである。その書物の最後にこうある。


『この銃に私の全てを込めた。いつか、黒い髪に黒い瞳の男が訪れるであろう。この銃はその男に渡す

こと。お代は前払いでもらっている」


 と。キーラ・ナイトレーザーが生きた時代は今からもう500年も前だ。

 彼女は何を思いこの銃を作ったのか、それは今となっては分からない。しかし、何かがあったのだ。

 そしてその銃は今、ようやく巣立っていった。ずっと待ち望んだ使い手を見つけて。


 銃に選ばれし者。これから先、どんな物語を紡いでいくのか。今から楽しみでならないな。

 

 こんにちは、と新たな客が訪れたので気持ちを切り替えて店主は接客を始めるのだった。



 次は服を見に行くことになった。


 武器代が浮いたのはかなりラッキーだった。


 そして先ほどから隣を歩くエリルがご機嫌である。


「ユキ様は何色が好きですか?」


 歩きながら聞かれた。好きな色、か。


「緑かな。目に良いし」


「緑は、ちょっと微妙ですね……」


 俺の全身を眺めるようにしてエリルがつぶやく。服の色を考えているようだ。


 緑以外かぁ。


「よく来ていたのは、青とかグレーかな」


「青とグレーですね。白も似合いそうですね!」


 白か。ちょっと目立つ気がするけど、周りを歩く人の格好を見ると、色くらいじゃそんなに

目立たない気がする。というのも、本当にいろんな格好をしている者がいるのだ。

 自分の背よりも長い剣を背に担いでいるもの、真っ赤なコートを翻して歩く者、白銀の鎧に

身を包むもの。多種多様という言葉がこうも似あう様相はそうそうないと思う。


 みんながみんな自分の好きな格好をしているような印象を受ける。ファッションの流行など

どこ吹く風、って感じだ。


「白か、確かに白も悪くないかもなぁ」


 白。普段なら汚れが目立って嫌だぁ、と思う。しかし白は何色にでもなれる。

 この世界で何者でもない俺。どことなく親近感を抱く色だ。


「つきましたよ!」


 とエリルが店を指し示す。広々とした店内。結構人が入っている。繁盛しているようだ。


 エリルが次々と見て回る。ついていく俺。


 エリルが気を止めたのは白いコートだった。


「これなんかどうでしょうか?自動で体温を調整してくれて、多少の汚れもつかない。そして上級の

耐魔防御魔法が付与されています!」


 なんかすごくいいコートみたいだ。


 試着させてもらう。うん、いい感じ、かな。エリルが似合ってます、とすごいほめてくれる。悪い気

はしない。


「こちらにしましょう!」


 というエリルの一声で購入決定。この白いコートはエリルからのプレゼントということになった。

 悪いよ、と言ったがこのくらいのプレゼントはさせてください、ミノタウロスのお礼ですから、と

頑なに言われたのでお礼を言ってありがたくいただくことにした。


 ホルスターとインナー数着。しめて20,000ゴールド。


 どのくらいの価値なのか全くわからないが、この金額はちゃんと返そう。


 昼食を済ませて目的を終えた俺とエリルはリピローグ家へと帰宅した。

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