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白撃の銃使い~天を穿つ者~  作者:
第一章 物語の始まり
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4話 呪われし武器

                                        

 昨日も乗せてもらった馬車で街へと向かった。

 俺の洋服はせっかく洗ってもらったはいいものやはり着られる状態ではなかった。

 裾から膝にかけてびりびりに破けていたり、左ひじの部分が擦り切れていたりしていた

ためだ。服が破れていた箇所は当然怪我していた。俺、生きてきてこんなに怪我したの

初めて。今までで一番痛かったのって、虫歯を治療した時とかだからな。ほんと、貴重な

経験できてるな……。しばらく痛いのはごめんだ。


 馬車の中ではエリルにこの世界に関する知識を教えてもらっていた。

 まず一番衝撃的だったこと。

 

 俺、この世界の文字読めない。

 まったく読めない。本当にわからない。ならなぜ会話できるの?って感じだけど、

出来ないよりは出来るほうが良いのだからそこに不満不平を言うのはやめておく。


 会話は出来ているからそれを言葉に当てはめていくだけなので、多少は楽だとは思う

けど。文字の習得は今日からでもやるべきだろう。


 次に学校。まず前提としてこの世界には『魔法』がある。魔法に秀でた才能を持つ者は

魔法使いとしてその腕を磨いていく。具体的に魔法使いになるための資格があるわけでは

ないらしい。魔法の才能は遺伝によるところが大きい。もしかして俺も魔法使えたりする

のかな。後で試してみたい。(家に帰れば魔力を図れる器具があるらしい)

 話を戻して学校はいくつか種類があるらしい。大きく大別するとふたつ。魔法を鍛える

学校とそれ以外。基本的にこの世界、戦いでは魔法を用いて戦うらしい。剣士であっても

剣に魔法を付与したりだとか。魔法を使って戦うものを総称して魔法使いと呼ぶ。その中

で遠距離から攻撃する魔法を得意とする者や、接近戦を得意とする者に細分化していく、

という感じ。魔法以外の学校というと商人の子供などが一般常識を身に着けるために通う

学校があるそうだ。

  

 エリルパパが学校通ってもいいよ、的なことを言ってくれていたし、もし本当にその

言葉に甘えてもいいのなら、学校通いたいな。この世界の一般常識だとか、同い年くらい

の奴らが何を考えて生活しているかとか、知るべきことはたくさんありそうな気がする。                          

                                      

 そして街に到着。時刻はもうあと一時間したらお昼ごはんが食べたくなるくらい。


 結構大きな門があり、その脇に2人の鎧を着た大男が立っている。脇には宿舎のような

建物も見える。


 見ていると御者を務めてくれているエリルの家の執事が紙を大男の1人に見せた。

 それを確認すると門を開けてくれる。通行証ってやつか。誰でもいつでもウェルカム

というわけには行かない、ってことか。


 街に入るとまず大きな通りが目に入った。その通りを行き交う人の数がまた、多い。

 田舎出身の俺にとっては見慣れない光景である。中世ヨーロッパの都会って感じ

かな。鎧を着た人、旅人風の軽装の人とか様々。そして何より驚いたのは人間とは異なる

風体をした者も結構な数歩いていること。耳がとがっていたり、肌が青かったり、頭から

耳(猫かな)が生えていたりと、本当に様々な者がいる。

 ああ、俺、異世界に来たんだな、と改めて実感した。


 街中は徒歩オンリーということで馬車から降りてエリルと2人で街をぶらつくことに

なった。


 とりあえず武器屋がここから一番近い、ということでまず武器屋へ行くことになった。

 あんまりじろじろ見るのは失礼だな、と思い前を見るかエリルを見るかをしていたが、

やっぱり周りが気になってしまう。許して。俺日本から来たから。見慣れない光景に少し

心が騒いでいるんだ。


 目的の武器やへ到着した。ううぅん、なんというかすっごい、いいお店。

 並んでいる武器も、なんかこう、高そう。値札見るとすごい桁多い。この世界のお金

の価値をまだ把握していないけどたぶん、めちゃ高い。


「ようこそ、エリル様。本日はどのような御用でしょうか?」


 店主がエリルの元へ近寄ってくる。エリルはこの店の常連みたいだな。そして店主が

エリルの後ろにいた俺を見つけ、そして目を見開いた。


「!?あ、い、らっしゃいませ」


 何もしてないよ、俺。ただぼーっと武器を見てただけ。それなのになぜそんなに驚く。

 ああ、もしかして髪かな。エリルの話だとこの世界で髪が黒いというのは珍しいらしい。

 というかエリルは初めて見たそうだ。


 俺からすると水色の髪とかそっちのほうが珍しいんだけどさ。


 どうも、と店主に返事を返しておく。


「今日はこの方の武器を見繕ってほしいのです。あと、私のこれ、修理できますか?」


 ここに来た目的は俺の武器と、エリルの護身用の銃の修理。馬車の中でエリルのぼろぼろ

になった銃を見て謝り倒したら「いいですよ、気にしないでください」と笑顔で返されたものの

あれ、修理できるのかな、と不安に思った。


「ああぁ、これは修理は難しいですね。不可能ではないですが新しく作り直したほうが

良いかと」


 店主が手渡された銃をいろんな角度から見て言った。グリップしか残ってないもんな。


「そうですか、では発注をお願いします」


「わかりました。オーダーメイドになりますのでお時間をいただきますよ。しかしどう

やったらこんなになるでしょう。硬度強化の魔法を付与しているんですが」


 不思議そうにグリップだけとなった銃を見ながら店主はそれを脇に置いてあった机の上に

置いた。


「さて、ではそちらの方はどのような武器をお探しでしょう?」


 店主が俺のほうを向いてにこやかに話しかけてきた。しかし心なしかその表情は緊張の色を

帯びているように感じる。


「銃を探しています」


「銃ですね、何か希望はありますか?」


 希望、か。さっき硬度強化の魔法、とか言っていたし使い手によってオプション的なものを

選んだりするのだろうがそういうのはとりあえず置いておこう。よくわからんし。


「頑丈な銃、ですかね」


 俺がそういうとエリルが補完するように続けた。


「この店で一番頑丈な銃を持ってきてください。値段の上限はありません」


 えええええ。いや、すっごいうれしいけど、値段の上限ないって、すっごく高い銃が出てきたら

どうすんだよ。エリルの家はお金持ちっぽいけど今の俺、文無し……。返すのにどのくらいかかる

かなぁ。


 と、考えていたところで店主が気まずそうな顔をしていることに気付いた。


「どうかしたのですか?」


 俺が聞くより先にエリルが聞いてくれた。


「この店で、一番頑丈な銃、というとですね、ご存じかと思いますが『天』『地』になります」


 テンチ?ランチみたいだな。


 くだらないことを考えているとエリルがえ!?っと驚きの表情を上げる。会話についていけてない

俺。そのテンチの説明をエリルに求める。


「『天』『地』。魔銃職人、キーラ・ナイトレーザーが最後に作ったとされる二丁拳銃です。彼女は

当代一の魔銃職人と称えられた凄腕でした。作った魔銃の多くが非常に強力な性能を有していたのです。

その彼女が最後に作ったとされるのが『天』『地』です。彼女はこの銃に対して『魂を込めた』と完成後

言葉を発したそうです。当然、多くの銃使いが『天』『地』を扱おうとしたのですが……」


 そこで言葉を切ったエリルの続きを店主が口にする。


「呪われていたんですよ、その魔銃は。銃に込めた魔力を弾として打ち出すのが魔銃だ。それなのに

魔力を銃に込めた途端に暴発してしまう。それどころか魔力を持つ者が握っただけで

拒絶反応のように電流が迸るのです。そして手にした者全てが命を落とすか、大怪我をするかの

どちらか。それ故にいつしか呪われた魔銃と言われるようになった、とされています」


「あまりにも多くの銃を作りすぎ、気が狂ってしまったのではないか、と当時の人々には言われた

そうです」


 なるほど。


「銃としての性能は優れているということですか?」


 一番頑丈な銃として名前を挙げたからには物そのもの優れているはずだ。

                                        

「ええ。キーラは付与魔法に非常に秀でており、『天』『地』には鳳級の硬度強化魔法

が付与されています。まずもってこの銃が壊れることはない、でしょう。まぁ、この銃が

戦闘で使われたことがないので真偽を確かめることはできませんがね」


 うーむ、聞けば聞くほど不思議な銃だ。しかしとても興味がある。


「その銃、見せてもらうことはできませんか?」


 俺がそういうと、店主は奥へと銃を取りに行った。危ない銃だから普段店頭には並べて

いないのだろうか。


「エリル、魔力があるかどうかって何か道具がないと分からないのか?」


 実はずっと気になっていたことを質問した。


「魔力の有無だけでしたら道具がなくてもわかりますよ。道具を使うことで得意属性が何か、

どれくらいの魔力を保有しているのかが分かります。逆に言えば属性は分からないまでも

だいたいの魔力量くらいであれば熟練の魔法使いであれば相対しただけで推し量れるそう

です」


「エリルはどう?魔力を感じ取れるか?」


 少し考え込むエリル。


「体に触れれば、魔力がどのくらいかかなり抽象的にであれば分かります。ですが得意属性

までは分からないです」


 よし、それなら。


「俺に魔力があるか確かめてくれないか」


「え!?それはかまいませんが、魔力は誰にでも宿っているものですよ。量に差はありますが」


 そういってエリルは俺の右手を軽く握った。


「?」


 そして首をかしげる。ついでに左手も添えて俺の右手を包み込む。


「……。魔力を探知されないよう押し隠しているのですか?」


 エリルが真剣なまなざしで俺を見つめてくる。身長差のせいで上目遣いとなっている。

 かわいい。


 そして今一つ判明した。俺に魔力がないということが。


 ……。いや、なんとなく予想はしていたことだよ。地球に居たころ魔力のまの字も

聞かなかったからね。


 そうか、魔力なかったかぁ。俺、魔法使えないのかぁ。


 エリルに隠したりしてないよ、と告げる。


「そんな……。魔力がない者など聞いたことがないです。生まれながらに誰しもが持って

生まれるものなのですが……。それではミノタウロスを倒したあの技は魔法ではないと

いうことですか?」


 魔法じゃない、ってことになるな。もしかしたら魔法というものが日常になかったから

そう認識してなかっただけで俺の≪力≫は実は魔法の一種なのでは?とも思ったがやっぱ

違った。超能力的な位置づけになるのかな。よくわからん。


 そうこうしているうちに店主が店の奥から箱を抱えるようにして持ってきた。

 ものすごく慎重に。


 そして台の上に箱を乗せ蓋をそっと開けた。


「これが『天』『地』だよ」


 箱の中を覗き込む。そこには二丁の拳銃があった。やや銃身が長い黒色のハンドガン。


 エアガンしか実際に見たことないけど、エアガンとは比べ物にならないほどの存在感

がある、気がする。


「これが『天』『地』……」


 隣でエリルがごくりと喉を鳴らす。


 数多の命を奪ってきた呪われし魔銃。


 魔銃なのに魔力に反応すると暴発する。

 

 魔力がない俺。


 理論だけで言えば、この銃、使えそうな気がする……。


「触ってもいいですか?」


 店主に言うと、それなら地下に試し斬りや試し撃ちのスペースがあるからそっちでしてくれ!

 防御結界が張ってあるらしいので試し撃ちもしていい、と言われた。


「エリルは念のため上で待っててくれないか?」


「いいえ。私も一緒に行かせてください。お願いします」


 うーん。たぶん、暴発することはないはずだが、もしもってことがあるし。でもエリルの瞳には

強い意志が感じられる。


「わかった。けど危なそうだったらすぐ逃げてくれよ」


「はい!」


 箱ごと抱えて俺とエリルは地下へと移動した。


 さて、と。


 箱をそっと地面に置く。膝をつき銃へと手を伸ばす。エリルはじっとその様子を見守っている。

 

 大丈夫。きっと俺ならこの銃を使いこなせる。なぜだかそんな気がした。


 グリップに『天』と刻まれた銃を右手で触れる。


 何も起きない。よし。グリップを握るようにして箱から取り出す。


 続いて左手で『地』も握り、箱から取り出した。


 ぐっとグリップを力を込めて握る。


「何も……起きない……!!」


 エリルが驚きの表情を見せる。


 さて、試し撃ちしていい、ってことだし遠慮なくやらせてもらうか。


 見ると的が反対側の壁際に用意されている。あの的には硬度強化魔法がかけられているらしい。

 

 頑丈な的、ということだ。


 『天』『地』を上下に並べるようにして掲げる。


 銃口に空気を圧縮する。この地下空間全体が結界魔法で守られているらしいが念のため3割程度の

力で空気弾を作った。


「撃つよ、エリル」


 はい、と返事をしたエリルは俺から2,3m下がったあたりで待機している。


 トリガーを引く。バンと、空気が弾かれる音がする。しかし腕に伝わる衝撃はほとんどなかった。


 そして次の瞬間、的に空気弾が当たり、そして的が弾けた。


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