出会い
さて、新しくまったく見知らぬ世界で赤ん坊として二度目の生を始めた俺だが16歳になるまでこの新しい世界で生きてきて色々とわかったことがあった。
まず、この世界は「マージナル」という魔法の世界であること。
第二に「マージナル」では16歳を迎えると同時に男女関係なく種族間の戦争に参加しなければならないこと。
第三にこの世界の住人は必ず五属性の光・闇・火・水・風のいずれかの魔法の才能を持っていること。
最後に種族間の戦争でのダメージが原因での死は、存在しないということ。
これらのことは、物心ついたときに親から教師から教えられるこの世界の常識らしい。
そして、魔法の属性は魔法学校という戦闘・教鞭の施設に入る際にそれぞれが検査を受けて教えられる。
俺自身今年16歳になったのだから当然魔法学校に通い始め戦争にも参加しなければいけない。
じゃあ、今俺は何をしているのか?
それはだな魔法学校の入学式(魔法適正検査)が今日あるのだが…
「絶賛遅刻まっしぐらじゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
そう長々と俺は、これまでの説明をしていた。そのおかげで起きた時には検査開始時刻の
30分前家から学校までが徒歩30分。まぁ、ぎりぎりだよね走れば。
「てか、まじでぎりぎりすぎ!なんで母さんは起こしてくれなかったんだよ。」
そんなことを叫びながら走っていると左の曲がり角から何かが飛び出してきて見事にぶつかった。
「痛ってーな、なんだよ人が急いでるときに限ってぶつかってきやがって。」
と、何かがぶつかってきたほうを向くと1人の女の子が横たわっていた。
「イタタタ…あぅ、なんですか今の絶対頭割れましたよぅ~。割れてないよね。割れてないよね。」
と、言いながら頭をさすっていた。
その女の子は、こちらに気づくと立ち上がり近づいてきた。
「えと、あなたですか?私とぶつかったのは、そちらは大丈夫でしたか。」
「あぁ、俺のほうは問題ないがあんたのほうは大丈夫なのか。頭をさすっていたが。」
俺は、相手が女の子だと気づくと先ほどまでの怒りも冷めていた。
「私のほうは、頭が割れていなかったから大丈夫ですね。あぁ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は、ミシィといいます。」
「あぁ、よろしくミシィ。俺は、ジルだ。」
そう、俺の名前はジルだ。
前世のことは、なぜか思い出すことができず新しい親からもらった名前がジルだ。
「あぁ、適正検査まで後10分だ。急がないと。」
俺は、たまたま視界に入った空中に浮いている時刻盤を見て、学校に向かっていることを
思い出した。
「へぇ、ジルさんも適性検査だったんですか。奇遇です、私もちょうど学校に向かうところだったんです。」
よく見ると確かに魔法学校の制服を着ていた。
「それなら急ごう。今からなら何とか間に合いそうだから。」
「はい。」
そういって、急いだ結果奇跡的に間に合うわけもなく遅刻して校門に立っていた先生に叱られた二人だった。
「それでは、適性検査を始めます。それぞれ一列に並んでくださーい。」
受付の女性が顔を真っ赤にしながら新入生たちを整列させていた。
新入生の数は、今年も多く300人を超えていた。そのために俺たちの順番が回ってくるまで退屈だったため待っている間ミシィと話していた。
すると、驚くことにミシィと俺は同じ村出身だったのだ。
そのおかげか、ミシィと俺はお互いのことについての話に夢中になり気づくと検査の順番が回ってきていた。
検査の仕方は、仮設テントの中に入り中央に設置されている水晶に触れるという簡単なものでそこまで時間のかからないものだった。そして、テントから出たところにいる教員から魔法の属性とクラスが記入された紙を受け取る。
そのはずだったのだが、俺はなぜか紙を渡されることなくその場で待つように言われた。
「一体なんなんだ?」
そう呟きながら待っているとテントの中から出てきた教員の1人が俺のほうに近づいてきて一枚の紙を渡した。
「この中には、あなたがこれから授業を受けるクラスが書かれています。ですが、属性は書かれていません。あなたの検査結果は、どの属性にも適性がないというものでした。」
そう言われ手渡された紙を確認したがそこには、「魔法属性適正なし・Cクラス」とだけ書かれていた。
「そ…そんな。じゃあ俺は、どうやって戦えばいいんですか。属性適正もないのにどうやって…。」
俺は、ショックのあまりその場に崩れ、薄れゆく意識の中で
「この学院では、基礎戦闘の授業も行われています。頑張っていきましょう。ジルさん?大丈夫ですか。」
という声を聞いた。