第五魂 兄妹喧嘩
6月6日 am.7:20
そして、遂にやって来たのだ・・・『聖魔降臨戦』の日が・・・
その日の神や天使や英霊達は朝から物凄くぴりぴりしていた。
そりゃあ、世界の運命を掛けた戦いだから仕方ない。
でもなぁ〜、そんなぴりぴりしてても意味無いと思うんだけど?
もうちょっと気楽に行こうぜ。
ちなみに俺は何をしてるかと言うと、閻魔、アヌビス、ヤハウェ、ゼウス、オーディン、ダグダの最高権力者達と本日の作戦について話合っている。
今年は、ダグダを除く最高権力者と俺とアーサー王の計7人で挑むらしい。
閻魔達曰く、数が多いからと言って良いわけではないらしい。サタンは広範囲攻撃を得意としているらしく、数多くで押し掛けると、被害が大きくなる一方らしい。
つまり、少数精鋭らしいのだが・・・何故にアーサー王?
あいつが精鋭なら、天界の3分の1は精鋭になるぞ。
ポジションは、俺が睡蓮の守護で、アーサー王の宝具『捜し求めた理想郷』でサタン及び近辺の敵を固有結界に閉じ込め、そこで、最高権力者達が叩いて封印するそうだ。
アーサー王を連れて行く理由はこれか・・・まぁ、戦闘の方は微妙だしな。
聖魔降臨戦は空に紅い満月が浮かんだら開始の合図らしい。
開始と同時に、ヘイムダルの神器『宣戦布告』が鳴り響き、それと同時に出撃らしい。
何故、ギャラルホンを鳴らすのかと聞いてみると、ゼウスに「願掛けだ。」と返された・・・
願掛けって・・・だから神様はあんた等でしょうが!!
am.11:20
御昼が近付き今日の昼御飯は何だろうな〜と考えていると、天界に巫女やシスターや変な服《カーニバルで着るようなアレ》を着た方々が・・・天界に酒や食い物を持ってやって来たんですけど・・・
「閻魔、アレは何だ?」
「そうか、裕也殿は知らんのか。アレはな、今日は聖魔降臨戦だから、現界の人間が神々に今日は宜しくお願いします。という感謝の気持ちとして、神々に供物を持って来てくれるんじゃよ。」
「へぇ〜・・・じゃあ何で、生きた人間がこっちに来れるの?」
「今日は特別に一定以上の霊力を持つ者にはこっちに来れる様にしてるのじゃ。」
へぇ〜・・・じゃあ、睡蓮もこっちに来れるのか・・・む、こっちに連れて来た方が安全なのでは?
「睡蓮をこっちに連れて来た方が、安全なのでは?」
「残念ながら魅女は無理なんじゃよ。霊力が高いからって事で来れるかもしれんと思い、過去に一度試したが・・・結界に阻まれてな。」
ダメか・・・
「まぁ、そう落ち込むな。お前の妹は絶対我々とお前で守ろう。そして、お前は妹の守護霊になるんじゃろ。」
「そうだな。あ〜腹減った。早く行こうぜ、閻魔“様”。」
「そうじゃな。」
俺達が食卓に着くと、目の前には新鮮な魚介類に高そうな日本酒と翠屋と書かれたケーキの箱。
うおおおおおおお!!翠屋のケーキだ!!俺んち、九州だから遠すぎて買えに行けず、いつも食べたいな〜と思ってた翠屋のケーキが!!
「おやおや、八束神社の者が翠屋のケーキを持ってきてくれてるようじゃな。去年の盆と正月にも供物として持ってきてくれての〜。これがまたとても美味での〜・・・取り合いに成るから先に欲しいのだけキープしておけ。」
「俺も、滅茶苦茶好きです!!特にティラミスが!!」
「ワシは、抹茶のろ〜るけ〜きとやらが好きじゃ。」
そう言えば、神様によって目の前に並んでる料理が違うんだけど・・・信仰上の問題か?
でも、仏教って・・・酒禁止だよな・・・滅茶苦茶、供物の酒が多いんですけど!!ま、いっか。俺も今日は飲もっと♪
俺が日本酒《和紙に包まれた高そうな物》を取ろうとすると、閻魔様が「御酒は20歳からじゃ。」と言って酒を俺から遠ざける。
「けち。」
「ケチで結構じゃ。その代わり、ワシも今日は飲まん。」
閻魔様って意外と律儀だな。
「閻魔大王様尋ねて宜しいでしょうか・・・何故、神でも英霊でも天使でもない者がここに居られるのでしょうか?」
巫女さんが、俺が居る事が不思議なのか閻魔様に尋ねる。
「裕也殿は、確かに只の霊だが戦闘能力だけは、神クラスだから本作戦を手伝って貰う事にしたんじゃよ。」
「そうですか・・・」
でも、目はあまり納得していない・・・俺を品定めするかのようにじっと見ている。
そして、何かに納得した後、「そういう事ですか・・・がんばりなさい。」とエールを送り何所かに行ってしまう。
一体何なんだ・・・
「八束殿と会ったことがあるのか、裕也殿?」
「いや、全然。って言うか、あの人達ってやっぱり神様とか見えるんだ。」
「そうじゃよ。霊能力が高ければ基本誰でも見えるぞ。じゃが、神様クラスを見る事を出きるのは相当の霊能力が居るぞ。」
「へぇ〜。」
「魅女になると、我々の上の存在まで見る事が出きるぞ。魅女はサタンの最盛期とほぼ等しい魔力量じゃからな。」
へぇ〜・・・つまり、睡蓮は物凄い魔力を持ってるんだ・・・?つまり、神が見えるのか?
「閻魔様。俺みたいな低級霊を見るのに・・・どれくらいの魔力量が有れば見れるんだ?」
「裕也殿を見るのにか・・・烏ぐらいじゃな。烏は動物の中では結構魔力を持っているからな。」
「烏・・・そうじゃなくて、人で言うとだ。」
「ふ〜む・・・バイト巫女くらい?」
簡単に人に見えるという事だな・・・つまり、睡蓮は俺が見えてたという事だな・・・
どうして、睡蓮は俺を無視したんだ・・・でも・・・もしかしたら、本当に見えなかったって事も有るかもしれん・・・
「閻魔様・・・ちょっと現界に行って来て良いですか?」
「良いぞ。どうせ、妹の所じゃろ。どうせじゃから、聖魔降臨戦が始まるまで憑いておいてやれ。ワシ等がこの3日間お前を拉致してたからな、きっと彼女も一人じゃ寂しかったじゃろうしな。それより、飯を食ってからにしたらどうじゃ?」
閻魔の今言った言葉は・・・まさに、睡蓮が俺を見えてた事を物語っていた・・・
そう、睡蓮は・・・俺が見えていたにも関わらず・・・俺を無視していたのだ・・・
「・・・飯は・・・食う気がしない。」
俺は席を立ち、三途の川の方に向う。
「裕也殿・・・?どうかなされましたか?」
「済まないが現界に送ってくれるか?閻魔様の許可は貰っている。」
「それではお乗り下さい。」
俺が船に乗るとカロンはゆっくりと船を漕ぐ。
何故、俺は船による移動かと言うと、只の霊だからだ。クラスが英霊以上で無いと転送ポートが発動しないのだ。
だから、俺は船による移動しか無理なのである。
「カロン・・・もう少し速度出る?ちょっと遅すぎ・・・」
「しょうがないですね。船を前回みたいに乗っ取られ、川に落とされたらたまったもんじゃ有りませんからね・・・霊名は『カロン』、諱は『カロン・オボロンス』。『渡し守』を司る、我の名において、第二宝具『三途之川之天変地異』の具現を命ずる。」
カロンの宣言と共に、先程までは静かだった三途の川が荒れ狂い川の流れの勢いが増す。
これが、三途の川の渡し守であるカロンの第二宝具『三途之川之天変地異』による気象変化である。
『三途之川之天変地異』は、対象の海もしくは川の流れを自由自在に変える物である。
「しっかり掴まっていて下さいよ。」
ぐわっ!!
行き成り船が上に持ち上げられる。
何事だと裕也が船の下を見ると、船が巨大な津波によって持ち上げられているではないか。
「すご・・・実はお前って凄いんだな・・・只の老人かと思ってたよ。」
「私の宝具はこんな物では有りませんよ。まだ、第三宝具が残っておりますから。」
「へぇ〜・・・」
こいつの第三宝具って一体どんな物だ・・・これより凄い物なんだよな・・・
「そろそろ現界に着きますよ。」
カロンの言う通り岸が見えてきた・・・けどさぁ・・・
「・・・どうやって、この船を止めるの?」
「止めませんよ。岸に飛び降りて下さい。」
そう来たか・・・
俺はタイミングを見計らい船から飛び降り岸に着地。そして、岸の奥に有る光の渦に向う。
この光の渦が天界と現界を繋いでいる物だ。
前にもこれを使って俺は現界に戻ったのだ。
そして、俺は光の渦を潜り、俺の死んだ場所である交差点にでた。
俺の死んだ場所の近くの電信柱に花束が置いてあるのだが・・・自分が死んだって気があまりしないんだよな。
今もこうやって普通に動いてるし。
まあ、人に認識されないって点ぐらいかな。これだけは、本当に自分は幽霊なんだなって実感させてくれる、
そんな事よりも、今は睡蓮の元に。
今回は早く会いたいという気持ちは無かった・・・そんな事よりも、何故俺は無視されたのかと言う事で頭が一杯だった。
そして、真実を知るのが怖かった・・・
もし、自分が睡蓮にとって必要の無い者だったならどうしよう・・・
もし、俺が邪魔だったならどうしよう・・・
如何しよう?
その時は、俺は如何すれば良いのだ?
如何すれば・・・
そうだ・・・会わなければ良いのだ・・・
そしたら、真実を知らなくて済む。
そうだ、そうすれば良いのだ。
しかし、俺の足は止まらない・・・
脳では、会わない方が良いと言っているが・・・
止まらない・・・
何時の間にか家の前に立っていた。
そして、玄関のチャイムを鳴らす。
数十秒――いや、俺には何分、何時間、何日と感じれた・・・そして、ガチャッと言う、銃の撃鉄のような重苦しい音の後・・・ドアが開かれた。
睡蓮は、「あれ〜・・・誰もいないな〜。また悪戯かなぁ?」とか口では言ってるが・・・少し態と臭く感じれた・・・
俺は、睡蓮の・・・胸倉を掴む・・・
「なっ!!何っ!?」
驚いたような声を上げる・・・だが、目は俺を見ていた・・・
「睡蓮・・・何で俺を無視する・・・」
「何よ!?何なのよこれ!?」
何故?何故俺を無視する・・・
「睡蓮・・・お前が俺を見えてるのは知っている・・・だから、ふざけるのはもう止めろ。」
「・・・」
睡蓮は静かになる。そして、俺をしっかり見返す。
「やはり・・・見えてたのか・・・見えてて俺を無視してたのか・・・」
「うん・・・」
何所か力無く肯定する。
それと同時に、何かが弾ける。
「如何して無視するんだよ!?俺はお前の為に必死にがんばってるんだぞ!!」
俺は叫んだ・・・生まれて此の方、兄弟喧嘩どころか、睡蓮を叱った事は一度すら無かった。
だが、今回は許せなかった・・・
どうして、俺を無視するのだ・・・
睡蓮は何も言わない。それどころか・・・俺をキッと睨んだ・・・
「如何してだよ!?オイッ!!答えろ!!」
「御兄ちゃんは・・・私を何だと思ってるの?」
えっ?
「私の事を人形だとでも思ってるの?」
「そんな事は無い!!俺の可愛い妹として見ている!!」
「じゃあさ・・・何で、何時も私に付き纏うの?」
「睡蓮が心配だからだ。」
「私は・・・御兄ちゃんが居ないと何もできない子だと思ってるの?御人形みたいに、何でもして上げないと何もできないとでも思ってるの?」
「俺はそんな事「何時も、御兄ちゃんは思ってるでしょ!!私は何もできない人形だと!!」
睡蓮・・・俺は・・・俺は・・・
「もう、私の前に姿を現さないで!!そして、さっさと成仏して!!」
ビシャッとドアが閉められる・・・
俺は・・・
俺は・・・
俺は・・・
俺は、何時も睡蓮の為を思って行動してたのに・・・
これは無いだろ・・・
こんな言いようは無いだろ・・・
俺が抱いたのは憎悪の念。
聖魔降臨戦?もう、そんなの知らない。睡蓮・・・死んじゃえば良い・・・
世界?滅びちゃえば良い。
やってられない・・・
こんな報われない世界なんて・・・
本当に・・・
滅びちゃえ・・・
それと同時に、黒い何かが俺に流れ込んでくる・・・
黒い何かは、「憎いか?」と俺に何度も尋ねてくる。
だから俺は答えた。
憎いと・・・
そしたら、黒い何かは言った。
「俺に任せろ。俺が全てを終わらせてやる。」
と・・・
だから、俺はその黒い何かに全てを任した。
「任せろ・・・」
そして、俺の目の前が暗転した。
最後に見たのは・・・まだ昼なのに空に浮かぶ紅い月・・・
キャラ紹介(?)
今回は新キャラが居なかったので・・・如何しましょうか?
ちなみに、八束神社・・・これは、分かる人には分かるはずです。なのはファンの人には。
実はこの話、多少Silver frirendSと繋がっています。
設定では、銀杏と裕也は従兄弟です。
裕也に神代流を教えたのは水魂という裏設定にしてます。
う〜ん・・・今回はこの辺で・・・
あっ、ヘイムダルが居た・・・
『ヘイムダル』ヒミンビョルグの館で侵入者を監視している神様。開戦を告げる神器『宣戦布告』と『軍歌』の使い手。