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幻葬記  作者: ことは
第12話:影を操る者
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もちろんです。その為に俺がいるんですし

 翌日、ボスを除く術者達が廃墟ビルの入り口前に集まった。


 数日ぶりに訪れたビルを見上げ、悠夜は目を細める。――――建物は相変わらずひっそりと不気味な雰囲気を漂わせていた。

「俺と由姫は周辺の状況見に行くから、気をつけてなー」

 そう言うと陽絽は由姫を連れその場から離れて行く。

「それじゃあ、わたし達も行きましょうか」

 二人を見送った志織が振り返り、三人に声をかけた。

「上と下、どっちに分かれる?」

 将護の調べでは廃墟ビルは地上三階、地下二階の作りだった。

 石が作られていたのは地下一階だったが、今回は建物を隅々まで不審な所がないか調べなくてはいけない。

 

「……下」


 ポツリと口にした声に視線が集中する。声を発したのは仄だった。視線を感じ、仄は誤魔化すように笑った。

「えっと、何となく……」

「わかった。俺達は下に行く」

 将護はあっさり受け入れると、そのまま入り口へと歩み始めた。慌ててその後を仄がついていく。

「将護さん、仄を頼みます」

 先に入って行く二人に悠夜が声をかけた。将護はちらりと悠夜の方へ一瞥し無言で頷くと、静寂に包まれたビルの中へと姿を消した。

「下ねえ……」

 将護と仄が姿を消すと志織が呟いた。

「志織さん、何か感じますか?」

「うーん。うまく言えないけど、ここ、あまりいい空気ではないわね。妖影の石を作っていた名残かしら」

 それだけを言うと、「私達も入りましょ」と言って志織もビルの中へと入って行く。若干の危惧を感じながら悠夜もその後に続いた。


**


 外部担当の陽絽と由姫は廃墟ビル周辺を見て回っていた。

 特に気になる所はない。だが。

「なんか『重い』ですね」

 漠然とした空気の重さに由姫が顔しかめる。

「だよな。この辺一帯に妖気が集まっている感じだ」

 陽絽は周辺を見渡す。

「外でこんなんじゃ、中はもっと大変かもしれないよな」

 思った以上に時間がかかるかもしれない。陽絽の表情が少し険しくなる。その変化を由姫は見逃さなかった。

「相模さん、自分も中に入るとか言わないでくださいよ」

「言わねーよ。俺達には俺達の役目がある」

 釘をさす由姫に憮然とした顔で陽絽が答えた。

「大人になりましたね、相模さん」

 感心する由姫に、「俺は大人だ!ついでにおまえより年上だ!!」と噛み付く。由姫はいつものように「はいはい。そうですね」と軽くあしらい、それにまた陽絽がむきになる。

 にぎやかなやり取りをしながら、二人は周辺の見回りを再開した……。


***


 悠夜と志織は上の階から順に下がっていくことにし、現在、最上階の三階にいた。

 建物の内部担当の悠夜達の任務は建物内の状況確認と、妖影の製造の破壊、それからもう一つ。


 ――――邪気を払って『式』として使える妖影がいれば捕獲すること。


 生け捕りにし、『汚れ』を清め神影(こちら)の手足になる『式』へと育てる。その為に『浄化』能力を持つ志織と仄が必要だったのだ。

 順番に部屋を調べながら悠夜が志織に聞く。

「何か見えますか?」

「この階は特に感じないわ。力の弱い小者が何体かいるくらい。悠夜はどう?」

「俺には空気が重い、という感じしか。……地場の関係もありそうですね」

「そうね。この場所自体が元々妖気を集めやすい作りになっているのかもしれないわね」

 人工ではなく、自然と妖怪達を引き寄せる地場は存在する。ここもその一つのようだ。

「できれば長居は避けたいですね。大丈夫ですか?」

 絶えず妖気を感じ続けるのだから、感覚が鋭い志織には負担になるはずだ。

「わたしは大丈夫よ。それよりも仄の方が気になるわ」

 悠夜の表情が硬くなる。

「……何かあるなら地下の方ですか」

「たぶんね。仄はその『何か』を感じたようだし。なるべく早く合流したいわね」

 そこで志織は言葉を切る。悠夜も前方へと視線を定める。

 ……廊下の先には黒く(うごめ)く黒影がいた。――――やはりただでは終わらないか。

「悠夜、任せていいの?」

 横に立つ悠夜に一応確認をする。

「もちろんです。その為に俺がいるんですし」

 悠夜はそう言いながら一歩前に出る。あら頼もしい、と志織はにっこりと笑う。

「あの妖影は封じますよ」

「そうね。使い勝手も悪そうだし、大丈夫よ」

 志織のゴーサインと同時に、悠夜は高速で前方へと踏み込む。


 ――――閃光が走った……。


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