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超空の要塞2

 マンガ版日本国召喚は、9月1日から新章に突入します。

 よろしくお願いします。

ムー国 南方 ハット空軍基地


 ムー国の中では南方に位置するハット空軍基地。

 日本国は航空自衛隊をムー国に派遣していたが、他国の領域すべてをカバー出来る訳ではなく、首都から遠く離れたこの基地に彼らはいない。


 ビー・ビー・ビー


 空軍基地に異様な電子音が鳴り響く。

 パイロットたちは迅速に自分たちの信頼する愛機に向かって走り出だした。


 空軍基地内には、女性の声で緊迫した放送が鳴り響く。


『至急・至急……グラ・バルカス帝国軍が本基地方向に向かって進行中。距離203km、機数212、各機は至急離陸、帝国機の迎撃にあたれ!!』


 走り出したパイロット達は、愛機に飛び込み、すぐさま駐機してあるマリン型戦闘機のプロペラが回り始める。

 加速する戦闘機は、透き通る青空へ離陸していく。


「頼むぞ、迎撃してくれ!!」


 航空管制室で、基地司令イエローは飛び立つ友軍を見る。

 編隊を組んで颯爽と飛び立つ様子……力強い。


 日本国の技術書を参考に作られたムー国誇る最新捜索レーダーにより、200km以上も先で敵航空機を捕らえた。

 今更ながら、レーダーの有用性には驚かされる。

 

「これより高度を測定します」


 捜索レーダーにより捕らえた方位に、高度を図るレーダーを照射する。

 これにより、高度を測定出来ることから、3次元レーダーと同じ役割をこなすことが出来るようになった。


 ゆっくりとレーダー装置が敵の方向を向く。

 ムー国のレーダーは初歩の機械式であるため、日本の技師が見たならばあまりにも時間がかかり、もどかしくも感じるだろう。


 日本国が使用しているフェイズドアレイレーダー……電波の位相変化により全方位を瞬間的に測定する方式は、遙か未来の技術であった。


「高度測定開始……っっ!!」


 ムー国のレーダーがグラ・バルカス帝国の機体を捕らえる。

 ……絶句。


「ど……どうした!!!」


「高度、速度算出完了。高度……14000m、速度……時速700km以上!!」


「な……なにっ!!化け物かっ!!!」


 マリンの実用上昇限度、いや、最大上昇記録を大きく上回り、速度も遙かに超える。

 いくら迎撃機を上げたところで全く届かない。

 そして、現存するムーの高射砲も全く届かないような超高空だった。


「なんてことだ!!」


 圧倒的な技術差、迫りくる絶望、基地司令イエローの脳裏には一方的に破壊される基地の姿が浮かぶ。


 攻撃を回避出来ぬと悟ったハット空軍基地は蜂の巣をつついたような騒ぎになったが、

帝国の航空機は眼中に無いと言わんばかりに彼らの基地上空を通過していった。


◆◆◆


 グラ・バルカス帝国 特殊殲滅作戦部 超重爆撃連隊 グティーマウン


 グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊の攻撃に呼応して行われる超重爆撃機による日本国攻撃。

 200機を超える爆撃連隊の指揮機には、作戦部長アーリ・トリガーの姿があった。


「ムー国の機は遙か低空をうろうろしております。

 全く我が方に追いつく気配はございません」


 誇らしげに部下が報告を上げてくる。


「当然だ」


 現在の攻撃目標は日本国のみ、ムーなど眼中には無い。興味なさそうにアーリ・トリガーは吐き捨てた。

 今回の計画は、グティーマウンの本当の性能は、軍部ではトップシークレット。

 具体的性能を悟られぬため、今回の作戦は通常の足の長い陸軍航空機を基準にした補給回数となっている。

 

 グティーマウンの航続距離は圧倒的。本来ならば、必要の全くない補給が多数含まれていた。



 グティーマウン

 これまでのグラ・バルカス帝国製航空機とは性能が根本的に異なる。

 その開発費は、財務を担当する大臣が目を覆ったと言われる。

 しかし開発完了時、「帝国の技術水準を遙かに超える」「何故これほどの高性能機が出来たのか意味が解らない」と、軍部から言われた奇跡の航空機

 カルスライン社以外の会社が作成し、設計思想も異なる。


 超重爆撃機グティーマウン

 全長46m、全幅63m、6千馬力ものエンジンを6発搭載、最大速力は時速にして780kmにも及び、実用上昇限度は15000m以上を誇る。

 防弾版は厚く、落ちにくい上に航続距離は19400kmと、超絶に足が長い。


 空の要塞……いや、空の要塞を越える者という言葉がふさわしい化け物。

 明らかに帝国の航空機技術水準を陵駕する航空機がどうやって出来たのか。

 これも隊員達には知らされておらず、トップシークレットであり、謎が多い。


 超高空から地上を眺めていると、まるで雲が地面に張り付いているかのようにも見える。

「アーリ・トリガー様、現在18番機の第4エンジンの出力が低下しています」


「ほう、問題は無いだろうが、念の為にレイフォルのルブ基地に帰還させよ。作戦に支障は無い」


「ははっ!!」


 超重爆撃連隊は、エンジン出力の低下した1機を残し、東へ侵攻する。




 超重爆撃機 グティーマウン18番機


「機長、レイフォル基地への帰還命令が来ました」


「そうか……残りのエンジン5発でも十分に作戦遂行は可能だが……やむをえんな」


「最新鋭の重爆ですからね、地方の整備士に具体的情報を知られる訳にもいきません。

 本機は敵国上空を単機で飛行していくことになりますが、ムーには遙か低空、安全は約束されていますね」


 グティーマウン18番機は進路をレイフォルのルブ基地方向へとるのだった。


◆◆◆


 ムー国 先進技術試験基地


 ムー国統括軍所属、情報通信部 情報分析課 マイラスは、この日先進技術試験基地を訪問していた。


「マイラス技官、これが地上配置型ECMです」


 先進技術試験基地司令が得意げにマイラスに説明する。

 目の前には巨大なアンテナが数本設置され、ケーブルを介して日本から輸入した性能劣化型のパーソナルコンピューターに接続されていた。


「このコンピューターは、日本国内では旧式ですが、グラ・バルカス帝国の使用するそれよりも比較にならないほど高性能です。

 きっと役にたってくれることでしょう」

 

「やはり、まだまだ飛行機に乗るサイズダウンは……」


「はい、現在の技術開示レベルと、ムーの技術では、飛行機に搭載できるまで小型化は難しいでしょう。

 ただ、この地上配備型も各空軍基地や、海軍基地に設置出来るようになると、相当な戦力となります。

 グラ・バルカス帝国の通信妨害なども可能かと」


「うむ、素晴らしいですね」


 現在のムー国技術は日本の足下にも及ばない。

 しかし、技術は積み重ね。


「いつかは追いつこう」


 思いが口に出る。


「マイラス技官、例の航空機の進捗をお見せします」


 先進技術実験基地司令は、満面の笑みを浮かべる。

 楽しみにしていたマイラスも、自然と笑みがこぼれた。

 マイラスが先進技術実験基地を訪れた理由の一つ。新型航空機の進捗を見るためだった。 

 格納庫の扉を開ける。


「こ……これはっ!!もう形が出来ているのですか?」


 主翼が後ろに付き、水平尾翼が前に付いているかのような特殊な戦闘機が眼前にある。

 緑色に塗られた特殊な機体。

 70年以上昔……大日本帝国軍の試作航空機を設計図面から再現し、足りない部品は輸入してから改造した。

 現代の日本の部品を流用しているものが多いため、パーツの強度が上がり、本来の日本軍の試作機よりも軽くなっている。


「やっぱり名前はあれですかね?」


「もちろんです。日本国に敬意を払い、震電改にしたいですね!!いや、試作型だからX震電改でしょうかね?

 それにしても……エンジンはどうやって……おや?」


 後方に回ると、その機体にはアフターバーナーが装着されていた。

 

「あれ?このエンジンは……」


 ジェットエンジンはT4のエンジンの代用検討と聞いていたマイラスは、アフターバーナーの存在に驚く。


「日本国で25年以上前に試作されていたXF3-400といった型式のジェットエンジンです」


「これは……日本の技術流出防止法にかかるのでは?いったいどうやって手に入れたのですか?」


「マイラス技官の他にも、日本の技術をムーに移植しようと躍起になっている者が多数いるのですよ。

 そして、日本国にもムーを助けたいという勢力がある。

 国益を考えての事でしょうけどね。

 今ある試作機は2機のみです。

 もしもエンジンが壊れたら、我々の技術では修復も再現も出来ない。

 部材の性能からして違いすぎますから。しかし、なんとか作れないか、もしくは部品の輸入で代替出来るものは無いか、皆必死で可能性を探しています。

 あくまでこれは試作機、エンジン出力も非常に高いものがあります」


「すばらしい。これは飛行出来るのですか?」


「すでに飛行試験は何度か行っています。が……やはり航続距離が圧倒的に足りません。

 特にアフターバーナーを使用するとすぐに燃料が底をつきます。

 都市防衛等の狭い範囲の要撃に使用するしかありません。

 この機体を揃えることが出来、一撃離脱戦法を行えばグラ・バルカス帝国が相手だとしても、相当な戦果を期待できます。

 首都防衛や、拠点防衛としては相当な戦果を発揮してくれるでしょう。

 あとはエンジンのみですが……部材が作れない場合はやはり輸入しかないでしょうね。

 なんとか輸入できれば良いのですが。

 そこでの戦いは私の範疇では無いので外交官と、国会議員に頑張って頂くしかありません」


 彼は続ける。


「武装は、機首に装着した30mm機関砲4門です。威力が高すぎるため、いかなる航空機でも撃滅出来るでしょう。

 現在改良型も考えており、1門ですが、大口径砲装着型を検討しています。空中戦艦パル・キマイラの撃墜も視野に入れ、古の魔法帝国復活時ですら通用する戦闘機を目指しています。

 大口径砲を装備した場合、反動の強度問題はこれからの課題です。

 検討段階ではありますが、空中戦艦対策用としては、戦車砲を取り付けたいと考えています」


「すばらしいですね……」


「現在30mm機関砲もフル装備状態です。今すぐにでも戦闘できますよ。

 これより飛行試験を予定しておりますので、是非ご覧下さい」


「もちろん、見ていきます」


 マイラスはわくわくしながら滑走路へ出る。

 キーンといった音が鳴り、試作型震電改は暖機運転を始めた。

 緑色に塗られた機体。前方に装着された水平尾翼。

 神聖ミリシアル帝国の「天の浮舟」のようにプロペラが無い。

 複葉機を見慣れた者達にとっては、正に先進技術の塊に見える。


「暖機運転が終わったようです。これより、離陸訓練をお見せしま……」


「し……失礼します!!」


 若手幹部が会話に割り込んできた。


「なんだね!!」


 マイラスに説明していた先進技術試験基地司令は説明中に割って入る幹部に多少声を荒げた。


「現在我が基地に敵機が1機向かってきています!!

 ハット空軍基地上空を通過した敵大型攻撃機と思われます!!!」


 マイラスと司令は顔を見合わす。彼は続ける。


「敵攻撃機は高度15000以上の超高空を、時速600km以上の速度で向かってきています。

 主力戦闘機マリンでは……追いつくことすら出来ません!!!」


「敵は……1機だな?」


「はいっ!!」


「マイラス殿……実戦も兼ねた試験になります。是非見て行っていただきたい」


 基地司令は自信に満ちあふれる。顔には笑みさえも浮かべていた。


「もちろんです。この目で……試作型震電改の戦いを拝見させていただきます」



◆◆◆


 マイラスと基地司令は管制室に移動していた。


「ECM作動!!」


 日本から見ると初歩的なECM(電波妨害)が作動する。

 大きなアンテナが、敵の進路方向に向く。


「出てきましたぞ!!」


 一方、滑走路には局地戦闘機、試作型震電改が姿を現す。


 今までのムーの常識を覆す特殊なフォルム。

 本来逆向きに進んでいるのでは無いかとすら思わせる。


 根本的に異なるエンジン音。キーンといった甲高いサウンドが、飛行場周辺を覆った。


「管制塔よりX1,離陸を許可する」


 ゴォォォォォォ!!!

 震電改の後方からは、アフターバーナーが火を噴いた。

 圧倒的な推力重量比を生かして一気に加速し、離陸する。

 一定速度を着けた後、ムー国の今までの戦闘機では決して行うことが出来ない急角度で上昇し、空へと消えた。


「高度9000……10000……11000」


 レーダーを覗く女性職員が、無機質に試作機の状況を読み上げる。


「すごい!!なんて上昇力だ!!!」


 まるで日本国の戦闘機のように、今までのムーの機体とは異次元の上昇を続ける。

 マイラスは、自国がこれほどの高性能機を、試作機とはいえ持つに至った……感動がこみ上げる。


『こちらX1、敵機を目視で捕らえた。攻撃を開始する』


 試作型震電改は、グラ・バルカス帝国超重爆撃機グティーマウンに攻撃を開始するのだった。


◆◆◆


 超重爆撃機グティーマウン18番機


「まだ無線不調は直らないのか?」


「はい、先ほどから基地との通信は途絶しています。治る気配はありません」


 敵の刃が届かぬ超高空とはいえ、敵領土上空での無線の不調は気持ちの良いものではない。

 嫌な予感がする。


「念のため、敵の攻撃には注意せよ」


「はっ!!」



 下部機銃座に座るデンタルクは、ムーの領土が広がる下を注視する。

 良く晴れた日、地上付近に雲が張り付き、対流圏よりも遙か上空、成層圏と呼ばれる領域を航行出来るに至った帝国に誇りを感じる。


「ん!?」


 下から点のようなものが一瞬見える。


「まさか?この領域に航空機?」


 デンタルクの疑問は、一瞬で確信に変わる。

 遙か後方に点のように見えた航空機は一瞬で距離を詰め、見慣れぬ航空機が姿を現す。


「て……敵襲!!!」


 デンタルクは機銃を把持し、照準を合わせようとする。


「なにっ!は……速……」


 照準器の先で、敵機が射撃を開始した。

 急激に近づいてきた敵機は、下方から上方へ抜け、さらに高空へと駆け上がる。

 バリバリといった機関砲が着弾する音が聞こえた後、何かが発火する音、そして焼けるような熱が伝わってくる。

 翼では、5発回っていたエンジンのうち、1機から火が出た後にプロペラが止まった。

 急激に薄くなる空気……。


 上部機銃員は必死で応戦しているようだ。機関砲の発射音が連続する。


 デンタルクは薄れ行く意識の中、酸素マスクに手を伸ばし、装着した。


「はあっはあっはあっ……ばかなっ!!機関砲にこんなに威力があるはずがっ……」


 超重爆撃機グティーマウンは防弾仕様である。

 通常の戦闘機が装備している12.7mm機関銃はもちろんのこと、部分的には20m

m機関砲だってそう簡単には通さない。

 しかし、敵の攻撃はあっさりと我が機に穴を開け、与圧システムが作動しなくなってきた。

 高度が落ち始めているのだろうか、微かに体が軽い。


 ビーッビーッビーッ


 機内に緊急時のブザーが鳴り響く。


『来たぞ!!あいつだっ!!ちきしょう……なんて速さだっ!!』


 デンタルクの耳に、嫌な声が聞こえてくる。

 再びバリバリという音が聞こえ、爆発音と共に翼が燃え始めた。


「操作不能!!!操作不能!!」


 重力がめまぐるしく変化する。


「もう……だめかっ!!」


 デンタルクは脱出用パラシュートを背負い、必死で非常用ハッチを開けて脱出する。

 重力によって体が加速する。

 落下速度、風圧を受けながら彼は上を見た。


「て……帝国の最新鋭機がっ!!!」


 爆発炎上しながら墜落する超重爆撃機グティーマウン。

 彼は絶望しながらムー国領内に落下していくのだった。



◆◆◆


 日本国 首都 東京 防衛省


 防衛省のとある会議室において、緊急防衛会議が行われていた。

 楕円形の机、並べられた椅子に各幹部が座る。

 若手の幹部がモニターを指示しながら説明を開始する。


「敵主力艦隊は現在ニューランド西側海域を東進中、なお帝国本土から発進した航空機群200機はレイフォルで補給を済ませた後、ムー内陸を通過、我が国の方向へ向かって侵攻してきています。

 また、リーム王国の首都では帝国巡洋艦及び駆逐艦52隻が集結、王国内飛行場のグラ・バルカス帝国作戦機も300以上!さらにリーム王国軍艦隊も集結しつづけています」


「やつらの目標は……」


「間違いなく我が国の本土です。護衛艦にあっては現在2個護衛隊群を西側に配置し、1個護衛隊群を九州沖、さらに1個護衛隊群をナハナート王国周辺に配置するよう手配済みであり、航空機はF-2戦闘機、BP-3C爆撃連隊及びP-1部隊を配置、いつでも出撃出来る状況にあります。

 念の為に海上保安庁の巡視艇も西側に集結、ロデニウス大陸周辺へ派遣していたF-2戦闘機部隊も一部を除いて本土防衛のために呼び戻しております。

 試算では、今回の防衛……守り切れます!!!」


「その配置……ナハナートはどうなる?敵の量からして1個護衛隊群と少数のF-2だと厳しいだろう」


「衛星でリーム王国内の動きを見るに、本土侵攻は間近です。外洋にいる敵主力艦隊は膨大な数でありかつ補給が無いと我が国へ到達する事が出来ないので、ニューランドのいずれかの国で補給を行うと考えられます。

 数から考えて、相当な補給日数を要すると考えられ、時間差により、迎撃は十分に間に合います」


「現在リームにいる敵軍が、時間を置いて同時侵攻してくる可能性も否定できない。

 2正面同時作戦は数が厳しくは無いか?」


「可能性は否定出来ませんが、リーム内のムー国スパイからの情報では、現在の敵航空機が到着、補給完了後にすぐに日本への攻撃を行う事は間違いないとの事です」


「リーム港への先制攻撃は……」


「リームがあくまで日本に敵対意思は無いと明確に国際社会に宣言していますので、政府見解でも先制攻撃は難しいとの事です。

 また、現在進行してきている敵航空機群も、内陸を飛行しているため、他国国内で撃墜し、破片が他国民を殺傷する可能性が有る限り、責任が持てないとの見解です。

 参考ですが、同様の事態が発生しないように政府は技術流出防止法の、ムー国に限ってのさらなる適用緩和を検討中であります。

 今後同様の事が起こった場合、ムー国ならば攻撃できますからね」


「敵の作戦機は……特に爆撃機は1機たりとも本土上空へ侵入させてはならない。

 核兵器を持っている可能性も捨て切れていないからな」


「はい、リームから離陸した瞬間に作戦を開始いたしますが、航空機に関しては余裕をもって守り切れるでしょう。現在確認されている敵戦力ですが…………」

 

 会議は詳細な自衛隊の配置まで説明される。

 異世界転移後初の本土防衛会議、本格的な危機を前に熱が籠もった。

 戦力の調整も行われ、深夜まで会議は続けられた。



◆◆◆


 リーム王国 王都ヒルキガ


 王城において、国王バンクスは城の西側を見る。

 平野部に作られた基地。ムーの飛行場をグラ・バルカス帝国が基地として拡張し、鉄鳥が多く並べられている。

 ムーの航空機を遙かに超える大きさ。

 リーム王国のワイバーンはもちろんのこと、パーパルディア皇国のワイバーンロードですら遙かに超える大きさ、そして速さ。

 さすがは神聖ミリシアル帝国に土を付けた事のある帝国。

 攻撃機が整然と並ぶその姿は力強ささえも感じた。


 しかし、一抹の不安が残る。


「本当に大丈夫だろうか……」


 相手はあの日本国である。


 列強パーパルディア皇国は強かった。

 第三文明圏に位置するとはいえ、文明圏内外を問わず、付近の国を統合し、南方方向にも領土的野心を向けていた。

 当時のリーム王国内では、パーパルディア皇国がこのまま南進を続けてアニュンリール皇国という広大な地域を支配している南国を降した場合、神聖ミリシアル帝国を規模の上で超えると試算されており、やがて規模の経済で潤い、技術革新が続いた場合は神聖ミリシアル帝国に肉薄する可能性さえも指摘されていた。


 皇国の強さに上限は無いかのように思われていた。

 しかし……日本国の登場によって地図は塗り変わる。


 皇国は支配地域にいた日本人を他国民と同じように……旅行者を並べて虐殺した。

 日本の逆鱗に触れた皇国は敗戦につぐ敗戦……日本国の圧倒的軍事力で列強パーパルディア皇国の権威は地に落ちた。

 

 本気で怒った日本国、パーパルディアの軍人に対する極めて効率的殺傷。

 容赦は一切無かったと聞く。


「奴らは……本気で怒らせるとまずいのだ……」


 しかし、彼は日本に弓を引こうとしている。

 形式上敵対しないと表明しているが、ワイバーンによるパーパルディア皇国在中の日本施設に攻撃をすれば、もう言い逃れは出来ないだろう。

 きっと烈火のように怒る事は目に見えている。

 

 もしも、グラ・バルカス帝国が……日本国に勝てなかったらリームは終わるだろう。

 もしかすると、自分の代でリーム王国は終わるかも知れない。

 しかし、日本に肩入れすると、世界連合艦隊を降したグラ・バルカス帝国から敵対国家と認定される。

 帝国はいずれ神聖ミリシアル帝国さえも支配し、世界は支配されるだろう。

 日本の国力ではグラ・バルカス帝国を降す事は出来ない。


 バンクスの思考は巡る。


「陛下、ここにおられましたか」


「おお、リバルか」


 王下大将軍リバルが国王に声をかける。


「今回の戦、局地戦ですら負ける訳にはいかぬぞ。

 大局的に日本では帝国に勝てないと言うことは理解できる。

 しかし、リームは日本に近すぎる。局地戦でも負ける訳にはいかぬのだ」


「陛下、解っております。

 グラ・バルカス帝国は絶対に日本国に遅れを取ることはございません。

 陛下にご報告をと……グラ・バルカス帝国本土から間もなく爆撃機と呼ばれる都市殲滅兵器が到着いたします。

 パーパルディア皇国を攻撃した日本の爆撃機とは比べものにならないくらいに大きく、そして高く飛べるようですぞ。

 すべてがこの基地に降りるわけではないそうですが」


 リバルは西の空を指さす。

 晴れ渡ったそらに、点が多数出現した。




 点はやがて飛行機の形となる。 


 ブゥゥゥゥゥン………

 腹に響く重低音が、王都に響き渡った。


「おお……おおおおおっ!!!」


 圧倒的な大きさを誇る爆撃機、編隊は力強く、決して負ける者はいないと断言できるほどの力強さを示す。

 基地に駐機する、大きいと感じていたグラ・バルカス帝国の攻撃機でさえ、子供に見えるほどに大きい。


「これが……グラ・バルカス帝国の超兵器……なんという圧倒的力強さか!!負けぬ。

 これが日本に負けるはずがないっ!!!」


 超重爆撃機グティーマウンの放つ威容に、リームの民は圧倒される。

 国王もその例外ではなかった。


 圧倒的物量、そして超重爆撃機グティーマウンの編隊を見た国王バンクスは決して負けぬと確信を持つのだった。




 ブログ「くみちゃんとみのろうの部屋」では、数話先行配信しています。

 また、漫画版日本国召喚は9月1日から新章に突入します。


 ネームを見たら、漫画家、高野千春先生の魅せ方が素晴らしかったです。


 よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
もしかしたら帝国は地下で別時間軸世界の日本帝国と繋がっているのだろうか? そうでないと説明が付かない事だらけなんだが。
核兵器は実際に使われて被害が明確になったからこそ抑止だの拡散防止だのできたわけで、ただ作って持つだけでは意味がないんですよ。
[気になる点] 「敵攻撃機は高度15000以上の超高空を、時速600km以上の速度で向かってきています。 この高度で被弾した爆撃機から高高度落下傘降下って 習志野空挺特殊レンジャーでも数人しか出来な…
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