グラ・バルカス帝国海軍との衝突2
ブログ、くみちゃんとみのろうの部屋では、数話先行配信してます(不完全版)
気になる方はいらして下さい(本の特典等も、許可を取って配信してます)
ロデニウス大陸南方海域上空
グラ・バルカス帝国 第2先遣艦隊所属 海軍航空隊迎撃機
太陽が沈み、徐々に空は光を失っていく。
海軍航空隊第5飛行小隊所属のクラ・ダークヤミーは微かな不安を覚えていた。
帝国の誇るアンタレス型艦上戦闘機の絶対たる性能に不安は無い。
しかし……
「帰還は夜になるのではないか?」
夜間の発着は危険すぎる。
空母がしっかりと明かりをつけてくれれば良いが、戦闘中の場合、自らを目立たせるような危険な事をする訳が無い。
ライトで空母を照らすことも禁じられるだろう。
誰もが気づいているはず……しかし、誰も文句を言わない。
「さっさと片付け、海が漆黒の闇に包まれる前に帰ろう」
独り言が漏れ出た。
付近を見渡すと、最強たる帝国海軍航空隊のアンタレス型艦上戦闘機の大編隊が飛行する。その数51機。
敵の攻撃機はおそらく50から80の間。
出撃前の作戦会議で、敵の技術は我が国よりも進んでいるかもしれないという内容の教示を受けた。
「フン、どうせ大したこと無いだろう」
彼は転移直後を思い出す。
最初の作戦会議では、敵は竜を操り、全く未知数であり、さらに生物のため急旋回が可能である可能性も指摘され、十分注意するように指示を受けた。
レイフォルとの戦いになった時、敵の竜は今までよりも大幅に速度、旋回性能が上がっているとの情報があるため、十分に注意するよう指示を受けた。
ムーとの衝突では、列強上位国家との戦いであり、事前情報と異なる性能を発揮する可能性があるため注意するよう説明を受け、神聖ミリシアル帝国との衝突では、列強最上位国家であり、敵戦闘機はプロペラを使用していない。
我が方の戦闘機を陵駕する可能性すらあるとの説明を受けた。
しかし、そのどれもがこのアンタレス型艦上戦闘機の敵ではなく、唯一注意しなければならないのは神聖ミリシアル帝国の「天の浮船」と呼ばれるプロペラの無い、魔法を使った航空機のみだった。
その「天の浮船」でさえも、性能面からはアンタレス型艦上戦闘機に遠く及ばなかった。
百戦錬磨の彼らは、今までの経験則から必勝を確信する。
作戦会議においては、第2先遣艦隊全滅の報は伏され、一部の航空隊員と発光信号を見ていた者のみが知っており、その隊員にたいしても守秘義務が課せられる。
正確な情報は末端まで伝わらず、戦場は悲劇へ傾くのだった。
「ん??」
クラ・ダークヤミーは、飛行機に微かな異常を感じる。
「エンジン音がおかしくないか?」
ボンッ!!!
「!!!」
機体が激しく揺れ、エンジンから激しい煙が上がる。
機体後方へはエンジンの出した煙が尾を引いた。
エンジン音は激しくなり、出力が低下する。
「こ……故障!?冗談では無いぞ、こんな海域で!!!」
戦闘海域、しかも暗闇に包まれる前の海上で不時着すれば、命に関わるかもしれない。
ヤミーの気持ちとは裏腹に、小隊から遅れ始める。
出力が低下し、高度の維持すら難しくなってきた。
高度が低下する。
『S5D1、エンジンから火が出ているぞ、直ちに帰投せよ』
自分の呼称名に対し、攻撃隊長機から指示が出る。
隣接戦には自信がある。帝国のために戦い、勝利を治めたかったが、このまま行ってもお荷物となるだろう。
悔しいが、命令に従わざるを得ない。
「くそっ!!あいつからまた嫌味を言われるのか」
撃墜数を競っているライバル。何かにつけて自分に絡んでくる奴の顔が浮かぶ。
が、故障ではどうしようもない。
「了解」
編隊を見上げる。
相当に高度差が出来てしまったようだ。
クラ・ダークヤミーの操るアンタレス型艦上戦闘機は、度重なる激戦でエンジンが疲弊していたのだった。
「これより、帰投す……え?」
編隊を見上げながら返信しようとした瞬間、最前にいた友軍機が爆散した。
驚く間もなく、連続して12機の友軍機が爆散する。
白い衝撃波が爆心地点から放射状に広がり、すぐに煙りと炎に包まれる。
『なっ……なんだっ!!今のは何処から攻撃を受けたっっ!!』
どの機が発したのか解らない無線が、叫び声を拾う。
さらに続けて12機が後を追う。
編隊は乱れ始めるも、さらに数秒して編隊に悲劇が襲いかかる。
連続して着弾する敵の攻撃は、考える暇すら与えずに無慈悲に……機械的に友軍機を壊す。
ほんの20秒ほどの間に迎撃機の半数以上が炎を纏った鉄くずとなって空から降る。
第1撃で隊長機も撃墜されたらしく、無線はパニックに陥った者達によって混信し、何を言っているのか解らない。
「今の攻撃は何だっ!!見えなかったぞ!!!敵機は何処にいる??」
猛烈とも言える敵の攻撃に晒されながら、機体が故障しているのがもどかしい。
クラ・ダークヤミーは空を見渡すが、敵機の姿が目視出来なかった。
「目視できないほどの距離から攻撃してきたというのかっ!!」
敵はとてつもない兵器を持っている。
視認出来ない距離から攻撃されたら、いくらアンタレス型艦上戦闘機が優秀な機動力をもっていたとしても、どうしようもない。
「いったいどうやって……あ……あれはっ!!!」
前方の空に、微かに光が見える。
点のように見えた航空機は一瞬で距離を詰め、翼端から光の尾を引く何かを発射した。 光弾は、まるでそれ自身が意思を持っているかのように、旋回中の友軍機に向かって向きを変え、突き刺さって爆発する。
たったの1撃が当たっただけで、対人、対燃料用の防弾版の仕込まれた航空機を爆散させる。
「なんて威力だ!!」
とても対空用とは思えない。
鏃のような形をした敵機の後方からは、2本の炎が出現していた。
圧倒的……見たことも無い速度で「それ」は上昇する。
仲間達も追いつこうと旋回して上昇しようとしていたが、機体性能そのものの次元が異なり、全く追いつけていなかった。
あっという間に空に消えた。
敵は旋回してきたのだろう。すぐに姿を現し、光弾を発射、どんどんと友軍機が炎の塊となる。
バラバラに逃げる機を刈るかのように、無慈悲な攻撃は続いた。
『なんだ??あいつはっ!!!』
『速すぎる!!全く追いつけない!!』
『攻撃が追尾してくる!!避けられ……ガガガガ』
速さが違いすぎる。
「あ……あんなの……あんなのどうやって勝てというんだ!!」
クラ・ダークヤミーはかつて無い恐怖を覚える。
栄えあるグラ・バルカス帝国海軍航空隊……百戦錬磨、常勝無敗が当たり前だった。
前世界、ユグドにおいても、今世界においても引けをとることなどあり得なかった。
共に訓練学校で死ぬほどの思いをして勉強し、体を鍛え、操縦訓練を行った同僚達……。 出撃前に、話していた先輩操縦士は
「昨日娘が生まれたようだ。帰ったらだっこするのが楽しみだ」
と言っていた。
ベテラン上司は
「今回の日本征伐が終わったら、退職して妻とのんびり過ごしたい」
と……。
すべての思いを踏みにじるかのように……今までのお前たちの積み上げてきた強さは無意味であると言わんばかりに訪れる機械的な死。
ムー国の複葉機と帝国の戦闘機以上の差がそこにはあった。
練度の問題ではない。
圧倒的な……埋めることの出来ない技術力の差である。
「し……死んでたまるかっ!!」
全身を恐怖が駆け巡る。
彼は艦隊方向に機首を向けた。
青い海に一筋の煙が尾を引く。
グラ・バルカス帝国 第1先遣艦隊所属 海軍航空隊迎撃機51機は、艦隊東方約100kmの海域で、日本国航空自衛隊F-15J戦闘機12機と戦闘、故障した1機を除き、全滅した。
◆◆◆
ナハナート王国 航空自衛隊航空管制センター
「敵迎撃機を排除、51機中撃墜50、損失ゼロ」
司令八神は、通信士から報告を受ける。
「残りの1機は何だ?」
「エンジンから煙が出ていました。エンジントラブルにより、敵艦隊方向へ飛行中であり、攻撃隊(BP-3C)の脅威とはなり得ないため、攻撃をしなかったとのことです」
「そうか、了解した」
「間もなく、敵艦隊がBP-3Cの射程圏内に入ります」
「そうか、射程に入り次第、各機攻撃を開始。
攻撃後は各基地に各々帰投し、すぐに補給を実施、待機せよ。
偵察機(RF-4E)は発進しているな?」
「はい、現在BP-3C後方100kmの位置におります」
「では、偵察機(RF-4E)は戦果確認、状況一報送れ」
「了解」
戦場は動き続ける。
◆◆◆
グラ・バルカス帝国 連合艦隊 第1先遣隊 旗艦バルサー
全長215.8m、最大幅28.96mの巨艦が海を行く。
出力8万馬力のエンジンは、巨体を軽々と動かし、強大な海水をかき分ける。
大きな砲撃力を誇る41cm45口径連装砲4基は誇らしげに水平線を向く。
その砲撃に耐えられる艦など、グラ・バルカス帝国戦艦を除いて存在しないであろう。
巨艦の艦橋で、帝国3将の一人、女帝ミレケネスは落ち着かない表情で水平線を睨んでいた。
「少しでも……僅かでも敵の情報があれば、細大漏らさず報告しなさい」
そろそろ迎撃機が敵攻撃隊と合敵しているはずである。
敵攻撃隊編成が全く不明であり、どの程度戦闘機が混じっているのかも解らない。
もっと言えば、数も不明、何もかも不明であったため、練度の高い攻撃隊を迎撃に向かわせた。
「少しは撃ち漏らしますかね」
傍らに立つ参謀デルンシャは、余裕たっぷりで話しかけた。
「少し……だと思うか?」
「はい、レーダーに攻撃隊が来ていると解った時点で、やつらの攻撃は半分防いだも同じ。 戦闘機に比べて攻撃機もしくは雷撃機は鈍足です。
これは、いかに技術が進んでも変わらぬ真実でしょう。
当然護衛戦闘機もついているでしょうが、こちらの迎撃機はすべて戦闘機、奴らの戦闘機の何倍も投入していることになりましょう。
いかに電子技術が優れていようとも、この戦力比は揺るがぬ……と考えまする」
「理ではそうだろう、しかし……」
「しかし??」
ミレケネスは、他の部下に悟られぬよう、信頼のおける参謀デルンシャに小声で話す。
「本能がこの海域から逃げろと、全力で訴えかけてくる。
嫌な予感がするのだ」
「ほう、ミレケネス様がそのような理に叶わぬ事をおっしゃるとは……珍しいですな
直感ですかな」
「そうだ、どうしようもなく絶望的な予感がする。今にも職務を投げ出して逃げ出したいくらいだよ。
デルンシャ、他の部下には漏らすなよ」
「もちろんでございます。私は、少なくとも今回の迎撃で相当数落としていると思うのですがね……日本軍は警戒すべき相手ですが、海軍本部の最悪の想定は、もはやSFです。
さすがに最悪想定はあり得ない」
微かに……無線が音声を拾った。
「ん?無線拾いました!!」
先ほどから全く聞こえなかった無線機が音を拾う。
「スピーカーにつなげ!!」
無線機の音を艦橋に流せるよう、通信士がスピーカーに接続した。
『……ら、S5D1、……は…滅、……返す、迎…隊は全……。
敵……艦隊方……攻、……十、……ガガガガ』
艦橋に微かな音声が響いた。
「こっっこれは!!」
艦長が驚きの声を上げる。
「ば……ばかな……」
参謀デルンシャは絶望的な声を上げた。
艦橋に緊張が走る。
女帝ミレケネスはすぐに指示を出す。
「迎撃隊が全滅している可能性がある!!敵が来るぞ、対空戦闘用意!!」
「対空戦闘ヨーイ!!!」
艦内にブザーが鳴り響き、兵が慌ただしく走り回る。
すでに戦闘配置は出来ていたが、すぐに攻撃が予想される状況は、兵達の緊張を加速させた。
「カンダル殿、敵の攻撃が予想される。誘導弾の最終防御をたのみます」
「了解いたしました。敵誘導弾の最終防御はお任せ下さい!!」
カンダルも、独自に各艦の職員と連携し、誘導弾欺瞞装置の準備を進めるのだった。
『エアウルフから艦隊司令部、艦隊東方30km、海面スレスレに飛翔物体多数。
これより迎撃する!!』
東方の低空を警戒していたエアウルフ部隊、目の良い隊員が奇跡的に対艦誘導弾を上空から目視した。
超高速で4本ほどが、海面を這うように飛行している。
エアウルフ隊の数15機。
「速いな……しかし間に合う!!!」
自機を遙かに上回る速度でロケットのような飛翔体が艦隊へ向かう。
彼らは急降下を開始した。
スロットルを全開にして、急降下を開始する。
機内ではエンジン音と風切り音が織りなす不快な合成音が鳴り響いた。
照準器をのぞき込み、彼の人生で最大の集中力を発揮した。
「飛翔体は速い!!チャンスは一撃のみだ!!必ず落とせぇぇぇぇぇぇ!!」
ダダダダッ!!ダダダダダダッ!!!!
アンタレス型艦上戦闘機15機から、連続して機関砲が射出された。
15機もの戦闘機から超高速で連続して打ち出される砲弾。時折混じる曳光弾が空を染め、幻想的な風景を織りなす。
初速750m/s(時速2700km)で繰り出される高速弾。
毎分520発の連射性能を誇るグラ・バルカス帝国製の20mm機関砲が吼えた。
おおよそ12秒、たったの12秒で携行弾数100発、2門で200発を撃ち尽くす。
各機200発、15機で3000発もの砲が、飛翔体に向かって打ち出された。
機関砲弾は、連続して海面に着弾し、爆発を起こした。
海水は、上空へ投げ出され、多くの水しぶきが上がる。
◆◆◆
旗艦バルサー艦橋
前方約30kmで、直掩についていたエアウルフ隊が猛烈な機銃の嵐を撃つ。
艦橋からもはっきりと見える光の嵐。
「どうだっ!!やったかっ!!!」
突然の誘導弾の攻撃。
すべての想定を上回って来る敵の攻撃に、参謀デルンシャは恐怖を覚える。
「友軍戦闘機から報告!!命中弾なし!!」
背筋に悪寒が走った。
前方の駆逐艦から猛烈な対空砲火が水平射撃に近い状態で放たれる。
各艦はすぐに対空砲を放ち初めた。
「敵ロケット上昇!!!」
各艦の攻撃は上に向き、空に向かって光の雨が行く。
「何故当たらないっ!!!!」
誰かが叫んだ。
上空へ上がったロケット弾のうちの1発は、放物線を描くような軌道を取り、獲物を狙うかのごとく巡洋艦ベルナンテに向きを変えた。
「巡洋艦ベルナンテ、チャフ及びフレア(欺瞞装置)射出っ!!!」
巡洋艦から大きな光の弾が多数出現する。
艦からなるべく引き離すかのように、猛烈な数の熱源体が射出された。
合わせて、アルミ金属片を含んだ霧が艦を覆う。
艦の周りは熱源体の発する光がアルミ片に反射され、光のオーラを纏う。
「どうだっ!!これが先進技術実験室の出した答えだっ!!」
熱源誘導に対してはフレアを。
電波誘導に対してはチャフを。
どちらも効果があるはず……先進技術実験室第1級技師カンダルは、絶対の自信をもって、巡洋艦ベルナンテを見るのだった。
海上自衛隊BP-3Cから放たれた93式空対艦誘導弾(ASM-2)、終末誘導に採用されている赤外線イメージ誘導は、チャフやフレアに欺瞞されること無く、正確に巡洋艦ベルナンテに時速1150kmで着弾した。
初歩的誘導システムであれば、帝国の欺瞞装置は効果を発揮することが出来たかもしれない。
赤外線イメージ誘導……日本国の技術は、グラ・バルカス帝国の想像を遥かに超えたものだった。
猛烈な炎球が海上に出現し、暗くなりかけた海を……天を照らす。
炎球は艦全体を包み込むほど強大であり、僅かに遅れて耳を覆うほどの爆発音が響き渡った。
「ああっ!!」
「巡洋艦ベルナンテ、駆逐艦バリスター、戦艦ピート及びリカータ被弾!!」
無機質な報告が艦橋に響く。
チャフやフレア(欺瞞装置)に騙される事無く、敵弾は正確に着弾した。
「な……何故だっ!!何故当たる。まさか、魔法で誘導されているのかっ?」
魔法をいう分野は未開拓だ。カンダルは日本国の誘導弾が魔法で誘導している可能性に至り、力が抜けて呆然と立ち尽くした。
視界の先には燃えさかる巡洋艦があった。
「現在被害確認中、巡洋艦ベルナンテ及び駆逐艦バリスター連絡取れません」
着弾地点の煙が徐々に晴れていった。
「駆逐艦バリスター轟沈、巡洋艦ベルナンテ大破、戦闘継続不能」
敵の攻撃を防ぐ手立てが無いことが判明した。
ただ的となり、撃たれ続けるしか手が無い。
どうすれば良いのか解らず、ただただ女帝ミレケネスは立ち尽くす。
その時、一時的にレーダーが回復した。
監視員がのぞき込んだ画面には、艦隊直近が光点で埋め尽くされる。
「レーダー回復、敵ロケット攻撃多数飛来!!距離30km、数は……250以上です」
「……なんてことだ」
ミレケネスの率いる第1先遣艦隊の数を上回る敵の攻撃。
圧倒的な物量で挑んだつもりだった。しかし、敵は1発で巡洋艦すら大破させる高威力で100発100中の弾丸を、艦隊数以上に打ち込んできた。
沈黙の絶望が艦橋に広がる。
書籍6巻、コミック3巻、外伝2巻(外伝は編集氏が書いてます)発売中!書籍は大幅加筆および文章修正有です。
ブログ「くみちゃんとみのろうの部屋」では、不完全版を数話先行配信してます(読者の方々の意見をより多く収集できるため、その意見によって展開を変えたりする場合もあります。
(ちなみにブログでの次の話は、コメント欄の意見を参考に加えたエピソード作成中)
これからも日本国召喚をよろしくお願いします。




