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そこの魔王!廊下に立ってなさい!!  作者: YL
第一回公開授業 テーマ「異世界転生したら・・・だった場合の計画策定について」
8/10

三時間目 初めての市場視察と異種族間交流

私がトリップスにやって来て、

大体1週間ほどが経過しました。



元の世界に戻るためにも

早くこの世界の言葉に慣れたかったのですが、

おばあちゃんに出してもらった子ども向けの

読物であっても、

「リンク」がまだまだ使いこなせていないためか、

字を読んでいるとすぐ頭が痛くなってしまったので、

最初は絵本くらいからいこうということに

なりました。



またこの15歳の身体に慣れることも

「リンク」を使いこなす上で大事だということで、

おばあちゃんのお手伝いを色々するようになりました。

掃除、洗濯、家畜の世話、料理と一通りやってみたのですが、

どの世界でも家事は大変な様です。

とはいえ電化製品がないので、

水汲みにしろなんにしろもっと大変かと

思っていましたが、

おばあちゃんが魔法を使ってフォローしてくれるので、

そこまで重労働とは感じませんでした。





そんなこんなで最初の数日間は

午前中は色々な絵本を読んだり、

おばあちゃんの話を聞きながら

この世界の事情や勉強について勉強し、

午後からはお手伝いのために走り回るという

日々を過ごしていきました。



またおばあちゃんは時々、

「私の言葉を真似してみな。」

といってこの辺りで広く使われているという、

『ノイターン』語の手ほどきをしてくれます。

その授業とそして『リンク』になれてきたおかげでしょうか、

何日目かには簡単な会話をノイターン語を使って

できるようになってきました。

そうすると今まで読むのがしんどかった文字もだんだんと

すらすら読める様になっていき、

今では絵本だけでなく色々な本にも

手を出し始めています。

やっぱりこの『リンク』ってすごいです。






「そろそろ、他の人とも話をしてみるかね?」

「えっ、この近くに人、住んでいたんですか?」



午前中の勉強が終わって、

一緒に作ったお昼を二人で食べていた時に

おばあちゃんがそう提案してくれました。



「それほど近くって訳ではないけど、

『駅竜』を使って20分くらい行った所に

『市場』が立っているんだよ。

お前さんが来て色々ストックが減って来たから、

少し補充しようと思っていたからね。」

「す、すいません、おばあちゃん•••」

「別に遠慮させたくて言ったんじゃないよ。

物を買う練習も兼ねて

ノイターン語の練習ができるからね。」



『駅竜』さんとはおばあちゃんが

家の周りで半分放し飼いにしている、

移動や運搬に用いる大きなトカゲさんのことです。

この前見せてもらったのとは別の『竜笛』を

使って呼ぶのですが、

空を飛ぶことは出来ない代りに、

素早くてとても力持ちさんです。







お昼ご飯を食べ終わった後、

駅竜さんにおばあちゃんと一緒にまたがり、

その市場へと向かいました。

おばあちゃん以外のこの世界の住民と会うのは

ちょっぴり不安もありますが、

同時に少しワクワクもしています。

私も少しはこの世界になれてきたのかもしれません。

この時点ではそれくらいの余裕があったのですが•••







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「さあさあ、新鮮な魚、買って行きなよ、安いよ、うまいよ!」

「うちのフルーツはノイターンで一番だぜ!!」

「そこの彼女!うちの串焼きつまんでいかない!!!」




『市場』と言っても人里離れた感じの場所ですし、

もっと牧歌的なものを想像していたんですが•••

何かもの凄くアグレッシブな売り子さん達ばかりです。

日頃の練習と『リンク』のおかげで

大体何を言っているのかは聞き取れるのは嬉しいのですが、

うるさすぎて若干頭が痛いくらいです。




「うーむ、これぽっちの菜っ葉で100『ラルド』とは

ちょっとぼったくりじゃ、ないかい?」

「このババア!うちの自慢の品にケチをつけるとはなんでい!!」

「誰がしわくちゃババアだって!!

消し炭にされたいのかい!?」

「そ、そこまで、言ってないのに•••。

70、いや50ラルドでいいです。」

「よし、買った!」



でもそんな売り子さんに一切負けず、

おばあちゃんは思いっきり値切って買っていました。

さすがです。



ラルドはこの辺りを統治するノイターン王国で主に

使われている貨幣単位らしいです。

貨幣経済が発達しているというのは中々注目すべき点です。

周りに海があるようには思えないのに魚介類も多く

売られていることから、結構流通網も整備されているみたいです。

社会科教師としての血が疼いて来ました。

帰ったらおばあちゃんにその辺りについて書かれた

本を貸してもらいましょう。




「コラ、イーコ、あんまり離れていると

物陰に引きずり込まれるよ!」

「あ、待ってよ、おばあちゃん!」



怖い言い方しないでよ、おばあちゃん。

でも確かに結構舐めるような目で見て来る人もいます。

き、気を付けた方がいいのかなあ?








若干不安になりながらも

おばあちゃんの後ろについて行くと、

市場の中心部からは離れた小さなテントみたいなものに

おばあちゃんは入っていきます。

私も離れない様にすぐ後ろから入っていくと•••




「•••いらっしゃい。」

「あ、し、失礼します•••きゃあ!!」

「コラコラ、エファリ、

それじゃあ、お客さんが驚くといつも言っているだろ。」

「•••失礼しました。」

「は、はあ。」



薄暗いテントの中、

私が頭上から降ってくるような声に顔をあげ、

自分より遥か上にあった相手の顔と長い首に驚きの声を

あげてしまっていると、

おばあちゃんが相手を諌めてくれました。



どうやらおばけとかではないようですが、

目の間の人物は一体なんなんでしょうか?

身の丈は軽く2m以上あり、

しかも首が数mさっき伸びていた気がするんですが•••

頭に角みたいなのも見えますし、

お、おばけとかではないんですよね。



「え、えっと、おばあちゃん、その方は•••」

「あ、そういえば、結局『魔人種』の説明をしていなかったね。

そいつは『麒人族』の行商人でエファリっていうんだ。

『魔人種』っていうのは人間に近い姿と知能を持ちながらも

同時に魔族や魔獣に近い魔力や性質も有している連中のことで、

『麒人族』は『麒麟』と『人間』の中間みたいな種族なのさ。

『麒麟』はあんたの世界にもいるって聞いたんだが、

それにしてはえらい驚きようだったね。」

「は、はい。

あんまり日常的に出会えるわけではないので•••

そ、そうですか。

キリンさんなんですね。」



そういえば絵本にも人間と動物が混じり合ったような

人達が出て来ていた気がします。

まだまだ十分この世界の種族分類が理解出来ていなかった

みたいですね。


そうか、キリンさんですか。

なんか、一気に親しみが持てた気がします。

私はゾウさんよりもキリンさんの方が好きですし。

ノイターン語の練習も兼ねて、

ちゃんと挨拶してみましょうか。



「は、はじめまして。

ラソーサおばあちゃんにお世話になっている、

イーコと言います。」

「•••驚かせてすいません。

エファリと申します、お嬢さん。

こちらこそ、ラソーサ様には

いつもお世話になっています。」

「ご、ご丁寧にどうも。」



良かった、私のノイターン語、

ちゃんと通じたようです。

しかもすごく丁寧に返答されてしまいました。

魔人さんって、名前のイメージではちょっと怖い

感じですが、とってもいい人達なんですね。



「うんうん。始めにエファリに会わせたのは

やっぱり正解のようだね。

まあ、魔人達は大体真面目で大人しいんだが、

こいつはその中でもさらにド丁寧だから、

安心して話をすれぼいいさ。

•••例の挨拶は私でもたまにびっくりしそうに

なるのから止めて欲しいんだが。」

「•••申し訳ありません。

癖になっておりまして。

それでラソーサ様、今回はどんなご用件で?」

「ああ、本題がまだだったね?

『水竜の骨』が欲しいんだが、在庫はまだあるかい?

こちらは交換のために薬を何種類か持って来ているんだが。」



おばあちゃんは私にエファリさんについて

説明をした後、

どうやら商談に入ってしまったようでした。



なるほど。この世界には人間に近い、

でも少し違う種族の人が色々いらっしゃるんですね。

帰ったらこの世界の種族について書かれた本が

あるかについても聞いてみましょう。






「•••では『頭痛薬』10人分との交換ということでよろしいですか?」

「全くおまえさんは外の人間連中を見習って、

もう少し欲ってものを持ちな。

『傷薬』10人分も付けといてあげるよ。」

「•••ありがとうございます。

『集落』のみんなも喜びます。」



そうこうするうちにどうやら商談が成立したようです。

魔人さんたちとは物々交換なんですね。

色々文化の違いがありそうで興味深いです。



「それじゃあ、そろそろ帰ろうかね。

エファリ、この子は色々あってこの辺りについて

不慣れなんだ。

たまに話し相手になってもらうかもしれないから、

頼むよ。」

「•••分かりました。

ではラソーサ様今後ともご贔屓に。

イーコさんもまたおいでください。」



また首を伸ばして丁寧にお辞儀をするエファリさん。

この世界にもお辞儀をする文化があるんですね。



どうやらおばあちゃんはこの世界の話し相手の一人として

エファリさんを紹介してくれたようです。

何かいい人そうですし、仲良くなりたいものです。

そうすると少しずうずうしいかもしれませんが、

スキンシップが大事ですよね!



「こ、こちらこそよろしくお願いします。

それで、あのエファリさん。

私、この世界のこと良く分かっていないので、

失礼じゃなければでいいんですが。」

「•••はあ。」

「あ、頭、触らせてもらっていいですか。

ダメだったら、全然いいんですけど。」

「•••変わった方ですね。

構いませんよ。

どうぞ。」

「あ、ありがとうございます。

わー、すごくいい毛並みです。

この角はさすがに触ったらいやですよね?」

「•••別にいいですよ。

少し恥ずかしいですが。」

「ほおー。

中々面白い子だね。」



私がエファリさんをさわさわしている間、

おばあちゃんはその様子を興味深そうに見守っていました。

問題があったら止めてくれたと思うので、

大丈夫なはずなのですが•••




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




その後市場の入口までもどって、

また駅竜さんに乗って帰宅です。



「市場はどうだったかね?」

「とても勉強になりました。

帰ったら市場や種族ついての本を

何冊か教えてもらえると嬉しいです。

それにエファリさん、すごくいい人で、

しかもさらさらでつやつやでした!」

「いきなりエファリの頭を触らせてと言い出した時には

内心ちょっとびっくりしたけどね。

まあ、そういうのを気にする奴ではないから大丈夫だろうけど、

少しあんたの気質についても分かった気がするよ。

他の人間もあれくらい好意的に魔人種に関われたら、

今みたいな『戦争』は解消するんだろうけどね•••」

「???」



駅竜さんに荷物を載せながら、

おばあちゃんは何かブツブツ呟いていました。

この世界では人間と魔人さんの間で何かあるのでしょうか?

市場でも中心部からはエファリさんのテント離れてましたし•••

また聞いてみようと思います。



そんなことを考えていたからでしょうか。

私は自分たちを見つめる別の視線に全く

気づけずにいました。

それが本日2個目の、

とても大事な出会いにつながることも

つゆ知らず。

アリアンローズ新人賞応募作品です。


うーん、5万字期限までに行くかもかなり怪しいですね(笑)

まあ、行かなくてもちゃんと連載は続けますので、

ご愛読いただけると幸いです。


ラソーサ以外初めての現地人との交流、

そして魔人との触れ合いです。

イーコも少しずつこの世界の人々の違いについて

学んで行く予定です。


すいません。

メインキャラを出すためにまたまた延長戦に突入したいと思います。


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