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そこの魔王!廊下に立ってなさい!!  作者: YL
第一回公開授業 テーマ「異世界転生したら・・・だった場合の計画策定について」
2/10

一時間目 気づいたら見知らぬ場所にいた状況からの復帰法

ああ、何故かとても気持ちがいい。

これが天国って奴なのでしょうか。

まるでお母さんのお腹の中に

戻ったかのようにポカポカです。





私はつい先程まで悲壮な決意を固めて

腕の中の生徒を守ろうとしていたのも忘れて、

ホワホワ気分でまどろんでいました。



本来なら今どうなっているのか

確認するべきなのでしょうが、

その時の私にはそんな当たり前の反応が

完全に欠落していました。

それこそ本当に死んで魂だけの

別の次元の存在にでもなってしまったかのようでした。








そんないつまでも浸っていたいような心地よい時間は

唐突に終わりを迎えました。




そう、再び訪れた急激な落下感と、




「冷たい水」の感触によって。










バッシャーン!!!



私が目を開けるとそこは

水の中でした。






「むごむご。」



え、一体どうなってるの!?

何で水?

私が落ちたのって海だったっけ?

とりあえず浮かばないと死ぬ!死ぬ!



「ぷっはあ!助けて、溺れてるんです!!

誰か、助けて!!!・・・あれ、

足が着く?」






私が必死でもがきながら水面上に這い出ると、

そこは岩場のような見たこともない空間でした。

そしてどんな深いところに落ちたのかと思ったのですが、

簡単に足がついて立つことが出来ました。

この浅さで落ちてきて、よく無事だったものです。





「え?え?何?一体、何?」



泉のような場所からあがっても、

まだ暫く絶賛大混乱中の私。

ここがどこなのか以前に、

自分が何なのかもはっきりとは

思い出せません。

何か大事なことを考えていたはずなのですが・・・





「*+><*‘>+<~=!」

「はい!?」



大きな声に驚いて振り向くとそこには

いかにも地獄の万人って顔をした小柄な老人が

私を見て驚きの表情を浮かべていました。



ああ、私天国じゃなくて地獄に来ちゃったんだ。

精一杯頑張ったんだけどなー。



そんなことを考えて少し半泣きになっていましたが、

そんな私を見たその老人は、

すいっと近づいてきて私の体をペタペタと

触り始めました。



「**‘+>+><‘+<*>?」

「一体何なんでしょうか!?

ざ、残念ながら地獄の通行料とかは

持っていないんですがダメですかね?

というか地獄って言葉が通じないんですね。

すごく勉強になりました!!?」



状況があまりに意味不明なため、

自分でも何を口走っているのかわからなくなっている私。

とりあえず目の前の相手が何を言っているのか分からない

ということだけは分かりましたって、

何なんだ、それ?





「+‘~|=>*}+‘<{+*?」

「すいません、何を言っているのかわからないんです。

I don't know what you said.

えっとフランス語ではなんて言えば良いんでしょうか?

真面目に第二外国語勉強しておくべきだったよー!」



とりあえず日本語では通じないことが分かり、

英語で言ってみたのですが、

流石に私の拙い語学力でも相手が話しているのが

英語でないことくらい分かります。

というかそもそも全く聞いたことのない

未知の言語な気がするんですが、

そんなの一体どうしたらいいんですか?

誰か、通訳してーー!!





泣きべそかいて混乱している私を前に

老人は一旦話すのをやめ、

何か考え込みだしました。



え、怒らせてないよね。

態度が悪いから刑罰を増やすとか

もっとひどい地獄に落とすとかはやめてーー!



そんな風にビクビクして目に涙を貯めていると、

老人は服の中から赤い宝石のようなものを取り出しました。

それを見て私は初めて少し落ち着きを取り戻しました。




あ、綺麗。

ルビーとかなんかかな?

くれるってわけじゃないんだろうけど、

何に使うんだろう?

というか、よく見るとこの人、

女の人?

おばあさんってところかな?

いや、こんな小柄な人見たことないから

勝手な先入観で年齢を判断したらダメなんだろうけど。



ようやく私は少しは周りの状況を伺う余裕を取り戻し、

目の前にいる老人の性別や仕草、

そして自分が今どこにいるのかをキョロキョロしながら

確かめ始めました。



部屋にあるのは先ほど私が入っていた泉というか

小さな温泉みたいなものと机と椅子。

机には本らしきものが置いてあります。

その先には先程は気づきませんでしたが、

多分目の前の老婆が入ってきた扉がありました。



あれ、とりあえずここ地獄ではなさそう?

ってことは単に海外?

なんでいきなり日本から飛び出しちゃったの!?





色々見回して考えているとまた混乱しそうでしたが、

目の前で老婆が宝石を見ながら何か

ブツブツ言っているので、

あんまり変な様子を

してはマズいと

必死になってこらえました。





しばらく見ていると老婆の手にある

宝石が淡い光を放ち始めます。


「キレー。」

「+>|=~‘*+<>‘!」

「ごめんなさい、ごめんなさい!

つい口に出ただけなんです!!」



私が素直な感想を口に出した途端、

再び老婆がしゃべりだし、

私の額に手を当てだしたので、

私は訳も分からず謝り始めました。





額には先ほどの宝石が当てられているのか、

その部分がだんだん熱くなってきます。

こ、これは奴隷の証みたいな感じで

焼印とかいれられちゃうんでしょうか?



「す、すいません、勝手に入ったことは謝りますから、

どうか売り飛ばすのだけは勘弁してください!

お金は全財産お渡ししますから!!

Please, Help me!!!」






私が喚くのも構わず、

老婆は何かを呟きながら

宝石を押し付け続けています。

その熱と光は徐々に強くなっていき、

私の額を溶かしてしまいそうです。



そしてついに宝石が・・・






私の額にニュルりと入り込んでしまいました。








「い、いやーーー!!

助けてーーー!!!

もう売り飛ばされてもいいから、

殺さないでー!!!

私まだ死ぬわけにはいかないのー!!

だって彼が無事かどうか確かめ」

「あーーーーもう、うるさい子だね!

まったくこんなことは2度目だけど、

あの子のほうがまだ大人しかったよ!!」

「ご、ごめんなさい。

静かにします!・・・

って、あれ?

何を言ってるのか分かる・・・」



私が額を掻きむしりながら

大騒ぎをしている姿を見かねてか、

目の前の老婆が声をかけてきたのですが、

一体どういうことでしょう、

今度は何を言っているのか分かります。

耳に聞こえている音はおんなじはずなんだけど、

どうしてなのか何を言っているのか分かるんです。





「えっと、どうして急に分かるの?」

「まったく・・・

でもどうやら上手くいったようだね。

あの子が来た時にまたこんなことが

あるかと思って準備しておいて良かったよ。

にしても今思うとあの子は随分『順応性』が

高かったんだろうね。

一瞬混乱してはいたけど、すぐに自分の『名前』だとか、

こっちにわかるように伝え始めたんだから。

同い年くらいでも全然『身分』や

『教育水準』なんかが違うのかねえ?」

「はえ!?う、う、うえーーん!!」



相手が何を言ってるかわかったと思ったら、

いきなり多分

「こいつはアホだ。」

みたいなことを言われだしたので、

一度緩んだ緊張を締め直せずに、

そのまま泣き出してしまいました。



私、そんなにアホなの?

というかおばあちゃん、

同じようなことが以前にあったってこと?

もう訳わかんないよーーー!

おうちに帰らせてーーーー!!





「ああ、こりゃ、ごめん、ごめん。

いきなりこんな事態になって

混乱するなって方が無理だね。

ほら、これで涙をお拭き。」

「ぐす、ぐす・・・、

ありがちょおございます。」

「よしよし。

よく考えたらロイの坊主と

あんまり変わらないくらいなんだ。

不安に決まっているわね。

安心し、もう大丈夫だから。」



苦笑したおばあちゃんが

ハンカチみたいなものを差し出してきたので、

私はまだぐずりながらも何とかそれを受け取って

涙を拭い、鼻を詰まらせながらも

お礼を言いました。





そんな私をなだめるように、

おばあちゃんは私の頭を撫でてくれたのんですが、

どこかその様子が亡くなった自分の実の祖母に

似ており、何だか本当に安心することができました。


全く状況がわからないのは変わりませんが、

もう無闇に怖がる必要はない。


そんなことをおばあちゃんの

しわがれた手の温もりは、

優しく伝えてくれたのでした。


アリアンローズ新人賞応募作品です。


異世界にボッシャーンとやってきました。

あんまり異世界ものを読まないので、

どういうパターンで来るのがメジャーなのか分からないのですが、

こんなかんじになりました。

どうしてこういう形になったのかは次回説明するつもりですが、

着想元はなんだったんだろう?

自分でも思い出せません。



まだまだ読者の皆様も状況が分からないと思いますが、

進行ゆっくりですいません。

次の話で謎の老婆から主人公が今いる場所についての

レクチャーを受ける予定です。

それでは次回をお楽しみに。

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