マリアナ沖海戦 号砲一発!大和突撃
号砲一発!です。大和は行かないといけません。
一機艦攻撃隊が目にした燃えている空母はフランクリンだった。おそらく航空機の準備中に起こった事故だろう。ついている。勝手に1隻減った。盛大に爆発炎上中のアレは攻撃目標から外していいだろう。
既に天山雷撃隊は低空に降り、彗星は高度を3000から4000で突撃している。天山でも爆装機は隙を狙っている。八十番だ。1発当たれば。
敵の対空砲火が凄まじい。トラック沖の比ではなかった。直撃を受けたのか爆散する機体もある。
突撃してもトラック沖以前のような綺麗な編隊を組んでの雷撃や一本棒になっての降爆は無くなっている。トラック沖の検証で対空砲火の狙いが付けやすいとされ、損害を減らすために多方位同時攻撃という手段に変わった。なので以前を知るものからすれば「この下手くそども」ということになる。
やっている方は必死だ。わずかな時間差による多方位同時攻撃など空中衝突の危険性が高い。特に降爆では。そのため時間差を付けて少しでも衝突しないように訓練でも必死でやってきた。
不幸な的はタイコンデロガになった。必死の操艦をして既に何機かの爆撃を躱している。だが、旋回する内側に天山5機が迫っていた。艦が傾いているので内側は撃ってくる対空砲火が少なかった。3機の天山は投雷に成功した。2機は周囲からの対空砲火で墜とされた。更に離脱中に1機墜ちる。タイコンデロガの右舷に2本の水柱が立った。
次に不幸な艦はアラスカになった。天山水平爆撃隊は空母を射線から逃し仕方なしに目標にした。こんな濃密な対空砲火の中、のんびりとやり直す余裕はなかった。8発の八十番通常が投下され1発が命中した。艦後部に喰らったその1発でアラスカは行動不能になる。命中したのは舵取り機室後方で水平装甲を貫通し艦内部で爆発した。舵は面舵で動かなくなりアラスカはグルグルと定点旋回を始めた。
3番目に不幸な艦は空母ハンコック。雷撃は全て躱したものの転舵中に彗星から4発の命中弾を受けた。これで飛行甲板が大破。格納庫内に有ったガソリン抜き取り未処理の機体が損傷して炎上。爆弾はずべて弾薬庫に降ろした後なのが唯一の幸いだった。
一機艦第1次攻撃隊の仕事が終わった頃、53.2任務部隊の空母2隻が炎上。1隻が傾斜。アラスカは舵を何とかしようと停止。駆逐艦2隻が沈没。巡洋艦2隻と駆逐艦2隻が中破程度の損傷を受けていた。
そこへトラックからはるばるやってきた攻撃隊が押し寄せた。推定位置まで飛んできたが目標の捕捉に悩んでいた。上空で監視している一〇〇式司令部偵察機四型との交信方法が無かったからだ。だが遠くに煙が見えた。あそこに違いないと。
機数も残弾も減ってしまった直援機では強風の護衛を突破出来ず、銀河全機が突入し攻撃を開始した。
艦隊防空力も落ちてしまった現状で高速機の攻撃は厄介だった。
奮闘したものの更に空母バンカー・ヒルが飛行甲板を破壊され、巡洋艦2隻が傾斜している。駆逐艦も3隻姿が見えない。アラスカは横転している。姿が消えるのも時間の問題だ。
追い打ちを掛けたのは一機艦の2次攻撃隊。残る健在な空母ワスプに彗星が集中攻撃を仕掛け見るも無惨な姿にしてしまった。天山は全機雷撃で対空砲火が弱い艦を狙っていく。タイコンデロガは横転し沈没。ハンコックは飛行甲板前端が水面に近い。フランクリンも大きく傾いている。ワスプは大破炎上中。バンカー・ヒルも飛行甲板に大穴が開いている。グアムは炎上している。巡洋艦も1隻が沈没。駆逐艦も損傷艦が増えた。もう空母機動部隊として残骸になってしまった。
53.1任務部隊と53.3任務部隊はそれぞれ30マイル離れており、直接対空砲火で援護出来る距離になかった。たった1時間の出来事とは思えない。
その頃二機艦は第三戦速で東へと向かっていた。テニアンを通過しサイパン島南辺りまで来ている。サイパン島が攻撃を受け、次に敵機動部隊1個の大損害を与え無力化したとの報が入電したからだ。
「今行かんでいつ行くのだ」
まだ2個機動部隊残っています。角田司令官。それにまだ指示が来ていません。周囲は思った。
だが彼は、サイパンが攻撃を受けた時点で全機発艦一機も残すなと命じた。
そうは言っても中小空母の寄せ集め。170機を出すのが限界だった。
小型空母各艦は九七艦攻は対潜哨戒用として数機積むのみで、残りは零戦と天山だった。彗星は取り扱いに無理があるとして積んでいない。
内訳は強風二二型32機、零戦四三型34機、彗星54機、天山58機。
「なんだと?」
「はっ、健在な敵機動部隊の上空で監視に当たっている偵察機からも通信がありました。未確認の攻撃隊確認と。その攻撃隊と思われる電波発信があり傍受しました。二機艦艦載機の周波数と符丁を確認」
「角田さんは何やってくれたんだ。まだ早い」
「如何しますか」
「如何もなにも、戦果の確認をしてからだが可能なのか」
「新たに偵察機が急行して確認しております」
「おお。あいつか。凄い高性能だと聞く」
「偵察機からです。敵正規空母1隻洋上停止。戦艦1隻火災発生も鎮火。巡洋艦1隻炎上中。駆逐艦2隻撃破の模様。以上です」
「二機艦攻撃隊からだと大型正規空母1撃沈確実。未確認大型戦艦2隻撃破。巡洋艦4隻撃破。駆逐艦3撃沈。駆逐艦2隻撃破だったな」
「良く有る誤認でしょう。実際撃破していたとしても偵察機からだとどの程度の損傷かもわかりません」
・・・ポクポク チ~ン ・・・
「よし。行くぞ。艦隊針路120度。艦隊速力第二戦速。給油艦は護衛を付けて父島まで下がらせろ」
「長官。まだ敵には健在の大型空母が多数です」
「それでも残り4隻だ。他は小型空母なのだろう。勝負出来る。明朝、攻撃隊を発艦させる」
「了解」
「新型の未確認大型戦艦か。こいつの主砲をまた撃つとは思わなかった」
「必ず砲戦になるとは限りません」
「その未確認艦を航空攻撃で沈めればそれも良し。なら後方の旧式戦艦群と砲戦を行う」
その頃二機艦では角田司令官があまりの未帰還機の多さに唖然としていた。170機出して帰ってきたのが強風14機、零戦16機、彗星32機、天山22機。出撃後の残り機数から2次攻撃隊は出せないとしてこの回限りだったが、もう1回出せば二機艦は空母部隊としての能力は失われるだろう。
誤算は、サイパン島から出撃出来なかった事だ。先の襲撃で滑走路他に甚大な被害が出て攻撃隊どころではなくなっていたという。それでも170機なら敵帰還時の混乱を突いてやれるだろうと考えていた。確かに混乱していたが敵は強大で統率も取れていた。報告によるとトラック沖海空戦の時の倍近い対空砲火を浴びたとあった。
航空隊には無茶を言ってしまった。しかし戦争なのだ、と自分に言い聞かせた。
そうだ、山口の奴にどう言い訳しようか。三機艦から補充機もらえるかな。などとも考える。
一機艦はその日発見されなかった。
トラックから長躯偵察に出ていた銀河や連山は犠牲もありながら、敵後方部隊の存在位置と規模を確認した。前回と速力、進路とも同じ。数はより正確にになった。
旧式戦艦8隻
巡洋艦11隻
艦隊型駆逐艦23隻
小型駆逐艦24隻
小型空母22隻
輸送船250隻前後
翌日、トラックからの応援が索敵に参加している。犠牲を出しながらもおかげで敵機動部隊主力の位置も判明した。まだ一機艦と敵機の接触はない。
銀河や連山が敵索敵機と出会うと空中戦を挑んでいると報告もある。
「発艦始め」
『帽振れ』
一機艦から敵に向かう210機。昨日と同じだ。違うのは出してしまうと格納庫に酷い空きが出来る。それだけ減っていた。2次攻撃隊の編制は出来ない。
今日はサイパン島基地も航空機の離着陸が可能となり、早朝から索敵攻撃に出たと報告があった。トラックの機体が敵主力を見つける前だ。賭に出ている。一機艦もそれに乗るつもりであり、万が一空中集合が出来れば敵主力を一気に撃破も可能だろう。
敵主力は大量の未帰還機と引き換えに撃破出来た。サイパン基地攻撃隊の鬼気迫る攻撃は敵に打撃を与えた。追いつこうと頑張ったが追いつけず、サイパン基地航空隊攻撃開始から5分後の到着となった。それでかなりの打撃を与えた頃。二機艦がどこにいるのか知らないが、また攻撃隊が現れておいしいところをさらっていった。
一機艦も発見され空襲を受けた。赤城と蒼龍が沈み加賀と翔鶴が中破で、護衛を付け分離し下がらせた。
ならば後方輸送船団を撃滅し、後顧の憂いを無くすだけだ。
船団に迫るべく艦隊速力を上げた。
翌翌日、退避する船団の最後尾が見えた。戦艦も。敵も必死となり戦闘機から攻撃機まで繰り出してくるが、雷撃機がいない。既に空母は分離し後方30海里に下がっている。爆弾だけならなんとかなるし、一機艦だけではなく二機艦、三機艦から送られてきた直援機も頑張っている。三機艦は速力的に苦しく距離が開き航続距離の関係から三機艦に帰らずに一機艦へ着艦するということだ。
一年ぶりの事だ。戦場に46センチ砲の砲声が響く。わざわざ大和、武蔵、信濃が全門発射態勢に入り敵戦艦に向けて46センチ砲27門の斉射を行った。
次回更新 8月25日 05:00 予定 予定です。