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マリアナ沖海戦                                人間は、不幸にありては希望が救いの主。

人間は、不幸にありては希望が救いの主。byメナンドロス  古代ギリシャ

どんな希望があるんでしょうね。もちろん戦争している人間は不幸。


 回りくどい転電で第二機動艦隊の位置がわかったのは十二月十六日の午前。グアム哨戒隊が発見。基地に帰投後暗号電で発信したのだ。同日午後、第三機動艦隊の位置も判明した。第三機動艦隊は実質航空機運搬任務であり、大鷹が対潜哨戒任務で飛行甲板を開けている以外、甲板係止までして零戦を積んでいる。一番消耗が多いと目される戦闘機である。強風と烈風も積みたかったが発艦もままならず第三機動艦隊各空母には搭載出来ない。



「第二機動艦隊と第三機動艦隊の位置はここか」

「まともにぶつかれません。テニアンの東50海里と80海里付近は妥当でしょう」

「こちらもまともにはぶつかれない。潰されてしまう」

「敵への攻撃はサイパン基地と合同で行うしかないですが、敵の動向がはっきりしません」

「はっきりしないとは?マリアナを狙っているのだろう。敵の位置はわかっている」

「言葉が足りませんでした。どういう作戦行動を取るのかがわかりません」

「まあそうだ。敵からすれば前回の屈辱を晴らすのと同時にサイパン占領だろう。トラックの時は敵がしくじってくれた。今回はそうはいかんだろうな」

「敵も索敵機を多数飛ばしているはずです。我が艦隊が見つかったら終わりでしょう」

「敵の半分しかないからな」

「そこでトラックの時は敵がトラックに向かってくれましたので、今回はマリアナに引き込んでみてはどうでしょうか」

「見つかって、マリアナに遁走か」

「有り体に言えば」

「そして総力を挙げてぶつかるか。まあ勝つにはそれしか無いだろう。だが、そう都合良く行くかどうか」


 そう第一機動艦隊では考えていた。だが、敵には敵の都合があった。



《敵、大編隊接近中。推定機数300機。距離120海里、方位80。速度160ノット。繰り返す。敵、大編隊接近中。推定機数300機。距離120海里、方位80。速度160ノット。》


 サイパン島基地にサイレンが鳴り響きスピーカーががなる。


 索敵機の谷間を突かれたのか、敵編隊の接近はいきなりだった。電探で探知出来たのでいいが、電探のない頃なら完全に奇襲成功となっていただろう。

 そして3分後。


《先の編隊後方に同規模の梯団有り。距離120海里。推定機数300機。方位、速度は同じ。繰り返す。後方に同規模の梯団有り。推定機数300機。方位、速度は同じ》


 5分後に再びがなるスピーカー。


《緊急、緊急。サイパン島東方50海里に敵戦闘機編隊。低空にて高速接近中。機数100前後》

《戦闘機隊緊急発進急げ》

《空中退避する機体は戦闘機を妨げるな》


 対潜哨戒艇が発見したもので、対潜哨戒艇の追信は無い。

 サイパン島基地司令部では、


「迎撃間に合いそうか」

「テニアンにも応援を頼みました。テニアンの機体は時間的には無理です。敵攻撃隊の迎撃に間に合ってくれればいいでしょう。本基地の機体は暖機が済んでいますので発進は早いと思います」

「そうか」


 通常高度で攻撃隊を接近させ、その隙にレーダー覆域を避け低空で戦闘機だけで高速強襲を仕掛けてきたのだった。

 発見出来たのは僥倖であったと言える。

 空中に在った一〇〇式司令部偵察機四型が進路を変えて捜索したところ、機動部隊複数を発見した。

 




「サイパンから400海里だと」

「遠くから出してきました。驚きました」

「しかし、300と300に100か。700機を同時出撃させる能力は恐ろしいな」

「どうされますか」

「当然出す。まだ見つかっていない。出せば見つかる。敵もそれを待っているのかもしれない。まだ400機程度の出撃能力はあるだろう」

「守りに徹しますか」

「いや出す」

「一機艦だけで突撃ですか」

「二機艦と三機艦は、あの位置ではマリナアの守りが仕事だ」

「魚雷の調停に1時間ほどか掛かります」

「全機でなくてもいい。天山と彗星の高速性に賭ける。彗星の準備済み次第で雷装を終了。発艦させる」

「攻撃力は落ちます」

「時間の勝負だ。時間を優先する。とにかく飛行甲板を潰してしまえ」

「はっ」

(これではトラックの二の舞になりそうだが、アメリカの奴らは何考えているんだろう)


 30分後、一機艦各空母から烈風一一型、強風二二型と三三型、彗星と天山の編隊が敵機動部隊に向かった。第一次攻撃隊が220機。敵の三分の一が精一杯だった。







「まだ見つからないのか」

「索敵機を密に出していますし、潜水艦も12隻展開しておりますが、未だに」

「どうするのだ。陸軍のヘイワード中将がもう待てんと言っている」

「先にサイパンをやるしかないのではないでしょうか」

「それしか無いか。今更だがこんな時間的余裕のない、こちらにだけ都合の良い作戦考えたのは誰だ」

「海軍作戦本部のナイフ少将だそうです。知りませんか?噂ではショートサーキットしたそうです」

「そうか。そいつか。生きて帰れたら俺のガバメントが火を噴くぜ」

「お供します」

「ありがたいが俺だけで良い」

「そうですか、残念です。家宝のコルトM1851ネイビーが有るんですよ。代々海軍なのでね家は。では、もしあいつが前線に出てきたら敵前に放り出してやります」

「それまで絶対に死ぬなよ」

「お互いですね」


 第一次攻撃隊の300機が53.1任務部隊と53.2任務部隊から発艦した頃、53.3任務部隊からF4U戦闘機と先導のTBF2機のみの104機が発艦した。戦闘機102機の任務は航空機の地上制圧。TBFはほぼ全速で飛んでいる。帰りはガソリンが持つか怪しい。

 アメリカ海軍は稚拙な作戦のせいで窮地に陥ろうとしていた。その中で最善を尽くそうとも。






「敵編隊だと」

「はっ、サイパンから発信がありました」

「う~ん」

「どうされますか」

「一機艦は山口君だったな」

「はっ、山口連合艦隊司令長官直卒です」

「なら絶対に攻撃隊を出す。こちらは銀河を出せるだけと強風二二型も出せるだけだな。銀河は全機爆装。魚雷調停時間が惜しい」

「しかし、強風の航続距離が足りません」

「マリアナのどこかに降ろせ」

「片道ですか」

「トラック沖の時はサイパンの連中がやったぞ」

「了解です。搭乗員はやってくれるでしょう。では、魚雷は間に合うのものだけでも積みませんか」

「どのくらいいける」

「10本程度でしょうか」

「よし、やれ」


 30分後、トラック島から銀河56機と強風二二型62機が発進した。雷装は8機。雷装機はスロットルを開けて爆装機に着いていく。



 奇しくもトラック沖同様、53任務部隊は多方面からの同時攻撃を受けようとしていた。





「レーダーに反応。西北西からです。方位300。距離60マイル。航空機編隊、およそ200。速度240マイルにて接近中」

「FUCK、西北西からだと」

「そうです」

「旗艦に通信。急げ」


 ピケット艦からの通報を受けた53任務部隊は驚いた。自分たちが相当北より進路を取っていて日本の機動部隊はトラック-マリアナ間にいると思っていたのだ。もちろん潜水艦も索敵線もそちらを重点的に見張っていた。北など無視していたくらいだ。


「上空直援機は全機西北西方位300へ向かえ。ピケット艦が誘導してくれる」

「戦闘機発艦準備急げ」

「爆弾は弾火薬庫に下げろ。急げ」

「ガソリンを抜け。急げ」


 上がっていたのは30機ほど。緊急発艦出来たのが60機ほど。200機を阻止するには足りなかった。


 アメリカ海軍1次攻撃隊は、その数でマリナア防空網を食い破った。先行する戦闘機隊が阻止されるも30機程度が飛行場に雪崩れ込み、地上を機銃掃射と小型爆弾複数をばらまくことで航空機に多大な被害を与えた。この攻撃だけで60機相当が飛行不能になった。

 そこに300機が攻撃を開始。すぐにやってきた300機も同じく。グアムとテニアンからも飛んできたが完全阻止は不可能で、滑走路と地上にあった機体に相当な被害が発生した。

 ただ、破壊は不完全で息の根を止めるには反復攻撃が必要と報告した。

 これを受けて第2次攻撃隊の準備をしていたのである。そこに一機艦攻撃隊が押し寄せたのだ。目標になったのは53.2任務部隊だった。

 不幸はそれだけではなかった。今度はトラック方面から100機から150機位の編隊がやってくると観測された。

 1次攻撃隊は帰還途中で空母は戦闘機を上げ、攻撃機からは爆弾を降ろしガソリンを抜くという危険な作業を特急でやっていた。

 不幸にも程があった。アマチュアが多いのだ。


 

 

 迎撃網を突破した一機艦攻撃隊から炎上する空母が見えた。


「トツレ」


「トトト」


 襲いかかった。


次回更新 8月24日 05:00 予定 予定です。

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ナイフ少将?准将は……アメリカ海軍には無いか
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