マリアナ沖海戦
トラック沖海空戦再び。か?
第三のバルチック艦隊出現。か?
圧倒的戦力の前に屈する。か?
か?です。どこぞのスポーツ新聞。か?
昭和十九年十二月十六日
トラックから偵察に出ていた一〇〇式司令部偵察機四型から敵艦隊出撃の報を受ける。進路はウェーク島方面。
「今更、韜晦航路もないだろう。トラックの攻撃圏を避けての航路だな。本土は無い。目標はマリアナだ。全軍に警報を出せ。俺のカンが最大級に危ないと告げている」
「元帥閣下からです『目標はマリアナ』」
「この航路だとそうなるか。俺もそう思う」
「では」
「パラオにいる奴らを集めろ」
一〇〇式司令部偵察機四型は敵も迎撃方法を模索し、撃墜される機体が出てきた。海軍は5機借りたが2機失った。陸軍もマリアナが取られては一大事と自前で四型の運用を始めた。もっとも操縦士は陸軍搭乗員だが偵察員は海軍搭乗員が務めている。これは艦艇の区別や速力計測が陸軍偵察員では難しいからだった。
トラック基地所属の一〇〇式司令部偵察機四型は5機の犠牲を出しつつも敵艦隊の動向と規模を探っていた。
纏めると主隊である機動部隊が3個で
エセックス級大型正規空母5隻
アイオワ級新型戦艦と見られる戦艦2隻
大型巡洋艦8隻
駆逐艦20隻前後
の編成が1個
エセックス級大型正規空母5隻
小型戦艦または超甲巡2隻
大型巡洋艦6隻
小型巡洋艦3隻
駆逐艦20隻前後
の編成が1個
小型空母の集団が1個
小型空母5隻
大型巡洋艦7隻
駆逐艦16隻前後
更に後方
攻略部隊と思われる艦隊
護衛
旧式戦艦8隻
巡洋艦12隻
艦隊型駆逐艦10隻程度
小型駆逐艦30隻以上
小型空母20隻以上
輸送船200隻以上
がマリアナに向けて進んでいた。後方の攻略部隊に速度を合わせているのか主隊の速力も10ノットを切る程度だ。
恐るべき数。トラック沖であれだけ沈んでもまだこれだけ空母がある。
「大丈夫だ。心配するな。訓練はやってきた。信じろ」
「何やってるんですか。艦長」
「なに、みんなアマチュアだからおまじないさ」
「確かに空母乗組員もパイロットも半分近くアマチュアですね」
「ベテランは皆、トラックから帰ってこなかった」
「1割も帰ってこなかったんですよね」
「それを皆で取り合いだ」
「結局、新造空母に集めて教官にして未経験者へ扱いを叩き込んだんですよね」
「陸に残っていた連中だけでは足りんのでな。人がそうなら空母なんか全部2年以内のピカピカだぞ」
「本艦もそうですよ」
「こいつはあの頃、進水が終わって艤装員もいた。それに艦隊編入から1年経っている。まだマシだ」
艤装員が乗り組んでいたり、就役したての艦は運が良かったのだろうか。人員には恵まれていた。しかし、それが奪われる羽目になった。ベテランの多い艦でも結局3割の乗組員がアマチュアだ。中にはアマチュア6割とか危ない艦もある。
マリアナ攻略部隊は第53任務部隊で第53.1任務部隊と第53.2任務部隊と53.3任務部隊に分かれていた。
空母を5隻纏めたのはトラック沖海空戦で対空火力の分散が起こり特定空母が集中的に狙われたことから、集団での対空火力の強化と狙われる対象の分散を図ったものだ。これがいいのかは実戦にならないとわからない。発着艦訓練では間隔を開けないと問題が出て、4隻以下の方がいいという連中もいる。しかし、4隻以下にすると護衛艦艇が足りなくなる。またトラック沖で戦艦に砲撃を受けたことから対戦艦で砲戦が出来る艦艇が含まれるのが望ましいとされていた。
「マジックヒューズは役に立つのかな」
「触れ込みだと凄いようですが」
「目標を感知しないと炸裂しないか。炸裂すれば目標近くということだが、不発でも炸裂しないよな」
「艦長、信じましょう」
「そうだな。魚雷の信管もようやくまともになったことだし」
艦長達はブリッジにいる。CICよりも海を見ていると安心出来るのだった。
艦はCV-12ホーネット。
艦橋の窓からはCV-10ヨークタウン、CV-11エンタープライズ、CV-13レキシントンが見える。CV-14サラトガは後ろにいてここからでは見えない。
あの海戦で沈んだ艦名だが、わざわざ建造中にネームプレートまで差し替えて名前を復活させた。上はなに考えているかわからんな、と言ってため息をついたのを想い出す。
53.2には、CV-16タイコンデロガ、CV-17バンカー・ヒル、CV-18フランクリン、CV-19ハンコック、CV-20ワスプがいる。他にインディペンデンス級の残り5隻で編成された53.3任務部隊もいる。
負けるわけもない。と思いたい。ワスプ艦長は訓練未了ですごく不安があると言っていた。就役して3ヶ月じゃあなと思う。その内1ヶ月は航海だ。マーシャルに来て1ヶ月やっているが地上に上がれないと乗組員のストレスは相当だろう。
「さて、一機艦はトラックにいるからいいが、パラオの二機艦と上手く合流出来そうか」
「どうでしょう。無線封止で位置がわかりません。予定通りと考えるしかないでしょう」
トラック沖空海戦と編成が変わってきている。もう戦艦同士の撃ち合いは無いだろうと、一艦隊残存各艦は一機艦と二機艦に編成替えで回ってきた。第二艦隊はいざという場合の切り込み部隊で、通常は一機艦に帯同している。
第一機動艦隊 旗艦 大和
第一航空戦隊 赤城 加賀 秋月 涼月
第二航空戦隊 飛龍 蒼龍 初月 照月
第五航空戦隊 大鳳 翔鶴 瑞鶴 新月 若月 霜月
第一戦隊 大和 武蔵 信濃
第四戦隊 妙高 那智 羽黒 足柄
第八戦隊 利根 筑摩
第二水雷戦隊 矢矧
第九駆逐隊 朝雲 峰雲 荒潮
第一〇駆逐隊 秋雲 夕雲 巻雲 早波
第十五駆逐隊 黒潮 親潮 早潮 夏潮
第十六駆逐隊 初風 雪風 天津風 時津風
第二艦隊 旗艦 最上
第七戦隊 最上 三隈 熊野
第十戦隊 北上 大井 島風
第一水雷戦隊 阿賀野
第四駆逐隊 嵐 荻風 舞風 不知火
第八駆逐隊 朝潮 大潮 大潮 満潮
第十九駆逐隊 霰 涼波 玉波
第三十一駆逐隊 長波 巻波 清波 大波
第二機動艦隊 旗艦 高雄
第六航空戦隊 雲龍 葛城 冬月 春月
第三航空戦隊 準鷹 飛鷹 千代田 千歳
第六駆逐隊 吹雪 白雪 初雪 夕霧
第六航空戦隊 龍驤 瑞鳳 龍鳳 翔鳳
第二十駆逐隊 天霧 朝霧 夕霧 狭霧
第一戦隊分隊 長門
第三戦隊 金剛 榛名
第五戦隊 高雄 鳥海
第三水雷戦隊 川内
第十一駆逐隊 雷 電 響 暁
第十九駆逐隊 磯波 浦波 敷浪 綾波
第一二駆逐隊 叢雲 東雲 薄雲 白雲
第三機動艦隊 旗艦 扶桑
第八航空戦隊 大鷹 沖鷹 雲鷹 松 竹 梅
第十航空戦隊 海鷹 神鷹 桃 桑
第十一戦隊 扶桑 山城
第六戦隊 青葉 加古 衣笠
第四水雷戦隊 那珂
第二駆逐隊 村雨 夕立 春雨 五月雨
第三駆逐隊 初霜 初春 若葉
第二十四駆逐隊 海風 山風 江風 涼風
第二十七駆逐隊 有明 夕暮 白露 時雨
第二戦隊の伊勢と日向は相変わらずシンガポールの門番である。第四戦隊が出てきて摩耶と愛宕は本土にいる。
空母は大鳳、雲龍、葛城、千歳、千代田、海鷹、神鷹が加わった。
トラック沖海空戦で第一艦隊の対空能力が低い事が問題になり25ミリ機銃の威力と射程と装弾数が問題となった。高角砲の追随能力も問題とされ電動機の強化を行った。
駆逐艦は二番砲塔を撤去して跡地に40ミリ機銃4連装を1基か25ミリ三連装機銃2基を装備した。他の艦も40ミリ機銃や25ミリ機銃をとにかく間に合う艦に装備していった。後年、記録が合わず実態がわからない機銃装備として話題になる。この時はまさに刹那的対応をしていた。
艦隊各艦の電探もPPIスコープをようやく実用化し3割程度だが換装が進んでいる。
想像を絶する攻撃力を持つアメリ海軍機動部隊との決戦が迫る。
さすがのアメリカ海軍でも空母要員は人材枯渇するはず。でも搭載機数1200機の恐怖。後方も含めれば更に400機以上
日本艦隊はどう頑張っても800機。トラックとマリアナで300機から400機。←各島にするのを忘れました。
21日修正で、トラックに300機程度。マリアナ諸島全域で700機程度。
信濃は開幕早々の比叡・霧島喪失という事態から、戦艦で建造を続けました。
若干配備の早い艦もあります。
次回更新 8月22日 05:00 出来るといいな。




