負けへん
所々でエセ方言になりますがご容赦を。地域言語指導もご遠慮下さい。
「三菱の新型、聞きましたか」
「360ノットらしいな」
「発動機が最新の水メタノール噴射装置付きの奴です。1割馬力が違います」
「それはデカいな。ウチのにはまだ使えないのか」
「聞いてみます」
「まだ供給が追いつかないのでしばらくは我慢してくれと。向こうも機体製造の方が早いようです」
「三菱優先か。ならば、こちらで独自にやれるようなアイデアを出せ」
「こんなんありましたー」
「笑気ガス噴射だと?」
「正気かいな」
スパン
「痛いがな」
「黙ってろ」
「難しいことは化学の専門家でないとわかりませんが、相当馬力アップが出来るようです」
「よっしゃ。やったれ」
社長の認可が下りた。
「壊れたがな」
「2900馬力は出たぞ」
「発動機各部の強度が足りないな」
「強度に合うだけの出力にするか」
「よっしゃ。2600馬力なら1時間耐えるで」
「アウトー!」
「なんでやねん」
「それ、おまえ、貴重なアメリカ製高級航空機用エンジンオイル。勿体なくて常時使えるか。第一在庫品しかないだろう。ああ、勿体ない」
「けど、こないだ完成した国産品だと30分も持たんのや」
「どのくらいなら持つ。供給は大丈夫なのか」
「20分やな。供給はバッチリや。軍の認定品になったで」
「20分か。なあ、重量はどうだ。水メタノールも重いが、こいつはボンベが重そうだ」
「まあ重いな。でも、全部合わしたらあっちと変わらへんで(使用前ならや)」
「じゃあ、安全圏で15分だ。ガスもそのくらいで頼む」
「ま、しゃーないな」
川西は軍に「独自の出力向上策でハ42-45同等の出力を出せる見込みとなった」とハ42-22の供給増量を申請。軍は半信半疑だったが現物を見てハ42-45の生産に支障無しと川西の申請を認めた。
発動機はハ42-22Kと末尾にKが付けられた。
この笑気ガス噴射装置は後年、マニアが勝手に「KM-1ブースター」と名付け通称になっていった。中には正式名称だと思う人も出るほどに。
川西は強風を早速改造し強風三三型として海軍に採用された。川西は研究を続けていた自動空戦フラップを採用し、凄まじい空戦性能を発揮した。ただ小回り性と引き換えに機速が低下するので使わない搭乗員も多いという。
強風三三型
全幅 11.5メートル 格納時8メートル
全長 10.5メートル
全高 3.75メートル
自重 3.4トン
発動機
ハ42-22K
離昇出力 2500馬力
1速公称出力 2400馬力/2000メートル
2速公称出力 2200馬力/6000メートル
笑気ガス噴射装置使用時
最高速度 363ノット/6200メートル
航続距離 950海里
300リットル増槽装備時+230海里
両翼下増槽2本装備時+440海里
3本装備時+660海里
上昇力 6000メートルまで6分30秒
武装
機銃 主翼 九九式二号三型20ミリ機銃 4丁
装弾数各100発
爆弾 左右主翼下に三番または六番を各4発計8発
胴体下に二五番を1発。ただし増槽と排他利用。
両翼下に増槽2本可能。
自動空戦フラップ装備。
格納寸法が広がったのは機銃整備の都合上。
30ミリ機銃翼内装備時にはバルジを設け対応予定。
プロペラ形状など各部に改良を加えている。
2ノット烈風よりも優速になった。
速度と上昇力の数値は笑気ガス噴射時の戦闘出力時。笑気ガスが尽きると二二型よりも数値は落ちる。
烈風も主翼外側上面にスポイラーを付加しさらなる機動性の向上を狙い二一型として制式化された。
後年、敵と戦ったのか川西と三菱で戦ったのかと皮肉られる。
首無し機が貯まる恐怖。この世界で飛燕てどうなっているんでしょうね?覗いてみるかな。
次回更新 8月20日 05:00




