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わんこ農園にようこそ! 〜スマホゲーム世界に転生した俺の愉快な日々〜  作者: 鳴神楓


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7/12

夕焼け小焼け

 農作業を続けていると、突然、どこからともなく音が聞こえてきた。

 それが地域の防災行政無線のスピーカーから流れてくるような「夕焼け小焼け」のメロディのチャイムだと気付くと同時に、畑に水をやっていた体の動きが止まり、手に持っていたジョウロも消える。


「あれ?

 えーっと、もしかしてこれ、夕方になったから今日の作業は終わりってことか?」


 気がつくと、たしか今まではずっと真上にあったはずの太陽が、(おそらく)西の山の方へと移動していて、空が夕焼けで赤く染まっている。


「おーい、チビー」


 チビにこの状況の説明を聞こうとおにぎり屋の方に向かうと、そちらから小さな犬が走ってきた。


「え、犬?」


 ちょこちょこ走ってきた犬は俺の目の前でお座りすると、高めの声で「ワン」と鳴いて尻尾を振った。

 おそらくチワワだろう小さい体と、クリーム色のふさふさした毛並みには、ものすごく見覚えがある。


「ま、まさか……チビ?」


 恐る恐る尋ねると、小さな犬は元気な声で「ワン」と鳴いた。


「ま、まじか……。

 えー、この夕方の状態のこと聞きたかったのにどうすれば……。

 チビ、その体だと喋れないってことだよな」


 すっかり小さくなったチビと目を合わせるためにしゃがみこんでそう聞くと、チビはトコトコ歩いてきて、俺の足に前脚をかけて腹の方をカリカリと引っ掻いてきた。


「ん……?

 あ、スマホ?」


 最初に規約を確認した後は全く使ってなかったスマホの存在を思い出した俺は、オーバーオールのポケットからスマホを取り出す。


「あ、手に肉球がない……。

 っていうか、尻尾も犬耳もない……」


 どうやら俺もチワワが犬の体になったのと同じように、普通の人間の体に戻ってしまったようだ。


「えっと、それよりもまずヘルプヘルプ、と」


 体のことはさておき、今の状況の説明がされていそうなゲーム画面のヘルプを探す。

 今の景色と同じような夕焼け空のゲーム画面のメニューの中からヘルプを開き、関係しそうな項目を探す。


「なになに、『夕方から翌朝まではわんこたちの自由時間です。本来の姿に戻ったわんこたちは、農園で遊んだり、おうちでご飯を食べたり眠ったりして、自由に過ごします』、か」


 プレイヤー向けの説明文という形になっているが意味はわかる。

 要するに明日の朝までは、チビは犬の、俺は人間の姿で好きに過ごしていいということだろう。


「えっと、あの青い屋根のは倉庫だから、『おうち』は赤い屋根の方?」

「ワン!」

「そっか、じゃあまず家を見てみるか」


 俺がそう言って赤い屋根の家に向かって歩き出すと、チビも隣をちょこちょこ走ってついてきた。



 ────────



 赤い屋根の家のドアを開けると、中はワンルームマンションの一室といった感じの部屋だった。

 玄関に靴箱などはなく、チビもそのまま入って行ったので、土足ということらしい。


 キッチンはしっかりしていて、アイランドキッチンというのか、壁と離れたところにシンクとコンロがついた台があるタイプだ。

 2人がけのソファとローテーブルの前にテレビ、ちょっとした棚と窓際にシングルベッドが置いてある。

 家具の質はニ〇リで買えそうな、ごく普通のものだ。


「おー、まあ俺とチビと2人だったら充分ゆっくりできそうな部屋だな。良かった」


 ソファに座ってみたり、ベッドの固さを確認したりしてみたが、特に問題なく過ごせそうだ。


「えーっと、『おうちでご飯を食べたり眠ったり』ってことだっけか。

 そういえば、ちょっと腹減ってきたかも?」


 農園で作業している間は疲れも空腹も全く感じなかったが、今は少しお腹が空いている。

 昼間の農園作業中は体も自動的に動くから、きっと体もゲームキャラクターとしてのものだけど、今は普通の人間の体の感覚に戻っているのかもしれない。


「えーっと、なんか食べるものってあるのかな?」


 キッチンに行って冷蔵庫を開けてみたが、中は冷蔵室冷凍庫野菜室ともに空っぽだった。


「空っぽ……いや待て、それ以前に冷えてないぞ」


 冷凍庫すら室温と同じだし、中の電灯が点いてなくて暗い。


「えーっとコンセントは……挿さってるな。

 え、もしかして故障? それかまさか電気来てない……とか?」


 慌てて壁の電灯のスイッチやテレビの電源ボタンを押してみたが、どれも点かない。


「えーっと後はブレーカー……は多分ないな」


 入り口の近くとかキッチンの辺りとか、ブレーカーがありそうな場所の壁を探してみたけど、それっぽい小さい扉などはない。

どうもブレーカーが落ちているとか、そういうことでもなさそうだ。


「チビ……もしかして、この家、電気来てないとか……?」


 恐る恐るチビに尋ねると、チビは(たぶん)神妙な顔つきでうなづいた。


「ま、まじかー。

 え、いやでもこれだけ電化製品あるんだから、そのうちに使えるようになるんだよな?」


 その質問にはチビは首を傾げている。

 かわいい。


 ではなくて。


 チビにもわからないということは、ゲーム的に先の展開は内緒ということかもしれない。

 けどまあ「電化製品があるんだから電気はそのうち使えるようになる」という俺のメタ読みは外れてないだろう。

 というか、外れてないと信じたい。


「……まあ、使えないものは仕方ないよな。

 それより食べ物を探すか」


 少なくとも冷蔵庫の中には何もないからと、キッチンの他の棚を開けて何か食べ物がないかと探し始めた俺に向かって、チビが「ワン」と鳴いた。


「お、チビ、食べ物あるところ知ってるのか?

 どこだ?」


 俺がチビにそう言うと、チビは入り口の方に走って行って、もう一度「ワン」と鳴いた。


「外か?」


 ドアを開けるとチビは外に出て行ったので、俺もチビに着いて外に向かった。


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