レベル上げ
しばらく無心で塩むすびを作っているうちにレベル3に上がったが、レベルアップボーナスは新しい畑2つとコイン1500枚で、前回と比べてコインが500枚増えただけだった。
ショップも確認したけれど新しい施設は増えていないし、畑にも新しい農産物は出ていない。
「うーん、ショップに木の柵とか道とかオブジェは何種類かあるけど、これって特に効果はないよな?」
「はい、見た目とか歩きやすさは変わりますけど、作業時間や経験値に影響するような効果はありません」
「だよなー。
じゃあ後回しだな。コインは新しい施設が出るまで貯めておこう」
「はい、その方がいいと思います」
「じゃあ、また次のレベルまで……あ、そういえば何も考えずに作り続けてるけど、倉庫の容量の上限とかって……」
農園ゲームの倉庫は、生産物などのアイテムをしまっておける数の上限が決まっていることが多い。
倉庫にアイテムがいっぱいになると、生産物を安い値段で売るか、アイテムやコインやダイヤを消費して倉庫の容量を増やさなければいけないのだ。
「あ、倉庫の容量は無限です」
「え、まじで?
おー、助かるー」
容量が無限ということは、農園ゲームでありがちな「作物を収穫しようと思ったら倉庫がいっぱいで収穫できない」というストレスがないということだ。
俺はどっちかというと物が捨てられずに溜め込んでしまうタイプでもあるので、生産物を作っただけ全部貯めておけるというのも地味に嬉しい。
「倉庫内のアイテムや生産物の種類と数は、スマホ画面で倉庫を選ぶか、実際の倉庫内にある端末で確認できますよ」
「お、どれどれ……」
チビにそう説明されて、スマホを出してゲーム画面の倉庫をタップすると内容の一覧が出た。
「あ、米がもう1Kになってるから1,000個超えてるってこと?」
「はい」
「おー、チビ、がんばって作ってくれたんだな、ありがとうな」
俺が思わずチビの頭を撫でてやると、チビは照れた表情になって尻尾を振った。
「もしかしてこれ、K、M、B、T、aa……って続いてくやつ?」
「はい、そうです」
クッキークリッカー系の数がどんどん増えていくタイプのゲームでありがちな、桁数が増えていくと、K(千)、M(百万)、B(十億)、T(兆)と0が省略されてアルファベットで表示されるようになるやつだ。
Tの次のaaが確か千兆だったかな?
農産物はクッキークリッカーみたいに倍々ゲームで増えるわけじゃないから、実際にそんな数作れるかどうかはわからないけど、aaとかの単位まで用意されてるなら本当に無限に貯め込めれそうだ。
「よし、じゃあ張り切って作るぞ!
チビはまた4レベルに上がるまで畑で米を頼むよ」
「はい!」
──────────
そうやってまた作業を続けて4レベルに上がったが、レベルアップボーナスは、また畑の追加とコインだけだった。
「うーん……このペースだと結構先は長そうだな……」
普通のゲームなら最初のうちはユーザーを惹きつけるために、新しい要素がどんどん追加されるものだが、この世界ではレベルが上がってもなかなか新要素が追加されないようだ。
塩むすびを作る作業は体が勝手に動くから無心でできるし、ゲームの世界だからなのか、ずっと働いていても体が疲れた感じはしないが、約5分間のスパンでずっと同じ作業を繰り返しているので、ちょっと心が折れかけてきた。
「チビ……おにぎり屋で塩むすび作るのと代わってくれるか?
今度は俺が畑で米作るから」
「いいですよ。
また次にレベルが上がるまででいいですか?」
「うん、頼むよ」
「わかりました。ではまた後で」
そうして俺はチビと別れて畑に向かう。
新しく増えた畑を追加で設置した後、米の種籾を撒いて畑の世話をしていくが、これもおにぎり屋とは作業内容は違うとはいえ、やはり5分ほどの作業の繰り返しだ。
早々にまた心が折れそうになる。
「さすがにレベル5になったら新要素が来ると信じたい……」
それだけを心の支えにしながら、俺は黙々と農作業を続けていった。




