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マカロニ之助

一人の少年と彼岸花

作者: マカロニ之助

あるところに一人の女の子がいました。

その子は幸せを知りませんでした。

そのこはいつも手に『パンジー』という花の束を持っていました。

いつも一人で寂しかった女の子は人里に行き、友達を作ろうと努力しました。

しかし、里の人たちは女の子を気味悪がりました。

女の子は髪に飾りをつけていました。

その髪飾りが彼岸花と似ていたのです。

この人里の人々は、彼岸花に対して良い印象を持っていませんでした。

女の子はやがて、友達をつくることをあきらめました。

悲しい気持ちをしまい、女の子は山の奥へと帰っていきました。

女の子は生きることが辛くなって、自ら命を絶ちました。


いまは秋。

体に当たる風が心地よく、とても涼しい。

この間までの暑さはどこへ行ってしまったのかと聞きたいくらいに。

今日は気分転換にと山に来ている。

最近は部屋にこもって勉強ばかりしていたから。

自然に囲まれているからか、僕はとてもリラックスできた。

そろそろ家に帰ろうかと、山を降りようとした時、視界の端に一人の女の子が映った。

僕はその女の子に引き寄せられる。

その女の子と友達になりたいと、そう感じた。

いきなりのことで自分でも驚いた。

だけど体はそんなこと気にせず動き続けた。

女の子のところまで行くと、口が勝手に動いた。

「ここでなにしてるの?」

女の子は話しかけられたことに驚いたのか、一瞬動きが止まったきがした。

「え、えと……。」

僕は女の子のとなりに座った。

知らない人が隣に座ってくるのは嫌かな、とも思ったけど、体が言うことを聞かなかった。

女の子は彼岸花のような髪飾りをつけていた。

髪もとてもきれいな赤色だった。

女の子は手にパンジーの花束を持っている。

女の子からなかなか返事が返ってこない。

答えたくないのかな。

まあ、無理に聞くことでもないよね。

それにしても、女の子元気なさそうだな。

「ねえ、もしよかったら今から一緒に行きたいところがあるんだけど、いい?」

僕は女の子に尋ねた。

女の子はすこし戸惑った顔をしたが、悩んだ末に首を縦に動かした。

僕は女の子の手を握ると、目的地まで連れて行く。

「……綺麗。」

女の子は思わず言葉をこぼした。

ここはお花畑。

ここはきっと僕しか知らない場所。

ここに咲いている花はとてもきれいだ。

いつ見ても。

どの季節に行っても何かしらの花が、美しい花を咲かせている。

僕たちはこの花畑で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたりした。

今の季節は彼岸花がとてもきれいだ。

毎年、この季節になると彼岸花を見にくる。

僕は奥に咲いている彼岸花を見つけ、彼岸花のところまで行く。

今年も彼岸花はきれいに花を咲かせている。

彼岸花に対して良くない印象を持っている人はたくさんいるけど、僕はそうなふうには思わないかった。

僕が彼岸花に見とれていると、向こうにぽつんと咲く彼岸花を見つけた。

僕が今いる場所には何輪かの彼岸花が集まって咲いている。

でもその彼岸花だけ一輪、寂しそうに咲いている。

僕はその彼岸花の近くまで行く。

その彼岸花はどの彼岸花よりも美しく見えた。

何十年も何百年も、ここで花を咲かせていたかのように。

その彼岸花は今まで見た、どの花よりも美しかった。

その彼岸花を見ていると、僕に女の子が話しかけてきた。

あれ、さっきまでは遠くにいたのに。

隠れていた場所から出てきたから見つかっちゃったかな。

僕たちはいまかくれんぼをしていた。

女の子が見つける側。

僕が隠れる側。

負けちゃったなと思っていると、女の子が僕に言った。

「……彼岸花、気味悪くないの?」

そう口にする女の子の声は少し震えていた気がした。

いきなりどうしたのだろうともおもったけど、僕は自分の思ったことをそのまま口にした。

「僕はそうは思わないな。彼岸花の開花時期は一週間くらいだけど、その短期間でも情熱的に、気高く美しい花を咲かせてすぐ枯れちゃう、そんな彼岸花がはかなくて、それがとても魅力的で僕は好きかな。」

僕は言った。

「それに、生まれてからあっという間に人生を終えてしまうけど、一生懸命に生きようとする姿が人間みたいで、なんだか親近感が湧くんだよね。」

彼岸花を見ながら僕は言った。

女の子は僕の言葉に、とても驚いているように見えた。

女の子は目を見開いていて、持っていたパンジーの花束を落としてしまっていた。

その時、女の子の目から雫がこぼれ落ちた。

「え、どうしたの?」

僕は女の子のところへと駆け寄る。

いきなり泣いてしまって、心配になったから。

僕はそんなにおかしなことを言ったのだろうか。

女の子に悲しい思いをさせてしまっただろうか。

女の子は顔についた雫を拭き取ると、僕の方を見た。

「そう言ってくれて、嬉しいな。」

女の子はニコっと笑った。

女の子の笑顔は初めてみた。

女の子の髪色はところどころ白く染まっている。

強い風が吹き、僕はとっさに目を瞑る。

目を開いた時には女の子は姿を消していた。


数百年後。

生まれ変わった女の子は山の中で出会った少年と仲良くなりました。

少年は女の子のことを気味悪がったりはしませんでした。

女の子は少年の言葉に救われました。

少年と楽しい時間を過ごした女の子は今も、山の中で美しい花を咲かせているのでしょう。


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