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ヲタッキーズ183 第2.5種接近遭遇

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第183話「第2.5種接近遭遇」。さて、今回は孤独な天体物理学者がゼロ気圧に晒され無惨な死を遂げます。


UFOに拉致されたとの噂が広まる中、捜査線上には、UFO研究家、拉致者サークル、孤独な天文台長などが浮上しますが、国家間の駆引も垣間見えて00〜


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 宇宙人との遭遇


「おい、誰かいるのか?」


地底超特急のグランド末広町ステーション。超速度で疾駆していたリニア車両が並ぶ真夜中の操車場。

動体感知器に反応があり、舌打ちした夜勤の監視員は、ライトを片手に現場へ出向スル。ついてないw


「こんな真夜中に、犬でも迷い込んだかな?あれれ?迷い込んだのは…車?」


2024年型の青いヘヴン。列車と列車の間に停車している。ライトで照らしながら近づく。運転席に誰かいる。警棒を抜く。ソッと覗き込んだら…絶叫!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて客回転は停滞、経営は大損害だw


挙句オーナーの僕までカウンターに居座るw


「よし。"神秘的"を言い換えると…通常の範囲を超える真実。スーパーナチュラルだな?コレじゃ簡単過ぎてゲームにならないな」

「テリィ様。クロスワードパズルをペンで?意外に自信家だったのですね」

「常に挑戦者でいたいんだ。意外だろ、メイド長」


オレンジジュースを注ぐミユリさんの横で常連のスピアが(恐らく)長電話をしながら御帰宅して来る。


「ちょうど良いトコロに歩く類語辞書が御帰宅したぞ。"疎遠"を言い換えるとなんだろう?」

「聞こえてません。新カレのシュリと電話中ですから」

「長電話の新記録を更新した。あ、長スマホか」


僕はオレンジジュースを1口飲む。


「こんな長く続くスマホ、久しぶりに見たな」

「ですねクスクス」

「じゃ電話を切るね!…ねぇテリィたん。来週末の"ダッジオーブンピクニック"にシュリも来たいって」


僕のダッジオーブン料理を囲むピクニックだ。


「じゃシュリの御両親も彼が行くのを許してくれたのかな」

「ソレは、私の元カレであるテリィたんと会ってから決めたいみたいょ」

「息子をピクニックに送り出すのに元カレまで審査スルのか?たかがピクニックだぜ?」


スピアは…殺気立つw


「で、会ってくれるの?」

「テリィ様。御屋敷(メイドバー)でお迎えしましょう」

「じゃダッジオーブンでもてなそう!」


ますます殺気立つスピア。


「待って。おもてなしをスルのょ?」


ソレは、どーゆー意味だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


殺人現場。朝焼けに染まる操車場に、覆面パトカーが何台も止まっている。ラギィと肩を並べて歩く。


「じゃ向こうの御両親と会うコトになったワケね?ソレ、運命の分かれ道だから」

「脅かすなょ」

「スピアにとって、シュリは初恋の人でしょ?」


クスクス笑うベケット。


「そうだょ」

「元カレが両親からダメ男と判を押されると、どーなると思う?」

「別れちゃうとか?」


いえいえと指を振るラギィ。


「逆なの。禁じられた恋ほど萌え上がって、もー大変なコトになるわ。ホントよ。経験済み」

「考えてなかった…」

「だから、相手の親とはうまくやるコトょ」


大きくうなずく僕。


「お待たせ。状況は?」

「あ、ラギィ。テリィたんも…こんなの初めて見たわ」

「うわっヒドいな、コレ」


フロントガラスから中を撮影する鑑識。現場に目隠しの青いビニールシートを広げる警官。コレは…


「被害者はマリス・バラオ35才。"blood type BLUE"。予知(プレコグニション)とUFOコンタクティ…ソレって超能力なのかしら。昨夜警備員が発見したが、第一発見者の警備員は、今も放心状態ょ」

「スゴいな。死体が詰めすぎたソーセージみたいにパンパンなってる」

「もっとマシな表現はナイの?作家でしょ?どうして、被害者はこんなコトになったの?」


僕のタブレットが答えてくれる。


「ラギィ。死因は爆発的減圧ょ」

「じゃソレがナゼ起きたかわかる?ってか、爆発的減圧って何ょ?芸術系?」

「一定時間ゼロ気圧にさらされてたと思う」


超天才ルイナは、僕のタブレットをハッキングし自分のラボから"リモート鑑識"で手伝ってくれる。


僕は…空を指差す。


「ゼロ気圧って宇宙とか?」

「その通り」

「マジ?他には?」


ルイナは、画面の中でお手上げポーズ。


「今は何とも言えないわ。遺体をラボに連れて来て。検視すれば何かわかるカモ」

「遺体は地底超特急の操車場に違法駐車してる車の中にアルのょ?宇宙で殺されたワケが無い。何か合理的な説明がつくハズょ」

「(世界1有名な5音の口笛w)」


ラギィからスゴい勢いで睨まれるw


「ラギィ。この遺留品を見ろ。ストラ・イカー著の"私を第2.5種接近遭遇で連れてって"だ。被害者は、この本を読んでたらしい。コレって宇宙人による人類誘拐の話だぜ」


車の中に落ちてたハードカバー本を指差す。


「つまり、彼女は宇宙人に殺されたと言うの?」

「いや。もっと合理的な仮説がアル。宇宙人が誘拐中に誤って殺しちゃったんだ。マリスは、何らかのアクシデントでUFOのエアロックから外へ放り出されてしまったンだ!」

「じゃあ、そのETはニコチン依存症ょ。吸い殻がタイヤのそばに落ちてた。車のワダチの上に落ちてたから、車が止まってから捨てられたモノね」


ヲタッキーズのエアリが、証拠用のビニール袋入りのタバコの吸殻を示す。因みに、彼女はメイド服。


ココはアキバだからね。


「じゃウチの鑑識に頼んで、DNAが残ってないか調べてもらって。あと爆発的減圧の原因についても、もっと調べて欲しいの。特に宇宙以外の原因をね」

「わかったわ、ラギィ」

「よろしくね」


残された僕は、この捜査に呪いをかける。


「認めナイのか?コレが超常的(スーパーナチュラル)な事件だってコトを」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。運び込まれたホワイトボードに被害者の写真。黒髪の…スゴい美人。


よくもこんな美人を。許せん(誰を?)!


「マリスの本来の顔がコレ。仙台生まれ。大学院卒業後2年前から神田花籠町(ミッドタウン)の科学センターで天体物理学者として勤務している」

「つまり…ナニしてる人?」

「さぁSETI同盟から補助金をもらってるわ」


ヲタッキーズのマリレはパッドを見ながら答える。因みに彼女もメイド服。だって、ココは…以下略w


「SETIって"地球外知的生命探査"だょね。同盟がアルのか。つまり…やはり宇宙人だね」

「ソンなワケない!」

「でもラギィ。SETIと仕事をしてるのが、単なる偶然だと思うのか?」


首を振るラギィ。


「YES。確かに興味深い情報だけど、今回の事件と宇宙人は関係ないわ。マリスの死を宇宙人のせいにスルのは間違ってる」

「あら。ソレはどーかしら?」

「マリレ!ようこそ正しい側へ。さすがは"時間(タイム)ナヂス"だ。国防軍だけど」


彼女は、1945年、陥落寸前のベルリンからタイムマシンでアキバに脱出して来た部隊の生き残りだ。


「私の親戚で、パーティの後で家までアウトバーンを運転してたら、突然まぶしい光が空から降って来て、気づいた時には、もう朝になってた人がいるの」

「おおっ!記憶喪失は、第4種接近遭遇(宇宙人による誘拐)の典型的な例だ」

「ソレはね、マリレ。宇宙人に誘拐されたからじゃないの。酔っ払ってただけょ」


あっさり引くマリレ。


「確かに彼はアルコールに弱かったわ」←

「そういえば、被害者に家族はいる?」

「近所の人によると、未婚で1人焼肉、じゃなかった、1人暮らしだそうょ。いつも22時位には帰宅してたって」


とりあえずのラギィのまとめ。


「ルイナに拠れば、死亡推定時刻は21時。恐らく、彼女が最後に目撃されたのは神田花籠町(ミッドタウン)の科学センターね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田花籠町の"科学センター"。タワマン中層階をワンフロア貸切だ。特に望遠鏡とか見当たらない。


「ホントに信じられません。彼女は、優秀な研究員だったのに」

「結局、彼女はどんな仕事してたんですか?」

「ハワイにある電波望遠鏡のデータを解析してクエーサーの観測をしていました」


同僚のボーン博士の案内でセンター内を視察。

結局、何をスル人なのかは、良くワカラナイw


「ソレはSETI関係の仕事ですか?」

「いいえ。"裏NASA"の仕事です」

「マリスを最後に見たのはいつですか?」


即答。


「昨夜、私が帰る19時頃です」

「アシスタントのホルダさん。貴女は?」

「彼女との打ち合わせ後、19時半には帰りました」


ボーン博士は禿頭。ホルダ助手はギャルw


「最近マリスは、何かトラブルを抱えていませんでしたか?少し様子が変わったとか?」

「うーん特に変わった様子はなかったな」

「でも、実は彼女、月曜日から、なんだかソワソワしてて、私がどうしたのと聞くと、人生を変えるような出来事があったとか言ってました」


2人の話すコトはまるで違うw


「人生を変えるような出来事って何?」

「わかりません。水曜は仕事から抜け出して、その日は戻らなかった。でも、木曜は普通に出勤しました」

「…ボーン博士。マリスは、爆発的減圧で亡くなりました。何か御存知ありませんか?」


すると、ボーン博士は絶句スル。


「そんなまさか…」

「おや?何か御存知だ」

「コチラへどーぞ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


部屋いっぱいに白い円筒形のタンクw


「ココは低圧室と言って、減圧下での生命維持システムを調査出来ます。コレも"裏NASA"の仕事です」

「ボーン博士。人が中に入ったらどーなりますか?」

「保護服を着ないで?」


眉を(ひそ)めるのはアシスタントのホルダ。


「ええ。保護服は着ないで」

「体内のガスが極限まで膨張して肺は破裂。体内の水分は全て蒸発します」

「UFOに乗らずして、宇宙を体験出来るワケだ」


何となくドヤ顔でラギィをチラ見。


「ココには誰が入れますか?」

「研究スタッフやアシスタント。全部で35人ほどですね」

「全員のリストをください。その中にマリスの敵となる人はいますか?」


遠慮がちに、しかし、ハッキリ話すホルダ。


「テッド・カータ。元カレです。別れた後も色々とあったみたいで、相当参ってました」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。テッド・カータの正面にマリレ。その横で危険な顔をして思い切り威圧的なエアリ。


「一体何ゴトですか?」

「カータさん。昨夜19時42分、科学センターで貴方のキーカードが使われました。何をしていましたか?」

「人と会う用があって…」


突っ込むエアリ。


「マリスね?」

「ソレがどうかしましたか?」

「コレは殺人の捜査なの」


効果覿面(こうかてきめん)。慌てふためくカータ。


「何?マリスが死んだ?どうして殺されたんだ?」

「誰かが彼女を低圧室に入れたわ」

「そ、そんな…ウソだ。一体誰が?」


完全に取り乱すカータ。


「死亡推定時刻は、昨夜21時頃。君が科学センターを訪れた後ょ」

「私を疑ってるのか?私がマリスを殺したと?ソンな事スル訳がナイだろう」

「どうかな。動機はある。なぜ彼女に会ったの?」


ゴクリと唾を飲むカータ。


「彼女を夕食に誘うために行った」

「笑止ね。彼女は君を振ってクビにしたわ」

「違う。一緒にいるのが辛くなって、私が自分から止めたんだ。でも、水曜日になって、彼女が一緒にコーヒーでも、と言い寄って来た」


やや?話が違うw


「どうして、彼女はソンなコトを?」

「きっとヨリを戻そうとしたんだ。彼女は、僕が貸した彼シャツや古いCDを返しに来て、その時に言われたんだ。こんな終わり方はイヤだって。だから僕は未だ脈がアルと思って、昨夜、科学センターに会いに行ったんだ」

「ソレで?」


メロドラマだ。思わズ身を乗り出すマリレw


「何も起きなかった。ちょっと話しただけだ。彼女は、相当イライラしてた。理由を聞こうとも思ったが、彼女は上の空で急いでいたから、大人しく帰ったんだ。20時にはもう家に着いてた」


エアリは、冷徹な微笑を浮かべる。


「くつろいでね。まだまだ帰さないから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。ホワイトボードを見てる僕の後ろをスタスタ歩きデスクに座るラギィ。僕はサイドに座る。


「今、ウチの鑑識が低圧室を調べてる。必ずカータが殺したと言う証拠が出るハズょ」

「でもさ。どうやって、カータは遺体を操車場まで運んだのかな?」

「低圧室は、屋内駐車場のすぐ隣だから、車に押し込んで運んだのよ。私達、警察の捜査を撹乱させるために」


僕は頭を横に振る。


「もっと良い仮説がアルな」

「何かしら?」

「(UFOマニアが大好きな5音の口笛w)」


黙って例のハードカバー本を出す。ところが…


「ハハーン。論理的な解答が出たから、かなりガッカリしてるのね?テリィたんが面白くないのはわかるけど、さすがにソレはアリ得ないの」

「じゃマリスの人生を変えるような出来事って何だと思う?ソレはきっとコイツだょ。第4種接近遭遇、つまり"宇宙人による誘拐"だ!」


バーンと本を示す僕。もはやラギィは絶叫w


「テリィたん。宇宙人による誘拐なんて現実にはないのょ!」

「でも、誘拐された人は、みんな似たような経験をしてルンだ。白い光を浴び、記憶が断片的になるンだぜ!」

「ソレはね!みんなが同じ本を読み、似た動画から影響されるからよ。"暗くて人気のない道を歩いていたら、突然光が差して誰かに体を突かれたり引っ張られたりしたような気がして…"って奴でしょ?あり得ナーイ」


ソレにしちゃスラスラ暗唱w


「つまり、ソレは誘拐されて調査されたってコトさ。とにかく、宇宙人が人間に埋めてったチップも見つかってルンだ」

「あーら私が9才の時に鼻に突き刺したブロックにソックリだわ」

「以来、記憶は飛びっ放しか。あはは」


恐ろしい顔で睨むラギィ。エアリが割り込む。


「鑑識が低圧室を調べ終わったわ。何も出ない」

「え。どーゆーコト?あの機械は、被害者も元カレも出入り出来る場所にあった。アレが凶器としか考えられないンだけど」

「血も組織も全く見つからなかったって」


両肩をスボめ天を仰ぐエアリ。


「ソンなコト…どう考えても理解出来ナイわ」


僕は、ちょんちょんと本でラギィの肩を叩くが…


「ヲタッキーズ!他の低圧室も調べて!」

「ソンな…低圧室ナンて、そーいくつもアルもんじゃナイしw」

「何処かにあるハズょ!他に似たような機能を持つ施設がないカモ調べて」


ウンザリ顔で顔を見合わすメイド2人。


「ROG。やってみるけど…」

「低圧室じゃナイって言うんだったら、他に何だって言うの?」

「(世界1有名な5音の口笛w)」


手を振り、イライラと遮るラギィ。


「ソレ以外で」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


お次は万世橋(アキバポリス)の検視局。地下にアル。


「ルイナ。何かわかった?」

「いいえ、ラギィ。謎は深まるばかりょ」

「ソレは楽しみだな」


検視局のモニターに映るルイナに睨まれる。彼女は自分のラボから"リモート鑑識"中。青スクラブ(手術着)


「珍しい事例だから、検視解剖する前に症状を記録しようと思ったの。で、レントゲンを撮ったら鼻腔にこんなモノが埋まってた」

「何かしら?」

「わからないわ」


モニターがレントゲン写真に変更。鼻腔の四角い影にピンと来た僕は本の付箋のついたページを開く。


良く似た写真w


「みんなが何と逝おうと、コレは宇宙人が埋め込んだチップだ。彼女を誘拐した宇宙人の仕業に違いナイ」


ラギィのイライラした顔。ちょっち萌えるな←


第2章 おさびし天文台


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「おおっ!宇宙人って、ソンなトコロまで調べるのか?徹底してるな」

「テリィ様。お夕飯ですけど…わ、スピア!」

「シュリの御両親のコトなんだけど!パパさんは経済学者で、超真面目な人なの。だから、テリィたんもチャンとして」


背後から首っ玉にかじりついて来るンだけど…目が笑っていない。逆に世にも恐ろしい顔で僕を睨む。


「スピア、任せろ。もしチャンとしてなかったら、テーブルの下で足を蹴飛ばしてくれ」

「ソレが…私はいないの。ミユリ姉様と2人で行くって決まりなの」

「え。ミユリさんも来るのか?そりゃレストランにお弁当を持参スルようなモンだな」


意味不明w


「テリィたんなら大丈夫。信じてるから」

「わかった。so say we all」

宇宙空母(ギャラクティカ)?…とにかく、絶対に印象良くしてね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。ホワイトボードに描き込み中のラギィにコーヒーを手渡して、話題を振ってみる。


「先日の日銀の介入をどう思う?」

「ニューヨーク外為市場で34年ぶりの急激な円安が進み、恐らく2回の日銀介入があったと思う。物価上昇と金融引き締めが続く米国と、緩和環境の続く日本の金利差が容易に縮まらない中、いずれも日本時間の深夜と早朝という取引の薄い時間帯に介入を行った。最小限の介入原資で、大きな値動きを引き出そうとした政府・日銀の巧妙な動きが垣間見えたわ。でも、何で?」

「い、いや。別に」


ラギィ、すげぇw


「カルチャーセンターの経済原論でやってたわ…なんでそんなコトを聞くの?」

「実は、会話の練習ナンだ」

「あら。会話になったから、一応成功ナンじゃナイの?多分だけど」


ココは正直に逝く。


「シュリのパパが堅苦しい経済学者らしくて…でも、何とか仲良くなりたいんだ」

「問題ナイわ」

「そうかな?ホントに?」


チョロリと舌を出すラギィ。


「別人を演じれば良いのょ」←

「ヤラれた!で、例のチップ、結局何だった?」

「チップじゃなかった。タダの金属片。今、ルイナが調べてるわ」


金属片?


「金属片が何で鼻腔に?」

「知らないわ。破損した低圧室の1部じゃナイの?」

「どの低圧室だょ?」


ファイルの中を探す。


「今、探してる。ソレさえ見つかれば、犯人も直ぐに判明するわ」

「カータは容疑者だろ?結局シロなのか?」

「アリバイがあったわ。あの晩20時25分にピザを注文してる」


僕は、メッチャ大袈裟に溜め息をつく。


「コレで人間の容疑者はいなくなったか…」

「テリィたん、あのね。容疑者ってゆーのは全員人間なの!OK?」

「ラギィ!最後の1人がいたわ!」


メイド服のエアリが入って来る。


「あの夜、オフィスを出る前、彼女は30分電話してたコトがわかった」

「相手は誰?」

「ストラ・イカー」

 

色めき立つ僕。ハードカバー本をペンペン叩く。


「あのストラ・イカー?"第2.5次接近遭遇で連れてって"の著者の?」

「科学者がUFO研究家に何の用があるの?お互い相容れない関係ナンじゃナイの?」

「実は、2人は元同僚で3年前に一緒に研究をしてた。でも、マリーはストラ・イカーの何でもUFO説に嫌気が差して、ストラ・イカーをチームから追い出した。以来2人は、いがみ合ってる」


簡明な指示が飛ぶ。


「ストラ・イカーはどこ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


外神田教会の死ね死ねホール。ネクタイなし背広姿の男を、イスに座った約10人の男女が円形に囲む。


「…私が閉じ込められていたのは、寒くて白い部屋だった。奇妙な生き物が私の顔の覗き込んでいた。今も、脳裏を去らないこの記憶は、我々を1つにしてくれる。このコトを忘れてはならない。我々は選んだのではない。選ばれたのだ」


人差し指で天を差し、声高に宣すると全員が唱和。


「選んだのではない。選ばれたのだ」


全員が人差し指で天を差す。異様だ。


「コレは…宇宙人をダシにした自己啓発セミナーか何かかな?」

「宇宙人ヲタク向けの、でしょ?」

「おぉ!新入りか?さぁ君の体験を聞かせてくれ」


ラギィがバッチを示すと、彼は大きく舌打ちスル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


水差しから紙コップに水を注ぐストラ・イカー。


「私が事件に関わっていると?」

「木曜日の夜21時頃、貴方は何処にいましたか?」

「神田山本町で"第2.5次接近遭遇で連れてって"のサイン会だった。今、売れてる」


コップの水を飲ま干す。白髪。メガネ。


「水曜にマリスから電話があったわね?用件は?」

「言っても君達は信じナイだろう」

「どんなコトも偏見を持たず公平に聞きます」


人差し指で天を指すと鼻で笑うストラ・イカー。


「果たして、ソレはどうかな?先週マリスが電話して来た。彼女は、ヒドく動揺していた。準マイクロ波バーストを電波望遠鏡で受信したと。明らかに天体から放射されるモノであり、いわゆる宇宙雑音とは違う。一定のパターンでシグナルが送られていたと言っていた」

「ソレって宇宙からのコンタクト?第1種接近遭遇か?」

「マリスはそう信じていた。シグナルが何処から送られて来たのか、集中的に調べた。すると…問題が発生した」


息を呑む僕達。先を聞きたいw


「トラブル発生って?」

「記憶が飛んだのだ。日曜日の4時間分の記憶が飛んだ。白い部屋で尋問を受けた断片的な記憶が蘇ったと教えてくれた」

「おい!じゃマリスは宇宙人に誘拐されたのか?」


思わずホンキで聞く僕。(うなず)くストラ・イカー。


「全てが誘拐の特徴と合致する。そうとしか思えナイのだ。私は、マリスには、そうアドバイスした」

「電話の後、彼女は何処に行ったかわかる?」

「自分の仮説を裏付ける証拠を見つけに行くのだと言っていた。何か思い当たるモノがあったのだろう」


なかなか聞かせる話し方w


「ソレで見つかったのか?」

「いいや。結局わからズ終いだ。きっと"彼等"に消されたのだ」

「"彼等"とは?」


まさか…宇宙人?


「モチロン"影の政府"だ。追跡されると警告したのだ。宇宙人の存在を隠そうとしている政府組織で、エージェントは喪服の美女ばかりだ」

「喪服の未亡人が乱れまくるAV"women in black"と同じ設定だな」

「おい!コレはAVじゃない。現実だ。宇宙人の存在が明らかになれば、人類はパニックに陥り、国家は崩壊スル。人類の存続すら危うくなるのだ。だから、真実を暴こうとスル私達のような者を、彼女達は影で消して回ってる。マリスもその犠牲者だ」


僕とラギィは、顔を見合わせる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部に戻り、ホワイトボードのストラ・イカーのシケた顔写真を容疑者コーナーから移動させる。


「確かにストラ・イカーは、19時から22時までサイン会をやってた。3時間やって、お客は2人」

「(ザマァ見ろw)コレで、また人間の容疑者はゼロになったな」

「でも、かなりマリスの時系列は整理出来たわ」


うなずく僕。


「日曜日にマリスは宇宙人と出逢い、記憶を無くす。水曜日、宇宙人と自分自身の記憶の存在を確かめるために早退しオフィスを抜け出す。木曜日、落ち着きを取り戻し、通常通り出勤。だが、翌金曜日に爆発的減圧で死亡。とても忙しい人だ」

「彼女の1連の行動を見てると、ドラッグをやってるか、どこか精神に異常がある人としか思えないンですけど」

「でも、彼女が宇宙人が存在スル証拠をゲットしようとしてたコトは間違いナイな」


だが、ラギィは容易には(うなず)かない。


「彼女が証拠だと思い込んでただけでしょ」

「逆に証拠を見つけていたカモ」

「え?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


科学センター。マリスの部屋へと急ぐ僕とラギィ。逝き詰まったら足で稼ぐしかない。現場100回だw


「テリィたん。ホンキでブラックホール第3惑星人が黒幕だと思ってるの?」

「でも、"影の政府"が動いてるとなると信憑性が増すな」

「最悪。そんなワケ無いでしょ」


科学センターのハイテックでクリスタルなドアを、いくつも開けて逝く。


「とにかく!私が知りたいのは、彼女がどうやって殺されたかなの。秘密のエージェントや影の政府は絶対に関係ナシで」

「うーんどうかな。じゃ賭けよう」

「OK」


やっと着き、ドアを開けると…部屋の中には何もない。デスクもイスもない。茫然として立ち竦む。


紫ブラウスのアシスタントがやって来る。


「警部さん?何か?」

「マリスの荷物は何処?」

「え。今朝、令状を持った2人の喪服美女が全部トラックで積んで持っていきました」


全力で怪訝な顔をするベケット。


「どこの所属?喪服?葬儀屋?」

「"…の政府"としか言いませんでした。聞き取れなかったけど」

「ラギィ、賭けは僕の勝ちだ。ちゃんと払えょ」


困惑するラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。ラギィは御機嫌ナナメ。


「検察は、マリスの件で令状なんか出してないと言っているわ」

「そりゃそうだ。マリスの荷物を運び出したのは政府は政府でも"影の政府"だからな。チーム"women in black"だ。そのチームは元AV女優で構成され…」

「ヤメて」


しかめ面で睨むラギィ。萌え。


「とにかく、ストラ・イカーが逝う通り、影の政府が隠蔽を図っているなら…」

「私がストラ・イカーの仮説ナンか信じないわ。全く根拠がないじゃないの」

「じゃ何故マリーの荷物が消えたんだ?」


するとラギィまで変なコトを逝い出す。


「マリスは、政府の極秘プロジェクトに関係してたとか?だから、データが回収されたのょ」

「おいおい。データの回収で何でデスクまで持って逝くンだょ?」

「…とにかく!その元AV女優達が誰だかわからなければ、調べようがないわ。その謎を解くカギは凶器ょ。ヲタッキーズ!低圧室はあったの?」


とばっちりだ。エアリが迷惑そうに振り向く。


「あったわ。特別区(アキバD.A.)では、あと1つだけ。アキバ工科大学にあるけど…」

「ほらね!探せばアルじゃない!」

「あ。でも、凶器じゃなかったの。鑑識が検視済みだけど」


ドヤ顔はラギィから僕へ移動。苛立つラギィw


「ねぇ!秋葉原には同じ機能がある施設は他にナイの?何か見つけてよっ!」

「うーん食品の梱包に使われる業務用の真空包装機ぐらいかな」

「ソレよっ!じゃ秋葉原にある真空包装機を全て調べてちょうだい!」


ウンザリ顔のエアリ。ラギィが去り僕につぶやく。


「テリィたん。エイリアンの仕業であるコトを早く証明してょ。今どき、真空包装機なんて魚屋さんの数だけアルわ。お刺身売ってるスーパーの生鮮食品コーナー巡りナンてウンザリょ」

「わかった。任せろ」

「お願いね、テリィたん」


指先を絡める変な握手?をし指差し合い別れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ホワイトボードをライトで照らし黙考するラギィ。


「なぁマリスの水曜日の行動を調べようょ」

「あのね、テリィたん。私は、宇宙人じゃなくて犯人を探してるのょ」

「でも、保健所みたいに生鮮食料品売場巡りをスルより現実的だろう?」


マリレがひとこと。


「マリスのETCカードを解析した。水曜日に妻恋坂ターンパイクを使ってる。9番出口を降りた記録が残ってた」

「え。ソレで目的地は?」

「どこへ向かったかは不明」


ソレだけ話して、余計な宿題をもらわない内に、ソソクサと消え去るマリレ。逃げ足の速いメイドだw


仕方ないのでスマホを抜く。


「テリィたん、何をしてるの?」

「検索だょ」

「え?」


僕のスマホを覗き込むラギィ。


「"裏アキバローカル"?」

「ちょっち待って。マイクが拾っちゃう…"妻恋坂ターンパイク9番出口"…さぁ僕好みのどんな見所がヒットするかな。ややっ?ラブホばかり?!うーん廃業したホテルも混ざってるw…あれ?天文台がアルぞ?え?…"おさびし天文台"?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その天文台はタワマンの最上階にアル。特別区(アキバD.A.)のガイドには"宇宙の孤独を見つめる天文台"とある。


「"おさびし天文台"にようこそ。ココは星だけを相手に暮らす孤独な学者達の天文台。私は天文台長の砂布巾(スナフキン)


ミィかと思ったょ。黒ワンピ女子は、組分け帽子みたいなの被り、ハリポタ路線かと思ったら砂付近(スナフキン)w


「ええ。彼女なら水曜日に来たわ」

「いつも彼女が使ってる望遠鏡があるのに、なぜこんな…失礼、ココに降臨?」

「マリスのは電波望遠鏡でしょ?ココにアルのは光学望遠鏡」


このバカ何逝ってんのって顔をされるw


「マリスは、宇宙の何を見に来たのかな」

「彼女は、自分が受信した異常シグナルを調べていた。シグナルの方向の画像をキャプチャして、帰って行ったわ」

「その画像のコピーください」


ユックリとお手上げポーズをとる天文台長w


「ソレが…ハードディスクは全て削除してあった。座標も画像も徹底的に失われている」

「あちょ…ところで、何で"おさびし天文台"?」

「天文学は…孤独と向き合う学問だから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"おさびし天文台"からの帰り道。首都高上野線を飛ばす覆面パトカー。ラギィの運転。僕は助手席。


「望遠鏡のデータ削除ナンて、一体彼女は何を見たのかしら?」

「冷静沈着な天体物理学者のマリスは、異常シグナルを受信後、宇宙人に誘拐され、記憶を失う。失われた記憶を求め、シグナルの発信元をキャプチャした翌日、低圧室で殺害されて、オフィスは"影の政府"によりカラッポにされる。なぁ僕をモルダと呼べとは言わない。君をスカリとも呼ばナイ。でも、真実へと続く可能性を否定スルのはヤメてくれ。マリスは、宇宙の何かとコンタクトし、ソレが彼女自身の死につながった」

「必ず事件は解決してみせる。でも、その時ガッカリしないでね。緑色の宇宙人とは一切関係がナイから多分」


僕は眉を(ひそ)める。


灰色(グレー)だょ」

「"真実はそこにある"(モルダの声でw)。OK。調べればわかるわ」

「"あなた、疲れているのょ"(スカリの声でw)ってね」


突然エンジンが止まり、ライトが消え、FPCは首都高のド真ん中でエンスト…しかし、対向車は皆無。


「バッテリーか?」

「交換したばかりょ」

「スマホも使えない。時計も止まった」


僕とラギィは、顔を見合わせる。


「コレを合理的に説明出来るか?」


次の瞬間、頭上で太陽フレア!FPCのボディがメタリックに光り輝き、白い光の渦の中に消えて逝く。


僕達は窓から首を出し上空を見上げる。強い光だ。全てが白く反射して消え逝く。遠く誰かの歌声…


第3章 ECMドローンを追え


真っ暗な部屋で目を醒ます。突然目の前の強い光源に照らされる。僕は後手に縛られ椅子に座ってる。


眩しさに顔を歪める。


「何処にあるの?」

「何のコトだ?ラギィは?」

「マリスは重要な情報を持っていた」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


恐らく同時刻。光源に照らされ尋問されるラギィ。後ろ手に縛られ、眩しそうにバサバサと髪を振る。


「誰なの?テリィたんは?私は万世橋(アキバP.D.)の警部なのよ」


無言で立たずむ人影。シルエットが女?


「何処?」

「何の話ょ?」

「出して。今すぐ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「マリスが握った情報が流出しては困るの」

「僕達は何も持ってない」

「ウソをつかないで」


そろそろ拷問歯科医の出番?歯科医も女医かな?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィの方は、も少し多弁だw


「貴官が協力しなくても、私達は何としてでも探し出すわ。国家の安全を守ってみせる」

「守るって何を何から?彼女が何をしたと言うの?」

「貴官の手には負えないコトょ。貴官は、コトの重大さを未だ認識していない。何処にあるの?」


ラギィは唇を噛む。


「その前に…"貴官"は誰?名乗りなさい」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「君達が噂の"women in black"だな?ソレとも裏NERV?やはり全員元AVってのはホント?いや人間の形をした宇宙人AV?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「誰がマリスを殺したの?」

「これ以上首を突っ込むのはやめて。質問を続ければ、彼女と同じ目に遭うわ」

「犯人は誰なの」


簡潔な回答。


「諦めて」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ケネディ大統領の暗殺や大化の改新も君達の陰謀だったのか?黒幕は蛇頭?それとも半島の明星にして偉大なる領袖様?その両方?」


ウンザリ顔の女が注入器を手に近づく。


「ヤバい!なぁウンザリしたんだね?わかった。今から君の気持ちを何よりも大切にスル。だから、何を探してるか知らないが…待て!僕は何も持ってないぜ!」


その女は、僕の首筋に…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「やめて!」


叫ぶラギィの首筋にも…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


真っ白な意識の中で、僕の肩に頭を載せて寝息を立てていたラギィ。髪からラベンダーの香り。

あのシャンプー。未だ使ってるのか。も少しこのママ…同時に目覚める。久しぶりの甘えた声…


「テリィたん…」


口に出し、耳で聞き、突然目覚め慌てて身を離す僕達。真っ暗な車内。対向車皆無の首都高。僕達は?


「大丈夫?」

「今のは…ホントにあったコト?」

「ここ…」


首筋を指す僕。派手なキスマークw


「君にも出来てる」


はっと息を飲み、首筋に手をやるラギィ。窓から顔を出し、夜空を見上げる。何もない。満天の星空。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「首都高を通行止めにして、私の身柄を拘束するなんて絶対に許せない」

「"影の政府"は隠蔽に必死なんだ」

「何者なの?」


首筋を抑えながらラギィ。


「だから"影の政府"のエージェントだ。マリスの荷物も連中が持ち去った」

「とにかくモノで良かったわ。私に手を出す奴は許せない。必ず見つけ出す」

「なんかミシミシ痛むンだょな」


僕も首筋を抑えながらラギィはデスクに、僕は彼女のデスクサイドのチェアにつく。出るのは溜め息。


「彼女達、結局犯人が誰か吐かなかったわ」

「岸口首相の女装癖についても聞いたけど、完全に無視された」

「ねぇ真夜中の首都高ドライブ中にエージェントに誘拐されたんだって?でも…ねぇミユリ姉様には黙っとくけど、ホントは何してたの?」


入って来たエアリが全力でヒヤかす。


「あのね!コレはキスマークじゃないから」

「でも2人ともついてるわ。69?姉様とも良くヤッてるの?」

「違うわ。コレは注入器の痕だから!」


わけ知り顔のエアリ。


「マァマァ隠さなくても良いのょウフフ」

「待ってくれ。実は全て元AV女優の喪服乱行グループ"women in black"の仕業なんだ!」

「真空包装機はどうなったの?」


怖い顔して聞くラギィ。


「現時点で外神田全体に100台以上アル。鑑識が総出でシラミ潰しに調べて回ってる」

「じゃタバコは?」

「誰のDNAか、警視庁(さくらだもん)のDBではヒットしなかった。ただ、とても珍しい中国製タバコで、東秋葉原のチャイナタウンでも闇ルートでしか手に入らない銘柄らしいわ」


マリレが帰って来て目ざとく発見w


「あら。キスマーク?」

「そうみたい」

「違うから」

「なら良かった」

「ミユリ姉様は知ってるの?」


さて、誰がどの答えでしょうw


「…とにかく!テリィたん達の乗ってたFPCを調べてもらったの。電子機器が一斉に使えなくなったのは、電磁パルスで攻撃されたから。太陽フレア直撃級だって。あとテリィたん達は追跡されてた」


タッパウェアみたいなフタのついたメタルケースにガチャガチャと入ってるガジェットを見せる。何?


「追跡ビーコンと盗聴器みたいね。きっと、私達が科学センターにいる間に仕掛けられたのょ」

「マリスの鼻腔に仕込まれていたのと同じ、宇宙人製の奴だな?」

「うーん中国製の安物ょ。マリスのアレは、医学博士でもあるルイナに拠ると、宇宙人のチップじゃなくて、アスペルギルス症だって。鼻の感染症で、金属みたいに硬い石灰化物が出来るらしいわ」


久しぶりにラギィはドヤ顔…見てて清々しいょ。


「ほらね。ぜーんぶ説明がついたわ」

「いやいや。僕だったら石灰化物だと見せかけ…」

「とにかく!秘密エージェントが探してる何かを先に見つければ、ソレが犯人につながるハズょ」


ホワイトボードの前に全員集合。


「でも、何を探せば良いの?見当つかないわ」

「だから、未だエージェントも見つけてない"アレ"ょ」

「"ドレ"?結局マリスのオフィスの一切合切を持ってったけど、その中にはなかったってコトね。巧妙に隠したのか、ソレとも信頼出来る誰かに託したか?」


フト想い出す僕。


「確か水曜日の晩、元恋人のテッド・カータに荷物を返したって言ってょね?その中に何か紛れてるカモしれナイな」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"秋葉原マンハッタン"が黄昏に染まる。摩天楼を切り取るように流れる神田リバーが黄金色に輝く。


西陽の差す捜査本部。


「多分何も見つからないと思うよ。本や服しか返してもらってないからな」

「カータさん。その中に見慣れないモノが紛れてませんでしたか?」

「いいや、全部僕のだった。ジェファーソン・マザーシップのCDに…」


え。偶然だな。


「あ、ソレ僕もスランプの時に聞いたよ。このCDを聞いて立ち直ったんだ」


懐かしいジャケットを手にとり、ケースを開けたら、CDが1枚パチっと床に落ちる。慌てて拾う僕。


「これって2枚組だっけ?」

「ラベルに何も描いてナイわ」

「コレが…証拠?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


慌ててラギィのデスクに戻る。捜査本部。署内で見つけて来たプレーヤーに、さっきのCDをかける…


「待て待て待て…いや、こんなんじゃダメだ。早過ぎナイか。そんなにアッサリ見て、何の感慨もわかない。人類の存在を揺るがす証拠品だぞ?もっと雰囲気に浸らなきゃダメだ」


僕の手からCDを奪い返すラギィ。


「良いから、トットと見るわょ」


レコーダーにCDを入れる。


「どうせ時間かけたって、ソンな非現実的な内容は入ってないハズ…」


話すソバから言葉が消えて逝く。2人で画面に目が釘付けになる。星空に…マザーシップが浮いてる?


「何コレ…信じらんナイ」

「おい、ラギィ!さっき何て逝った?」

「…神田明神も照覧あれ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のホワイトボード前に全署員が集合。


「では、紳士淑女の皆さん。今宵、私達は人類史の目撃者となるのです。地球外生命体がいました。宇宙に存在スルのは、人類だけじゃなかった。コレは、その誰の目にも明らかな証拠となりましょう。御覧ください。宇宙人の船(マザーシップ)です!」


ラギィのPCにかかったナプキン?を取り除くと星空の中に浮かぶマザーシップ。キラキラと煌めく。


署員からドヨメキが起きる。


「確かにソレっぽいな」

「テリィたん、画像加工したでしょ?そーょね?」

「さぁね。どーでしょーか?!」


僕は、ラギィの方を見る。署員の注目も集まる。


「まさかラギィ警部まで、コレが宇宙人のマザーシップだと認めるのですか?」

「そ、ソレが…どうかしら。でも、加工はされてないみたいなのょねw」

「では、みなさん!後で逝った、逝わないの問題が起きないよう、確認しておきましょう。ラギィ警部。貴女は、コレが宇宙人の船(マザーシップ)である可能性は否定出来ない、そう貴女は、ついに認めルンですね?」


全署員の注目を浴び、困惑するラギィ。


「私がわかったコトは"影の政府"のエージェントが何を探していたかがワカッタと言うコトょ」

「惜しいな」

「そうね」


何となく批判的な気運だ。焦るラギィw


「こ、このディスクをチラつかせて、エージェントと交渉し、何か手がかりをつかんでみるわ!」

「でも、ラギィ警部。どうやって相手と連絡を取るンですか?」

「ラギィ。ホットラインがココにアルぞ」


僕は、盗聴器一式が入ったメタルケースを見せる。


「バットマン電話(コール)みたいなモンさ」


ラギィは(うなず)き、ケースのフタを開け話す。


「貴方達が必要なモノはココにアル。欲しかったら取りに来なさい」

「ええっ…そんな、うまく逝くの?」

「どーかしら?」


全員が首をヒネル中、突然ラギィのスマホが鳴る。


「おおっ!」


なーんと折り返し電話(折り電)がかかってくるw


第4章 A(アキバ)ファイル


会議室に入ってくる"women in black"。黒ミニの花魁風喪服コスプレだ。"覚醒"してるのか? 


仮の名をベータ。


「おかけください」

「何処なの?」

「まだょ」


全員着席…テーブルがなければ見えちゃうょw


「私達にも見返りが必要ょ。マリスを殺した犯人の名を教えて」

「先に見せて」

「…コレょ」


マザーシップのキャプチャ画像を見せる。


「なぜコレを?」

「マリスが"おさびし天文台"で撮った。貴女達のマザーシップでしょ?」

「私、失礼スルわ」


立ち上がる花魁風喪服コスプレ(黒ミニ)。しかし、絵にナル。コレはもう1幅の絵、神AVの1シーンだ。


「待って。取引(ディール)したハズょ」

「必要なモノはコレではナイの。失礼スルわ」

「帰さない」


ミユリさんだ!…じゃなくて、変身してるからムーンライトセレナーダーがベータの前に立ち塞がる!


ミニのメイド服vsミニの黒喪服!鼻血w


「マリスを無残に殺した犯人は、未だアキバで野放しょ。彼女のためにも、全てのスーパーヒロインは、本件捜査に協力する義務があります」

「ムーンライトセレナーダー!貴女は、未だ彼女の本性を知らないから、そーゆーコトをおっしゃるのょ」

「ねぇねぇコスプレ姉さん達!どういう意味?説明してょ。貴女達は、シグナルを分析していた天体物理学者に一体何を握られていたの?」


一般人(パンピー)ラギィが立ち上がる。義によって助太刀致ス。


「マリスに極秘情報を握られてたのね?彼女は知るべきではない情報を受信した。そうでしょ?喪服ちゃん、貴女は国家の安全を守るためとか言ってたわ。国防に関する情報なのね?」

「それに中国製のタバコ…中国と関係があるな?マリスは中国のスパイなのか?何も言わないなら、それをメディアに話す。マスコミにリークする」

「でも、報道されるコトは無いわ」


鼻で笑うベータ。


「だろうな。でも、ブロガーやTwipperのフォロワーにつぶやいたらどうなる?僕のフォロワーは50万人いるぞ」

「テリィたん、助太刀かたじけない!」

「…わかった!わかったわょ。OK?コレからスル話は、全て口外無用ょ」


再び着席するベータ。僕達もテーブルを挟み着席。


「先月、両国の太平洋艦隊が交戦した。俗に"第2.5次太平洋戦争"と呼ばれる海戦で、両国の空母が合計2.5隻沈み、大勢の水兵が戦死した。開戦と同時に多数の偵察衛星が撃墜されたが、その際、NATOのステルス宇宙ステーションが一部始終を録画、圧縮データとして送信したが、敵組織がソレを傍受した」

「その傍受した敵がマリスなの?」

「YES」


うなずくベータ。


「傍受は、マリスの電波望遠鏡がステルス宇宙ステーションに向けられた時に行われた。彼女は、予め我々の宇宙ステーションに座標を合わせていたの。まさに我々のデータが盗まれた時刻にね。衛星の周囲には彼女の研究と関係している天体は何1つなかった」

「じゃアレはマザーシップではなく宇宙ステーションだったのか。どーしてもUFOじゃナイ?」

「当たり前でしょ。そして、我々が恐れるのは、マリスが傍受したデータが太平洋の対岸の国の手に渡ってしまうコトょ」


国防か。人が死ぬワケだ。


「マリスを殺したのは誰?」

「中国の組織で司令員と呼ばれる者ね。我々がデータを探していると気づいた。そして、マリスを殺し、元恋人に巧妙に罪を着せた」

「くそ。私達は踊らされてたのね?で、その司令員とは?」


顔色1つ変えないベータ。ヤンキー巨乳で乳牛系。


「特定出来なかった。中国の諜報機関の女で、覚醒したスーパーヒロインの可能性もアルわ。でも、何者であろうと、彼女は捕まえられない。諦めて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「決して諦めはしない。私は、市場の線形統合における新しい見方を追求し続けているのです」

「ソレは、とても重要なコトですね」

「息子から貴方は有名なSF作家だと聞きました。どんな作品を描かれましたか?私は、大衆小説は好かないのです。特に最近のサイエンスフィクションは安っぽくて、特にヒロインのコスプレが限りなくAVにニアミス、既視感化していると感じます」


御達見だ!シュリのパパとは話が合いそうだ。


「経済学とは、結局つまるトコロ、人間の行動分析の学問だと思っていますが、私は同じアプローチを執筆を通じて行っています。つまり、人の心を動かすモノ。ソレが何かを知りたい。例えば、貴女のような普通の人間が、なぜ残酷な犯行に手を染めるコトになったのかとか、人はどーゆー時に"らしくない行動"を…」


ミユリさんと目が合う。ん?


「あの、すみませんが…ちょっと席を外しても良いですか?」


捜査本部のラギィのスマホを鳴らす。


「マリスのとった行動は"らしくない"。もしスパイなら、あんなバレバレな行動はとらないハズだ。つまり、彼女はスパイじゃない」

「あのね。ルイナがくれた検査結果によると、彼女から、チオペンタールナトリウムが検出されたの」

「自白剤じゃないか!そうか。宇宙人じゃなくて、太平洋の対岸の国のスパイに誘拐されたんだな?ソレを僕達は宇宙人に誘拐されたと早合点してたのかw」


やりとりを聞き、顔を見合わせるシュリの両親。


「つまり、モノホンのスパイは…」

「科学センターで電波望遠鏡を使える人だな」

「私、今からセンターに行くわ」

「現場で合流だ!」


スマホを切ると…シュリの両親の視線が痛いw


「えっと…ワインはいかがですか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田花籠町(ミッドタウン)の科学センター。


「科学センターと言ってもお役所だから、全て書類で動いてる。電波望遠鏡を衛星の座標に合わせるのにも、特別な申請書が必要ょ。で、そのサインは、確かにマリスのサインだから、いかに"らしくなかった"としても、やっぱりマリスはスパイみたいね…待って。マリスのサインが申請書によって一致しないわ。"ヲタク"を"オタク"と描いてる」

「ホントだ。致命的だな」←

「こっちの書類のサインはどうかしら?」


他の申請書類を当たる


「この人も"ヲタク"を"オタク"と表記してる。同じ間違いを犯してるぞ?」

「この前、科学センターを案内してくれたボーン博士だわ。彼が、衛星通信を傍受してたのにマリスのせいにした。きっとマリスは、自分のニセのサインに気がついて、ボーンが何を観測してたのかを自分で確かめた。同じ座標に望遠鏡を合わせてみたのね」

「そして、異常シグナルを受信し記憶が飛んだ」


溜め息をつくラギィ。


「ストラ・イカーは、ソレを宇宙人の誘拐だと解釈した」

「だが、実際に誘拐したのは宇宙人じゃなくてボーン博士だった。マリスがどれくらい情報をつかんでいるのか、自白剤を使って確かめ、全てがバレていると知って殺したンだ」

「でも、低圧室のコトを話してくれたのはボーン博士自身ょ?」


ソコがミソだょラギィ。


「最初から、博士は元カレが疑われるとわかっていたんだ。全て、元カレに罪を着せる前提だ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


エアリからスマホ。


「ボーン博士が消えたわ。自宅はモヌケの空ょ。でも、自宅でチオペンタールナトリウムを見つけたわ」

「彼は?」

「いない。かなり急いで出かけたみたい」


スマホのマイクを塞ぎ傍らのマリレに指示。


「神田リバー水上空港発の飛行艇に乗せないよう運輸保安局に連絡して。テリィたん、ボーン博士は逃げたって」

「疑われたと気がついたんだね」

「スパイだとバレてしまったから、予め国外逃亡の計画を立てていたんだわ」


僕は頭を抱える。


「指図していた司令員が極秘ルートで国外逃亡の手助けをするぞ。絶対に捕まらないさ」


すると、ラギィはニッコリ笑う。


「だったら、スパイハンターの秘密エージェントに御協力を願いましょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のエレベータードアが開きメタルアタッシュを持った黒ミニ喪服コスプレ女が現れる。萌え。


「こんなに直ぐ呼ばれるとは思わなかったわ」

「スパイはボーン博士ょ。マリスに気づかれ、彼女を殺した」

「そのようね。やれやれ。私達"women in black"の面目は丸つぶれだわ」


苦虫を噛み潰したような顔の喪服女。激萌え←


「貴方、何処に所属してるって言ってたっけ?」

「言ってナイ。ボーンは、相当なギャンブル好きょ。中華人が経営するカジノで大損してスパイになり下がり、彼等の言いなりになってる」

「今、どこにいるかわかる?」


メタルアタッシュを開く。


「直ぐわかるわ。スマホから三角測量スル」

「でも、追われてると知って、スマホは切ってるんじゃないの?」

「なら電源を入れるまで」


コトもなげだw


「おいおい。ソンなコトが出来るのか?」

「貴方のスマホなら出来たけど」

「ソレで最近、雑音が多いのか。ソレから、よくも首都高で覆面パトカーを磁気爆撃してくれたな!」


チャカチャカとキーを叩く喪服女。たちドコロにPCには車から降りる男のリアルタイム画像が出る。


「アレはECMドローンょ。所轄が全てを暴いたと思って張り込んでみたら空振りだった…今、ボーン博士は東秋葉原のチャイナタウンにいる」

「もっとズームできる?…あ、間違いナイわ」

「スゴいね。マリスの遺体があった場所の近くだ」


スパイ狩りって簡単だw


「マリスは、ココで殺されたのかな」

「誰か来たわ!」

「タバコを吸ってるね。例の銘柄かな?」


全身黒のライダースーツでわかりやすい。ホントにスパイ狩りって…吸殻ポイ捨て。画像キャプチャ。


DBに照合、直ちに面が割れるw


「中国の大物女スパイ、ウンQだわ」

「司令員の彼女がお出ましと言うコトは…」

「データの引き渡しがアルわね」


ニンマリするwomen in black。激萌え。


「じゃ女狐狩りだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


現場。一斉にバンから降りる。真っ先に対テレパス用ヘッドギアを装着。ライターと大描きしてあるw


「あれ?今回はECMドローンや完全武装のSWATとかは投入しないのか?」

「ECMドローンの磁気爆撃で予算が尽きたわ。頼むから、この国のためにも2人は生け取りにして」

「司令員クラスの良く訓練されたスパイだ。捕まったら奥歯に仕込んだ青酸カリで自殺スルに違いない」


我ながら重要な指摘をしたが…


「今はその心配はしなくても良いわ」←

「ココから5ブロック先まで道路は封鎖した。ヲタッキーズも全力出撃(アルファストライク)

「ムーンライトセレナーダー、よろしく」


ベータは、傍らのミユリさんに頷く。僕にも頷けw


「ボーン博士のスマホ信号はロストした。つまり、ボーン博士は地下にいるってコトょ。建築確認時の設計図によれば、この建物にはかなり広い地下室があり、侵入経路は2つ…」

「あのね。この辺は"リアルの裂け目"が近くて、違法な次元難民が多い。移民局の手入れから逃げやすいように別の建物に抜ける地下ルートが無数にアル。地下迷宮の全容は誰にもワカラナイ」

「マリウポリ?ソレじゃあボーンもウンQも、このビルから移動してる可能性があるってコト?」


うなずくラギィ。


「コレが東秋葉原ょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


トンネル・ラット(トンネル攻略兵)だ。僕はミユリさんと組み地下迷宮を逝く。ミユリさんは"雷キネシス"のポーズ。


中国語が聞こえる。  


やりとり目指して進むとエアリ達と合流。ハンドサインで会話、カーテンを横に払って中へ飛び込む!


「ヲタッキーズょ!動かないで!」

「ムーンライトセレナーダー、真空乾燥機だ!」

「どーやらココが殺害現場のようね」


深くスリットの入ったチャイナドレスの女子2人がセッセと鮮魚をトレイに載せ真空パックしているw


ホールドアップするチャイナドレスw

チャイナドレス vs メイド服。激萌え。


「貴女達、この女を知ってる?」

「my partner is crazy and may start wiring at any moments(彼女は馬鹿だから直ぐ発砲スルぞ)!」

「アイヤー!」


背後を指差すや、一目散に逃げ去るチャイナ2人。


「ナイス広東語!留学してたの?」

「いや街中華で覚えた(英語だけどw)」

「助かったわ。ありがとう」


うなずく僕。またまた暗闇に響く声。


「お黙り!もうアンタには用がないアルょ。ひざまずくよろし」

「待ってくれ。私は言われた通りマリスを殺したし、言うコトにも全部従った。まだ、俺は役に立てる。撃つな!何でもスル!」

「ヲタッキーズ!武器を捨てて!」


ボーンを跪かせ、サイレンサー付き音波銃を額に突きつけていたウンQが顔を上げた瞬間にタックル!


「お前も伏せるの!早く!」


逃げ出すボーン博士の目の前に黒ミニ喪服のベータが立ち塞がる。再び跪き、手を挙げるボーン博士。


「自殺スルぞ!」


エアリが、後ろ手に縛り上げるウンQの口をナイフ半回転で開かせ、指を突っ込んで毒薬を取り出す…


ん?タダのガムかw


「ガムだ。人騒がせな!」

「盗んだ傍受データは何処だ?」

「彼女の胸の谷間にUSBを挿した」


任せろ!ウンQの胸の谷間に手を突っ込む僕。


「コレで表彰されるかな?」

「残念だけど、全て闇に葬るわ。だから、忘れて」

「あれ?Twipperが凍結されてるw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原の路地裏。パトカーの赤ランプがいくつも回転する中、連行されて逝くボーン博士とウンQ。


「ボーンが洗いざらい吐いたわ」

「自分を殺そうとしたウンQをかばうハズがナイな」

「ボーンもウンQも蔵前橋の重刑務所で一生を過ごす。おかげで助かったわ」


ムーンライトセレナーダーに満面の笑みを向けるwomen in black。やはり仕事が終われば笑うんだw


「ベータ。テリィ様のおかげだから」

「その通りね。お世話になったわ。私はムーンライトセレナーダーと話がある。2人にさせて」

「もちろん」


僕と黒ミニ和装の喪服美女は握手。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は黄色い規制線テープを潜ってスマホする。


「やぁスピア。悪いけど、シュリの御両親とは上手く逝かなかったょ…待て。ちょっと待ってくれ。何だって?僕を気に入ったって?」


信じられない。何でだ?


「御両親も一緒に"ダッジオーブンピクニック"に来る?…いやいや。全く問題ナイょ。大歓迎さ。楽しくなりそうだな。大好きだょ。じゃあ」


スマホを切る。実は渋い顔の僕。変身を解いたミユリさんが黄色いテープを潜って来て一緒に歩く。


「ベータは何だって?」

「あ。でもナイナイの話なので」

「え。何が?」


おや?何か変な感じ…


「テリィ様にもお教え出来れば良いのですが、全て極秘なので…そもそも第4種接近遭遇で始まった事件でしたが、実際は、そうですね、第2.5種ぐらいでしょ?」

「ミュージカルかょ?そんなコトより、極秘って、まさか宇宙人のコト?言うまでしつこく質問するぞ。僕は」

「どうぞ。もう慣れっこです」


そっか。きっとミユリさんは、僕がベータの巨乳の谷間に手を突っ込んだコトが気にいらないのだ。


「じゃロズウェル事件のこと?エリア51?ネッシー?」

「いいえ。でも当たり!」

「ホント?」

「…なんちゃってウソです」


やや?ミユリさんの髪、ラベンダーの香りだw


「なんだ。じゃ気候変動兵器だな?ヲタクの物欲の操作?」

「確かにお買い物って群集心理の産物ですょね」

「うーん何だろ?…あれ?」


数歩歩いたら、急に眩しい真昼の電気街?おかしいな。今は、真夜中だょね?ま、良いか。で、何だ?


僕達は歩く。白い光の中へ。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"宇宙人による拉致"をテーマに、ゼロ気圧に晒され殺された天体物理学者、科学センターの博士、その助手、その元恋人、秋葉原の天文台長、UFO研究家、宇宙人に拉致された人々のサークル、ついに明らかになった対宇宙人秘密組織メンインブラックの女性版、ゼロ気圧殺人を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、主人公が元カノの今カレの御両親に会う騒ぎなどもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、もはやヲタクの街ではなくなった国際観光都市、秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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