87話 赫き稲妻の『追放者』(1/3)
Q.作品内であっと驚く豆知識教えてや
A.2-2章のメインであるカルヴァトスですが、1章1話にもいたって話したの覚えてる?
その時の挿絵にゾンビだった頃の彼女いるよ、挿絵の左のやつ
1人取り残されたシオンはクレーターの中を這っていた。
「ぐ...ぁ...あぁ!!」
全身の痛みを押し殺し、安全な場所へ向かう。
否、安全な場所などないのかもしれない、だがアイザックの足手纏いにならないようにとにかく遠くへ行く必要があった。
「し、シオンさん!?」
「ミークッッ!」
しかしそこを偶然真上を通りがかったミークが発見する、ふわりと着地し、シオンに回復魔法をかける。
淡い光が身体を包み、裂けた傷がゆっくりと塞がっていく。
「よかった……生きてて……!」
「……」
シオンは何も答えない。
ただ、視線は地面に落ちたままだった。
シオンの肩が、かすかに震えていた。
「……さっき、さ」
途切れ途切れに言葉を絞り出す。
「私……何もできなかった」
脳裏に焼き付いている光景を、オルゼに蹂躙された感触、抵抗すら通じなかった絶望。
そして...。
「アイザックに……守られた」
ぎり、と奥歯を噛み締める。
「本当は……私が立たなきゃいけなかったのに」
声が、わずかに震える。
「隣にいるって……決めてたのに……」
拳が土を握り潰す。
あの夜、カルヴァトスを失って崩れかけていたアイザックを見た。
あの時も何もできなかった。
だから今度こそはと...彼のために隣に立つと決めたのにーーー。
「これじゃ...アイザックの足手纏いじゃん!!」
「シオンさん...」
ミークはシオンを抱き起こした、土が払われ、そしてその手は温かく優しかった。
「ミーク...」
「シオンさん、聞いてください」
「?」
シオンの落ち着きを確認した後、ミークは静かに告げた。
「勝手に隣に立たないでもらえます?」
...
...
「ほぇ?」
シオンは呆気に取られる、ミークの言葉は全く意図しないものだったからだ。
「アイザック君の隣に立つのは私です」
「え、そ、そう...なの?」
「いや決まってないですけど」
「決まってないんじゃない」
「でも予約してますから」
「は、なにそれ...!」
しかしミークの目は澄んだ青空のように綺麗だった、その目はいっさいの曇りもない、アイザックについて喋る純粋な乙女がそこにいた。
「シオンさんはせいぜい足元で骨でも咥えててください」
「私は犬か!?」
「ーーーでも、少しいいですか?」
ミークの声色が、ふっと変わる。
さっきまでの軽さが消え、まっすぐにシオンを見つめた。
「一人で戦わせるつもりなんですか?」
「……ッ」
シオンの言葉が止まる。
遠くで轟音が響き地面がわずかに震える。アイザックとオルゼが戦っている音だ。
「守られたままで、終わるんですか?」
「……」
胸の奥に刺さる、さっきの光景が焼き付いて離れない。
「……でも、私……」
声が弱くなる。
「さっきみたいに、また……」
「いいじゃないですか」
「え……?」
ミークは即答した。
「一人でダメなら、二人でやればいいんです」
「……」
「それでもダメなら、三人で」
にこっと笑う。
「今は、ここに私がいますよ?」
シオンは目を見開く。
その言葉はあまりにも単純、だがその純粋さが、単純さがシオンには強くみえた。
「……足手纏いに」
「なりません」
シオンの不安をミークはばっさりと否定する。
「だって私、回復できますし」
「……」
「それに」
ミークは少しだけ頬を膨らませる。
「ていうかシオンさん普通に強いです」
「……ボコボコにされたけど」
「それは相手が悪いです」
即答だった、迷いが一切ない。
「だから大丈夫です」
ミークはシオンの手を引く。
「“一人じゃない”なら」
「シオンさんは1人で背負おうとしすぎです、アイザックくんもですけど」
その手は、小さいのに不思議と力強かった。
シオンは少しだけ俯いて――そして、ふっと息を吐く。
「……ごめん、私ってまだまだダメだわ」
「最初から完璧な人はいませんよ〜ぅ」
小さく笑う、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。
ーーードォォォオオオオオン!!
遠くで再び轟音が鳴り響く、
戦いはまだ終わっていない。
シオンはゆっくりと立ち上がる。
さっきより、足取りは確かだった。
「……行きますか?」
「えぇ、ごめんね、頭が冷えたわ」
「ならよかったです〜!」
「それと...あなた私より年上なんだから、シオンでいいわよ」
「わかりました、ではシオンちゃんは私の事ミークって言ってくださいね!」
「話聞いてた?」
ミークは嬉しそうに頷く、そして二人は、同時に顔を上げた。
――その先にいる、たった一人の仲間の元へ
...
..
.
空気が揺れる、足下が震えアイザックの体勢を奪う。
「な...なんだ!?」
「がが...ガガガガガッッ!!」
目の前にいるオルゼの様子がおかしい、全身が隆起したかと思えば苦しみだしたのだ。
「ーーーぎぃぉぁいぃぃぢぃッッ!!」
ーーーギギギギッ!
「な!?」
オルゼの頭部すらも変形した、口元が伸び、牙が並ぶ。
全身からおどろおどろしい魔力の靄と毛並みが全身を覆う、背骨からは次々と突起が飛び出て規則的に並んだ。
「お...お前...なんなんだ!?」
その姿は...それは、人狼――いや、それすら生ぬるい“何か”だった
「ふんッッ!」
ガキンッ
鉄がぶつかる音、オルゼの全身が鉄にも似た装備に覆われる。
自然と人工、その相容れないであろう二つが混ざり合ったような姿だった。
「はははははッッ!!」
「...ッッ!」
先ほどとは比べ物にならない殺気と威圧がアイザックを襲う、その迫力に後退りしてしまう。
「なんだアレは...!?」
その威圧は水晶越しに会場にも伝わる、特等席で見ていたミカードは眉をひそめた。
「?」
ミカードの異変に気付いたチクアーノは首を傾げた。
「いやなに、北の方に集落があってね」
「なんの話ですか?」
「まぁ聞け、そこは『赫人狼』と呼ばれていてる人喰いの怪物を崇拝してる村があったんだよ」
そこでは人狼が村を支配していた、彼によって人々の命は日夜弄ばれ、日々を恐怖で過ごしていたと言う。
旅をしていた勇者達がその化け物と戦い、人狼を村から追い出して平和を取り戻した逸話があった
「……それが?」
「おそらく彼だ」
ミカードは水晶に映るオルゼを見据える。
「私もわかる、ああいうのはな、一度“上”を知ると、二度と降りられん...這い上がれるならそのチャンスを逃しはしない、誰であってもな」
水晶の中のオルゼは静かにアイザックを睨みつける。
「はははははッ!!」
ーーードゴォォォッ!!
大地を蹴破り、オルゼは急接近、アイザックはそれを拳で応える。
そしてその戦いに身を投じるシオンとミーク。
最終戦が今始まる。
次回投稿は4/7 7:10!!
ラストバトルです
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