80話 オルゼ=スティングレイの愉悦③
シオン「あんた魔力の刃って手からでるんでしょ?」
アイザック「そうだね」
シオン「どこからでもでるの?」
アイザック「噴射するイメージがあれば何処でも」
シオン「なるほど...どこでも」
レチェ「おい待てワシが教えた技を尻からだそうとするんじゃない」
数分前。
既に廃墟となった医療施設、その一室でシオンは抱き抱えていたシュガーを静かに降ろす。
「なんで...助けたのよ」
「アイザックの友達だからよ」
「でも私達は敵なのよ!!実際に私は貴方を殺したくてたまらないくらい恨んでる!!」
「えそうなの?」
ーーーバギィッ!!
「ギャァァアアアア!?」
シオンはシュガーの指を容赦なくへし折る。
「あ、ごめん反射的に」
「反射で指折るなぁぁああ!!」
涙目で悶えるシュガーを見下ろしながら、シオンは低く言う。
「勘違いしないで。助けたのはアイザックのため。貴方のためじゃない」
しゃがみ込み、顔を近づける。
目は笑っていない。
「ぎぃぃいいいい!!」
「あのね、アイザックから頼まれたとはいえ今貴方の命は私が握ってるの、あんま調子に乗らない方がいいわよ」
「この悪魔!!悪魔の末裔!!」
「ぐ...否定できない」
半泣きになりながらも暴言を吐くシュガー、その姿に『鮮血女帝』の面影はない。
そう呟いて、折った指を無理やり元の位置に戻す。
「いっだぁぁぁあああ!!」
「黙りなさい。治療するから」
ーーードォォォォオオオオオン!!
「!!」
「!?」
激しい振動、天井から埃が落ち、同時に空気が重くなる。
「オルゼ...もう来たの」
「...」
「あんたはもう戦いないわね、とりあえずそこにいなさい」
「...」
いわゆる戦力外通告、しかしシュガーは悔しくは無かった、むしろ戦わなくていい事に対して安心していた。
怖いからではない、もう戦いたくなかったのだ。
人の痛みを知った事で彼女の戦意は喪失していたのだ。
「待って、気をつけなさい」
「何?」
「あいつ、なんで魔力の探知ができるの?」
「!!」
失念していた、魔石の影響で魔力の探知ができなくなっている。だがオルゼはシオンの魔力を正確に感じとり向かってきた。
「...なんでかはわからない...でもこんな環境でも探知できる魔法使いいたし、その手の扱いに長けてるのかも」
「どちらにせよ油断したらだめよ」
「言われるまでも...」
そういうとシオンは病室を後にする。
...
..
「よう、シオン」
施設の屋上で二人は対面する、円を描くように二人は出方を伺うように歩みを進めている。
「...」
「お前も中々にクソだな、仲間を見捨てて逃げ出すなんて」
「私にも考えがあるのよ、貴方と違って」
「はん...じゃあ...見せてもらおうか!!」
ーーーヒュッ!!
「あん?」
その時、シオンは円形の小さな鉄の塊を取り出した。その鉄球にも近いものからは糸が出ており遠心力によって甲高い音を発しながら円を形造る。
「んだそれ」
「ヨーヨーっていうらしいわよ、アイザックから一個だけ借りた」
「んで?それがどうしたーーー」
ーーーバゴッ!!
瞬間、シオンが解き放った鉄塊は近くの柱を破壊し、瓦礫に深々と突き刺さった。
「すごい破壊力、我ながら驚きだわ...あむ」
「ん?」
シオンは己の持つ剣を口に咥えた。
「何をしているんだ、お前は」
「んじゃあーーーいくわよッッ!!」
ーーードンッ!!
瞬間、シオンが消えた。
「ほう!!」
ーーード!!ドンッ!!ドドドッ!!
姿を現しては消える、その度に地面が爆ぜ、そしてヨーヨーによる破壊でさらに砂煙が上がる。
「しっーー」
「!」
高速でオルゼの周りを駆け回るシオン、彼女が咥える宝剣『ドレッドアレイスター』が眩しく光る。
砂煙の中、不規則に線を描く蒼光はまるで獲物を描く獣の眼光を想起させる。
ーーードンッ!!ド!ドドドドドッッ!!
衝撃波がオルゼの聴覚を奪い、砂煙が視界を奪う、完全な彼女のフィールドが完成していた。
「ふんーーーくだらないッ!!」
しかし、その中でも蒼光は目立つ、彼女が咥えた宝剣だ。
ーーードンッ!!
一振りで放たれた雷撃は蒼光を容易く貫く、しかし。
「ッ!?」
手応えがない、雷撃の衝撃波は蒼光を通過し空を切る。
「ほぉ...」
「はぁッ!!」
シオンは背後から姿を現し、拳を振るう。
「ーーッ!?」
だが目が合った。
ありえない、視界を奪い、聴覚を奪い、魔力でさえも欺き影から現れた。
なのに彼ははっきりと彼女の方向を向いて嘲笑っていた。
「なんでーーーッ!?」
「さぁ?」
ケタケタと嘲笑うオルゼ、シオンは咄嗟に距離を取る。
「チィッ!!」
ーーーバラバラ
「ん?」
その時、オルゼの足元に転がる半透明な水晶、それは次第に輝きを増していきーーー。
ーーードォォォォオオオオオンッ!!
大爆発を起こしてみせた。
「ふん!!」
しかしオルゼは傷一つ無い、爆風から飛び出し着地、破片が舞う。
ーーーギギギギギッッ!!
「ん?」
着地と同時、オルゼの腕に何かが巻かれる、見るとシオンが回していたヨーヨーと言われる鉄塊が細長い糸を引いて巻きついていた。
「はぁぁあッッ!!」
「ぐっ!?」
その時、オルゼの身体が意図せず激しく飛んだ、その先にはシオンが剣を振り翳している。
狙うは首、オルゼは体勢が悪く避けることができない。
だがーーー。
「はァッッ!!」
ーーーバギッッ!!
「ギャッッ!?」
オルゼが放った拳はシオンの顔面を正確に捉えた。
「だァァッ!!」
しかし、そのまま殴り飛ばされる直前、シオンは血を吐きながらも宝剣からでる雷を素手で引き出し。
ーーーバヂィィィッッ!!
二人を繋ぐ糸へ叩き込んだ。
「ッ!?」
糸は文字通り閃光をなぞりオルゼに辿り着く、その瞬間、オルゼの全身が瞬く間に輝き、そして弾けるような音を出す。
「ッッ...!!!」
オルゼの身体が一瞬硬直する。
「ザマァみなさい!!」
皮膚の表面が焦げ、煙が立ち上っていた。
しかしーーー。
「調子乗んなクソアマァッ!!」
ーーーバギィッ!!
「ッッ!?」
オルゼの拳が再びシオンの頬骨を捉え、そして足を掴んで急降下。
ーーードォォォォオオオオオンッッ!!!
振り下ろしと同時、シオンは廃墟の壁面に叩きつけられた。
「ぐ...ぁがッ!?」
ヒュッーーー
ーーードォォォォッ!!
「ぐぁああああッッ!!?」
オルゼは再びシオンを連れ去り上昇、そしてその同じ廃墟を今度は真上から叩きつけた。
その威力はもはや事故、衝撃はシオンの全身を激しく揺さぶる。
ーーーガァァァアン!!
地面が耐えきれず崩れ落ちる。
ーーーガァンーーーガァンーーガァンッッ!!
屋上から4階、3階、2階、1階ーーー、そこでようやく止まる。
「ゴパぁッ!?」
血と胃液の混じったものを激しく吐き出し、咳き込む、肋骨の数本は破壊され、内臓に突き刺さっていないのが奇跡だった。
「はぁ...はぁ...ッ!!」
全身が千切れ飛ぶような感覚に悶える、肺が潰れているのかうまく息ができずさらに苦しさが増す。
「シオン=エシャロット、面白い戦い方をするんだな」
「...ッ!!」
気付けばオルゼは一つ上の階、穴の上から見下ろしていた。
「...」
「なんだ声も出ないか?」
「...クク...」
「あ?」
しかし、その時シオンは不敵に笑い出す。
「あんた...思うようにいかないとすぐキレだすのね」
「...ふん、思い通りにいかないと不機嫌になるのはみんな同じじゃないか?」
「...アイザックは違う」
シオンは目を閉じ、アイザックの姿を思い浮かべる。
「アイツは...思い通りにいかない事があっても、あんたみたいにすぐキレたり当たったりしない...」
「...」
「アイツはまず思い通りにいかない時、自分を責めるのよ...アイツは頭も悪いし容量もよくない、でもできないならできないなりに、それを受け入れて努力するのよ」
「...ッ」
「わかる!?すぐ卑怯な手を使って誤魔化すアンタとは違うッッ!!アンタはアイツの足元にも及ばない哀れな男よッ!」
その言葉が、オルゼの顔を歪ませた。
「...ははははははは!!!...死ねッッ!!」
ーーードンッ!!
オルゼが床を蹴る、床が砕け、爆発のような衝撃が走る。
「ッ!」
瞬きの間もない、次の瞬間にはもうシオンの目の前にいた。
拳が振り上がる。
シオンは動けないら肺が潰れ、身体が言うことを聞かない。
(あぁ…)
ぼんやりと、思う。
(アイザック…ごめん…)
その瞬間だった。
ーーードォンッ!!
オルゼの顔面が横に弾けた。
「ッ!?」
数十メートル吹き飛び、壁を突き破る。
ーーーガァァァァン!!
瓦礫が崩れ落ちる、シオンは呆然と目を見開いた。
「……」
土煙の向こうに一人の影が立っている、逆光で顔は見えない。
だが、その背格好にシオンは思わず呟く。
「……アイザック?」
その影はゆっくりと姿を表し、そして...
「とぉぉおううううッッ!!!」
ーーーシュタッ!!
「ダイコー=オーディン、ここに見参ッッ!!」
現れた救世主は思っていたのと違った。
次回投稿日は3/24 7:10!!
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