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【祝1万PV突破ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-3章 龍界地底砲塔マナタン:獣冠祭編

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79話 オルゼ=スティングレイの愉悦②

 ーーードォォォォオオオオオンッッ!!


 雷撃はアイザックの頭上を抜け、その背後で炸裂した。

 岩盤が弾け、衝撃波が地を薙ぐ、その先にいるのはシオンとミーク。


「シオンッ!!ミークッ!!」


 アイザックは地を蹴った。魔力が爆ぜ、一直線に二人の元へ走る。


 しかしその瞬間――


「どうした?」


 耳元で、低い声。


 突風が横を抜ける。いや、風ですらない。

 ただ“存在”が追い越していく。


 オルゼ=スティングレイ。


 煙を裂き、アイザックとの距離が一気に開く。


「待てぇぇぇえええええッ!!」


 数歩。

 たった数歩。


 しかし決定的だった。


 煙がわずかに晴れる。

 その隙間から、起き上がろうとするミークの姿が見えた。


「ッッ!!」


挿絵(By みてみん)


 ――ドガッ!!


「かっは―――ッ!?」


 腹部を蹴り上げられ、ミークの身体が浮く。肺の空気を強制的に吐き出され、胃液が散る。顔が歪む。


「おっと」


「――もがっ!?」


 空中で詠唱を始めかけた口へ、無造作に手が突き込まれる。


「が……ッ、がッ!!」


「口を塞げば、魔法は使えないだろ?」


 そのまま地面へ叩き落とし、膝で押さえつける。骨が軋む音がした。


 しかし。


 ――ドンッ!!


「うぉッ!?」


 至近距離から放たれた閃光。

 ミークの目から放たれた光線が、オルゼの頬を浅く掠める。


 血が一筋、流れた。


 そして――


「好きだぜ、そういうのッッ!!」


 ーーードガァアッッ!


「ぁが―――ッぶふッ!!」


 拳が振り下ろされる、地面ごと叩き潰す一撃、ミークの額は血飛沫と共に沈黙した。


「ミィィィィィク!!てめぇぇぇええええッッ!!」


 地を踏み砕きながらアイザックが迫る。しかしオルゼは倒れたミークの首筋を掴み上げた。


「返すぞ」


 軽い動作だった。壊れた玩具でも放るように、ミークをアイザックへ投げる。


「ミークッ!」


「がふ...」


 ミークを抱き抱える、しかしその瞬間ーーーオルゼは嗤う。


「ッッ!!?」


 ーーードッ!!


 またも走る雷撃。


「ぐっぁぁあッッ!!」


 しかし、『死の風』を感じたアイザックはすぐさまミークを引き寄せ、その攻撃を庇うように背中で受けたのだ。


「ほぉ」


 ーーードドドドドッッ!!!


 しかし次々と襲いかかる雷撃はアイザックの背中を焼き続ける。


「ガァァァアッッ!!」


「わかるか、これが現実だ」


 ーーードドドドドッッ!!!


 肉が焼け、骨が軋む。

 アイザックは必死に魔力を回して肉体を強化しても間に合わない、雷撃は次第に身体を削っていった。


「気絶させる??誰も殺さない??ははははは!!!そもそもお前ごとき()()()()()()()()()()奴が何言ってんだ!はははははッッ!!」


「ぐぁぁあああ!!!」


 ーーードドドドドッッ!!


「非情さだ、生き残るには、上に立つには常に非情さがいるのだ。そうでない者は淘汰されるしかないのだ」


 ーーードドドドドッッ!!


「そうでないお前はただ強者の食い物にされ、ゴミのように捨てられる、それがお前の末路だ、アイザック」


 ...


 雷撃が止んだ、嵐の後のような静かさと焦げた匂いがあたりを充満する。


 アイザックはミークをかかえたまま大量の血を流して虚を向いていた。


「死んだか」


 ...応えない。


「ふん、まぁいい」


 ーーー。

 オルゼは眉を顰める。


「...!!」


 そして明後日の方角へ向く、長い沈黙の後オルゼはアイザックに向き直った。


「今...微かに感じた、もう一人の女がここから逃げたな、だがお前はその傷ではもう動けまい」


 ...応えない。 


「そこで待っていろ、あとでゆっくり遊んでやる!!」


 ーーードンッ!!


 そういうとオルゼは地面を弾き飛ばし高く飛び上がり、やがて見えなくなった。


 ...


 流れる静寂、血溜まりは広がり、二人を赤く染めていく。


「...」


「...」


 ...


 ..


 .


「ーーー行った?」


「行きまひた」


 二人は離れ、服の汚れを払い落とした。まるでダメージがなかったかのようにアイザックは背伸びをし、ミークは自身に回復魔法をかけながら外れた顎を元に戻す。


「ミーク、マジで助かった...『転送障壁(トランスパラウト)』を何回もかけ続けていてくれたんだよな?」


「すごく大変でしたよ!何回も何回も何回もかけまくって大変だったんですから!あ、でもアイザック君から魔力を吸い取り続けないと無理でしたけどね」


「ミーク顎は?」


「それよりアイザック君聞いてください〜!あいつのせいで前歯がかけました〜ゔぇぇぇえええ!!」


 ミークは前歯を指さして泣き喚く、少しだけかけて欠けており血に濡れていた。


「うわっ痛そう」


「ひどいめにあいまじだ!!アイツ、アイザックの顔して許せないでずぅぅ!!」


「あぁ、そうだな...」


 思い出しただけでも怒りがふつふつと湧いて出る。


「終始...俺は遊ばれていた、なんもできなかった」


 自分なら対処はできたかもしれない、だがミークとシオンを狙われて反応が遅れてしまったのだ。

 だがそれ以上に、オルゼ=スティングレイは彼以上の速度で自分やミークを追い詰めた、狡猾さと実力、全てが繋がるような動きだった。


「...非情さ、か」


 アイザックは自分の手を見つめ、現実を目の当たりにする。


「ミーク...どう思う?」


「なにがです?」


「俺、なにもできなかった...あいつの卑怯さを前になす術なくやられた」


「...そうですね」


「アイツは非情になれって言ってた...俺は見透かされていたのかもな」


 アイザックは今まで『獣』以外、誰も殺さなかった。命のやり取りが当たり前のこの帝国でも彼は今の今まで一人も殺してはいない。

 だが、それは殺せるが殺さない、と言うことではない。


 ーーー殺す勇気なんてないのだ。


 アイザックは拳を見る。


 震えている。

 オルゼを思い出す。


 あの笑い、あの余裕、もし、あの位置に立つには。


「あいつみたいになるしかないのか?」


 喉が詰まる。


「あんな顔で、人を踏みつけられるのか……俺は」


 だが、その甘さがミークやシオンを危険に晒す事になるのなら。


「...今まで誰も殺してないけど、もう...一歩大人になるべきなのかな?...お前らが傷つくくらいなら...俺は」


「アイザック君」


 しかし、その言葉をミークが止める。


「アイザック君が言うなら、私やシオンさんも何も言いませんよ、好きにしたらいいと思います」


「ミーク?」


 以外な答えだった、ミークは人の道を外れないように止めてくるものだと思っていた。


「言ったはずです、私は私にとっての勇者様を守るって...だから私はアイザック君がどうなってもアイザック君の隣にいますよ」


「ミーク...」


 ミークとアイザックの手が重なる、ほんのり暖かく、そして柔らかかった。


「アイザック君はオルゼの戦い方を見て、なんて思いました?」


「!」


 オルゼの戦いを思い出す、強かった、だが卑怯で不快で、自分と瓜二つとはいえ顔を思い出すだけでも嫌な気分になった。


「...むかつく」


「アイザック君と戦った...えっと誰でしたっけ、シュガーちゃんの兄の」


「グリースだっけ、あんま覚えてない」


 カルヴァトスが後ろで見ていた競技場、ライトに照らされた足場の悪い戦場。

 顔はうろ覚えだが、やった事は覚えている。

 彼は相手を弄び、命が散る様を見せ物にしていた、その在り方は聞いていて不快だった印象が深い。


「私は姉を殺しました」


「!!」


「情を捨てて、何も考えず、やるべきことをやりました」


「で、でもお前はアイツらとは違う...!!」


「一緒ですよ?人を殺すっていうのは。理由がどうあれ、正義だろうが復讐だろうが、守るためだろうが」


 ミークは静かに言う。


「人を殺すっていうのは...非情になるっていうのは...自分を捨てることです」


 アイザックは言葉を失う。


「私は姉と決別しました、私は後悔してません、でも」


 ほんの一瞬、視線が揺れる。


「今でも夢に出るくらい、辛いですよ」


 沈黙。


「非情になれって言われて、なれるなら……たぶん、それは元からそういう人です」


「……」


「アイザック君は、なれないから悩んでるんでしょう?」


「...うん」


「じゃあ非情にならなくていいじゃないですか」


「え!?」


 ミークの言葉は意外だった、先程のやりとりを全てひっくり返したような衝撃を受ける。


「嫌なものに無理やりならなくていいんですよ、アイザック君はアイザック君のやり方で強くなればいいんです!」


「で、でもそれでオルゼを倒せるのかな」


「うーん、倒せないかも?」


「ずごっ!!」


「自分のやりたいようにやって、自分を貫いて負けるなら、むしろスッキリしませんか?」


「...まぁ、そうかな?」


「でも、勝てたら、勝っちゃったら?」


「気持ち良い」


「でしょう〜」


 ーーー非情にならなくてもいい。

そんな選択肢が、まだ残っていたのか。


「それに、まだ私達にできる事はまだありますよー」


「あぁ...『螺旋起動(スパイラルギア)』か」


 『螺旋起動(スパイラルギア)』、無限の魔力を自身の身体に循環させることで身体能力を上げる技。

 咄嗟に使うことができなかったが、オルゼにはまだ試してはいない。


「それもありますけど、アイザック君もそろそろアレを習得してもいい気がします!」


「アレ?」


「アレです!アレ!レーチェ様や私も超稀に使う」


 それにアイザックは記憶を振り返る、すると一つの答えに辿り着いた。


「まさかーーー『奥義』か!?」


 『奥義』、その者の人生における答え、それを魔法や技に昇華させるもの。



 それがアイザックにとって、オルゼ打倒の鍵となる。








 ...


 ..


 .



 ある瓦礫の積もる大通り、シオンはとうとう追い付かれた。


「よう、シオン」


「...」


「お前も中々にクソだな、仲間を見捨てて逃げ出すなんて」


「私にも考えがあるのよ、貴方と違って」


「はん...じゃあ...見せてもらおうか!!」


 ミークとアイザックが傷を癒す中、別の場所で開戦の火蓋が切って落とされた。



次回投稿日は3/22 7:10!!


皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます〜!!

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