77話 螺旋起動(スパイラルギア)
向き合うアイザックとエウロペ11体、12体いたが最後の1体は殴り飛ばされ瓦礫の下。
アイザックの心の内から湧き上がる感情、
ーーーそれは怒り。
「キレていいよなァッッ!!!」
友達を傷つけられた怒り、胸の奥で煮え滾っていた感情が堰を切ったように溢れ出す。
魔力が激流のように噴き上がり、床石が軋み瓦礫が浮き上がる。
「あらーーー」
ーーーバギッ!!
言葉の途中で、エウロペの身体が横薙ぎに吹き飛んだ。
誰も反応できない、拳が振るわれた瞬間すら見えなかった。
エウロペは岩壁に叩きつけられ、さらに瓦礫が崩落、その下敷きになった。
「なんてすごい魔力!!」
「すごいわすごいわ!!」
間髪入れずにアイザックはさらに数体のエウロペの懐に潜り込む。
「あら!!」
エウロペ達は腕を振りかぶるが、それでもアイザックの方が早かった。
「『魔轟衝』ッッ!!」
ーーードンッ!!
両手から離れた衝撃波は2体のエウロペの腹部に直撃、両者激しく後方、さらに遥か彼方まで吹き飛ばされた。
「次ッ!!」
残り8体、アイザックは1人で4体のエウロペを鎮圧した、さらに両断したりバラバラにもしていないためシュガーの時のような分裂も起こらない。
「とても大ぶりね!」
「でも次は当たらないわーーー」
「『魔轟衝』!!!」
ーーーガオッ!!
次の瞬間、『魔轟衝』はアイザックの口から放たれた、対応できずその衝撃は一体の鳩尾を抉る。
「がふっうーーーッ!?」
「『魔塊弾』!!」
ーーーボッ!
呆気に取られた一体を光弾で弾き飛ばす、その瞬間エウロペが死角から現れ、抜き手を撃つ。
「えいー!!」
「ふぉっ!!」
しかし、アイザックは意識外からの抜き手をも紙一重で躱してみせた。
そして放たれたカウンターの蹴りはエウロペの腹部に深々と突き刺さった。
「ん...ぐぅッ!!」
「すごい!!」
「とても気になるわね!」
「魔力もそこまで使ってまだ尽きないなんて!」
「なにか秘密があるのかしら!」
しかし、まるで効果がないように次々と現れるエウロペの群れ。
「じゃあーーー」
「これはどうかしらーーッ!!!」
天井、床、壁面、死角、影、あらゆる角度から関節を狙う軌道。
“関節外し”
次々と掴み掛かるエウロペの集団はそれを完璧に模倣して見せた。
しかし、相手が悪かった。
ーーーガッ!
「ふん!」
ーーードッ!
「はっ!」
ーーーバギッ!!
嵐のように舞う『死の風』をアイザックは一つ一つ正確に読み取る。
繋がるように襲いかかるエウロペの攻撃をアイザックは全て外し、軌道を外し、手を弾き、腕は空を切る。
しかし呼吸するかのように繋がるエウロペの連撃、1つ外せば2つ、2つ外せば3つと次々と攻撃が激しくなる。
ーーーガガガガガガッッ!!
「あらあらあら!」
「すごいわすごいわ!!」
「なんでもできるのね!」
だがしかし
11人同時の連撃ですらアイザックは叩き落とした。
それでも止まない攻撃の嵐、アイザックを11体のエウロペが埋め尽くす、その時。
―――ドォンッッッ!!!
足元が爆ぜ11体が一斉に吹き飛んだ。
「あら!?」
「あら?」
「嘘――」
次の瞬間、アイザックかいたのは空中。
11体の真上。
アイザックの背中が光る、嵐を模した紋章、『魔王刻印』が回転を始める。
身体は魔力の流れによって輝き、そして微かな電流が流れる。
「わぁ、なにかしらそれ!」
「紋章?見たことないわ!」
そして間髪入れずにアイザックは拳を振りあげーーー
「落ちろぉぉおおおおおッッ!!!」
掛け声と共にそれを勢いよく振り下ろした。
―――ゴァァァァァンッ!!!
衝撃が縦に走り、11体を纏めて吹き飛ばした、空間が歪み11体は地面へ叩き落とされる。
巨大なクレーター、粉塵が天井まで巻き上がる。
「うそーーー!?」
シオンはそれを知っている、見たことがある。
思い起こされるある夜の戦い、一種のトラウマ。
「アイザックそれって!!」
「ドリンク=バァが使ってたやつだ、模倣するのは何もお前だけじゃねぇぞばーか!!」
しかし規模は小さい、無数の雨として降らせるドリンク=バァと違いせいぜい1発がやっとの技。
しかしその1発でも十分な効果があったようだ。
「うぎゃぁあああああッッいででででで!!??」
地面に降り立ったアイザック、しかし身体中に針を通したような痛みが駆け巡る。
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫じゃないでででで!!!」
数分のたうち回った後、痛みを押し殺して立ち上がる。
「コレ使うと反動がすごいんだよ!!」
「反動...あっづ!?」
湯気が出るアイザックに触れたシオンは軽く火傷をした。
「それってレーチェ様が言ってた...?」
「これが奥の手...『螺旋起動』だ!!」
『螺旋起動』
レーチェ考案のアイザックのみが使える奥の手、無限の魔力を供給できる『魔王刻印』からありったけの魔力を引き出して、さらに自身の体内...具体的には血流にのせて高速で循環、回転をかける。
これによって筋力、俊敏性の増加、さらに体内時間を早める事で精密動作性、動体視力を格段に上昇させる。
「でもこれやりすぎると血液沸騰するって言ってた!」
「え、怖...どうりで熱いのね」
「冷やしましょうか〜?」
シュガーを治療しながらアイザックに向けて手を掲げるミーク。
「やめやめろ!!熱ショックで死ぬから!!」
「そ、そうなんですか〜?」
「と、とりあえず俺に構うな、まだ終わってない!!」
その声に合わせて全員が身構える。
ーーードンッ!
瓦礫が吹き飛び一体のエウロペが現れる、どこからか拾ったのかボロボロの布を纏っている。
「驚いたわ!驚いた!アイザック君はとっても強いのね!」
「...」
「ではこれならどうかしら!!」
ーーーコツン
「ッ!!」
その時、肌を撫でる『死の風』。
ーーードンッッ!
反射的にアイザックはミークとシオンを突き飛ばした、方向は下から、ふと地面を見る。
「ーーー!」
血溜まりの下から何かが出てくる気配は無い、そう思ったその時。
ーーーザザザザッッッ!!!
「なっ!?」
「ふぇ!?」
ーーー襲いかかった。
血溜まりが、槍となってアイザックに向かって伸びた。
「どうやって避けるのかしら!」
血が再生し、骨を作り、それが一直線にアイザックの身体を目指す。
「だぁぁあああああああッッッ!!」
ーーードンッ!!
「あら!?」
『魔轟衝』
放たれた衝撃波では槍の勢いを殺すことはできない、しかし...
「!!」
地面に打ちつけた反動でアイザックは高く飛んだ。
「あらあらあら!!」
「ぐぉぉおおお!!」
しかし、体勢が悪かった。世界が、上下が回転する、もはやどこが地面かもわからない。
「どうするのかしら、どうするのかしら、このままだと私の血が刺さっちゃうわ!!」
ーーー対応が遅れた。
シオンは歯を食いしばる、アイザックは一手遅れを取った。
血の再生が武器になることまでは予測できなかった。
「ぐお、ぐぉ!?」
カルヴァトスとの戦闘時、アイザックは建物や遮蔽物に『魔轟衝』を当てることでその反動で飛びまわる事ができた。
しかし平衡感覚を失っている現在狙って同じことはできない。
ーーーしかし。
「ミーク!!シオン!!」
「「!」」
「避けろ!!」
「「は!?」」
その時、アイザックの両腕が光り輝いた。
「あ、やばいッ!!」
ーーードドドドドッッッ!!!
回転するアイザックから放たれた不規則の弾幕、『魔塊弾』は激しく、そして勢いよくばら撒かれまるで隕石のように周囲に降り注ぐ。
ーーードドドドドッッッ!!!
「あらあらあらあらあらあら!?」
無茶苦茶すぎる。
そう考えたエウロペも仕方なく回避行動に移った、それに集中するせいで。
ーーーバシャッ!
維持していた血の槍が融解し、それによりアイザックの着地が成功する。
ーーードンッ!!
そして着地と同時、アイザックは地面を蹴りエウロペに急接近。
「わぁ!?」
「取ったーーッ!!」
アイザックはエウロペの腹部を捉える、シオンもミーク同じ事を思った。
ーーーその時だった。
「あら?」
「ッッッ!!?」
殺気。
ーーードンッ!!
アイザックは攻撃を中止し、すぐさま距離を取る。
「な...な...!?」
「ミーク!!」
「な、なんですか今のッ!?」
ミークも驚愕の声を上げた。
「殺気だけじゃない...魔力を感じた!!」
魔石の影響で魔力の探知がしにくいにも関わらず、それだけははっきりと捉えた。
否、捉えられる程に異質なドス黒い魔力。
「ーーー手間取っているな、エウロペ」
「あらあらあら、随分早かったわね、オルゼ君!」
オルゼ、そう呼ばれた男は瓦礫と化した廃棄の上に立っていた。
その姿はまさしくーーー。
「シオンの言ってた通りだ...俺とそっくりじゃねぇか!!!」
アイザックと瓜二つだったのだ。
次回投稿日は3/18 7:10!!
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