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【祝1万PV突破ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-3章 龍界地底砲塔マナタン:獣冠祭編

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76話 罪禍背負いし淑女と悪魔(5/5)

副題「幸せになりたかっただけだった」


ついに!

ついに1万pv突破しました!!

ありがとうございますーー!!

 



挿絵(By みてみん)






 ーーーギギギギギッッッ!!


「がぁぁあァァァァァァァァッッッ!!!」


 激痛。


 全身を針で縫い止められたような痛みが神経を焼く、骨の奥を直接削られているような、不快な振動が脳に響く。


 シュガーは複数のエウロペに押さえ込まれ、四肢を教材のように広げられていた。


 ーーーバキ


「こうかしら!」

「違うわ、そこまできっと力は使わないわよ!」


 ーーーゴキッ


「あ、できた!」

「なるほど、そうやって外せばいいのね!」


 関節が外れるたびに、体の中で何かが弾ける。

 熱が走る。視界が白く飛ぶ。呼吸が追いつかない。


 ーーーグギッ!


「ちゃんとつけれたかしら」

「肉が挟まってるわね、もう一度やりましょう!」


 ーーーバキ


「腫れてるわね!」

「ここの血を抜いてみるのはどうかしら!」


 ーーーグチャ


「あー、砕けちゃった!」

「もったいないわ!もったいない!接着剤でくっつくかしら!」


「……ッ……ァァァァアアアア!!」


 涙が勝手に溢れる。

 喉が裂けるほど叫んでも誰も止めない。

 笑顔が、笑いが、狂気と化して包み込む。


「ごめんね、痛いわよね」

「でも、覚えておきたいの」

「だって、子供が同じ怪我をしたら困るでしょう?」


 優しい声だった。


 だからこそ、狂っていた。


 子供のために、シュガーは今、全身の関節を弄ばれていた。


 外す。

 曲げる。

 砕く。

 嵌める。


 まるで子供がおもちゃで遊ぶように、合計12体のエウロペがシュガーで遊んでいた。

 否、研究していた。


 人体標本。

 教材。

 実験体。


 シュガーの全身は至る所が腫れ上がり、もはや治療は不可能なほど骨が損傷していた。

 筋が断たれ、神経が潰れ、感覚が混線する。


 頭部のみを一人のエウロペに固定され、動物のように嗚咽を漏らし、必死に呼吸する以外何もできない。


「ぐ……」


「ぅぅ……!!」


 シオンとミークは動けないでいた。


 この地獄に足を踏み入れるということは、12体のエウロペを同時に相手にするということ。


 シオンにとってエウロペは、幼少の頃から悪魔のような女だった。

 強い子供を作るために、何人も犠牲にしてきた。


 ーーーだが


 その悍ましさ、禍々しさは、記憶の中のそれを遥かに超えていた。


 今の彼女は


 ()()()()()()だった。


 …


 ..


 .


 痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


 皮膚が裂ける痛み、骨の芯を握り潰される痛み。

 存在そのものを否定されるような痛み。


 こんなにも辛いなんて知らなかった。

 こんなにも酷いなんて気付かなかった。


 私は負けた事はなかった。


 生き残るために。

 勝ち上がるために。

 人道を捨てて、なんでもやってきた。


 なんでもやってきて、そして上手くいっていた。


 傷つくのが怖かったから、『怖い』『辛い』、それを味わいたくないがために努力した。


 だから知らなかった。


 負ける屈辱。

 奪われる側の恐怖。

 壊される側の絶望。


 ーーー腕が動かない。

 動かそうとすると激痛とともに何かが引っかかる。

 ーーー足が動かない。

 そもそも足と呼べる形をしているのかすら、わからない。


 痛い。

 すごく痛い。

 逃げたい。


 この現実から、今すぐにでも逃げ出したい。


 ―――帰り道。


 返り血に塗れた夜。


 窓から見えた、ある家族の団欒。


 鍋の湯気。

 笑い声。

 灯り。


 暖かそうだった。


 あの光の中に、自分はいなかった。


 そうだ。


 私が欲しかったのは、たったそれだけだった。


 誰の腹から生まれたのかもわからず。

 ゴミを漁って。

 養子として迎え入れられても生活は良くならず。


 ただ。


 家族と笑い合って。

 友達を作って。

 明日食べるものに困らない生活が欲しかった。


 『鮮血女帝』なんて肩書きはいらない。


 恐れられる名も。

 血塗れの称号も。

 勝利の証も。


 私だって……いや……


 私は、ただ……


 ……。


 ..。


 ーーー()()()()()()()()()()()


 ...


 ..


 .


「...」


 音が遠い、視界が滲む。

 冷たい床の感触だけが、やけに鮮明で...痛いはずなのに、もう、どこが痛いのかも分からない。


 シュガーは、ぼんやりと天蓋を見上げた。


 ーーーああ、死ぬんだ。


 それだけは、はっきりしていた。

 今まで、勝つためならなんでもしてきた。

 奪って、壊して、踏みつけて、そうやって生き延びてきた。

 

 だからきっと、こうなる運命だった。


 因果応報、当然だ、こんな生き方をしてきたんだ。


 喉がひゅう、と鳴る、息がうまく吸えない。


 死ぬのかな。


 そう思っても、涙は出なかった。

 当然だと、思っていたから。


 ーーーでも。


 視界の端で、誰かが動いた、二つの影...シオンとミークだ。


 それを見た瞬間、胸の奥がぐちゃりと歪んだ。


 ーーーやだ、違う。


 こんな終わり方、やだ。


 怖い。


 怖い。


 怖い。


 死ぬのが、怖い。


 一人で終わるのが、怖い。


 今さら、そんなこと思うなんて、わかっている、自分勝手なんだって。


 唇が開く。


 閉じる。


 言ったら、終わる。


 息が、漏れた。


「……ぁ……」


 声にならない、血の味、喉が焼ける。


 数秒。


 誰にも聞こえない、それでも。


 どうしても。


 どうしても、消えたくなくて。


「……た……」


 弱い。


 ひどく、弱い。


 でも、止まらない。


 ーーーそして...







「……()()……()()……」







 ーーー初めて助けを求めた。


 ーーー人生で初めて誰かを頼った。





 その時、視界が滲む。

 涙が溢れ出る、最後の、かすれた呼吸とともに溢れ出る。


 初めからこうすればよかった、と。


 少女の声だった、強者でも、女帝でもない。

 ただの、傷ついた少女がそこにいた。


「ッ!!」

「!!」


 ーーードンッッ!!


 シオンとミークは踏み込んだ、地面が爆ぜ、破片が飛び散る


「あら!」

「あら?」


 2人同時の突撃だった、12体も相手するのは自殺行為だとわかっている。

 だが助けを求める声を、少女を見捨てる事などできない、2人は考えるより先に身体が動いていた。


「私は2体やるから!!」


「私は10体ーーー私負担エグすぎないですか!?」


 だが踏み出した以上は止まらない、走りながらシオンは剣を抜きミークは杖を構える。


 その時だった。





 ーーードンッッ!!!





「え!?」


「きゃっ!?」


 シオンとミークの間を何かが横切る、目にも止まらぬ速さで一直線に駆け抜けた。

 遅れて突風が押し寄せる、シオンとミークは足を止めてその影を目にした。


「あら?」


 エウロペの1人がそれに気付く、その時ーーー。



 ーーーバギッッ!!


 瞬間、ただ唯一気付いたそのエウロペは口から血を撒き散らして激しく吹き飛んだ。


 ーーーガシャァァアアアアッ!!


 壁が砕け、石片が雨のように降る、流れる静寂、舞い上がる粉塵、それを見据えるように影が立つ。


 ーーーコッ、コッ


 ゆっくりと、こちらへ歩いてくる。


 12の視線が、同時に向いた。


「あら?あらあら?」「あら?」

「あらあらあら」「あらあら!」「あら〜」

「あらあら」


 エウロペ振り向いた。


 影は答えない。


 ただ、シュガーの前に立った。


 その背中が、視界いっぱいに広がる、逆光で顔は見えない。

 だがその声だけは、はっきりと届いた。


「遅れて悪い」


 短い、本当に短い一言、だがその声だけははっきりと届いた。

 白い装備に身を包み、溢れ出る魔力を纏うその男。


 光、救世主というにはあまりにも不恰好なその男ーーー。


挿絵(By みてみん)


「アイザック!!」

「アイザック君〜ッ!」


 ーーーアイザックがエウロペの前に立ちはだかったのだ。


「...」


「あらあらあら!!」

「アイザック君ね、お久しぶり!」

「少し成長したかしら!目つきが違うわ!!」


 ーーーバシッ!!


「あら?」


 その時、アイザックがエウロペの1人から何かを掠め取った、手に握られているのは「腕」。

 エウロペの1人の腕だった、複数のエウロペのうち1人の腕はまるで何かが焼き切れたように切断され、断面が露出していた。


「あら...」


「こうすりゃ良いじゃねぇか」


 その腕に巻かれていたバンドは主人を失ったように光を失い、腕から離れる。


「シオン!ミーク!!」


「ちょ!?」

「はい!」


 アイザックはバンドをシオンに投げ渡し、シュガーを抱えてミークのもとへ駆け寄る。


「治せるか?」


「え、な、治すんですか!?」


「友達だからな」


 突然の友達宣言、シオンとミークはおろか、シュガーでさえも目を見開く。

 相手は自分の居場所を奪った怨敵、そんな彼が一時共闘しただけで友達を宣言した。


 何を勝手なことを、私は友達になった覚えはない、彼は敵だ、殺したい敵なのだ


 ……そのはずなのに。


「...なんで...」


 どうして、その一言で、こんなにも呼吸が乱れる。


「え?一緒に戦ったら友達じゃないのか?」


「戦友の意味履き違えてるわよ」


「友達...な...わけない...がふっ!!」


 吐血、骨が軌道に突き刺さる。


「わー!動かないでくださいーー!!」


「...第一...第一...友達と思ってるん...なら!!」


 ミークの静止を聞かずに続ける、吐血してでも、それでも言いたかった、叫びたかった。


「...あーーー」


 しかし...。


「...()()()()()()()()()()()()()()()()()()()この馬鹿ぁぁあああ!!!」


 ーーー彼女は最後まで素直にはなれなかった。

 

「いやまじでごめん、それはごめんほんとにごめん!!」


「がふっ...ごほっ...!!」


 言いたい事を言い切って事切れた、ミークは必死に詠唱を並べてシュガーを保護する。

 その表情は初めて、そして本当に求めていたものを手に入れたような満ちた表情だった。


「...」


「さてーーー」


 アイザックは立ち上がり、そして向き直る。


「友達って改めて認めてもらってよかった...戦友の意味をよく知らなかったからな、反省反省」


 エウロペに対して向き直る。


「それじゃあ...改めて、友達がやられたってんなら...」


 溢れる魔力、アイザックは胸の奥から沸々と湧き上がる感情を表に出す。

 

 ーーーそれは怒り。


()()()()()()()()ッッ!!!」


 アイザックは爆発した。


次回投稿日は3/16 7:10!!


主人公新技披露!レーチェも言ってた「アレ」です!

ちなみにガレットがいつまで経ってもシュガーを助けないのは、彼なりの理由があるからです。


皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます〜!!

高評価、ブックマークを押していただければ作者のモチベーションに繋がります!!

よろしくお願いします!!


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