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【祝1万PV突破ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-3章 龍界地底砲塔マナタン:獣冠祭編

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69話 魔石争奪戦!?


挿絵(By みてみん)


 地下の街の外縁部、崩れたアーチの下で、パーティは淡々と『獣』を仕留め続けていた。


 剣が振るわれ、獣が倒れ、死骸が積み上がる。


「そっちはどうだー?」


「ねぇよ、持ってねぇ」


 誰も緊張していない。

 この区画の獣は、すでに“狩り尽くされる側”になっていた。


 その時。


「……待って」


 後衛の魔法使いが、足を止めた。


「どうした?」


 彼女は、まだ動いている一体の獣を指差す。


 他より少しだけ大きく、

 少しだけ、動きが鈍い個体。


「……あれ」


「あれがどうした?」


「魔力を持ってる」


 一瞬、空気が変わる。


「獣が魔力?」


「普通じゃね?元が魔法使いだったんだろ」


「そうかな...?でも見た感じ魔法使いには見えない」


 その『獣』は一言で言えば、ただの人間。

 血塗られた衣類を見に纏うただの農夫、鍬を振り回しながらただ目的もなくよろめいている。


「ちょっと待て、お前」


「ん?」


 その時、武闘家の1人が戦士の手を指差す。


「バンド光ってないか?」


「え?うわっ何!?なんだこれ!!」


 気付けば戦士の腕に巻かれたバンド、大会の開始前にチクアーノから渡されたバンドが薄ら光っていた。

 淡い光が戦士の腕から滲み、瓦礫の影にまで細い反射を落とした、それを見た瞬間、全員が一歩だけ距離を取る。


「何!?爆発か!爆破すんのか!?」


「ていうか俺もちょっとだけ光ってるぞ!!」


「落ち着いて、爆発するような術式はない」


 獣は唸り声を上げ、よろめきながら彼らの方へ歩いてきていた。


「じゃあなんだよ!!」


「そのバンド、ある術式に反応して光るみたい」


「なんの術式だ?」


「わからない...でも罠系というか、設置型の魔法を探知するために使われる素材でできてる」


「だからなんの術式だよ!!」


「わからないってば!でも少なくとも、あの『獣』に反応して光ーーー」


「...どうした?」


 獣と、光るバンドと、魔法使いの視線が、同じ一点に集まった。


「まさか...」


「だからなんだよ」


「その『獣』捕まえて!!なるべく殺さずに!!」


「はぁ!?」


 突然の叫びに、全員の動きが一瞬止まった。


「……は?」


「いいから! そいつを拘束して!」


「だから理由を――」


「そいつに術式が入ってる!」


「なんの!」


「後で説明する! 今は時間がない!」


 魔法使いは、視線を一切そらさず、その獣を見据えている。


 彼女の視界には、あの個体の体内に絡みつく、淡く歪んだ魔力の流れが見えていた。

 それは“生き物の魔力”ではなく、誰かが後から刻み込んだ術式の残滓だと分かる種類のもの。


 その『獣』はただふらつき、崖から落ちようとしていたのだ。

 確認しなければならない、死んでしまえば術式ごと霧散してしまうかもしれない。


「あ、あぁわかった!!わかったよ!!」


 戦士と武闘家は言われたままにその『獣』を捕らえた、


「⬛︎!!⬛︎⬛︎ーーーッッ!!」


 歯をガチガチと鳴らし涎を滴り落として暴れる『獣』、力が強く2人がかりで抑えるにも一苦労だ。

 

「んで!!どうするんだよ!!」


「抑えてて!」


「はぁ!?」


  叫びも無視して、魔法使いはその『獣』に飛びついた。

 腐りかけた衣服の内側、裂けた腹部、濁った髪の根元まで身体中を探る。


「おい汚ぇよ!」


「あった...!」


「あったって何が!!」


  魔法使いの指先が、獣の肋の下、肉の奥に埋め込まれた不可視の結節点をなぞる。

 肉眼では見えないが、魔力の流れだけがそこに歪んで集まっていた。


「術式ッッ!!」


「なんの!」


「ーーー()()()()!」


 その一言で場の空気が凍りついた。


 『収納魔法』、物資を異空間へ封じ、術式で固定する系統。

 種類によっては、家すら丸ごと飲み込めることもあるとかないとか。


「なんですって!」


 それを聞いたシオンの狼狽の声を上げた、追跡しながら『獣』を狩ってはいたが、その可能性を考えていなかった。

 魔法使いはそれに気付く事なく続ける。


「しかもこの術式、仕掛けられたのが比較的最近みたい、少なくとも1年...いや、半年...?いや、もっと新しく仕掛けられたものよ」


「仕掛けられたのが最近?なんで仕掛けられてて、何が入ってんだよ」


「...そんなの一つしかないじゃない」


 戦士の喉が、ごくりと鳴った。


 ――この大会で、

 最も価値があるもの。


 すべての合点が、そこで一気に繋がった。


 そのバンドは、魔法が使えないか、魔力を探知できない者が"それ"を見つけるために必要なため。

 魔法使いは元より魔力を感じ取れるため、バンドがなくても探し出せる。


 では"それ"とは何か。


「ませーーー


 ーーーゴキッ


「ありがとう」


 一瞬だった、戦士の首は空から伸びた手によって不自然な方向に曲げられていた。


「ーーーなッ!?」


 魔法使いは構える、その手を辿るとーーー


 それは、戦士の真上を飛び越える軌道で宙を舞っていた。

片手はまだ、彼の首元に軽く添えられたまま。


 跳躍の途中、すれ違う刹那に――くるりと。


 駒を回すような、あまりにも軽い動作で、戦士の頭部が本来あってはならない角度へと導かれる。


 身体だけが一拍遅れて理解し、音もなく崩れ落ちる。


 その間も、空を滑る動きは一切、乱れていなかった。


「貴方達なら解けると思ってたわ」


「シュガー=ラッシュッ!!」


 その佇まいは優雅そのもの、ふわりと着地したシュガーは静かに向き直った。


「貴方1人で解けないからってつけてたわけ?」


「別に?わざわざ私が頭を使う程のものでもなかったってだけよーーーところで、()()()()()?」


「はーーーッ!?」


 その時、戦士の意識が断たれたために『獣』の身体が自由になる。

武闘家を弾き飛ばして魔法使いに襲いかかった。


「⬛︎⬛︎⬛︎ーーーッッッ!!!」


「やめ"ーーッ!!」


 しかし時すでに遅し、『獣』は魔法使いの首筋に噛みつき、ボロボロの歯でその肉を抉り取る。


「あ"あ"ぁ"ぁ"ッッ!!?やめ...や"め"ッいだい!!いだいィいいいぃぃいいいいーーーーッッ!!?」


 舞う血飛沫、広がる血溜まり、失禁と血で濡れようとも『獣』は意に介さず魔法使いの首筋を貪り続けた。

 バリバリと何かが砕ける音、そんな不協和音と目の前の惨状を前にしても彼女は眉ひとつ動かさない。


「あ〜あ、だから言ったのに...」


 ーーーバキッ!


 『獣』は脊椎を踏み砕かれ沈黙する、術式は霧散することなく残り続ける。


「ヒュ...かヒュ...ごぽ」


 残された魔法使いはかろうじて生きているが、もはや時間の問題だった。

 口から大量の血を流し、その血に溺れ激痛に身を捩っていた。


「知識不足、このタイプの術式なら過度な損傷がなければ残るのよ、まぁでもどうやら...ハイエナは私だけじゃないみたいね」


「!?」


 シオンは反応する、が。


 ーーードンッ!


 足音が一つ。


 ーーーザッ!ドンッ!タタタッ!


 二つ、三つ、四つ。


「シュガー、そいつをよこせ」


 シュガーの周囲に現れた参加者、数は十数にもおよび彼らはそれぞれの武器を構えシュガーに躙り寄る。

 シオンは彼らに便乗することなく隠れて様子を伺っていた。


「淑女相手にこの人数、よほど己の力に自信がないのね」


「なんとでも言うがいい、ルールの範疇だからな」


「「力」が全ての国の、武道大会のようなものなのに、まぁいいわーーー、そして一手、遅かったわね」


「は!?」


 ーーードォォォォオオオオオンッッッ!!!


 突如、何かが飛来、突風が襲いかかる。


 煙が晴れるとそこにいたのは彼女を守るように立ちはだかる黒狼、そしてその主。

 ガレット=ヘーゼルがそこにいた。


「遅かったわね」


「手間取った、マンダカミアの妹...思ったより強いぞ」


「あらそう、貴方が言うなら相当ね」


「それで、やるのか?」


 ガレットは並々ならぬ殺気をばら撒く、それにあてられた参加者は震え上がり、中には腰を抜かす者も現れた。


 錯覚、目の前にいるのはただの人間にあらず。

 それはまるで『捕食者』、自分達が獲物だと思い知らされる絶望的なまでの力の差、その魔力量。


 その時、シュガーは『獣』を一瞥し、ほんの一瞬だけ視線を逸らした。


()()()()退()()()


「...」


「なに?」

「「は?」」


 ガレットに命じられる突然の退却命令。

 それはガレットはおろか参加者ですら理解ができなかった。


「魔石はあげるわよ」


「おい!!どういうつもりだ!!」


「?...いや?数が多いもの、さすがに」


「シュガー、どういうつもりーー」

「さぁ、いくわよガレット」


 ガレットの言葉を遮り、背を向けるシュガー。


「それじゃあごめんあそばせ」


 そういうとシュガーはガレットの魔法で出した霧に包まれる。やがて霧が晴れると2人と一匹の姿はそこになかった。


「え、あいつら...放棄したのか?」


 参加者たちは、しばらく呆然としていた。

だが、その沈黙を最初に破ったのは、笑い声だった。


「……はっ、なんだよ」


「結局、逃げただけじゃねえか」


「脅しだけは一丁前だったな、あの女」


 誰かが肩をすくめる、誰かが、死体を踏み越える。


「あんなのが“大物”なわけねえだろ」


「アイツの戦い方はタイマン向け、数で抑えればただのガキだ」


「ハッタリだよ、ハッタリ」


 笑いが広がる、さっきまで張りつめていた空気が安っぽく崩れていく。


「……で?」


 一人が、血に濡れた『獣』を見下ろした。


「これ、誰が回収する?」


 その言葉で、全員の目が一斉に光る。

 誰も、“なぜ置いていったのか”なんて考えない。


「ほら、早くしろよ」


「ぐずぐずしてるとーーー」


「まぁ待て、金は山分け、願いはじゃんけん、そう取り決めたろ?」


 まるで戦利品を巡る賭博のように、欲と軽口だけが、その場を支配していく。

 勝ちを確信したような空気、それに反してその場を離れたシュガー、


 彼女は...







 ーーー疾走していた。

 





「おい」


「何?」


「なぜ魔石を放棄した、複数あるとは言えアレだと次見つけるまでにゴールされてしまうぞ」


「いえ、そうはならないわ」


「?」


「ーーー見てればわかる」


 そう言ったシュガーの額は汗で塗れていた。


 ...


 そして、その場にいたはずのシオンも姿を消していた。


 ーーー彼女も疾走していた。


 まるで逃げるように、ひたすら疾走していた。


「はぁ...はぁ...!!」


 これまでの違和感、簡単すぎるというこの謎、その末に得た仮定が彼女をそうさせていた。


「前提が...もし!!もし...()()()()()()()()()()()()()!!」


 その違和感の原因、それは()()()()()()()()である。


「もしこれが間違っていたらそれでいいのかもしれない!!でも...合ってるなら、合ってるなら!!私はすぐ、アイザックとミークに合流して作戦を練り直さないと...2人共どこにいるのよーーーッッ!!」


 シオンはひたすら走った、2人の元へ。


 ...


「よし、じゃあ魔法を解くぞ」


「どうやって解くんだ?」


「バンドをかざして魔力を与えるんだって言ってたぞ、そこの死んだ魔法使いが」


「そうか」


 複数の見張りを背に男2人は死体に張り付いていた術式にバンドを探して魔力を流す。


「おぉ!術式が解けていってるぞ!」


「これ取り出したら全力ダッシュ!すぐ会場に戻る、ダイコーとかが来たら時間稼ぎ任せるぞ!」


「おぉ任せとけ!」


 そしてーーー





 ーーーその術式が放たれ、魔石が姿を現した。






 疾走しながら術式の解除を感知したシュガーはただ一言。


「ほらね、これが()()()()()()()()()使()()()()()()



 そうー...。



「おぉ...ーーーッ!!!??」

「え」

「は?」


 その時、地上の一部に影が落ちた。


 その中心で唖然として見上げる参加者達、絶望、驚愕、怒り、理不尽、全てが混ざり合った混沌の空気。


 振り向いたその光景を見たシオンはただ一言。


「やっぱりそう...!!そうだよね!!変だよね...!そもそも...()()()()()()()()()()()()()()()()は...間違っていたッ!!」


 呆然と見上げる参加者たち、それをーーー。


「なぁぁぁああああああーーーーッッッ!!????ーーー


 ーーードォォォォオオオオオンッッッ!!!!


 ()()()()()()()()()()()()ッッ!!


 ...


「え」


 アイザックは廃墟の街並みに現れた"それ"を凝視していた、それはかつてみた竜骨とも引けを取らない大きさ。

 迫力、そして遅れてくる突風。


 ただ一言呟いた。


「ーーーーでがぁぁぁぁあああああああ!!????」


 その魔石は直径30メートルは超える超巨大鉱石だったのだ。


挿絵(By みてみん)


次回投稿日は3/2 7:10!!


次回、おそらく2-3章ボスが出ます


皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます〜!!

高評価、ブックマークを押していただければ作者のモチベーションに繋がります!!

よろしくお願いします!!


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