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【祝1万PV突破ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-3章 龍界地底砲塔マナタン:獣冠祭編

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66話 戦乱の舞台アンダーハイ

 その日、地下帝国は異様なほど静まり返っていた。


 闘技場の歓声も、商業区の喧騒も、酒場の怒号すらも――消えていた。


 巨大な闘技場を改装し観覧席へと変えたその会場にはほとんどの民が密集し、ただあるのは小さなざわめきだった。


 帝国中の通信結晶は同時刻を示し、すべての視線は、ただ一つの方向へと向けられていた。 


『帝国に生きる者たちよ』


 ざわめきが、消えた。


 さっきまで騒がしかったはずの観客席が、誰かにスイッチを切られたみたいに静まり返る。

 咳払い一つすら、やけに大きく響く


『平等とは、幻想だ』


『努力とは、自己満足だ』


『価値ある者と、そうでない者は、最初から決まっているーーーなんて、否定したくなるだろう?』


 人々の背筋に、ぞくりと冷たいものが走る。


『ゆえに機会を与える』


『生きる資格を示せ』


『力を示せ』


『運命に抗う意思を示せ』


 一拍。


『ここには、機会がある、資格がある、


 ーーー誰もが英雄になれる可能性がある』


『勇者セイヴァーのように勇敢で、武闘家ドリンク=バァのように強く、魔法使いマンダカミアのように聡明、そんな英雄にーーー誰もがなれるーーーその『祭典』ーーーー』





『今ここにーーーー『獣冠祭(じゅうかんさい)』の開催を宣言するッッッ!!!』


 ーーーワァァアアアアァアァアアーーーーッッッ!!!!


  理性も恐怖も吹き飛ばした歓声が、地下帝国を埋め尽くした。


『ようこそ闘技場兼観覧席へッッッ!!ごぞんじの通り私は界帝ミカード=グランノアーリだ!!』


 ーーーワァァアアアアァアァアアーーーッッッ!!!


『家の戸締りはしたか!ポップコーンは持ったか!酒は売店にあるぞ!!数年に一度の最強を決める大会だ!見逃し厳禁!股間を濡らすなよーーーッッッ!!』


 今年1番の熱狂、

 すでに酒に酔った者が雄叫びを上げ、ミカードの魅力的なカリスマに発狂し気絶する者も数人現れ始めていた。

 まさに帝国内全てがお祭りのような盛り上がりを見せていた。


 その狂騒の中心、ミカードの傍に――ただ一人、異様なほど静かな少女が現れる。

 白銀の装備を見に纏った白髪で透き通った瞳、チクアーノだ。

  

「では大会のルールを説明します」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 総数168人の参加者はこの帝国が位置する階層のさらに下の階層、『アンダーハイ』と呼ばれる領域での戦闘をしていただきます。


 この『アンダーハイ』と呼ばれる階層はかつて帝国の領土となっていましたが『運命の夜』において『獣』の侵攻により放棄せざるを得なくなった場所でありその規模はこの帝国の2倍ほどとなっています。

 参加者は『無作為転移(トラベルダイス)』でこの領域のランダムな場所に飛ばされます。


 今もこの階層は各所において地上と繋がっているため『獣』が無数に蔓延っている立ち入り禁止の危険地帯です。


 そんな『獣』のごく一部に魔石を仕込みました。


 ルールは簡単、『魔石』を持ってこの会場に戻って来てください、最初に戻ってきた人が優勝です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


挿絵(By みてみん)


「すごいざわめきだな」


 控え室から会場を覗き込んだアイザックはふとつぶやいた。


「数年に一度の大会だからかしらね」


「人がいっぱいです〜」


「ところでアイザック、あんた装備新調したんだ」


「あぁ、カルヴァトスが選んでくれたやつだ、大一番だからこそこれが相応しいと思った」


「元カノです〜」


 アイザックの装備は以前とは対照的に白と蒼を基調としたデザインとなっている。


 上半身は丈の短い白い上着で、胸元は大きく開き、下には体に密着する黒い服が覗いていた。


 腰には装飾の施された防具と以前使っていたマフラーが巻かれ、そこから布が垂れ下がり、歩くたびに静かに揺れる。


 下はゆったりとした白いズボンだが、膝下からは一転して重厚な長靴へと切り替わる。


「新品のいい匂いだ」


「この前は汚いし臭ってたわよ」


「まじで!!??」


「作戦会議しましょ〜、とりあえずチームで動いていいんですよね」


「まぁ、チーム戦は禁止されてはいないからな」


 このルールは要約すると『獣』によるサバイバルを主目的とした大会だ。

 しかし参加が1人ずつではあれど、チームを組むのは禁止されておらず、3人で協力すればかなり有利となる。


「けどまぁ、そう考えてるのは私達だけじゃないみたいだけど」


 周囲を見渡すと冒険者達がそれぞれ徒党を組んで作戦会議をしている、考える事は皆同じと言う事だ。


「それに...サバイバルだけじゃないわよ」


「「?」」


「魔石の入手手段は...なにも『獣』から取り上げるだけじゃないってこと」


「「!」」


 アイザック達はその可能性を失念していた、「魔石」を入手すれば、他の陣営が奪いにくる可能性があると言う事を。


「だから...1人が魔石を持って会場に直行、1人はその護衛、さらに1人は時間稼ぎーーーをして機を見計らって合流って所ね」


「一人一人の責任重大だな」


「えぇ」


「それに最初は分断される可能性が高いです〜」


「その通り、だからまずはアイザック」


「ん?」


「たどり着いたら上空に『魔塊弾』を2発と、一拍おいて1発撃って、そこに集まりましょう」


「おぉ了解」


「どうして2発一拍1発なのです〜?」


 アイザックも首を傾げる、いくら魔力が無限にあるとはいえ1発で問題ない気もする。


「この合流の仕方を考えてるのが私達だけとは限らないからよ」


「「な、なるほど〜〜〜」」


 納得した、同じように魔法を上空に撃つ者が現れては合流は叶わないどころか接敵の可能性もある。

 さらに同じ『魔塊弾』を他の者も使うかもしれないという可能性も踏まえての2発一拍1発、抜け目がない。


「了解?」


「「イエッサー姉御ッ!」」


「姉御やめなさい、一応私最年少」


 そうしていると大会の運営と思われるチクアーノが控え室に入り、全員に告げた。


「皆様、まもなく戦闘開始となります、その前に皆様にこのリストバンドをお配り致しますので名前を呼ばれたら受け取ってください」


「ん?なんだ?」


 一人一人名前が呼ばれていく、呼ばれた者は半透明のリストバンドを受けとっては腕に装着していっている。


「これ何に使うんだ?」

「魔法道具らしいけど説明なかったな」

「まぁ運営が配るなら重要なんだろ」


「アイザックさん」


「ほい」


 そしてまるでエメラルドのように透き通ったリストバンドを受け取り、腕に嵌め込むと急速に絞められピッタリと合わさった。


「おぉ」


「アイザックさん、先日はどうも」


「ん?あ、あぁ、この前は...どうも」


 カルヴァトスの件だろう、彼女達には一度助けられている。


「続いてシオンさん」


「はい」


 しかしこれといった会話もなく、淡々と名前を呼んでいくチクアーノ、彼女は機械で出来た正真正銘の人造人間と聞いているが、やはり会話も返答も無機質であり、静かに仕事をこなしていた。


「以上、役立ててください、皆様それでは転送魔法をかけます、動かないでください」


 チクアーノの声を最後に、控え室は急に静まり返った。


 さっきまであれほど騒がしかったのが嘘のように、誰も喋らない、聞こえるのは自分の心臓の音と、遠くの歓声だけだ。


「……なんか、逆に緊張してきたかもです〜」


「今さら?」


「今さらです〜」


 ミークはいつも通りの調子で笑っていたが、その指先は微かに震えていた。

 アイザックは無意識に、腕のリストバンドを撫でる。


 その時。


 床に刻まれた魔法陣が、淡く光り始めた。


「来るわよ」


 シオンの一言と同時に、足元の感覚が消える。


 まるで重力ごと引き剥がされるような浮遊感。


「じゃ、また後で!」


 ーーーそして、視界が光に包まれた。


「うーーうおおぉおおお!?」


 浮遊感に目がまわる、うっすらと、自分が下の階層へ飛んで移動しているのがわかる。


「いよいよ...だな!!」


 アイザックは決意を込める、今日、アイザック達の運命か決まる日だ。

 勝てば拠点にいる拠点にいた仲間を助けられる、自分の世界に帰る手立てが得られる、しかし負ければーーー、一生この帝国から出ることは叶わないかもしれない。


「俺だって、修行してきたんだ...絶対優勝してやるぜーーッッッ」


 いよいよ始まる、数年に一度の『獣冠祭』、アイザックにとっての晴れ舞台。


 しかし、ひとつ疑問点もある。


「魔石を最初に持ってきた奴が優勝ってんなら...運ゲーじゃねぇかな」


 『獣』の数体がランダムに持っているという事だが、であれば最初に手にして戻ってきた者が優勝?

 いくら奪い合いだったとしても魔石を入手して戦闘を避けて速攻で戻ってくるなら「力」は必要なのだろうか?

「力」が全てのこの国でそれはあり得るのだろうか?

 


「いや、考えても仕方ないか」


 ーーーしかし、その時だった。


 ...


 ーーードッッ!!


「ガッーーーッッッ!!?」


 突如脇腹に襲いかかる衝撃。


 視界が横に流れた、何が起きたのか理解する前にーーー


 ーーー包んでいた光が晴れ、見えた荒野のど真ん中。


 背中から地面に叩きつけられる。


 息が、抜けた。


「……っ、ぐ……!」


 肺が潰されたみたいに空気が入らない。

 そんなアイザックに対してかけられる冷酷な一言。


「戦いは既に始まっている」


「誰ーーーだーーー!?」


 その時、巨大な影が視界を包む。

 見上げるとそこに降下してくるは巨大な黒き翼。


 ーーードンッッ!


 着地、地面がひび割れるほどの重量、やがて翼は畳まれ仮面は変形し衣服の中へと吸い込まれる。

 歪む視界の中見えた漆黒の軍服、靡く黒髪、『機構星騎士(ステラマキナ)』に近い機械的な装備。


 そして黒く鋭い瞳ーーー。


 しかし、そんな凛とした風貌の女性が、()()()()()()()()()()()()()()()


「名乗ろう、私の名はダイコー=オーディーン!!帝国最強の精鋭集団『五耀星(フィフステラ)』が一番槍にして戦士長ッ!!」


「ふぉあーーー?」


「そして、今日がお前の命日だ、この国の更なる安寧...そして私の信念の元に討たせてもらうぞーーーッッッ!!!」


「ッシーーー相手にとって不足はねぇ!!」


 アイザックは体勢を立て直し構える、2人の間に生まれる空間の歪み、互いの闘気が混ざる感覚。


 しかしーーー。


「覚悟しろッッッ()()()=()()()()()()()()()()()()ッッッ!!!」


「ーーーふぉあ?」


 自分ではない誰かの名前、凍りつく空気、アイザックはーーー。


「ふぉあああああ!!!???」


 知らない誰かと間違えられていた。

早速戦いが始まります


次回投稿日は2\24 7:10!


皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます!!

高評価、ブックマークを押していただければ作者のモチベーションに繋がります!!

よろしくお願いします!!


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