65話 開幕、獣冠祭
夜空を一つの星が通過した。
「え!?」
「どうした?」
街の繁華街、人混みを眺めながら酒を飲み明かしていたシュガーとガレットはそれを確認した、シュガーは目を見開き驚愕している。
「『五耀星』...!?」
「チクアーノか?前にも競技場の運営をしていただろう」
「違う!!今のはダイコー!」
「ダイコー?」
「ダイコー=オーディーン、帝国最強の戦士」
...
..
.
「見ぃぃてくださいミカード様ッッ!!この新調したプゥアーフェクトなフォルム!!これで時速10000キロでの飛行が可能!」
「マッハ8ね」
「ミカード様、新しい部品をくださりありがとうございます」
「領収書は資金管理団につけといてくれ」
「ミカード様ッッ!!新しい魂!!新しい魂をください!!飢えて死にそうなのです!!」
「そこらの人にストリートファイトでも申し込みたまえ」
まとまりの無い集団、ミカードは遠い目をしながら1人ずつ応える。
そして全員との対応を終えて次の話へと切り替える。
「君達を呼んだのは他でもない」
「大会ですね」
「大会ですね!?大会の時期でございますね!!」
「魂喰い放題だぁぁぁああああ!!!」
「...話が早くて助かるよ」
まるで子供のように大はしゃぎする帝国最強の3人。
『五耀星』ーーー彼らはこの帝国における最強と言われる戦士、その5人。
うち1人は死亡、もう1人は別件で現在この帝国にいない。
「ではミカード様、我々の役割はいつも通り大会の運営ですね!」
「いや」
「「?」」
「今年は君達も戦士として出場してもらう」
「なんと!」
「わかりました」
「魂のバイキングだぁぁぁああああ!!!」
「あ、チクアーノ君だけは運営にまわってくれ」
ミカードは、その反応を予想していたかのように小さく息を吐いた。
「しかし!!」
「「?」」
笑みは消え、ミカードの声音だけが低く落ちた。
先程まで騒がしかった空間から、ざわめきが嘘のように引いていく。
「今年は『獣』を取り入れようと私は思っている」
「...」
その瞬間だった、ダイコーの瞳の色がわずかに変わる。
「...」
「魂は?」
誰もそれに気づかない、だが、ミカードだけはその変化を見逃さなかった。
「『獣』...『堕ちた獣』でございますか」
「あぁ」
「どうしてですか?」
「今年はそれが一番盛り上がると判断したからだよ」
「...」
ダイコーは殺意にも似た視線をミカードに向ける。
凍りつく空気、しかしチクアーノとギュージは気付かない。
「...わかってるよ、もちろん理由はそれだけではない、これを見てくれたまえ」
「?」
書類を受け取り、目を通す。
「なんですとッッ!?」
「調査の通りだ、最近の話だが...『適合者』と呼ばれる者の存在がこの帝国内で確認された」
「適合者とは...?」
チクアーノが首を傾げる。ギュージも同じように言葉を失っていた。
「書いてある通りだが、人を『獣』に変える疫病、その症状の段階が最終までいくと...なんと外見は人と大差なくなるらしい」
「!!」
「賢王ドゥルセ=デ=レーチェの土産の情報が本物なら、だがね」
アイザック達が交渉材料として持って来た分厚めの本、それを指の上で回して弄ぶ。
「だが、実際に『適合者』は現れた..チクアーノ君、君なら心当たりがあるはずだ」
「はい、カルヴァトスですね」
カルヴァトスは『適合者』、彼女が密かに感染を広げていたので一夜は大惨事となった。
犠牲者は45名、感染した怪我人は350名、怪我人全員が感染防止のため医学団施設にて治療中だ。
カルヴァトスが破壊した列車や建物も現在修繕中、商業団の活動にも影響を及ぼした。
「『適合者』の存在などただの想像でしかないと思っていたが、アレを見てしまうと信じる他ないだろう」
「...」
「では...今回の大会、尚更運営に力を入れるべきではないでしょうか!!」
「いや、君達には出場してもらうといったろう」
「何故!!」
「ダイコーさん」
「?」
「『適合者』の存在がわかった以上、その疑いのある人物が出場しています」
「そう、そいつは大会への出場を表明している」
「なんですと!?」
「しかし、原則として...この国の法として『大会の申し込みを済ませた者はその開催日までファイトを申し込めない』...まぁ、感染者である証拠があれば別だがね」
「そいつを...そいつを殺せばよいのですか!」
「まぁ待て、そのために君達を呼んだのだ、今回のルール設定の会議としてね」
「ダイコーさん、運営が証拠もなく出場者を一方的に殺せば反感を買います、しかし大会のルール次第では...確定するしないに関わらず殺せます」
「な、なるほど!!」
「では机を用意しましょう」
「あぁ、頼むよチクアーノ」
「魂もお茶請けにつけてくれよ」
「あるわけないでしょう」
「ミカード様!名前、そいつの名前を教えてください!!」
「よかろう...そいつの名は..,オルゼ
...オルゼ=スティングレイだ。
...
..
.
「カルヴァトスの奴死にやがった」
ゴミの山、その上で小さく呟いた1人の男。
「オルゼ...」
帝国の辺境にあるとある廃材置き場に1人の老人は訪れた、フードで顔を隠し、壊れたブリキのような機械的な声、戦士と思われる鎧の音を立てて。
そして老人が見上げる、その先、廃材の上に佇む1人のローブに包まれた男。
「...」
「オルゼ=スティングレイ」
「...」
「なんだ...いたのか」
「...」
その男の足もとに横たわる女性、否、それはもうすでに死体でありーーー腕が無かった。
男はその女性のものと思われる腕をただ齧っていた、まるで毎日の朝食を食べるかのように、黙々と。
「ノウス・C=メガロドン、あいつは...『獣』に戻った」
しかしそれには目もくれず老人は淡々と告げる。
「そうか、それで?」
ーーードンッ!!!
突如、オルゼと呼ばれる男、彼の一振りで放たれる雷は老人を容赦なく粉砕した。
廃材は爆発と共に弾け、残骸となって雨のように降り注ぐ。
「相変わらず...だな」
「...」
しかし、そこに老人の姿は無く、オルゼの背後に立っていた。
「荒いな」
「食事を邪魔されたんだ、気分悪くならないやつがいるか?それで...俺に何のようだ?」
「なにも?元気にしてるか....顔を見に来ただけだ....」
「余計なお世話だと前に言ったはずだが?」
「ところで...お前は...大会に出るそうだな...金に困ってるのか...それとも...願いがあるのか...カルヴァトスとは仲がよかった...なのでカルヴァトスと関係が?」
「あんなカスはもういらねぇよ、目的も見失うカスはな」
「...なら、なんだ...?」
「ふん...お前らはエウロペに言われてこの国に来たんだろ」
「まぁな...」
「『獣の国』を作るために」
「...そうだ」
「...とんだ取り越し苦労だな、お前らには何もできる事はないというのに」
「?」
オルゼは不敵に嘲笑う、そして高らかに言い放つ。
「ーーー界帝を殺して、俺は俺の国を作る」
「.....ほう.....」
オルゼは堂々と宣言した、『界帝』の抹殺を。
そして同時に宣告した、彼らエウロペ達との離別を。
「お前らの出番は無い、俺は俺の国を、地獄を作る」
「面白い事を...言うではないかね」
だが、老人はそれに対して侮蔑も怒りも無かった。
「では...我々は見物させてもらう...お前の戦いを......」
「ふん」
老人は立ち去る、その背中をオルゼは見ていた。
...
..
.
数年に一度の祭典。
此度授けられた大会、その名...
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『獣冠祭』
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ーーーシュガー=ラッシュ
ある者は己の牙城の再起を目指して...。
ーーーガレット=ヘーゼル
ある者は1人走る少女を支えるために...。
ーーーダイコー=オーディーン
ある者は徹底した秩序と、継がれた想いのために。
ーーーチクアーノ/ギュージ
ある者はただ使命のため、またある者は己の食欲のため。
ーーーオルゼ=スティングレイ
ある者は己の野望のため。
そして...
ーーーミーク=キャメル
ある者は1人の男を守るために。
ーーーシオン=エシャロット
ある者は家族のために。
ーーーアイザック
ある者は恩返し、そして己の故郷に帰るため。
カードは揃い、一斉に集う。
刻は来た、祭典の時である。
...
..
.
「ちょっと待って!?師匠前出ないの!!??」
「ワシ出禁喰らってるんじゃ」
「なんじゃそりゃ〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
そのうちの1つのグループはハプニングに頭を抱えていた。
ところで2章最序盤の出来事は誰のものだったんでしょうね?(少なくともこの中の誰かです)
次回投稿日は2\22 7:10!
いよいよ始まります。
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