表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2-2章完結ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-2章 龍界地底砲塔マナタン:カルヴァトス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/67

59話 『背信者(ベトレイヤー)』は恋の病を垂れ流す(1/4)


 星屑のように光り輝く泉を背に、吐息が重なる肌に近い距離で、カルヴァトスは静かにアイザックに呟く。


「...私の隣にいてくれない...?」


 カルヴァトスは重なる手を強く握る、水に濡れているがその温もりは伝わる。

 水の音に包まれた2人だけの世界、アイザックの鼓動が早くなる。


「...隣に...っていうのは」


「付き合ってって事...」


「...付き合う...付き合う...」


「うん」


「...俺でいいのか?」


「うん、アイザックがいい...」


 ...


「あっはっは!なーんて!」


「なっ!?」


「嘘嘘ごめんね、困らせちゃったよね、今の忘れて」


 そういうとカルヴァトスはアイザックに背を向ける、その背には少しばかりの哀愁が漂っていた。


「いいよ」


「君も君のやるべきことがあるのに何私突っ走ーーーえ?」


「カルヴァトスと付き合う」


「...」


「...」


 ...


「私たち恋人だね」


「それで式はいつにしようかッ!!」


「気が早いよ!?」


 アイザックは満面の笑みで言い放った。


「...でも、本当に俺でいいのか...本当に?」


「うん...何度も言うけど君がいい」


「本当に?」


「本当だよ...」


「...」


 高鳴る鼓動、アイザックは


「初めての彼女だやったーーーッッ!!!」


 弾け飛んだ!!


 アイザックは興奮のままカルヴァトスを抱き寄せ、彼女の肩に顔を埋める。温もりが心地いい。カルヴァトスも優しく抱き返し、耳元で囁く。


「ふふ、私も嬉しい、じゃあ、これからも一緒にいよ? あ、私感染してるから、噛まれたら同じになっちゃうかもだけど…よろしくね」


「あぁ!...え、待って何?」


「聞いて」


 カルヴァトスは静かに、そして優しくアイザックを抱き寄せ耳元で呟いた。




「ーーーもうすぐこの帝国は滅ぶの、私たちによって」



「...は?」


 突然だった、カルヴァトスが何を言っているのかアイザックには理解できなかった。


「私ね、同じ病気の人たちの群れにいるの。世界を壊したくて集まった、どうしようもない人たち、でみんなで帝国潰そって話してるんだ、君も私と一緒にいるなら紹介してあげる!」


「は?...は?...」


 ーーー頭の中に響く水の滴る音。


「ちょっとずつ感染を広げて内側から滅茶苦茶にしてやれば滅ぼせるかなってみんなで試行錯誤してるんだ」


「待て」


 ーーーわけがわからず頭が痛くなる


「でもどいつもこいつも勝手でさ、1人で行動してるやつもいたり、特急に乗らずに徒歩で帝国向かってるやつもいたり、でも私はちゃんとしっかりやってるよ?あぁーーー、ちょっと集めた『獣』拝借してるけどね、私ってせっかちだからさ、『界帝』さえ殺せるなら何でも良かったっていうか、だからとりあえず単独で行動してたんだよね!まずはあいつぶっ殺す!ってさ!」


「待て...待てって」


 ーーー世界が回る


「でも君と出会って全部変わった、こんな私にも大切な人ができた、だから帝国が滅ぶ前に君だけは救い出して見せるって、そうだそうだよ、君も私達と一緒になれば私は『界帝』を殺しつつ君と一緒に暮らせるんじゃん!」


「カルヴァトス!!」


 ーーー目がまわる、何が起こっているのか、自分でもわからない。


「全部終わったらさ、帝国からだいぶ離れた山に古屋があってさ、そこで私暮らしてるんだ、畑もあるし肉...あぁ、人の肉も鳥の肉もあるよ、そこで2人で暮らそうよ、ダンスするための仮装ステージも作ってるから教えてあげられるし、『獣』の脅威に怯えなくてもいい、だって私達が()()なんだから!それで2人で暮らして、ゆくゆくは...あぁ、この身体だと子供作れないから、その辺の村の子供連れてきてちゃんと家族になってさ……でも私、お腹空くとなんでも食べちゃうから、もし変なことしそうになったら止めてくれると嬉しいな。そうだよそれがいい朝は私がごはん持ってきて昼はダンスのレッスン夜は...あぁダメダメそれはまだはやいよ私達まだそこまで言ってないでもアイザックが求めるなら私は...でもまだお互いのこともよくわかってないし


「カルッッッ!!!」


 何を言っているのかまるでわからない。


 カルヴァトスの目は...違っていた。


 濁ってはいない、ただ、狂気に飲まれたように


 目の色が違っていた、


挿絵(By みてみん)


 ドリンク=バァのようなドス黒い目。


「アイザック」


 重なる2人の影、冷たい肌をすり寄せたカルヴァトスはアイザックの温もりを感じとる。  そんなアイザックの肌を…彼女の唇が首筋に近づく。息が熱い。しれっと、牙を覗かせて…。


「...」


「...」


...



 アイザックの肌を...






 ーーー()()()()()()()()()()







「ッッッ!!!???」


「ッ!?」


 ーーーダァァンッ!!


 響く轟音、舞い上がる水飛沫、遮る視界、冷たい粒が肌を撫でる。


「何!?」


 気付けば2人の距離は離れていた、その先のアイザックは胸を抑えながら激しく呼吸している。


「はぁーーはぁーーはぁーー!!」


「アイザック...どうしたの」


「カル...()()()()()()()()()ッ!?」


「あ...ごめん...え...私、何を...」


「違うッ!!」


「違う...?」


「ていうかお前...()()()()()()()...!?」


「...」


 カルヴァトスは静かに手を下ろし...


「あぁ...そっか...出ちゃったか...『獣』の部分」


 呟いた。


「ごめんね...私が不用心だった」


「...?」


「そう、私感染してるんだ、そして、その病に適合した...いわゆる『適合者』なの」


「何を...言って...!?」


 その時、カルヴァトスの目が鋭くなる、それと同時に空気が変わり水面が静かに震える。

 立ちこめる大量の魔力、身の毛のよだつ生ぬるい風、先ほどとはまるで別人だった。


「自己紹介するね...私の名前は『ノウス・C(カルヴァトス)=メガロドン』、『獣』の病を克服した者達の集まり、『終末教』が1人、世界の法則に背く『背信者(ベトレイヤー)』の二つ名を冠する者」


「何...!?わかんねぇ...おまえ言ってる事が何一つとしてわかんねぇぞ!」


 しかし、全てがわからないと言うわけではない。


 『適合者』


 その単語をアイザックは聞いたことがあった、数ヶ月前にレーチェから伝えられた単語。

 『適合者』は『堕ちた獣(ビーステッド)』の病を克服し、人間に敵対心を持つ者の総称、その者を介して感染を広げると言う。


 つまり、先ほど()()()()()()()


「」


「でもごめんね、私にも目的があるし、君を殺したくはない...だからーーー」


 その時、アイザックの持ち物が突然熱くなった。


「!」


 それを取り出すと魔石だった、この帝国に来た時シオンから受け取ったものであり、ストリートファイトの申し出ができる端末。


『試合形式:通常ファイト 降参あり』


 そう魔石には写っていた。


「勝者総取り、勝った者は金も、人権も、全て奪う」


「...」


()()()()()()()()()()()、その前に...君だけを救い出してあげる」


「ッ!!」


 アイザックは構えた、今何が起こっているのか全くわからない、だが構えなければ死ぬ。

 それが、承諾の合図となってしまう。


「いいね」


 ーーーファイッ!!


 ドシャァァァァーーーッッ!!!


 激しい風圧と水飛沫を上げてカルヴァトスは急接近、アイザックは飛んで回避。

 刹那、カルヴァトスは静かに水面を撫でる、ただなんて事ない動き。


「ッ!!!」


 しかし死の風が吹いている。


 ーーーパァァンッッ!!


 瞬間、カルヴァトスの手から弾かれる水飛沫。


「グゥッッ!?」


 しかしその威力がケタ違いだった、アイザックは必死にそれを回避したがーーー


 ーーードドドドドッッッ!!


 背後の岩壁が激しく粉砕され瓦礫となって水面に積み上がる。


「なんーーッ?」


 ーーーなにが起きた?


 ただ水面を撫でただけなのにも関わらず水の勢いだけが弾丸のような攻撃となって襲いかかったのだ。

 しかし、考える間もなく振り向きざまに眼前に迫るカルヴァトス、彼女の手刀が右から襲いかかる。


「ーーッ!」


 ーーードッ!


 しかし、それをガードしようとした瞬間、()()()脇腹に衝撃が走る。


「ガッ!?」


 まるで鉄球でもぶつけられたかのような痛み、内臓が圧迫されアイザックは勢いのまま陸地に打ち上げられる。


「が...げほっげほっ!!」


 必死に咳き込み起き上がる、確かに死の風は左からも吹いていた。しかし、()()()()()に吹いたのだ、避けられない程直前に、そんなことはいままで無かった。

 さらに、自分に何の攻撃が来たのかもまったくわからない。


「降参してよ、君を殺したくないんだ」


「さっきの完全に殺す気だったじゃねぇかよ!!」


「君なら避けるって信頼の現れだーーーよッ!?」


 ーーードンッ!!


 激しい轟音、アイザック達のいた洞窟の壁が突如崩壊し、中から2人の影が現れた。


「アイザックッ!!」


「シオン!?」


 魔力循ーー多層ーー、先週見たものと同じバイクに跨って現れたシオン、目の前に着地し華麗なドリフトでアイザックを掬い上げる。


 ーーーバオッ!


 そしてエンジンのような音を吹かしてその場から離脱する、その背をカルヴァトスは静かに見つめていた。


「試合中...なんだけどな〜」


「ノウス・C=メガロドン、貴様にデスマッチを申し込む」


「ん?」


 入れ替わるように現れたのは浮遊する円形の刃、チャクラムを漂わせた高身長の男、紺色の防具を身に纏い結った赤い長髪が靡いている。


「誰?」


「『五耀星(フィフステラ)』が1人、ハン=ペンバー、貴様を『獣』と判断し処理しに来た、感染拡大防止のためにな」


「ふーん、どうでもいいけど邪魔しないで欲しいかな」


 ...


「シオン!なんでここがわかったんだ!?」


「そんなことはどうでもいい!!街見て!」


「ん、あ!!」


 流れる風景の中、見えた街並みは炎に包まれていた。


「なにが起きてるんだ!」


「『堕ちた獣(ビーステッド)』!なんでか急に溢れ出したの!今みんな対処にあたってる!」


「なん...だって!?」


 街を駆け回る無数の影、突如として湧き出た『堕ちた獣(ビーステッド)』が人々を襲い始めているのだそう、戦闘者が対処に回っているらしい。


「貴方が会っていたカルヴァトスだっけ!?アイツがその元凶!!」


「ぐ...くそっ!!」


 手を握って、近くにいてくれって言ってきたくせに。


 いや、違う、違うと分かってるのが、余計にムカつく、あの時の温もりは本物だった。

 彼女は嘘をついていなかった、自分を救うと言っていた、その言葉に偽りはないと確信している。


「アイザック!!」


 どうしたらいい?自分は。


「俺だって...あいつが好きだった」


 それ故に、今の現実が受け入れられずにいる。


「ーーーッ!!」

「ーーッ!?」


 魔力が近づいている、禍々しい魔力だ。


「逃げないでよーーーッ!!」


 カルヴァトスは何かを振り回しながら全力で追いかけてくる。


「これあげるッ!」


 ーーーブンッ!!


 投げた塊と()()()()()、それは自分を助けにきたと思われる男の首。


 ーーードンッ!!


「キャッ!」

「ッ!」


 その首は三輪の一つに命中し、激しく跳ね上がる、アイザックは同時に跳ね上がり、側の斜面を転げ落ちる。


 ーーーダンッ!


 たまたま通りがかった列車の上に着地するが、追跡をしてきたカルヴァトスがアイザックの前に同じく着地。


「...」


「戦う気になったかな」


「ーーーあぁ」


 俯きながら思い出す、目が合った男の目は絶望に満ちていた。

『適合者』、それは人間にとてつもない敵対心を持つ、それ故にアイザックは思い知った。

 自分の事が好きでも、自分も好きだったとしても、理解し合えない事はある。


 ーーーこいつとは相容れない。


 立ち上がり、2人はあの日見た夜景を背景に向かい合う。


「...俺はアイザック...藍村咲太郎だ」


「やっと名前を教えてくれたね」


「お前が先に言ってくれたからな」


「それじゃあ...勝った方のモノになるって事で!!」


「来いやッ!!」


 開戦の火蓋が切って落とされた。

 そして同時刻、街の惨状を見てはしゃぐ女性が1人。


「あら?あらあらあらあら!!これはカルヴァトスさんね!やるじゃない!お母さんも嬉しくなって来ちゃった!!」


 エウロペ=バレーナも、この修羅地獄に乗って出る。

 

次回投稿日は2\10 7:10!


始まってしまいましたね。


皆様たくさん読んでいただいてありがとうございます!!

高評価、ブックマークを押していただければ作者のモチベーションに繋がります!!

よろしくお願いします!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ