52話 界帝ミカード=グランノアーリ
「ようこそ我が帝国、マナタンへッッッ!!!」
「...」
「...」
最上階へ辿り着くとそこにいたのは身長2メートルの筋骨隆々の大男、全身を白銀の鎧に包んだウェーブ髪と髭の似合う中年。
目の傷、蒼い垂れ目とほうれい線が威厳を物語っている。
「自己紹介をさせていただこう、私はミカード=グランノアーリ、『偉大なる漆黒』だ、覚えてくれたまえ」
「よろしくお願いしますグランノアーリ様」
「よろしくお願いしますゴランノアーリ様」
「『界帝』でいい『界帝』で」
「言われた通りお連れいたりましたわ、『界帝』様」
「ご苦労エウロペ君、下がってくれたまえ」
「はーい」
ーーーすっ。
そういうとエウロペは一歩後ろへ下がった、本当に一歩だけ。
「あの...私たちになにか御用でしょうか?」
「そ、そうだ...じゃなくてそうです」
「あー敬語もいい、礼儀礼節など私は好まんよ、それよりも用があるのは君達ではないかな?」
「え、あぁそうか」
「ただ避難するだけなら手続きをしてこればいい、だが君達はそれだけではないだろう?」
そう、この度の目的は自分達のいた拠点の人々をこの帝国に避難させるため、そのための交渉に来たのだった。
シオンは淡々と拠点の現状、そして自分達の旅の目的を明かし、レーチェから預かっている交渉材料をミカードに手渡す。
「ふむ...」
ミカードはシオンから交渉材料として受け取った本をペラペラとめくり考え込む、そして顔を上げて口を開いた。
「まずは嘘偽りなく自分達の現状と目的を明かしてくれてありがとう
、となればこちらも嘘偽り無く君達を呼んだ理由をお教えしよう」
「お、おぉ」
「私が呼んだのは...単に見たかったためだ、世界最強の武闘家と魔法使い、それらを倒した者達の目を」
「それだけ...?」
「それだけだよ?だからもう満足だ」
「それで、私達の要請については...」
「断る」
「なっ!?」
バッサリと断られてしまった。
「君達のような者は別に初めてではない、何度も同じような人間が避難場所の交渉に来た、そして全てを断った。いくらドリンク=バァを倒したとはいえ特別扱いするわけにはいかない」
「な.....」
「来たければ自分の力でここに来る事だ、「獣」の脅威も、『機構星騎士』の脅威も跳ね除けて、ね、我々はいっさいサポートする気はない」
「そんな...」
アイザックは静かに俯く、ここまでの旅は無駄だったのだろうか、と心の中で思う、しかしその時。
「しかしドリンク=バァを倒したら勇士がせっかくこの地に足を踏み入れたのだ、方法くらいは教えてやろう」
「えっ!!」
「ほ、方法!?」
「あぁ、ある方法を使えば超特例として『機構星騎士』の活動を停止させて国へ招き入れられる」
「お、教えてください!」
「よかろう、金だ」
...
「あ、え、ごめんなんて?」
「だから金だ、この国は確かに「力」が全てだが、取引や交渉にも全て金を用いている」
「...具体的には何ギアスですか?」
ギアス、アイザックはこれまでほとんど聞かなかったがこの大陸の通貨らしい。
この世界が『獣』に溢れてからはとっくに通貨の文化は衰退したと思われていたが。
「.....40億BPだ」
「...はい?」
...びぃーぴぃー?
またもアイザックの知らない単語、しかし今度はシオンもその単語に首を傾げていた。
「びーぴーってなんだ?」
「ギアスとはまた違う、この帝国のもう一つの通貨だよ、価値はギアスとは変わらんし、ギアスと同じように使えるので安心してくれたまえ、あ...ギアスからBPへの両替はできないからね」
「ギアスではダメって事ですか?」
「あぁダメだね、ただの金で解決するようでは富豪が有利だろう?だからBPを要求してるのだよ」
「どうやってBPを稼ぐんだ?」
「ふむ...では教えよう」
その時、照明が暗転する。
暗闇の中ミカードがポーズをとっているくらいしかわからない、そしてスポットライトがミカードを照らす。
「BP!!...すなわちバトルポイントだ!!」
ーーーパァンッ!!
ミカードの玉座の両サイドから紙吹雪が舞う。
「バトルポイントぉ!?」
わかった、アイザックはこの一言で全てを理解した。
「力」が全てのマナタン帝国において、貨幣と同価値のBP...バトルポイント、その名前の意味。
「そう!!この帝国では「力」が全て!バトルポイントはストリートファイト、闘技場、変則競技場で稼ぐことができる!!「戦闘」、これは我がマナタン帝国において最大の娯楽だよ!」
「な、なんだってー!?」
「...」
シオンの方を見ると、彼女も驚いているようだった。
「知ってたか?」
「いや、知らなかった...そんなシステムになってたなんて...」
「自分の好きなように...難民申請をしたいなら力を示せ!!我が国は強者を受け入れ、また強者の自由を許している!強者の身内は例え弱者でも、庇護するものが強ければ我々はそれを良しとする!!」
「無茶苦茶すぎる!!」
「ちなみにシオン君!ただ戦うだけでは難民申請はできないぞ!来月行われる『大会』で優勝するんだ!それが一番手っ取り早い!!」
「な、なんかファンタジーっぽくなってきたぞ!?」
『大会』、来月行われるそのイベントに優勝すれば30億BPを稼ぐ事ができるようだ、そしてそれだけではない。
「その大会に優勝できれば、『界帝』がその者の望みを叶えてやろう!!」
「何!?」
「『界帝』への挑戦権でも、今の国の運営システムにメスを入れる事でも、なんでもいい!!」
「な、なんでも!?」
アイザックは思い出した、すっかり忘れていた、自分の本来の目的を。
「...俺、シャクシ島に行きたいんだ、そこに行くには同盟国であるこの国の橋渡しが必要って聞いたんだけど」
「うむよかろう!」
「シオン!出るしかねぇよその大会」
「...そうね」
大会に優勝すれば30億BP、目標金額に一気に近づく上、アイザックの目的である元の世界に帰る手立てを得られる、もはや選択肢などない。
「まぁだが君達の強さに免じて最初3000万BPはくれてやろう、あ残りの9億7000万BPは自分で稼いでね」
「ケチ!」
「アイザック!くれるだけありがたいと思いなさい!!」
「成功を祈ってるよ勇者達」
「下までお連れするわね〜!」
そういうとエウロペはエレベーターの扉を開ける、アイザックはそれに続き乗り込むと、ミカードが見送るように口を開いた。
「あぁ、あと2人とも、一つアドバイスをしよう」
「何?」
「効率よく稼ぐなら変則競技場がおすすめだ、そこが今我が国で熱いのでね」
「そ、そうなのか?」
「なにより...緊張感で言うなら君達は慣れっこだろうしね」
「?」
そういうとエレベーターの扉は閉じた。
...
場所はうつり塔の下でミークは鼻歌を歌っていた、暇だったから。
「ふんふんーふふんふん♪」
ーーーチャリン
「ん?」
小銭の音だ、通りがかった男がミークのすぐ足元の欠けた容器に硬貨を入れて立ち去っていった。
「?...ふんふんーふふんふん♫」
ーーーチャリン
「ん?」
今度は女性が硬貨を容器に入れていった。
「??」
ミークは首を傾げていた。
マナタン帝国に伝書鳩は来ません、くる前に『機構星騎士』が撃ち落としてるからです。どうやって外の情報仕入れてるんでしょうね。
次回投稿日は1/27 7:10
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