50話 機構星騎士
まさかのラスボスと主人公の共闘です
「初めまして、私の名前は『エウロペ=バレーナ』、皆んなからは『令嬢』の二つ名を貰っているのよ」
目の前に現れた高身長の女性、長い金髪を静かに靡かせケープに隠れた大きな胸、と母と呼ばれるに相応しい落ち着いた白いシャツに大きめのスカート、太陽のように温かな眼差し。
しかしそれよりもアイザックが気を取られたのはシオンを呼んだその名前。
「シルヴィア...って、シオン、お前シルヴィアって名前なのか?」
「違うッ!!」
「シルヴィアちゃんよ?でも今はシオンって名乗ってるみたいなのでシオンって呼びましょう、改めてお帰りなさい、シオンちゃん」
そう言ってシオンの背後に周り両肩に手を乗せる、シオンは俯き肩を震わせている。
「.......」
「おい」
「あら、何かしら?」
「とりあえずシオンから離れろ」
「ッ!?」
アイザックの言葉に顔を上げるシオン、横でミークは杖を構えて臨戦体制に入っている。
「あらあらごめんなさい、貴方にもとうとう彼氏が出来たのかしら、お母さん嬉しいわ」
「エウロペ...さんだっけ、ていうか俺達に何の用だよ」
「あぁそうそう!今日はシオンちゃんだけじゃなくって皆んなに用があって来たのよ!」
パンッ!と手を叩いて次の話に切り替える。
「実は私、今日は『界帝』様のお使いを頼まれてきたのよ!」
「『界帝』?」
「お使い〜?」
「『界帝』は....マナタン帝国の支配者よ」
「「ほぁッッ!!?」」
「その『界帝』様から貴方達を連れて来て欲しいって、人使い荒いわよねぇ〜」
「「ほあぁあッッッ!!?」」
急に話が大きくなり飛び上がるアイザックとミーク、今向かっている国の王が自分達に会いたいと直々に申しでているのだ、それは震え上がる。
「待って、どうして『界帝』様が私達を呼んでるの?」
「さぁ〜?どうしてかしらね...ドリンク=バァを倒した件と関係あるのかもしれないわね〜」
「!!」
「ちょっと待て、なんで俺達がドリンク=バァを倒したことを知ってるんだ?」
アイザック達はこの列車に乗るまで数週間3人でずっと旅をして来た、その間誰にも会っていなければドリンク=バァと激闘を繰り広げ勝利した事も話していない。
「あら?今帝国はその話題で持ちきりよ?どうして広まったのかは私にもわからないの、ごめんね〜」
「...」
「あ、そろそろね!」
ーーーキィィイイイ!!
「うおわっ!?」
列車のブレーキ音と同時に車内が大きく揺れる、反動で前につんのめった。
「キャッ!」
しかし、その先にいたミークの肩に手を伸ばすより早く体勢が崩れ、胸元へと勢いよく倒れ込む。
「ちょ...ひゃっ!?」
柔らかい感触に顔を埋めたまま固まる主人公。
一方のミークは耳まで真っ赤になり、胸元を押さえて震えながら、
「アイザック君最低です〜〜〜!」
ーーーバキィィッ!!
「ごめんなさいッッ!!!」
アイザックに渾身の右ストレートをお見舞いし、その瞬間車窓が暗転した。
「なん?」
「門を潜ったのよ」
「いよいよマナタン帝国か!」
旅を始めて数週間、いよいよ目的地の到着に心が躍る。
「アイザック、ミーク、聞いて」
「ん?」
「なんです〜?」
「マナタン帝国の、その国の本質は「力」よ、帝国が最も欲するのは「力」、「力」が全ての国なの」
「お、おう?」
「マナタン帝国は弱者を許さない、入国も出国も、生存権すら強者にのみあると言っていい」
「つまりどういう事です〜?」
「これから入国審査があるのよ」
入国審査、それに通過しなければ国の敷居を跨げない、ということか、しかしシオンもその周りも空気がひりついているのは気のせいだろうか。
「具体的にはーーー
「すぐわかるわよ〜!」
エウロペは周りの空気と打って変わって生き生きとしている。
『マナタン帝国直通スライザ特急にご乗車いただき誠にありがとうございました、ただいまマナタン帝国に到着致します、お忘れ物のなきようお願いいたします』
スピーカーから鳴り響くアナウンス、さらに空気が凍りつく、中には荷物から武装を始める者もいれば祈る者も、アイザックと同じように状況がわかっていない者もいた。
「シオン、何が始まるんだ?」
「直にわかる」
『それでは.........
...生き残っていましたらまたお会いしましょう』
ーーーバリィィンッッ!!!
突如窓が割れ、複数の人影がなだれ込む。
まるでSFの世界のような身体のラインが浮き出る銀色のボディスーツ、顔はそれぞれ違うラインの入った銀色の仮面で覆われており素顔は見えない。
「なんっ...ッ!?」
ーーーガンッ!!
気付けばその人型はアイザックの首元目掛けて回し蹴りを入れていた。
「危ねぇッ!!」
しかしすんでのところで腕を入れていたため直撃には至らない、しかし腕の筋肉が悲鳴を上げる。
「なんだお前らッ!?」
「『機構星騎士』よッ!!」
『機構星騎士』、そう呼ばれる白銀の兵団、それぞれがバラけて一人一人に襲いかかる。
車内は騒然、阿鼻叫喚と舞い散る鮮血、刃の交える音と魔法の音、全てが混ざる不協和音。
「邪魔ッ!!」
ーーードンッ!
「ひぃぃ〜〜怖い!無機物なのが怖いです〜〜〜!!」
シオンとミークも「白銀」に埋め尽くされる。
ーーーガンッ!
「ギャッ!?」
乗客の1人が椅子に押し倒され、そのまま馬乗りに、すると
ーーーザグッザグッザグッ!!
「ギャァァアアアアッッ!!?」
手から飛び出た刃が男を滅多刺し、刺すたびに血飛沫が舞い、天井と座席を濡らす。
「こいつらッーー!?」
目の前の敵を『魔轟衝』ーーー衝撃波で吹き飛ばし、すぐ男の救援に向かう、しかし。
「ーーー。」
それを遮るように別の白銀が立ちはだかる、その近くには血がドバドバと漏れ出る首を抑えて虚を向く女性。
「てめぇら...ーーーッ!!」
アイザックが吹き飛ばした相手が背後に、挟み撃ちの状況が出来上がる。
「しまッ!?」
前後同時に吹き荒れる死の風、2人の白銀は刃を構え襲いかかる。流石に避けきれそうにもない、しかしその時、
ーーーギィンッッ!!
「あらごめん遊ばせ」
「エウロペ!?」
間に入り、背後からの攻撃をエウロペが遮る、アイザックは前方の攻撃を『魔光斬』ーーー魔力の刃で抑える。エウロペとアイザックは背中合わせの状況となる。
「別に協力プレイがダメなわけじゃないのよ〜?」
よく見るとエウロペは槍を片手に持ち白銀の刃を止め、もう片方の腕はまた別の白銀の首を締め上げていた、おそらくエウロペに襲いかかっていた敵だろう。
「ガ...ァ...!!」
「ッえ!?」
エウロペが締め上げている白銀が苦しそうに声を上げていた。
「ロボット...ではないのか?」
「違うわよ?ちゃぁーんとみんな生きてる人、だから弱点も人と変わらない、えい!!」
ーーードガッ!!
「エゥグーーーッッ!!!???」
エウロペは目の前の相手の股間を勢いよく蹴り上げる、相手は悲痛な声を出してうずくまる。
「じゃ...じゃぁッ!!」
アイザックの目の前の相手、刃を押し込もうとしていた白銀の腕を掴み、力任せに引き込むとバランスを崩してよろける、そしてアイザックは首元目掛けて、
ーーードッ
「ッ!!」
魔力を込めた当て身、白銀は糸が切れた人形のように倒れ込んだ。
「もっとくるわよー!!」
ーーーバリィィン!!
ーーーバリィィン!
ーーーバァァアンッ!!
さらに追加で乱入する白銀の群れ、もはや一人一人が3対1の状況、シオンとミークの姿はもはや見えない。
「あら嬉しいわ!ならこの子はもういらないわね!」
エウロペは締め上げていた相手の目の部分目掛けて仮面越しに指を押し込む、仮面は鋼鉄のように硬いが指はそれ以上の力で凹ませる。
「ーーーーァァアアアアッ!!?」
絶叫、目に指を入られた白銀、仮面の外からは血が流れ出ておりその状況が意味するものは想像に難くない。
「おいッ!?」
「あら?」
「なにもそこまでしなくても!!」
「殺そうとしたんだもの、こうされても文句は言えないでしょ?それに」
振り返るとエウロペを囲む白銀はその狂気に押され後ずさっている。
「こーんなに可愛い子達をたくさんよこしてくれたんだもの!楽しまなくちゃ!」
「...ッ!!」
この女、狂っている。
ーーードガッ!!
「ぐぅッ!!」
ーーードッ!
アイザックは襲いかかる敵全て当て身で無力化する、よく見たら彼ら(または彼女ら)、同じ見た目だがほとんど連携が取れていない、エウロペに背中を任せるなら自分は目の前の相手に集中、そうすれば一対一の状況を作るのは難しくない。
ーーードッ!
「ッ!!」
ーーーブチブチブチッッ!!!
ーーーバシャッ!!
ーーーバキバキバキッッ!
「イギャァァアアアアアーーーッッ!!?」
「や"め"でぇぇぇえええ!!ごろ"ざな"い"でぇぇ!!!」
「いだいいだいいだいいだい!!!」
地獄だ、後ろで地獄が顕現している、だがアイザックは背後を見る余裕がない、襲いかかっても死ぬことはないと悟った白銀がアイザックに集中しているのだ。
3対1?生ぬるい、15対1だ。
「見た目アレでもやっぱ人間だな...!!」
彼らがなんなのかはわからない、だがアイザックは冷静に1人ずつ鎮圧する、その姿をエウロペは静かに見ていた。
「あら、優しいのね」
全て当て身だ、アイザックは全ての相手を当て身で対処していた。
「人を簡単に殺すこいつらは許せねぇけど、かといって何も死ぬ事はねぇよ!!」
「あら無茶苦茶、でもそろそろね」
「なにが!」
その時、白銀の群れは戦闘をやめて一斉に窓から離脱した。まるで嵐の後のように静寂が車内を包んだ。
「な、なんだ...?」
「アイザック!!」
「シオン!ミークは?」
「死ぬかと思いました〜!」
シオンとミークと合流する、2人はそれほど大きな怪我は無さそうだ。
「再会の所悪いけど、落ちるわよ〜〜〜!!ほらシオンちゃんも!!」
「「「え」」」
その声にまさかのシオンすらも驚いている。
その瞬間、全ての重力が失われた。
ーーー列車が奈落へと転落していく。
「「えええぇぇぇええええーーーーーッッッ!!!???」」
ようこそマナタンへ。
ここは地獄の底、修羅の世界、全ての「矛盾」を成立させよう。
次回投稿日は1/23 7:10
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