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【2章開幕ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
1章 戦慄廃国チルド:決着編

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39話 最終戦争ユナイタル・ドリンク=バァ(3/7)

メリクリです、

ドリンク=バァからささやかな贈り物があるそうです。

空を見上げましょう


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 辺境の小さな村、王国の守りが及ばないほど遠く離れた、魔物の脅威に常に晒される場所。普通なら、こんな村はすぐに滅ぼされてしまうだろう。 だが、その村が存続しているのは、たった一人の武闘家が守り続けているからだ。 名はサルダ=バァ。かつて王国でも並ぶ者なき実力者で、巨城のようなドラゴンを単身で倒すほどの圧倒的な力を誇っていた。


「父ちゃんすげぇー!!」


 サルダ=バァが自分の二回りも大きな猪を持ち帰り、村人達に感謝されているのを息子ドリンク=バァはよく見ていた。

 それはただ純粋な尊敬の眼差し、いつか自分も父のように強くなり村人達に慕われたい。ただそれだけのために少年は修行を続けた、ただそれだけの。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「.......」


 雲を突き抜け地平線に沈み込む太陽を背にドリンク=バァは広大な下界を見下ろす。

 

「......」


 西も東も、北も南も、全ての地理全ての地形に見覚えがある。どれもこれも勇者達と旅をし通った場所だ。

 「父みたいに皆に慕われたい、尊敬されたい、見てもらいたい」自分の修行だけでは父のように強くはなれない、そう思って勇者に同行し、修行を怠らず様々な場所で色々な思い出を作った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おいセイヴァー」


「⬛︎⬛︎?」


 温泉の臭いのする山の麓、野宿のためのテントを貼っていた時の勇者との会話。


「そこの温泉、今マンダカミアとラミスが入ってるだろ?」


 ラミスとは勇者達と同行していた僧侶の名前である。


「⬛︎⬛︎」


「んでさんでさ、あそこの荷物、あの2人着替え忘れて行ってやんのよ、んでさ」


「...?」


「気にならねぇ?あういう女子の履いてる下着とかさ、布なのかそれともド派手なのか」


「⬛︎⬛︎ッッ!?」


「大丈夫だって、「老公(アーシア)」もあの通りスヤスヤ寝てる、今だったらバレやしないって!!」


「布に500ギアス」


「げぇ起きてたのかよッ!?てか賭けてんじゃねぇよ!!俺は派手なのに500ギアスだ!!」


「........」


「サクッと見てサクッと仕舞えば...ん?どうしたセイヴァー?」


「⬛︎⬛︎...⬛︎⬛︎...」


「あん?」


「ドリンク=バァ...アンタねぇ...!!!」


 背後を指さすかつての親友、後ろを振り向くとそれは怒りなのか、それほも火照りなのか湯気を立たせた魔法使いの姿。


「げぇマンダカミア!?いやお前らが入浴中に襲われないように見張りをつけておいたらなーってまだ未遂だし!?」


「⬛︎⬛︎!!⬛︎⬛︎!!」


「しかもそれやるなら「老公(アーシア)」だって同ざ...」


「...zzz」


「あのジジイ狸寝入りしてやがるぅ!?」


「問題無用ッッッ!!!」


「ギャァアアアアーーーッッッ!!?」

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ーーーーッッッ!!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目標なんて霞んでしまう程に楽しかった、あの馬鹿をやる日々、まるで昨日の出来事のように覚えている。他にも魔族の首で遊んでた所をマンダカミアにしばかれたっけな、ただ脳が腐食しているせいか、親友の声だけは思い出せないが。


 ただ、それでもドリンク=バァの心は満たされなかった。


 ーーー足りない、これじゃない、その視線では無い。俺が欲しいのは1人の視線ではなくもっとたくさんの視線だ。


 5人で色々な敵と戦った、色々な村を守った。魔物魔族、魔王軍幹部、何回も死にかけながら討伐し、その首を持って帰った。

 村の人々からは勇者を筆頭に感謝された、色々なものをくれた、父と同じ立場になれたようで嬉しくも思った。


 しかし、その視線に慣れていくにつれその心は次第に歪み荒んでゆく。


 今度は慣れたせいで満足できなくなったのだ。


 ーーー何故だ?ここまで手に入れてもなぜ俺の心は満たされない?


 ーーー俺だ、俺だけだ、俺だけを見てくれ。からかいがいのあって頼りになる勇者でも無く、爽やかでしっかりもののマンダカミアでも無く、いざって時に美味しい所を全部持っていく「老公(アーシア)」でも無く。母性溢れる僧侶のラミスでも無く。


 だが己の価値を、戦い以外能力のない己の名誉を示すには魔王軍討伐しか方法がなかった。


 勇者達は魔王軍に打ち勝った、ドリンク=バァも勇者と魔王の一騎打ちを邪魔させないために魔物の大多数を1人で引き受けた、なんども死にかけた、しかし彼はやりきった。

 本当は自分が魔王を殺したかった、だが魔王の実力は知っている、今の自分では到底及ばない事も。そして勇者は魔王を殺すことに成功した。

 王国に帰った勇者達は魔王を討伐し皆から賞賛を受け、ドリンク=バァも国王より感謝の意を伝えられた。


 だが、それでも彼の望むものではなかった。


 自分も賞賛を受けた、しかし「最強の武闘家ドリンク=バァ」ではなく「勇者の仲間の1人」として、だったのだ。

 もちろん魔王を殺した勇者が1番の功労者だろう、それはわかっている、わかっているが、「個」として見てもらいたいドリンク=バァにとってはこの上なく屈辱だった。

 

 ーーーおい、そりゃねぇだろ。


 自分は1人で数えきれない程の軍勢を抑えたのだ、1人でも取り逃がしたら勇者と魔王の戦いに影響が出るかもしれない、だから城にいた魔族全員を倒したはずだ、誰1人逃していないはずだ。

 幹部と言われる魔王軍トップクラスの強さを持つ魔族とも戦った、多少マンダカミアの援護はあったが少しでも戦果を上げようとそれすら1人で抑え込んだ、1人でやりきったのだ。


 ドリンク=バァはパーティには参加しなかった、自分の実力を認めない王国に嫌気がさしたからである。

 王国を去る前に勇者には一言言っておいた、彼が悪いわけではないのだが、申し訳なさそうな顔をしていた。


 ーーーもう戻る事はねぇな、世話になった。

 ーーー⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。

 ーーーあぁ。


 なんてそうありきたりな会話をして、その場を去った、それだけの些事。この旅で得たものはあったが、欲しいものは入らなかった、ただの茶番だったのだ。

 もしかしたらドリンク=バァは最初から壊れてしまっていたのかもしれないが、中身どころか姿すらも腐り切った今となってはわからぬ事だ。

...


..


.



「お前の望むものは手に入ったのか?」


「ッッ!!」


 声が響いた。この上空、誰もいないはずの空間で。体内に蓄えた特殊なガスで空中に浮かぶ自分以外、存在するはずのない場所なのに


「さすがにここは空気が薄い、いくらワシでもあまり来ようとは思わんな、初めてじゃ浮遊魔法でここまで上がったのは」


「.......」


 ーーービッッ!!


「ふんッ!!」


 振り向きざまに放たれた光線をレーチェは難なく回避する。


「ふん、魔法が効かない肉体であろうがやりようはいくらでもあるんだよ」

 

 ジャラッと懐から出した小石に魔力をこめる。


「ふんッ!!」


 ーーーパァンッッ!!


「ーーーーーッッッ!!!」


 メジャーリーガーのような綺麗なフォームで投げられた石はまるで弾丸のようにドリンク=バァの巨体をぶち抜いた。

 空いた風穴から血が溢れ地上に小さな赤い雨を降らす。


「ギャァァアアアアアアァァァァァァ!!??」


「魔法は無理じゃが、魔力を込めた物理攻撃は効くようじゃな」


 ーーーパァン!!スパァンッッ!!


 次々と繰り出される豪速球は容赦なくドリンク=バァの身体を抉り穴を増やしていく、その痛みはレーチェの、弟子を奪われた苦しみを乗せているようだった。


「ガァァアアアアア!!」


 耐えかねたドリンク=バァはレーチェに飛びかかり、丸太を超えた巨木のような腕を振り上げる。


 ーーードォッ!!


「ンーーーッッッ!!」


 レーチェはそれを避けること無くあえて受ける。


「!?」


 振り終わりの瞬間、その巨腕に隠れるようにレーチェが視界から消える。同時に死角からまたも小石が飛ぶ。


 ーーーガガガンッッ!!


「チィ!」


 しかし瞬時に腕を滑り込ませる事で石を全て防ぎ切ってしまう、身体は脆いが腕はそれに相対するように強度が増しているようだ。


「武闘家としての勘は残っているようじゃな!」


「ツォァァァァァァアァァァァァァ!!!ーーーアァァ!?」


 その時、ドリンク=バァは何かに気付く。強い魔力を感じた方向へ振り向くと既に廃墟となった王国の一部に白い星のような輝きが見えた。


「ーーッッ!?」


 シッ!


「『閃光波(ブライト・バーン)』ッ!!」


 ーーーバォッ!


 突如目の前に現れたレーチェが放った魔法、眩い光と共に対象を焼き尽くす魔法、ドリンク=バァには魔法は効かないがこれはあくまで目眩しだ。


「気付かれたか!!」


「ァァアアアアア!!?」


...


..


.


「すげぇお腹空いた」


 「獣」蔓延る王城から離れた一際大きな時計塔の頂点にアイザックはいた。

 極度の空腹感を覚えながらアイザックは巨大な魔力の塊に延々と魔力を流し続ける。


「これってもうダメ...だよな、腕も変な色してるし...最後の最後で奇跡が起こって病と適合〜とか...ないよなぁ」


 ボソボソと1人呟く、応えるものはおらず言葉は風の音に乗せて流されていく。


「はぁ...」


 見晴らしのいい時計塔からは今は廃国となった街並みが一望できるが、特に気になるものもなく、ただ瓦礫の海が広がるだけだ。


「こんなはずじゃあなかったんだよなぁ...」


 異世界とかに来たらなんか能力とかもらって女の子とつるんで俺つえー的な楽しい人生送ったりしたかったけど、なんか思ってたのと違いすぎたなと。

 もらったものは用途も意図も不明の変な入れ墨、女の子は終始自分に冷たく話しかけようとしたら盾ぶん投げてくる奴と臆病に見えて実はかなり面の皮が分厚い奴、俺つえーどころかここ数ヶ月血反吐とゲロ吐きまくりの人生だった。


「...ほんっと情けねぇなぁ...畜生」

 

 でもよく考えたら、よく考えたらだ。前より身体能力が上がったのは事実だし(バク宙できるようになった、やったね)、女の子が側にいたし、特殊能力を持ったのはそれなりに恵まれていたのでは?


 ...いやないな、ないない。


 この世界に来てからの自分の行動を振り返る、拠点のみんなには迷惑をかけまくった。自分のせいで多数の人が死んだ、最初の頃はセルシに、そのあとはレーチェに毎日ボコられ医務室の先生にはその度に叱られた。

 拠点の人達にとって迷惑だったかもしれない、すごく申し訳なく思う、感謝してもしきれない。あの日々があったから自分はここまで強くなり、生きてこれたのだから。


「...お」


 暖かい、流し続けていた魔力の塊が次第に形作られ輝きが増す。


「すげぇ...なんだこれ」


 レーチェから術式構築と詠唱を施してもらいあとは自分で魔力を溜め続けるだけと聞いている、出来上がったものは今にも吸い込まれるような黒い球体。

 否、球体というより、「穴」というべきものかもしれない、それほどまでにその球体の中には底なしの暗黒が広がっていた、それはまるでブラックホールのようだった。


「『昏黒・虚数孔(ハイ・ライフ)』、師匠が編み出した...奥義っていうんだっけ?」


 奥義、戦士職魔法職関わらずその者が人生においてたどり着いた究極の境地、その具現化。


「すげぇな...素人でもこの魔法がすげぇってわかる...どんな魔法なのかしらねぇけど」


 空を見上げる、月とはまた違う赤く凶々しい星が不規則に動き回っているのが見えた。

 魔法は効かない、だが、これだけは別だ。

 なぜならこの魔法はぶつけるものではなく、転送するためのもの、否、これはいわば虚数に通じる「穴」そのもの。

 潜るだけであれば効く効かないは無い、魔法の効かないドリンク=バァに対する最後の対抗。


「あれがドリンク=バァだな...」

 

 狙いを定める、これは最初で最後の攻撃となるだろう、自身の体の感覚はほとんどない、外したら終わりだ。

 精神を極限まで集中させる、レーチェとドリンク=バァが格闘しており、レーチェは自分のために必死に足止めをしているようだ。


「...」


 空腹感を無理やり心の奥に押し込み目を閉じる、魔力の流れ、風の流れ、交差する殺意と撃ち合う魔法と拳撃、遠くであろうともその感覚を肌で感じる。

 落ち着け、まだ投げるな、レーチェが隙を作るまで待て。


「...」

 

...


..


 レーチェの放った閃光にドリンク=バァが悲鳴をあげた。


「ここだぁぁぁぁぁーーーー!!!!」

「ガァァァアッッ!!!」


 ーーードドドドドドッッ!!


挿絵(By みてみん)


「なっ!?」


 隙ができた、そう確信し投げの体勢を取った瞬間、上空に無数の星々が浮かび上がる。

 それは瞬く間に赫く煌めきまるで雨のように地上に降り注ぐ、アイザックを狙ったのかはわからない、王国を囲う外壁、煙の上がる屋敷、王城、王国のいたる場所がこの爆撃により木っ端微塵に消し飛ぶ。

 そしてアイザックのいた時計塔もその標的の一つであり、咄嗟の出来事でもありアイザックは退避が間に合わず...。


 ーーーガオォッ!!


 アイザックの視界は真っ白に、感覚もなくただ、宙を舞った。

自分が自覚してたはずのミスを自分の都合で記憶奥底にしまうやつです。

次回投稿日は12/26 18:10

ユナイタル・ドリンク=バァとは次回で決着です


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