38話 最終戦争ユナイタル・ドリンク=バァ(2/7)
サミットワン・クリムゾンレイ
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リチュウとマシュマは姉妹だった。
幼い頃、妹と共に魔力で髪飾りを浮かせて笑い合い、運命の夜で家族を失い、妹を守る魔法を研鑽してきた。
いつかまた2人で笑い合える日が戻るまで、だがドリンク=バァの冷酷な一撃で妹が死んだ。
マシュマは死んだ、その願いは2度と叶わない。
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「リチュウーーーッッ!!!」
「はっ!!」
目の前が赤く光る、そうだ、マシュマはこいつに殺された。私達の幸せをこいつが奪った。
「ぐぁぁぁあああ!!!」
刹那、身体を無理やり動かす、自分が死ねば誰が妹の死に報いる。動け、今すぐ動け、そして反撃をするんだと自分を奮い立たせる。
「ああぁぁぁあああああ!!!」
ーーーーお願い、力を貸して!!
「マシューー」
ガッ
射線に立っていたリチュウの頭を消し飛ばし壁はおろかさらに向こう、そのさらに向こうの壁をいともたやすく貫く。
勢いと共に投げ出された眼鏡は彼女の生涯と共に光線によって両断された。
ーーーギギギギギギギギギッッ!!
「チィ!!」
「うぉっ!?」
「っ...!!」
激しく左右に揺れるドリンク=バァの頭部の動きに合わせてとてつもない速さで動く熱線、甲高い音を撒き散らしながら暴れ回る。触れれば骨など簡単に焼き切ってしまうであろうものに全員が必死に回避する。
熱線の貫通力はとてつもなく、部屋の外にいた「獣」だけでなく城や外にいた「獣」、そして天空までも両断する。
ーーーーギギギギギギギギギッッ!!
両断された壁や天井が崩れ砂埃を上げる、瓦礫の音と柱が倒れる衝突音、砂煙の中熱線を吐き出す光が妖しく、そして眩い光を発している。
「きゃっ!!」
ひび割れた地面に足をとられ転倒するシオン、熱線はシオンを焼き切ろうと迫る。
「シオン!!」
しかしアイザックは背中にかけていた盾を手にシオンの前に立ちその光線を盾で受け止めた、盾は先の戦いで大きく凹んでおり盾というよりは鉄製の鍋蓋のような形状になってしまっている。
ーーージャァアアア!!
「あっづッッ!?」
熱線は凹んだ盾の形状に沿うように軌道を曲げ天井に突き刺さる、それでも熱線は止まる事なく盾を焼き続ける。
次第に高音により盾は熱せられ盾を構えているアイザックの腕すらも焼く。
「アイザック、ベルト外して!!」
「んぁあ!?おう!!」
ついシオンの声に従い盾を固定するベルトを外す。
「ジャァアアアーーーッッッ!!!」
ーーーガァンッッ!!
その瞬間、その盾にシオンの剣の鞘フルスイングが炸裂、盾は光線を様々な方向へ撒き散らしながらドリンク=バァのもとへ飛び...
ーーーズガッ!!
ドリンク=バァの額の紅眼に深々と突き刺さった。
「ギョアアアアァァアアアァァァァアアアアアァァアァアアァアァアァアァァアアアーーーーッッッ!!!!?」
「ぅっ!!」
頭が割れるほどの悲鳴をあげ、紅眼から光がありとあらゆる方向へ飛び壁や天井を切り裂いていく。
「あぶねぇ!!」
「ぐぅ!?」
「...!!」
「アガッガガガガガッッガガガガガガガ....アイザックゥゥゥゥウウウウーーーッッッ!!!」
「ッ!?」
壊れた機械のように高い音を出した瞬間、ドリンク=バァは足の筋肉を隆起させバネのように高く跳ね上がる。
ーーードガァンッッッ!!!
その勢いは止まらず地盤を突き破り、その穴から紅く広がる空を写し出した。
「あいつ...!!」
「やばい!」
ーーーグシャッ!!ドチャッ!
音と衝撃を聞きつけた「獣」が覗き込んでいた。獲物を見つけた「獣」は1人、また1人と頭から飛び込み地面に接触しては赤い飛沫を巻き上げる。
「レーチェ様、天井が空きました!!」
「わかっとる!」
ーーーグシャッ!!
「獣」がただ落ちてくるだけなら問題はない、しかし連続して落ちてくればそこには肉塊の山が出来上がり、次に落ちてくる「獣」を衝撃から守るクッションとなる。
ーーーバシャッ!!
「カァァァァァァッッッ」
「ッ!?」
ーーーザッ!
衝撃から免れた「獣」がミークに襲いかかるが、シオンの一振りでその首が跳ね飛ばされる。
「油断しない!!」
「はい...!!」
「『無作為転移』!!」
「うぉっ!?」
ーーーバシュッ
魔法をかけられた冒険者の体が宙に浮かび、流れ星のように空を一直線に飛んで行った。
「次だッ!!」
「持ち堪えろ!!」
ーーードチャッ!!
ーーードンッ!
この魔法は1人ずつしかかけられない、全員の魔法を完了させるまで「獣」の侵略から持ち堪えるしかない。
「『無作為転移』」
「あっ!」
ーーーバシュッ
「『無作為転移』!」
「よしっ!」
ーーーバシュッ
「『無作為転移』!!」
「キャッ!アイザック君!!」
「先に行ってろミーク!!」
「...はい!待ってます!!」
ーーーバシュッ
「『無作為転移』ッ!!!」
「待って!私を最後に!!」
「順番なんて関係ないだろ!最終的に全員行くんだから!」
「...そうね...アイザック!!」
「なんだよ!!」
「...絶対帰って来なさいよね」
「...あぁ」
ーーーバシュッ
「獣」の波を『魔轟衝』で吹き飛ばしながらミーク、そしてシオンを見送り後はレーチェと自分だけになった。
「...『無作為転移』って自分にもかけれるのか?」
「あぁ、かけれる」
「ならよかった」
ーーーグシャッ!!
「...お前は」
ーーーバキッ!!
「...わかってんだろ」
「...」
「獣」を退け、真上の穴から見える赤き凶星、本来の目的である「肉塊」の問題を解決したとして、アレを放置しては将来的に脅威となるのは確実だ。
「それに...俺はもうダメだ」
ドリンク=バァの一撃を受けた腕、見るのも憚られる程凄惨な状態となっており応急処置はして包帯を巻いているもののその傷から肩にかけて皮膚が変色し黒い血管が浮き出ている。
その症状は「堕ちた獣」と同じもの、アイザックは既に感染していた、それも末期ともいえるレベルだ。
「どうやって切り出そうか考えておったが...気付いてたとはな」
「さすがに気付く、感覚がないから考えないようにしてたけど...ここまで来るとさすがに無視できねぇわ」
「...」
「ミークとシオンにはすまねぇって言っててくれ」
「...」
ーーーブワッ!!
「うおっ!?」
アイザックとレーチェを包むようにドーム状の結界が張り巡らされる、雷を纏っているのか結界に触れた「獣」がバチッ!!という音と焦げ臭い匂いを発して吹き飛んで行く。
「すげぇ...こんな事もできるのか」
「馬鹿弟子ァッッッ!!!」
ーーーバキイィッッ!!!
「うぎゃあああぁぁあ!?」
ーーーバチィィィッッ!!
「おぎゃああぁぁぁぁああああああ!!!??」
突然渾身の右ストレートをくらい、その勢いで結界の内側に激突、体が熱に焼かれ少しでも痛みから逃がれんと地面を転げ回る。
そんなアイザックを抱き止め、顔を埋めるレーチェ。
「アイザック...」
「え?」
「ワシは見とったぞ...ドリンク=バァとの戦いを、遠くからな」
「...」
「ワシは弟子達に魔物から生き残るための術を教えて来た、いつまでたっても師匠にとって弟子は可愛いもんじゃ、死んでほしくないから...魔法や技を教えて来た」
「...」
「なのに...奴らといいお前といい、みんな自分を犠牲にし始めるんじゃ...何故じゃ?どこで間違えるんじゃ?」
「...」
「みんな...わしの弟子はみんな...死んでしまう...ホップ...ナキマ...ターラ...そしてキャメル姉...みんな弱い...弱いから生き残る術を教えて来たのに...なんで」
レーチェの弟子は1人をのぞいて全員が死んだと聞いている、その殆どが自分の身を犠牲にして他人を守る者ばかりだったという。
「...師匠...わからねぇよ」
「...すまん、ワシが不甲斐ないばかりに、お前まで死なせてしまう...」
「でもひとつだけ」
「...?」
「あぁ...師匠は人を見る目があるって事...なんじゃねぇかな」
「...」
「...」
「馬鹿弟子ァッッッ!!!」
ーーードガッ!
「なんでぇ!!??」
「ふざけんな、もうワシは弟子を1人も死なさん、特にお前はな、お前が死んだらワシキャメル妹に本気でぶち殺される」
「ミークそんな強いのッ!?」
「ありゃ1000年に1度の天才じゃ、そしてお前も1000年に一度の」
「て、天才...俺がぁ?」
「いや、阿呆じゃ」
「ぐぉぉぉお....」
「じゃがお前のような阿呆は必要じゃ、感染してようがワシがなんとかしてみせる、ワシは賢王ドゥルセ=デ=レーチェじゃからな」
「師匠...あぁ、じゃあとりあえず」
「今日中にドリンク=バァをぶっ殺す!!」
「そしてみんなで生きて帰る!!」
「やるぞ馬鹿弟子ッッッ!!!」
「押忍ッッッ!!!」
日がまさに地平線に呑まれる刻、この時間をアイザックはよく覚えている。
死にたくなくて、ただ死にたくなくて、ただ走った。一度目は初めての体験にわけもわからず迫る死から逃げた時、二度目は仲間を置いて怪物から逃げた時、だが三度目は逃げない。
ーーーー三度目の正直だ、この野郎。
次回投稿日は12/24 18:10、クリスマスイヴ!
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