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【100話達成ッ!】勇者は感染してました、魔法使えないけど魔王の遺した無限の魔力で抗います ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
2-4章 龍界地底砲塔マナタン:リトルポイント編

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105話 お前になにができるんだ

いよいよ『終末教』ビジュアル全員揃いますね

 薄暗い孤児院の広間。


 かつて子供たちの笑い声で満ちていたはずの場所は、今や異様な静寂に支配されている。

 床には規則正しく並べられた小さな椅子。

 だがそこに座る者はいない。


 孤児院に1人、また1人と集まる。


「『魔王』......遅かった.な」


 無機質な仮面を覆う老兵。

 ーーー『老公』アーシア=フジ


「...ッチ、しくじりやがったか」


 アイザックの敗走に舌打ちをする青年。

 ーーー『追放者』オルゼ=スティングレイ


 そして...


「やっと全員集まるの?いったいどんだけ時間かかってるわけ?俺帝国の端っこでめっちゃ暇してたんだけど、ていうかオルゼお前さ、どのツラ下げてここにきてるわけ?裏切っといて顔出せるとか厚顔無恥もここに極まってるよねー」


「いつもこいつを殴りたく思う」

「....」


 オルゼが悪態をつくほどに饒舌な少年。


挿絵(By みてみん)


 ーーー『魔獣違い(ビーストテイマー)』ファルカ=キルネクス


「……揃ったわね!」


 その奥から、柔らかな声が差し込んだ。

 振り向くまでもなく、全員がその主を理解する。

 エウロペは穏やかな微笑みを浮かべたまま、静かに歩み寄ってきた。


「ちょうどいい頃合いかしら!対帝国終末戦争、“最終調整”に入るわ!」


 場の空気がわずかに引き締まる。

 ファルカだけが気の抜けた調子で肩をすくめた。


「やっと?長かったんだけど俺」


「ええ、待たせたわね!」


 エウロペは微笑みを崩さないまま、視線をファルカへと向ける。


「例のもの、持ってきてくれた?」


 問われたファルカは、にやりと笑って懐に手を入れた。


「当然でしょ、回収したの俺だし」


 そう言って懐から出した赤いガラス玉。

 これはかつてアイザック達が討伐したドリンク=バァが装備していたものだ、これのおかげでドリンク=バァは異形となって復活した。


「しかし奇跡の産物だよ、敵であるレーチェのおかげでこうやって小型化に成功したんから」


 取り出されたそれを見て、オルゼが小さく舌打ちする。

 そしてただ一言、言い放ったのだ。


「……やめだ」


 小さな声だったがそれを聞いたファルカが眉をひそめる。


「は?何が?」


 オルゼはバキバキと音の鳴る首を回し、面倒くさそうに息を吐く。


「降りる」


 あまりにもあっさりとした一言、一瞬その場の空気が凍りついた。


「降りる?はっ、とうとう帝国と戦うのが怖くなったのかな?それとも獣冠祭でボコボコにやられて全力が出さないから?どちらにせよみじめだねー」


 ファルカの声に苛立ちが混じるが、オルゼはそれに取り合わない。


「気が変わっただけだ」


 短く言い切るとそのまま背を向ける。

 誰も止めない、止めようとする気配すらない。扉に手をかけたところで、エウロペの声が響く。


「また寄ってね〜!」


「死ね」


 そしてオルゼは何も言わず孤児院を去っていった、その背中を見てファルカは不服そうに眉を顰めた。


「なぁエウロペ様、なんでアイツにはそんな甘いの?もうちょっと厳しくした方がいいよ?母親名乗るんならもう少し慎重な対応がーーー」


「ファルカ君」


 しかしその先はエウロペが遮ったのだ。


「大丈夫よ、オルゼ君はとっても強いから、お母さんがいなくても自分でやっていけるわよ」


「はっ、なんだそれ、意味わからん」


 ファルカが肩をすくめる。


「いいのよ、分からなくて」


 笑顔のエウロペの手の中で、赤いガラス玉がかすかに脈打つ。

 まるで、まだ“生きている”かのように。

 なにかの生誕を望んでいるかのように。


 ...


 ..


 .


「そんなはずないだろ....」


 そして場所は移り、界帝の広間にて、アイザックは狼狽の声を上げる。


「どういうことですか?」


 シオンも同様だ、自然を取り繕っているが声が震えている。

 そんな2人を前にミカードは冷静に、そして冷酷を告げた。


「言ったとおりだよ、シオン嬢は我々や戦士たちと共に防衛に参加してもらうーーーだが


 ーーーアイザック、()()()()()だ」


ミカードの言葉が告げられた瞬間、アイザックの眉がわずかに歪んだ。


「しばらくストリートファイトおよび、依頼の受注を禁ずる」


「……なんでだよ」

「どうしてですか?」


 低く吐き捨てる、続くようにシオンが声を荒げた。


「納得いきません、どうして謹慎なんですか?」


「簡単な話()()()()()()()、かつての功績から帝国の名において守ってはやるが...余計な真似はするなということだ」


 玉座の前に立つミカードは、微動だにしない。ただ腕を組んだまま冷たくアイザックを見下ろしている。


「待て...待ってくれよ、」


 数歩、前に出る。

 靴底が石床を擦る音がやけに、そして脳内に響いた。

 それだけではない、『謹慎』、それは前線どころか、いまのアイザックがしなくてはならない、『ミークの救出』、それすら叶わないと言う事だ。


「俺は戦える、刻印がなくても――」


 ミカードの指がわずかに動いた。


「ーーーッ!!」


 ーーーガンッッ!!!


 次の瞬間には、アイザックの身体が床に叩きつけられていた。

 背中から落ちた。石の硬さがそのまま骨に響き、肺の空気が一気に押し出される。


「がっ……!」


 息が入らない。

 喉がひゅう、と細く鳴るだけで、空気が戻ってこない。


「え!?」


 遅れてシオンが反応するも時すでに遅く、アイザック激しくバウンドし数メートルは吹き飛ばされていた。

 床には擦れた跡が残り、肩口の服が破けている。


 ミカードは手拭いで汚れを落とし、それを放りなげアイザックに向けて構えをとる。


「立て」


 短い命令。

 アイザックは歯を食いしばり、手を床につく。指先にざらついた大理石のかけらの感触。

 腕に力を込める。肘が震える。


「ぐ...ぁぁぁああ!!」


 それでも、なんとか上体を起こす。

 だが、膝に力が入らない。


「ぐはっっ!」


 立とうとした瞬間、足が抜けるように崩れ、再び床に膝をついた。


「……くそ……!」


 拳で床を叩く。乾いた音が響いたが、それだけだった。

 そのとき、頭の奥に残っていた感覚が蘇る。

 刻印があったときの感触、血の流れが速くなり、筋肉が軽くなるあの状態。


 あれがあれば、この程度で止まるはずがない。


「……魔王刻印が、あれば……」


 小さく呟いたつもりだった。


「刻印があれば、か」


 すぐに返ってきた。

 顔を上げると、ミカードがこちらを見ていた。先ほどと同じ位置のまま、視線だけが向けられている。


「それがあれば戦える、か」


 ゆっくりと言葉を区切る。

 アイザックは答えようにも否定することができなかった。


「ならば結論は出ている」


 ミカードは腕を解き、一歩だけ前に出る。

 たったそれだけの動きなのに、距離が一気に詰まったようにアイザックの眼前に迫る。

 

 そして言い放った。




「力にすがるだけの弱者が、力を持つ資格などない。

 ーーーさっさと消えろ」


「ッ!!」


 その声音には、怒りも嘲りもなかった。

 ただ冷酷に、そして静かに事実を並べているだけだ。

 アイザックの視線が下がる。握っていた拳が緩み、指先がわずかに開いた。


 何も言い返せない。


 さっきの一撃で、自分がどこまで通用しないか理解してしまったからだ。

 シオンの方を見る、彼女は勝敗よりもアイザックを心配しているようだった、自分の事から考えないといけないのに。


「この男は前線には出せん」


 ミカードが後ろに控える『機構星騎士(ステラマキナ)』に視線を送る。


「拘束しろ。勝手に動かれては困る」


「待て……!」


 声を上げるが、遅かった。


 両側から兵が踏み込み、腕を掴まれる。

 関節を逆に取られ、強引に引き上げられる。


「離せ……まだやれる……!」


 力を込めるが、腕にほとんど力が入らない。抵抗は簡単に押さえ込まれた。


 次の瞬間、首筋に固い感触が当たる。


 ――鈍い衝撃。


 視界が横に流れた。

 膝が抜け、身体が崩れる。


「アイザックッ!!」


 シオンの声が響く中床に倒れ込む。

 その直前、ぼやけた視界の中でミカードの姿が映る。

 表情は変わらない、最初から最後まで一度も、まるで鉄の仮面でも相手しているかのような。


「ーーー。」



 そこで、意識が途切れた。

次回投稿は5/13 7:10!!


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