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第16話 称号なくとも勇者の素質は変わらない

スランプ入りました、もしかしたらこの話を消すかもしれません。

 勇者とはなんなのか。

 それは人によるだろうがこの世界では国に任命されるものとなっている。

 そうなるとそう、解雇されることもあるわけで。

 

 

 

 それは村長の娘であるミーアの誕生日会をしている最中、店の一部を借りていたので他の客もいるのだが、明らかに客ではない様子の奴らがいた。

 

「ここに、勇者リヒトがいると聞いたのだが、知っているものはおるか‼︎」

 

 高そうな衣服に身を包む、その集団の先頭にいたチョビひげが声を張り上げた。

 とりあえず呼ばれたので出て行くことにした。

 

「はーい、勇者リヒトなら「お前が知っておるのか、なら案内せい」ご自身じゃい」

 

 はて? みたいに頭かしげんな、顔知ってて来てるんじゃないんかい。

 なんで手に持ってる紙と自分を見比べてるんだ、ちょっと見せてみろ。

 

「誰だこれ?」

 

 報告書らしき紙を覗くと、そこには自分の影も形もない美青年が描かれていた。

 

「イケメンだな」

「でもリヒトとは掠るどころか大外れだろ」

「ここまで来るとただの別人だな」

 

 こっそり覗いていた村の連中も好き勝手に言い出す、いや自分もそっくりだろとか言いたいけどこれは流石に…………。

 

「リヒトを探しに来たって、これ誰?」

 

 一緒の覗いていた魔王も頭を傾げてる、いや魔王がこんなとこにいんな。隠れていろ。

 

「む、いないのか。しかしこの報告書はルーシー様の確認済み故、これで探すしかないのだ」

 

 そういって辺りを見渡すも該当する人間はいない、なんせ存在しないのだから。

 

「仕方ない、確認をしに戻るが一個だけ報告がある」

 

 諦めたのか紙を丸めて部下に渡すチョビひげ。勇者宛というので自分への連絡だ、ちゃんと聞いておこう。

 未だに胡散臭いという目でありながらもこちらを見ると、

 

「勇者リヒトよ、お主の勇者の称号を剥奪する」

「………………はい?」

 

 まさかの予想外の伝達だ。

 一緒にいたみんなもポカンとしている。

 

「勇者としての役目は魔王を討伐して世界平和を取り戻すためのもの、それが終わったのなら勇者としての存在は必要ない。故に役目を終えたと判断し勇者としての称号を剥奪させてもらう。聞いていた皆もそう心がけるように」

「おいおい、そこの方よ。なんでまた急にそんなことを? 別に勇者が勇者であって、誰かが困ることはなかろうて」

 

 誰もがポカンとしている中、一人動いたのは村長。それはみんなが思っていることでもある。

 

「近頃勇者と名乗り様々なところで事件や騒ぎを起こす輩がいるらしく、そのため勇者の称号を剥奪することで騒ぎを抑えたいとのことだ」

 

…………うわぁ、心当たりある。あるから脇腹突いたり横目で見てコッソリ笑うのやめろ。

 

「ははは、さすが勇者だ」

 

 魔王は普通に笑うのやめろ。

 

「要するにだ、勇者本人もその騒ぎの中にはいるのだろうが、真偽も不明、確認するための処理もあり迷惑なのでやめろと国からのお達しだ。勇者として好き勝手やってくれたのだ、役目も終えたので大人しくしろということだな」

 

 ぐうの音も出ないほどの正論。確かに勇者としてアレコレをやってきたが、後始末だったりする人からすると迷惑だったかもしれないので反省。

 

「大人しくしておきます」

「お前は誰だ、いやお前がリヒト……なのか」

 

 そんなつもりはなかったのに何故かギャグになってしまった。

 一度は認めてもらったはずなのに、すぐに忘れられてしまう。これも勇者の責任なのか、いやたったいまクビになったんだわ。

 

「ともかく、我らは帰るが、もし勇者を見つけても称号はないものとして扱え」

 

 マントを翻し振り返るチョビひげ。だけどそのマントの先に、

 

「「「あ」」」

 

 誰が声を出したのかマントの先には大きなケーキ。みんなで食べようと出されたのだが、チョビひげが来たので横に置かれたミーアの誕生日ケーキだ。

 ケーキは見た目よりも重い、だかそれは下へ向かう重力のおかげであり、横への力は弱い。

 仮にそう、マントみたいな軽いものでも引っ掛ければ落ちてしまう。

 

「あっ」

 

 身体は動いたのだが、あいにくケーキを優しく受け止める技量なんてものは自分にはない。

 指先に当たって上に飛んでいくケーキ、その先にはチョビひげ。

 

「…………」

 

 分かってる。ただの事故だってことは分かってる。分かってるからこそ、ダメだ状況だと分かっているからこそ笑えてしまうのだ。

 泣きそうな顔をしていた子供達ですら口を膨らませている始末。

 あと一手いるかな。

 

「…………貴様」

「いやいや、ワザとじゃないんですよ、すいません」

 

 口だけ謝りながら口元がひくついていくのが分かる。

 

「すぐにとりますんで」

「おい? 何をする? やめろ!?」

 

 ケーキを拭うふりをして頭に乗っているブツを振り払う。

 思わず目を見張る付き添いの視線の先にはツルツルな天辺。

 

「「「「あっはっはっはっはっはっはっは」」」」

 

 爆笑とはみんなで笑うこと。これ以上に当てはまる場面もそうないだろう。

 村長をはじめ、勇者の称号うんぬんを聞いていたみんなの顔が曇っているのが分かった。

 自分としては構わないのだが、それはそれとしてせっかくの誕生日会で楽しくないのは悲しいもんだ。

 

「お、綺麗になりましたね。伝言は勇者へ伝えておきますので今日はこの辺で。ケーキはサービスしておきますよ」

 

 我ながら白々しいにも程があるが、にこやかに手を振る。

 

「き、貴様名前は!!」

「リヒトです」

「くっ、あの勇者と同じ名前か、覚えたぞ!! 貴族に手を出してタダで済むと思うなよ!!」

 

 綺麗に負け犬の遠吠えを再現して帰っていった。

 

「いいのかい勇者? 勇者としての称号、権威とかは無くなったんだろ?」

「小さい子供の誕生日会とどっちが大切かって話だよ」

 

 というかホントに勇者への伝言役としか思ってなかったのかあのチョビひげ。

 

「しかし不思議だね、勇者なんてなってしまえば生涯そのままじゃないのかい?」

「さぁな、さっき言ってたことが本当なのか、それとも政治的にめんどくさい存在になったのか。理由ならいくらでも思いつくが」

 

 目の前の存在?

 バレたら称号剥奪どころじゃ済まないだろ。とくにルーシーあたりに死ぬまで説教される可能性もある。

 

「ま、今日はせっかくの祝い事だ。あんなこと忘れて楽しもう」

 

 いつの間にやら二個目のケーキも出てきて、みんなさっきまでのチョビひげなんて記憶の彼方だ。

 それでいい。

 楽しいことは楽しいこと、めんどくさいことは後回しでいい。

 つらい苦しい記憶よりもいま一瞬の楽しいを味わおうじゃないか。

 

「それが勇者なのかい?」

「さぁな、自分がそう思ってるだけだよ。でも勇者だし、勇者の考えってことになんのかな」

「クビになったけどね」

「忘れとけ」

 

 こんな他愛無い時間も大切だ。振り返った時に思い出すのはこんな時、くだらないと思える記憶だ。

 魔王の魔法で盛り上がったり、ほどほどの剣術を魅せたり、誕生日会としてはいい思い出になってくれただろう。

 だからそう、みんなチョビひげのことなど忘れていた。

 当の本人を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「リヒトよ、貴様を逮捕する」

 

 前回と同じパターンじゃねぇか。

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