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第12話 勝ちは譲れど人のカチは揺るがない

他の方なら全然いいんですよ、待つんですよ。でも自分のページで見た時の破壊力はヤバいです


『この小説は数ヶ月更新されていません』

 流石ミディア様が認めた相手だ。

 目の前で苦々しい顔で悩んでいる青年の評価だ。

 初めて見た時はただの無礼な庶民かと思いきや、剣の腕は1流に届かずとも相手を見極める観察眼、いや経験則か?

 これほどまでにこの私ツルギ・センロッドの剣術を躱されたのは初めての経験だ。

 貴族であれば負けも勝ちも潔く受け入れるもの。

 だというのにこの青年、リヒトは実力差を分かった上で勝ちを諦めていない。

 いや負けるのを分かった上で足掻いている。

 1手間違えるだけでそこから崩してくるだろう、緊張感。

 今までにない強敵を相手に目的を忘れてしまいそうになる。

 贅沢な悩みで口元が緩むみそうのなるのを引き締めていると、リヒトが手を挙げてミディア様に声をかけた。


「ミディア確認!! 剣術のみだな!?」

「その通りだ!!」

「ならその範囲内ならセーフでいいな!!」

「もちろんだ!!」


 事前に決めていた条件を確認すると、大きく息を吐いて肩を落とす。

 諦め? いやあげた顔を見れば分かる。

 

 あれは覚悟を決めた顔だ。


 塞いだ時でも少しだけしか抜かなかった剣を、今度は鞘を捨てて構えるの見て引き締めていた口元が緩んでしまう。

 この出会いを用意してくれたミディア様に感謝を。

 そして魅せてくれリヒト。

 王国の敵を貫く役目を担うセンロッド家へ、勇者というものを。






 剣術縛りで自分より剣の上手い相手との勝負、どーしたらいいでしょうか。

 答え、無理です。


「はっ!!」


 でも剣で挑んでみます。

 さてアホだと思った方、聞いてください。

 こんな勝負用意させる方がアホなんだよ!!

 なんで呼ばれたから来たのにこんな勝負してんだよ!!


「オラッ!!」


 そんな恨みも込めて剣を振り被る。

 もちろん当たるはずもないし、簡単に躱されて反撃される。

 それを敢えて剣で受けることで防ぎ、そのまま攻撃後の隙をつこうとするが、


「……何で避けれるんだよ」

「そこまで誘われると何かあるのは誰でも分かる」

「そうかい!!」


 しかし諦めることなく剣を振り続ける。

 振って防いで躱して避けて。

 ただ流石に無傷とは言えず、身体のいろんなところに傷ができたり、服も少し破れている。

 ……これ後で代わりのやつもらえるかな?

 そんなことを考えてるとツルギが声をかけてきた。


「リヒト、お前の強さは十分に理解した」

「それはどーも、ならこの勝負も終わりにしない? 良い勝負ができましたーって言えば見てる人たちも納得するだろうし」

「ふむ、ただの余興ならそれもありだが」


 話の終わりの一呼吸もなく攻めてくるとかおかしいだろ!!


「貴族が不意打ちっていいのか!?」

「隙があるようには見えなかったが」

「あぁそうかい!!」


 ほんとシンプルに強いやつって厄介だよ!!

 そんな愚痴を吐いても何も変わらず、いすれジリ貧になるのは目に見えてる。

 そろそろ限界、ではないが埒が空かないし勝負に出るか。


「いいぞリヒト、かかってこい!! センロッド家の全てを掛けて応えよう!!」

「そんなもんは要らねぇ!!」


 お互いの剣がぶつかった時、甲高い音と金属のカケラが宙を舞った。







 日も暮れたオーディトリアムの屋敷は眩しく輝いており、屋敷の中ではたくさんの貴族が食事に歓談を楽しんでいる。

 見慣れたものだが、見慣れすぎても飽きもくる。

 自室に戻り、ソファーに寝転がる。そういえばこのソファーを見たリヒトはベッドサイズだとか言っていたが、小さめのベッドを使っているのだろうか。

 貴族の仕事はつまらないが久しぶりにリヒトと出会えて楽しかった。

 やはり気まぐれに出た旅だが、あれ以上のものと出会えることはないだろう。

 近くの机に置いていた旅の写真を眺めながら顔が綻ぶ。


「ミディア様、失礼します」

「いいぞー」


 部屋に入ってきたのは……えーっと誰だっけ、昼間にリヒトと決闘していた、


「ツルギ・センロッドでございます、ミディア様」

「あーうんそうだっけ? どうかした? ご飯とかなら大広間にあるし、あぁ依頼した決闘の報酬? ならジイに言っておいて」


 渡す準備もできてるだろうし。


「報酬に関しては問題ありません、リヒトと剣を交えたのは何にも変え難い至福の時間に感謝を伝えに」


 満足そうなツー、ソー、ケンだっけ?

 旅を終えてリヒトの腕が鈍っていないかの確認に呼んだけどちょうど良い相手だったみたいだ。


「願わくば次は全力の相手をしてみたいものです」

「しょうがないね、リヒトが全力なら花園全部を壊すかも知れなかったし」


 それだとジイの仕事が増えちゃうからやめさせたけど。

 かなりキツめの条件を出したというのにちゃんと穴をついて解決したのはリヒトらしく、とても楽しめた。

 ルーシーは知識、カレンは魔法を教えたとい聞いて、本来必要のなかった剣術をリヒトに教えて師匠という立場に滑り込んだ。

 リヒトは剣を扱えないと思ってるみたいだが、別に使えなくて問題はないしせいぜい1000の力に1を加える程度のもの。

 それでも旅の仲間としてミディアの何かをリヒトに刻みたかった。

 結果として師匠の言葉としてなら、ある程度いうことを聞いてくれるようになったのはありがたい。

 今日のような無茶も聞き入れてくれた。


「こちらの剣を同じ箇所で受けることで破損させ、動揺したその瞬間を狙うとは思いませんでした」

「剣が壊れてしまったから引き分けで終わりにするのはリヒトらしいね」


 代わりの剣を用意するといった案もあったが、ミディアも満足したので引き分けを認めた。


「あのまま続けても良かったのですが「それはダメだよ」…………失礼しました、よろしければ理由を聞いてもいかがでしょうか」


 最後、壊れた剣をそのまま喉元に突きつけられたソードはかろうじてリヒトの顔の横へ剣を当てていた。

 致命傷でなくともそれなりの傷を負ってその後はリヒトが逆転しただろう。


「でもリヒトならしないね」

「何故でしょうか。決闘とは、たとえ庶民と貴族の関係であろうと遺恨は一切無く結果が全て。勝てばあの虫を手に入れることができましたが」

「リヒトにそんな気遣いなんかない、ルールなんて穴をついてひっくり返すのが基本、明言してないのが悪い。そう言い張るのがリヒトだ、けどね」


  部屋の片隅に置いてある虫籠。リヒトがかなり欲しがっていたが受け取らないのでこの屋敷で飼うことにした。ジイにお世話を任せたらとても喜んでいた。


「約束は必ず守るんだよ」


 ミディアの資産も権威も、人を集めるスキルすらも使えるというのに、約束だからの一言で頼ることなく自力で乗り越えていく姿。

 人を惹きつけるスキルやカリスマも持っていないのにブレードのように心を捉えていく。

 オーディトリアムの家、ミディアという人間の力は王にも匹敵する。

 全てを集めるその力を利用しようと近づく人間は後を経たない。

 だというのに何も知らずに出会い、知った上で何も変わらず貴族を相手に無礼とも取れるメンバーとの旅は本当に良かった。


「ね、リヒト」


 昔から何もしなくても手に入る人生。欲しいものなんてなかったけど、旅に出て初めて見つけた。


「欲しいなー、リヒト。どうすれば手に入るのかな」


 ルーシーとカレンも、少しだけ欲しいけど1番はリヒトだね。

 決闘で勝っても金や名誉でも買えない、買えたらそれはリヒトじゃない。

 手元におきたいけど手元に置けばリヒトのらしさがなくなる。

 悩ましいところだ、でもそんなところも愛おしい。


「また使えそうなら呼ぶね」

「はっ、ミディア様のご要望なら何でも伺います。では失礼します」


 国の偉い貴族でもあの態度、ミディアのスキル収束は人の心すらも集める。

 差し出させられるのが当然な人生で自ら欲しくて手を伸ばす存在。

 些細なオマケもいて悩ましい限りだ。

 

「地元に帰ると言っていたが次はいつ会えるかなリヒト」


 願わくばお互いを縛りつけ合うことができたらいいんだけどリヒトなら抜け出すだろうね。

 そうなると縛りつけられるのはミディアだけだが、それもいいかも知れない。

カード1枚に数万とかわけ分かりませんよね、って笑ってたら女の子になったドラゴン引き当ててガクブルしてます。

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