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第11話 頭を捻れど勝負の行方は掴めない

貴族を登場させるにあたり色々調べたのですが、胃カメラお嬢様の印象が強すぎる。

 色とりどりの花が咲き並ぶ花園。

 その中に佇む1人の男。

 花園にはふさわしくない剣を携えながらも絵画のような姿、見ているものは思わず息を呑み、感嘆の息を漏らす。


「なんと美しい姿であります」

「流石王国の護衛を任されているセンロッド家の主でソワール」

「まさかミディア様のお茶会でツルギ様の剣を見られるとは、これも普段の行いが良いからですわー!!」


 離れた場所で眺める貴族もツルギへの感想とこれから見られる決闘への期待に盛り上がっている。


「なのに相手の自分へは何もなく」

「よろしければ煌びやかなお召し物をご用意いたしましょうか」

「んーいや、動きやすいこの格好のままでいいや。ありがとジイさん」


 気を遣って声をかけてくれたミディアの執事であるジイさん。

 なんだろうい、これまでの人生で一番の癒しかもしれない。


「何かあれば申し付けください」

「じゃあこの決闘を無しに」

「それはミディア様にご相談ください、私にはその権限がございません」


 だよね!! 何言ってもいいけど聞くとは言ってないもんね!!


「ほらリヒト、模擬刀だ。刃は潰してあるが斬られると痛いぞ」

「痛い目に遭いそうなのはお前のせいだろ!!」


 呑気に模擬刀を差し出してきてアドバイスもしてきたが、そもそもミディアが断り方を教えてくれたらそれで終わってた話。

 だがもうここまできて逃げるのも難しいだろう。


「準備はいいかリヒト」


 まだどうにか逃げることはできないかと悩んでいるとツルギが声をかけてきた。


「よくないからもう100年ぐらい待っててもらっても」

「いつでも大丈夫だそうだ」

「何勝手に答えてんだテメー」


 何も大丈夫じゃねぇよ。


「ルールはシンプルにどちらかが参ったというか、戦闘不能になったら負け、意図的に周りに被害を広げてもだ」


 それなら開始と同時に参ったで終わるか? いや認めてもらえるか怪しいな、もしミディアみたいにボードゲームの途中、金で追加の番を買おうとしたら負ける未来しかない。


「それともう1つ、決闘とは敗者から勝者に差し上げるのが決まりだ」

「何が欲しいってんだよ、こちとら食べかけのお菓子くらいしかないんだが」

「勝ったのなら黄金オニカブトを差し上げよう」

「よっしやるぞ」


 貴族から決闘を挑まれて断る奴なんていねぇよ。逃げる? そんな不敬は奴は死刑だな。


「なるほど、やる気になってくれたようで良かった」

「当たり前だろ、そんな景品用意されてやる気にならない奴なんていねぇよ」


 不適な笑みを浮かべて離れていくツルギ。ただ向こう側に行くだけなのに何故か絵になる、まるで自分みたいだ。


「そういえばリヒト、ミディアからも条件があってだな」


 普段なら絶対に耳に入れることもしない不安な言葉だが、今の自分には黄金オニカブトが手に入るというのだ。


「いいぞ、勝ったら菓子でもくれるのか?」

「それくらいならいくらでもやろう、ミディアが審判をするが公平に判断するのと」

「お前が公平なんて言葉使うな」


 買収の常習犯が何言ってんだ。

 こっちが白い目で見てるのに変わらない笑顔のまま、


「師匠からの条件だ。スキル、小細工は抜き、剣術のみで戦え」


 とんでもない条件をつけられた。


「負けたらミディアはあちらのものになるのでよろしく」

「…………は?」


 確かに負けたら相手に何かあげるって言ってたけど、は? え、ツルギはミディアが欲しいのか?

 いやそれよりも、


「では、ミディア・オーディトリアムが審判を務め、両者の決闘を見届ける」


 困惑したままミディアは両者の間に立ち、決闘の口上を述べる。


「では、はじめ」


 期待と興奮に包まれた花園の中、貴族と庶民の決闘が始まった。




 実は、と言うほどでもないが、自分ことリヒトは剣の扱いが下手である。

 勇者とは剣を使うものというイメージがあるため旅の始まりから剣を持っていたが、どうも相性が悪く、焚き火用の薪を切ったり、消毒して食材を切る方に使っていることが多かった。

 戦闘に関しては木の棒を使っている方がしっくりくるほど。

 ルーシーもカレンも剣術は身につけていないため、デカいナイフとなっていた。

 転機はミディアの加入。

 剣のみならず、武芸全般を身につけているミディアに師事されることで、ようやく剣を剣として扱えるようになった。

 ただそれでも魔法よりは適性がなかったらしく、街のゴロツキ程度ならともかく騎士団長とか熟練の剣士と呼ばれるくらいの相手よりは確実に劣る。

 魔法やら地形を生かした小細工込みなら負けることはないと言い切れるが、武道の試合では師範クラスが相手だと勝てない。

 そして今回の相手であるツルギだが、全員が見惚れる剣の抜刀、からの流れるような踏み込みに振り下ろし。

 見た目の美しさではなく精錬された美しさから分かるよう、人に教えることだできるレベルの強者。

 決闘というフィールドに仮にも師匠であるミディアからの剣術縛りという条件。

 勝てる可能性はゼロでしかない。


「どうしたリヒト逃げてばかりでは勝てないぞ」

「うるへー!! こちとら剣は苦手なんだこのヤロー!!」


 決闘が始まった瞬間に負けが濃厚だと分かった瞬間、逃げに専念することにした。

 下手に勝ちに行くと足元を掬われる。

 だが最初から逃げに徹していれば負けることはない。

 なのだが、


「全く、これほど剣が当たらないのは人生で初めてだ。はしたないが心が躍っているのが分かる」


 笑顔で次々と剣を振り、差し込んでくるツルギ。大抵の相手なら技と技の間に隙間が生まれるというのに、流れるように次から次へと繋がっており息をつく暇もない。


「なら満足して決闘終わりませんかねぇ!!」

「練習試合ならそれでも構わなかったが、決闘なのでな。最後までやらせてもらうぞ」


 さっきよりスピードが上がり始めたな!!

 躱して交わして躱して交わして逃げ続ける。

 これが野良の戦闘なら入って逃げ出すか、適当な道具を使ってスキを作るんだが、それだと負けになる。

 いやルール的には問題ないかもしれないがミディアなら笑顔で反則負けと判断するだろう。

 それはなんか悔しいので嫌だ!!

 後なんか「それほどまでにミディアが誰かのものになるのが嫌だったのか」とか抜かしやがるのでそれもムカつく!!

 想像上してるだけだけど!!

 あと黄金オニカブト欲しい!!


「考え事か? ちゃんとこちらを見てもらわないとな」

「うえっ!?」


 振り抜くタイミングなのに1泊空けてフェイント!!

 こっちが分かり始めた瞬間に入れるとか性格悪いなコイツ!!


「ほう、見事に防いだな。だが当てたぞ」


 流石に避け切ることはできず、渡された模擬刀で防いだ。

 だが、そのまま吹き飛ばされ2人の間に剣では届かない開く。


「ここまで吹っ飛ばすとか力強すぎだろ」

「堪えず自ら飛んだからだろう?」


 しかもバレてーら。

 迂闊に踏み入れてこないのは警戒なのか、楽しんでるのか。

 どっちもだろうなぁ、これどうやっても無理だぞ。

 強いだけで警戒しないとか、警戒はするけど弱いとかならどうにかなるけど、強くて警戒心もあるって普通に強いじゃねぇか貴族。

 ミディアも笑ってるし、この展開絶対分かってたろ。

 勝つのは難しい。

 負けるのは悔しい。

 



 …………手詰まりか?

ゲームでもリアルでも「あ、詰んだわ」ってなった瞬間に世界が滅んでもいいやーってなりますよね?

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