第10話 口八丁でも手八丁には敵わない
貴族貴族言いすぎてゲシュタルト崩壊してました。
ミディアの突拍子もない発言でお茶会が荒れた。
かなり広い(ミディア曰く普通の)花園でのお茶会であったのに、何故か参加していたほとんどの人がこちらに注目していたらしく、ミディアの言葉で様々な憶測が飛んだ。
実は秘蔵の跡継ぎを育てており、このお茶会自体がその発表の広場だった、などなど。
時折甲高い悲鳴も上がっていたが、誰かが怪我したというわけではないので放っておく。
「き、貴様何者だ!! ミディア様の親類、いやそのようなことは聞いたことがない、まさか」
「いやちょっと待ってくれ頼む、自分も知らないしこいつが勝手に言っただけで」
黄金オニカブトを持って来てくれたこの人とは仲良くしたいのに荒ぶっておられる。その原因であるヤツはニコニコと満足そうに笑っているのがすごくムカつく。
とりあえず誤解は解こうと宥めながら声をかけたのだが、
「何を言っているのだ、何度も夜通しこれからのことについて語ったではないか」
「そういう関係なのか貴様ぁ!!」
「そりゃ旅に出た時は次の予定を話したりしてたけどな!!」
肩に手を置いてにこやかにさらなる燃料を追加したせいで周りの声と温度がさらに上がった。
理由を話しても興奮しすぎて誰も耳に入っていない。
やりきれない思いをそのままにミディアに叫ぶ。
「ていうかお前はほとんど寝てたろ!!」
真っ先に寝るのはミディアだった。
最初の頃は何度か起こそうとしたけど襲撃でもない限り起きないので諦めた。
ただ、旅の予定は基本ルーシーが考えてたのは黙っておく。自分もカレンも相槌を打つ係だった。
「ふふ、こちらは眠いというのによく無理やり起こされていたな」
「自分から言い出したクセに寝るからな!!」
常にルーシーに頼るのも良くない、今夜はミディアに任せたまえと意気込んでその1分後には寝ている姿。
寝言で返事をするミディアをカレンが頑張って起こそうとしたのは逆に面白かったが。
「おい」
「ん、あ、置いてけぼりですいません」
いつの間にか冷静になってる貴族さん、というかいい加減に名前を聞いておきたい。
「ツルギ・センロッドだ、貴様の名前もしかするとリヒトか?」
「あ、はいそうです」
そういや自己紹介してなかった。
今更な気もするけど挨拶は大事。
「どーも初めまして、このアホの保護者の1人、リヒトです。黄金オニカブトありがとうございます」
「いや、やらんぞ」
「チッ」
どさくさに紛れて貰おうかと思ってが見抜かれたか。なかなかやるな。
「貴族相手に舌打ちとは無礼だな、首打ちにするぞ」
「横暴すぎだろ!?」
「貴族ジョークだ、貴族では鉄板のネタだぞ」
「目の前にいるの庶民なんだわ」
貴族こえーよ。笑えないしせいぜいが苦笑いしかもらえねーよ。
「リヒト、ミディア様が旅に同行したという勇者と同じ名前、その不敬とも取れるやり取りさては貴様……」
うーん、あんま目立ってもいいことないんだが、しょうがないよなーついつい正体がバレるのも勇者の宿命というか有名税というか。
諦めて正体をバラそうとすると納得した顔と目が合った。
「そう、実は俺の正体は……」
「ミディア様に近づく勇者の偽物か!!」
「ちげぇよ!!」
本物だよ!! またしても貴族ジョークか!?
いやその顔は確信を持っている顔だ。普段から勇者だとバレないように勇者オーラを隠していたがやっぱ隠さないほうがいいか。
「これで本物だと分か「どうした腹でも痛いのか」
勇者っぽい威厳を出そうとした結果がこれか。どうやら遺族には伝わらないらしい。
「ミディア!! お前から言ってくれ!!」
「む、リヒトはリヒトだぞ。それ以外あるまい」
いいセリフだ!! でも今じゃない!!
しかも格好つけようとしたわけでもなく、サラリと本心を言ってるあたり怒りづらい!!
でもこれで誤解が解けるわけでもないのでそうしたものか。
「……なるほど、勇者でなくとも付き合いの長い相手なのか」
おっと、誤解は解け、解けてないけどいい感じに着地してくれたか?
なら安心してお茶を楽しむか。
ついでに黄金オニカブトももらえないか考えとくか。
さっきよりも落ち着いたツルギも席についてお茶を飲んでいる。
ミディアほどじゃなくても様になるのは流石貴族と言ったところか。
「ではリヒト、決闘して貰おう」
「なんでだよっ!!」
また貴族ジョークか!? 平民には伝わらないんだよ!!
飲んでたお茶を吹き出して慌てて立ち上がる。
だというのに変わらずお茶を飲み続けるツルギ、というかめっちゃお茶飲んでるけど喉乾いてるのか?
「ミディア様と仲が良いのは分かった。だがらと言って納得するかは別問題。なので試させてもらおう」
「こっちも決闘には納得いってないんですがそれは」
受けるとも言ってないんですが。
「急な話でそっちも困惑しているだろう、申し訳ない」
「ちゃんと受けないって返事を聞いてくれるなら問題はないが」
日を改めてとかそんな話か? どっちしろ受けるつもりはないが。
「安心しろ、分かりやすいルールを用意しよう」
「そこは聞いてねぇ」
あ、話聞いてもらえないやつですね。
旅の途中にもたくさんいたが、というかそんな奴しかいなかった気もする、諦めて話を聞くかそれとも、
「ミディア、逃げるから後よろしく」
適材適所、旅で学んだことだ。
ミディアに任せるのも不安だが、貴族のことは貴族に任せるのが良いだろう。
「む、帰るのか? 決闘は受けて帰るのだぞ」
やっぱダメそう。
「逃げるって言ってんだろ聞こえてんのかアホ貴族」
「ちゃんと土産は用意しておく、安心していいぞ!!」
おっと仲間にも話を聞かない奴が…………そんな奴しかいなかったか。
うーん、こうなると自力で逃げるしかないか、いや人目が多いし流石に1人だと難しいな。
やっぱりミディアの手伝いがほしいんだが。
「いや待て、ここで考えを逆転させるんだ」
「お菓子のおかわりは入りますかな」
「ジイさんありがとう」
頭を使うのに甘いものは必要だからな。美味い。
そして逆転の発想、決闘から逃げるのではなく決闘そのものをウヤムヤにする!!
「ミディア、俺庶民だから決闘について知らないんだけど」
「確かに言われてみればそうだな」
「だろ? だからそもそも決闘を受けることもできないんだ、でもそれだとツルギに悪いから断り方を教えてくれるとありがたいんだが」
さぁどうだ? 曲がりなりにもルーシーから交渉のやり方は学んだ。ただ我が道を行くミディアにどこまで伝わるのか不安でしかないが。
「ふむ、お安い御用だ」
まさかの素直な納得。ミディアのことだからてっきりごねて、無理やり受けさせるのかと思ってたのに。
「では、これを貸そう」
そう言いうと付けていた白い手袋を差し出してきた。
…………うん、
「これをどうしろと?」
何度も言うが庶民の自分には貴族のルールは分からないのだ。だから、え、知らなかったの? みたいな顔をされても困る。
「仕方ないな、ではミディアの言うとおりにしたまえ」
「おう」
「その手袋を思いっきり、」
「思いっきり?」
ミディアが手を振り上げるのに合わせて自分も上げる、
「相手の足元へ!」
「相手の足元へ!?」
そのまま勢いよく振り下ろし、
「叩きつけるっ!!」
パシッ!!という小気味いい音を立てて手袋は地面へと叩きつけられた。
周りの野次馬貴族たちが驚いて目を見開く中、ツルギ1人だけが笑って、…………え? 笑ってる?
「それが決闘を受ける合図だ」
「何やらせてんだテメェー!!」
驚きの叫び声、当然という意気込み、満面の笑みの中、心からの悲鳴が空に響いた。
今決闘すると犯罪らしいですが、カードの剣なら大丈夫です。ワイトそう思います。




