9.ここは
目が覚めると、自分の部屋じゃなかった。そうか、王宮へきて眠くなったんだ!
「フィー!!目が覚めたか?」
お父様?
「ずっと寝てたんだぞ。心配した」
そう?
「しばらくここで療養しような。オリヴィアはもういない。安心して傷を治すんだ」
いない?そうか。いないのか。離婚かな?
まあいいか。もう叩かれたりしないのなら何でもいい。
「すまなかった。フィーの異変に気付いてやれなかった。もっと家に帰るべきだった。すまなかった」
いいよ。もう。終わったことはどうにもならないんだから。
兄達も謝ってきたが、私喋れないし仕方ないよ。
兄さま達は愛されてたもの。気付かないもんなんだよ。自分が幸せだと。
私が愛されなかっただけ。誰も助けられなかっただけ。仕方ない。
お祖父様とお祖母様がたまたま来てくれて気付いてくれただけ。
にっこり笑っておく。
「フィー、もう笑わなくてもいいんだ。無理に笑う必要はない。笑いたい時だけ笑いなさい」
そう。もう無理しなくていいんだ。
そう。
やっと解放されるんだ。
ハードモード終了のお知らせ。
それからは毎日お祖父様とお祖母様が付き添ってくれた。
お父様も一応毎日顔を出してくれるし、お兄様たちも王宮に来ているからと毎日一緒にお茶をした。
少しずつだけどご飯も食べてる。味はしないけど。
傷は自然治癒がいいらしく、毎日ノアさんとエリンさんが見に来てくれている。
足が治ったころ(折れてたんだって)
王妃殿下と王子殿下に会うことになった。
「んま!!可愛い!!!妖精だわ」
「「本当だ!可愛いね」」
グリーンの髪にゴールドの瞳の王妃様はゴージャス系美女だった。
王子殿下は、金髪碧眼の王道だ。もう一人の王子殿下は王妃様そっくりである。
「私はアデリー。この子たちの母よ。
こんなに可愛い子がひどい目に遭ってたなんて…」
王妃様が泣き出した。
王子殿下に抱っこされる。
「私はリアム、ウィルと同じ歳だよ」
「僕はローガン、ヴェルの一つ上だよ」
こくりと頷いておく。
「可愛い」
お膝抱っこで撫でられる。
「体は痛くはない?」
こくり。痛みは感じないから。
「おやつは好き?」
首をひねっておく。わからないから。味ないもの。
皆がしょんぼりしてしまった。
「今度は私のところへ来なさい」
と王妃様に抱っこされる。
「本当に軽いのね…」
膝の上で撫でられながら、とりあえずおやつを食べてる。
眠くなってきたぞ。
《王妃視点》
「寝ちゃったわ」
「可愛いですね」
「ええ。本当に。こんなに可愛い子を虐待なんて考えられないわ」
「皆気付かなかったそうですしね」
「宰相も陛下も仕事ばっかりで家庭を顧みないからこうなるのよ!!」
私は言ったわよ!皆働きすぎだって!宰相なんて全く家に帰ってなかったもの!
そのせいでこの子が犠牲になったじゃない。家庭に愛がなくても子供には愛情が必要でしょ?
うちの子たちには乳兄弟もいたし、乳母もいた。私ももちろん愛情を注いだし陛下も一応愛情を持っていたとは思うわ。
けど、そうじゃない子もいるのね。ウィルやヴェルには愛情を注いでいたのに娘だけは虐げてるなんて思いもしないわよね。
けれど、見てわからなかったは言い訳よ。こんなに小さくて細いのに見ればわかるわよ!
前公爵夫妻が気付いてくれてよかったわ。
こんなに可愛いもの。声が出せるようになるといいのだけど。