84.仲直り
あれから、毎日ゆったり過ごしてる。
誰にも行動を制限されたりしない。好きなように過ごさせてくれる。
ピクシーの新作として、妊婦用のドレスやナイトウェアを作ろうと思ってデザインを起こしているところである。
基本的にはエンパイアで胸の下で切り替えがあるラインでお腹周りが締め付けられないようになってる。
サイズも融通できるようにするといいかもしれない。胸のサイズもお腹のサイズも変わっちゃうから、夜会用はそういうわけにはいかないけどデイドレスなんかはサイズ調整ができた方がいいだろう。
下着も作らないとだな。
自分が妊婦になってみて、作る物の幅が増えていくな。
もう少しお腹が大きくなったら、今度は子供服に着手しないと。
と気ままにデザインを起こしたり、お義姉様とお話ししたり、天気がいい日は庭で散歩をしたりお茶会をしている。
そして、それをジッと見ている視線と気配にも気付いてる。魔力を見れば一発だ。
ふぅ。あれから10日、そろそろ声を掛けるか。
「ヴィー、見てるんでしょう?出てきたら?」
「バレてたか」
と出てきたヴィーに抱きしめられる。
久しぶりに抱きしめられたヴィーの腕の中は、いつの間にか安心するようになっていた。
「お義姉様も協力していたのでしょう?不自然でしたもの」
「バレバレだったか」
とお義姉様。
「毎日外に行こうか。と誘ってくるのですもの。それにヴィーの気配もバレバレでしたわ」
そうか。と苦笑いを浮かべたお義姉様は屋敷の中へと帰って行った。
「リー。ごめんね。リーの気持ちを考えてなかった」
「ヴィーが過保護になりすぎるのはわかりきったことだったけれど、ロイやセオがあそこまで過保護になるとは思ってなかったの」
「そうだね。ごめんね」
「たぶんつわりの関係で情緒不安定になってるのもあるんだと思う。イライラしちゃって嫌になっちゃったの」
「うん。でも転移はしたらダメだよ。約束したのに」
「だけど、移動手段が無かったもの。でも、ごめんなさい。もうしないわ」
「うん。リーがいないのも会えないのも寂しかった」
「そうね。結婚してからはずっと一緒だったものね」
「リー、安定期まで帰らないでしょう?こちらの家に私もしばらく住んでいい?」
「ええ。そういうと思って準備してある」
「ありがとう」
と抱きしめられた。
それから、ロイやセオも急いで転移してきて
「「申し訳ありませんでした」」
と声を合わせて謝ってきた。
「ライオネルやダンはわかるけれど、ロイやセオまであんなに過保護になると思わなかったわ」
「いやあ、だって小さい時から見てきたお嬢様が妊娠したって聞いたら・・・」
苦笑いのロイに
「私は獣人の性ですね」
と都合よく獣人のせいにするセオ。
とまあ、転移ができる2人もこちらの屋敷でしばらく私の護衛をすることになった。
こちらの屋敷の使用人は、お母様の時代のベテラン使用人もいてお義姉様という前例もあったのでサポートもしっかりしていたし食事も私が食べやすそうなものを用意してくれた。
ストレスが無くなった私はどんどん食欲も出てきたし、つわりもどんどん治まっていった。
3ヶ月が経ちそろそろ帰っても大丈夫かなと思っていた時、お義姉様の出産の日がやってきたのだった。
お父様やお兄様、ヴィーまでがおろおろし、部屋の前をうろうろし続けていた。
そして、大きな産声と共に後継ぎとなるであろう男の子が無事生まれてきたのである。
全員が歓喜し、もうすでにデレデレである。
お義姉様の出産を見届け屋敷へ帰ることとなった。