81.あの時の
「リー、最近顔色があまり良くないようだけど体調悪い?」
ヴィーに言われるまで忘れてたけど、体調が悪い気がする。
気だるいし、ちょっと軽い乗り物酔いのような感覚・・・。
え。もしかして妊娠してる?
そういえば月のものも来てない。
魔力を体に巡らせてみると、自分の魔力では無い魔力を感じた。
これは間違いないな。
この間まで蜜月だったから、どうやらあの時の子のようだ。
お父様、一月後に結婚式をしたのは正解でした。
「ヴィー、私妊娠してるみたい」
「やっぱり」
「気付いてたの?」
「だって顔色悪かったし、考えてみれば月のものもきてないでしょ?」
「確かに。気付いてたなら言ってくれればよかったのに。
魔力を巡らせてみたのね?そしたら私の魔力じゃない魔力が私の中にあるの。だから間違いないと思う」
「ほんとう?よかった!そうかもしれないと思ってもただの体調不良かもしれないから黙ってた」
「ヴィーなら大喜びするのかと思ってたわ」
「すっごい嬉しいけど、体調が悪そうなリーに喜びながら体調伺いはできないでしょう?
だから抑えてた。けどすごくすごく嬉しい!!それから無理をしないように。あと転移禁止ね!妊娠中は魔力が不安定だと思うから」
意外に慎重なヴィーに驚き、過保護になり始めたことは想定内だ。
それから暫くは黙っていようと思っていたけど、私の身の回りのお世話をしてくれているミーナにはやっぱりすぐバレた。
そして医者を呼ばれ、妊娠していると屋敷の皆に報告されたのだった。
ヴィーが過保護になるのはわかる。
だけど私の護衛達までめちゃくちゃ過保護になった。
私が無茶をしても何も言わないロイとセオまでもだ。
走るな、早歩きするな、階段を下りるな、動くな、と何をするのも許してくれない。
しかも抱き上げて運ぼうとする。
これはヴィーが嫌がったから止まったのだが、見張られていていちいちジッとしていろと言われるようになった。
確かに、どんどん吐き気も出て来たし?毎日起きた時からずっとしんどいけれど?
何もするなは余計に体調悪くなりそうなんですけど?
すごくストレスが溜まる。
ミーナだけは私の意見をちゃんと聞いてくれて、皆に意見してくれたけどまあ聞かない男達。
「ミーナ。私フォレスト家に帰りたい」
「お嬢・・・奥様。帰りましょうか」
「私馬車は余計に吐き気がしそうで時間もかかるし嫌だし、転移してみようと思うの。転移はヴィーに禁止されているけど、皆私の言うこと聞かないんだもん。心配してくれるのはわかってるんだけどね」
「皆頭の中ではわかってはいるんでしょうけどね。どうしても心配なのでしょう。私はどこへ行ってもお供いたしますけれど」
「ありがとう。ミーナ。早速準備して転移するわ」
心配してくれるのは嬉しいし、過保護なのも前からだからわかってた。だからこれは抗議である。
私が見えないところで余計に心配すればいい。
ということで私はこっそり里帰りを決行することにした。
ちゃんと置手紙は置いていく。
『誰も私の言うことを聞いてくれないので、実家に帰らせていただきます。
しばらくはそっとしておいてください。気持ちが落ち着いたら戻ります。
ミーナは連れて行くのでご心配なく。 フェイリーク』