77.色々と
「リー、ネックレスは着けないの?」
「そうねー、首までレースにしようと思ってるからネックレスは無しになるね」
「このドレス身体のライン出すぎじゃない?」
この会話からわかるように、現在急ぎで結婚式のドレスのデザインを起こしている最中である。
ヴィーの膝の上で。
「でも胸元は隠れるのよ?」
私がデザインしてるドレスのラインは前世で言うところのアメリカンスリーブのマーメイドドレスである。
女性のドレスの胸元はデコルテが開いているのがオーソドックスなスタイルなので、それを思うと胸元から首までレースを貼るから隠してる方だと思うんだけど。
「でも、胸からお尻までしっかりラインがわかるのは私が嫌なんだけど」
「ええー。私はこのラインがいいのにー!」
「ダメ」
私が着るのに文句を言うのか!!
はあ。ヴィーのめんどくささは今に始まったことではない。
「じゃあ、ウエストに細いプラチナゴールドのチェーンを付けてそこからトレーンを引くわ。そうしたらお尻は隠れるし豪華さも出ていいかも!!これ以上は譲歩しないわよ?」
「むー。なら我慢する・・・」
「代わりに色はヴィーの色にするから!」
するとぱぁっと顔が明るくなるヴィー。単純である。
「ドレス自体は真っ白、トレーンは薄い素材で水色に。どう?」
「最高!ありがとうー!!」
とぎゅぅっと抱きしめられる。
ヴィーは自分の色を嫌だと思っていた時期があったことから、より感動が大きいのだと思う。
婚約式の時にもヴィーの色のドレスだったけどあれはヴィーが用意したもので、今度は私自らヴィーの色を選んだという事実が嬉しいのだろう。
ネックレスの代わりに、首元はすこし高くしてそこに宝石をネックレスのように付けることにする。
ヴィーのタキシードも白で揃える。
プラチナゴールドで刺繍を入れて、タイに付ける宝石の色を私の瞳の色のサファイアを。
私のドレスの首元にも同じサファイアを付けるとよりペア感が出るだろう。
と2人で意見を出し合って決めていく。
何分時間がない。急いで決めて制作に入らないと間に合わない。
あと一月で決めることはたくさんあって、まずやはり爵位問題で王家の血が入った公爵令嬢と隣国の王子が伯爵というのは爵位が低すぎるとのことで侯爵へ。
領地は無く、外交担当(セリアンスロゥプと行き来しないといけないから)だ。
王家が私に借りがあるからと、お屋敷は王家所有のものを譲ってくれるのだそう。
新しいお屋敷には王家の使用人がいるがそちらを雇いなおすのと、うちからも元々の私の護衛メンバーであるダン、ライオネル、サイラス、セオにロイ全員連れて行く。もちろんミーナも連れて行く。
それから
「お父様!」
「どうしたんだい?」
「お父様も私のお屋敷に一緒に行かない?」
「私も?」
「お兄様に公爵を譲ってしまったら私の屋敷で一緒に暮らさないかしら」
「ヴィット殿下にも相談したのか?」
「もちろん。もう子育ても卒業でしょう?私のために宰相の仕事もやめて、男手一つで育ててくれてありがとう!私のためにセリアンスロゥプの両陛下に怒ってくれてありがとう。
お父様と離れるのは私も寂しいのよ?
それにね、お父様にはヴィーと私に何か問題があった時に対処してもらいたいっていう下心もあるの」
と最後は恥ずかしくなって茶化してみた。
母だった人と別れてもう14年近くなる。お父様が公爵を譲って領地にでも行ってしまったらお父様は一人になってしまう。それは寂しいんじゃないだろうかと思った。
するとお父様は泣き出した。
「フィーありがとう。私は家庭を顧みない最低の父親だっただろう。それに子供のために色々とするのは当たり前だ。私は領地にでも行って隠居生活でもしようと思っていたのだがな」
「ふふ。隠居はまだまだ早いんじゃないかしら」
「そうか?まあ私も可愛い娘と離れないで済むのならありがたい話だ」
「まだお兄様に譲らないのでしょうし、考えておいてね」
「ああ。ありがとう」
お父様も子離れできていないけれど、私も親離れできていないなと思ったのだった。