74.甘々タイムは続かない
ヴィーは顔合わせから始まり嫌がらせ等が色々とあって、私がまだ自分の事を好いてくれていないと思っていたのだと思う。
だからしきりに謝ってたのに気付いてた。
でも媚薬に侵された状態のヴィーじゃなく、正常な時に言いたかった。
本当はまだ言うつもりはなかったのだけど、ヴィーが気に病んでるのがわかってるから。
タイミングはここだと思った。
私の告白を聞いて固まったヴィーはしばらくして
「は?え?聞き間違い?」
と混乱しだした。
「聞き間違ってない。好きよ。ヴィー」
すると理解が追い付いたヴィーはまた泣き出した。
「ヴィーは泣き虫ね」
涙を拭ってあげる。
すると
「リー!嬉しい。ありがとう!愛してる!!」
とガバリと抱き着いてぎゅうぎゅう締め付ける。
背中をぽんぽんと叩く。そしたら急に離れたかと思うとキスしてきた。
「リー。好きだ。愛してる」
まあ?気持ちも確かめ合ったし?仕方ないなと受け入れていると段々長く、荒くなってきた。
これはまずい!
「・・ん・・ヴィー・・・」
と背中を今度は強めにバシバシ叩く。
だけど、私の力なんて大したことがないのだろう。止まらない。
「・・・まっ・て!!・・・」
顔に添えられてた手も段々下りていく。
もう!!
魔法を使う。手を拘束させてもらう。
「なんでぇ?」
と不服そうなヴィーだけど、そんなことをしている場合ではない。
「ヴィー。私、お父様に全く報告してないの」
それを聞いたヴィーは、サーッと顔を青くしていく。
セオには頼んでおいたけど、自分では報告していないから嘘ではない。
「それにね、私体が動かないのだけど!」
今度は顔を赤くしていく。忙しいな。
「ヴィーをもっと寝かせてあげたかったのだけど、護衛を呼ぶわけにいかないしミーナを呼ぶのも恥ずかしいでしょ?だからヴィーにどうにかしてもらおうと思って」
「護衛なんて以ての外だし、これは夫の役目だからリーがその判断をしてくれてよかった。獣人は寝室での妻の姿を使用人には見せないんだよ」
「そうなの?とりあえずお風呂に入りたいのだけど」
私の部屋にはお風呂が付いている。
そこへ抱き上げて連れて行ってもらう。魔法でお湯を張る。
散々見られた後でも、恥ずかしさも少しはあるが仕方ない。
そして2人でお風呂に入って、身支度を整える。ヴィーの服は気が利く誰かによって私がお風呂に入っている間にブランチと共に届けられていた。
ヴィーの膝の上でヴィーに給餌されながらご飯を食べて、ヴィーに抱き上げられてお父様に会いに執務室へ行く。
ヴィーの顔はまるで死地に向かうようである。
ノックをして中へ入ると、お父様は見たことも無いほど厳めしい顔をしていた。
ヴィーがとにかく謝る。
「義父上、申し訳ございませんでした!!」
私を抱き上げたままなのでそれもどうかと思うのだが。
「お父様・・・」
私も何と言っていいかわからない。
媚薬を盛られたヴィーと寝室へ籠ってほぼ一日出てこないのだからお父様ももちろんわかっている訳で、娘としてはかける言葉が見当たらない。
お父様は黙ってこちらに近付き、ヴィーから私を回収してソファーに下ろす。
ヴィーは放したくなさそうでギリギリまで尻尾が巻き付いていたのだが、さすがに空気を読んだ。
私を回収したお父様は
「フィー大丈夫かい?体調は?」
「体が動かないだけで、元気よ?お父様、心配かけてごめんなさい」
「殿下。どういうことです?いくら媚薬を盛られてるからってこんな!娘が動けなくなるほど・・・」
「それは申し開きのしようもなく・・・」
やっぱりめちゃくちゃ怒ってる。ヴィーは耳も尻尾もべっしゃり下がってしまっている。
大きくため息をついたお父様は
「言っても仕方のないことですが、一言物申したかった。はあ。殿下、フィー、一月後に式を挙げるぞ」
「「ええ?」」
「仕方がないだろう!こうなってしまっては。私だって不本意だが、急ぐに越したことは無い」
「お父様、ヴィーを婿養子にする話は結局どうなったの?」
「ああ。さすがにセリアンスロゥプでこんなことになって両陛下も諦めが付いたみたいだ。よってウッズ伯爵家を2人に任せることになる」
一日で色んな話をまとめてきたお父様はさすがである。
「ですって。ヴィー」
「義父上よろしくお願いいたします!」
と嬉々とした顔を隠さず子供のように元気に挨拶したヴィーに対して、お父様も複雑そうな顔をしながらも“義父上”というところに反論しなかった。