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73.ヴィット視点

 

最初に比べたら随分リーとも仲良くなり、色んなことを学びながらファールへ通う平和な日々が続いたからだろう。

私はすっかり油断していた。


あの日は庭で武術を鍛錬していた。

疲れて休憩を入れようとしたとき、侍女が水を差し出してきたので何の違和感もなく飲んだ。途端に背後から襲われ気を失った。


気付いた時には、真っ暗な知らない場所で腕をベッドの柱に縛られて乗せられていた。

しばらくすると体が段々熱くなってくる。

まさか。媚薬を盛られたか!思い出してみるもあの時侍女が差し出した水しかない。だが、匂いも無く色も透明だったから飲んでしまったがあれに盛られていたのだろう。

侍女の顔も見なかったが、こうなってみると侍女ではなかったかもしれない。


荒く息を吐くしかできなくなってきたころ部屋の扉から女が入ってきた。


「殿下。そろそろ苦しくなってきたのではありません?」

と甘ったるい声を出しながら近づいてくる。

女はシュミーズドレスだ。既成事実を作りたいことは丸わかりだ。


「誰だ」


「まあ。私のことを覚えておりませんの?クレイズ伯爵家次女、リズベットですわ。あんなに語り合ったではありませんか」


はあ?全く記憶に無いが、話したことはあるのだろう。


「私を拘束してどうする」

「することと言えば一つではありませんか。私が欲しくなって来たでしょう?」

「こんなことをしてどうなるかわかってるのか!」

段々、頭も回らなくなってきている。


「ええ。ええ。既成事実を作ってしまえば私は殿下にしか嫁げなくなりますもの」

「私には婚約者がいる」

「ええ。存じております。ですがそんなものは破棄してしまえばよろしいのです」

「絶対にお前とはしない」

「どうしてです?体は私を欲しているはず」


いやだ。気持ち悪い。頭では拒否したいのに、身体は言うことを利かない。苦しい。

いやだいやだ。苦しい。朦朧としてくる。

気持ち悪い。こんな身体切り落としてしまいたい。

リー!!!


その時、私の最愛が急に現れた。


「リー!?」

「なあに?」

「来ちゃダメだ!」

リーにこんな姿見られたくない。


女とリーが何か話している。それをぼんやりと聞くしかできない。

暫くするとリーが寄ってくる。


いやだいやだ。

近付かれると襲いたくなる。

いやだいやだ。

こんな状態でリーとするなんて。

いやだ。

つらい。くるしい。


リーが話しているがもう何を言っているかも、自分が何て返事をしているのかもわからない。

ただただ苦しかった。

するとリーから口付けられた。

繰り返すうちに、箍が外れたのが自分でもわかった。


ごめんねごめん。

こんなことになって。

大事なこの日をこんな風に迎えることになってごめんね。


「ヴィー、謝るのは違うと思うの。婚姻はするのだから早いか遅いかの違いでしょう。ごめんより、好きだと言ってくれる方が嬉しいわ」


とリーに言われて、そうだ!ごめんは違った。

それからは媚薬のせいだと言い訳しながらリーに無理をさせた。そして気絶するように眠りに落ちた。


呼吸が苦しくなって目が覚めた。

どうやらリーが起こしてくれたらしいのだが、鼻摘まなくてよくない?

容赦がない。死ぬかと思った。

寝起きなのと、リーが目の前にいる事実(互いに裸である事実)に混乱してリーに昨日の話をされて思い出した。

それはもう色々と。


そして一番に思ったことは、「ごめん」だった。

だって私はリーを愛しているけど、リーは私のことを好いている訳じゃない。

番だから、王命だから婚約してくれてる。


不誠実なことはしないと自分に誓ったのに、こんなことになってしまって申し訳ない気持ちと

けれど愛するリーと結ばれた事実に一方的に幸せな気持ちとがごちゃ混ぜになった。



「あのねぇ、私はあなたの番なんでしょう?私じゃなきゃ誰とどうするの?昨日も言ったけど、ごめんは聞きたくない。なんか嫌だったみたいじゃない」


とリーは言ってくれた。

私のものになって嬉しい。

けどやっぱり番だから、婚姻することは決定だからか・・・


と思っていたら

「それと、ヴィー。好きよ」

とサラっと言われた。


ねえリー、それはサラッと言うことではないのでは?


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