70.提案
「フィー、考えたんだがセリアンスロゥプへ嫁ぐのはやめにしないか?」
「ええ?もう婚約者として周知されてしまったし、何より番は引き離せないって・・・」
「殿下に婿入りしてもらおう」
「婿入りって・・・」
「私が伯爵位を持っているのは知ってるだろう?殿下の婿入り先として爵位は低いかもしれないがそれを継げばいい。あんな国へ嫁に出すのはやはり耐えられない」
「お父様・・・」
「私はフィーには幸せになってもらいたいし、危険な目にも遭ってほしくない。陛下に相談もしたんだ。そしたら陛下もそれは名案だとおっしゃっていたよ」
「セリアンスロゥプ側は納得してくれるかしら?」
「なに、あれだけ事を起こしてフィーを危険に晒したんだ。嫌とは言わせん。殿下との婚約は継続するのだから問題はないだろう」
お父様は私のために色々と考えてくれたらしい。
私もファールでいられるなら安心だし嬉しい。
「お父様ありがとう!!」
と抱き着いた。
「フィーが嫁がないのは私も嬉しいしな」
お父様、そちらが本音では?と思った。
「セリアンスロゥプ側に交渉しないと!」
「お父様と陛下にまかせておけ!!」
と自信満々なお父様に交渉してもらおう。
「ヴィーには先に伝えようかな」
「それもお父様に任せなさい!フィーも同席しなさい」
と今度は悪い顔してる。
「しかし、フィーも絆されたもんだな。嫁ぐのやめにしないかと聞いたのに、やめると言わなかったな」
ふむ。確かにそうかも。
「確かに。番という感情はよくわからないけど、好きだ好きだと言われてるうちに絆されてきてる感覚はあったの。最近は可愛いなと思うことも増えたし。言わないけど」
というと目を丸くしたお父様が笑いだす。
「それはいい!まだまだ言わずにいなさい」
と笑っている。
そして、ヴィーがうちに来る日。
レインさんに連れられてきたヴィーを、レインさんごと案内しお父様が早速切り出す。
「フィーをセリアンスロゥプへ嫁がせるのをやめようと思います」
「「は?」」
とヴィーとレインさん。
「待ってください!!私は絶対リーと離れません!!」
「姫とヴィットは婚約もしておりますし、披露もすませましたし、何より番です!!確かにうちの貴族たちが姫に酷いことをしました。しかし、それはあまりにも・・・」
とヴィーもレインさんも必死で言い募る。私の味方だったはずのレインさんも色々指導しているうちにどうやらヴィーに絆されてきているようだ。
あー。お父様仕返ししてるわ。根に持ってるから。
「陛下にも相談済みで、あとはセリアンスロゥプ側へ聞き入れてもらうだけなのですがね」
「どうかお考え直しを!!」
「嫌だ!!嫌だ!リーと離れるなんて考えられない!!」
と私に抱き着くヴィー。ちょっと泣いてない?
はあ。
「お父様」
と声を掛けると。
「殿下と結婚させるのは未だに不本意なのは本当ですがね、フィーはそんなに嫌がってないみたいなのでね」
「先ほど嫁がせないと・・・」
「ええ。ヴィット殿下には婿入りしてもらいます」
「「婿入り!!」」
2人がハッとした顔をしている。
「ええ。セリアンスロゥプはフィーにとって危険すぎる。危険を防ごうにも次から次へと問題がやってくる。そんな国へ誰が可愛い娘を嫁がせたいと思いますか?
かといってヴィット殿下とフィーは引き離してはいけないそうですし?
となれば選択肢は自ずと決まってくるのですよ。ええ、非常に、非っ常に不本意ではあるのですがね!」
「義父上・・・」
「まだ殿下の父にはなっておりません!!」
感動したヴィーに冷静なお父様のやり取りが面白くて、その場は笑いに包まれた。